「ここを降りるの?」
Lv.4のときより明らかに高い崖の上。
ガブモンの話では、ここからベジーモンに落とされたらしい。
「いくらなんでも高すぎるし……降りるのは無理そうね」
「ロープか何かあればいいんだが……」
「オレ、探してくる!」
と言ってガブモンは来た道を戻ろうとした。
けど、すぐ目の前にあくタイプっぽいデジモンたちに阻まれた。
ここで邪魔されるわけにはいかない。
俺たちは戦う体制に入った。
「ま、待ってくれ!戦いに来たわけじゃないんだ!」
連中の一体が慌てて言った。
確かに連中は戦う態勢をとっていなかった。
「お前たちのおかげであの牢獄か出ることができた。だからそのお礼がしたいんだ」
「俺たちも一緒に連れて行ってくれ!」
「お前ら……」
「ありがとう。じゃあ、一緒に行こう!」
再びガブモンとあくタイプっぽいデジモンは走りだした。
でも、突然空から飛んできたウンチに阻まれちまった。
「ははは!そうはさせねぇぞ!」
やって来たのは大量のベジーモンを引きつれた真っ赤なベジーモンだった。
あー、そういやこいつらの技ってウンチだって言ってたよなぁ……。
大量に喰らっちまってガブモンたち気の毒だな。
「よーし、ここはオレが!
大輔見ててよ!」
「え?」
「あいつ、身体は赤いけどベジーモンとそんなに変わらないだろ?そんなに強くないはずだ
オレも格好いいとこ見せるから大輔も元気になって!」
と言うと、ブイモンがベジーモン軍団の前に飛び出していった。
これ………倒されるフラグじゃないよな?
「待ってブイモン!
うかつに飛び出したら……!」
ドルすけが止めたのもつかの間、ブイモンは赤いベジーモンから一撃を喰らった。
「舐めたらケガするぜ!
レッドホットマシンガン!!!」
口から放たれた唐辛子が次々とブイモンに当たってひっくり返らせた。
「みんな!アーマー進化だ!」
「はい!」
「了解!」
(癪だけど)大輔の指示でヤマトさんを除く俺たちはデジヴァイスを構えた。
「おっと、そうはさせねぇぞ!
野郎どもやっちまえ!!」
赤いベジーモンの掛け声で緑のベジーモンが俺と大輔たち人間組に向かってきた。
緑のベジーモンは体と腕を使って俺たちをぐるぐる巻きにした。
「うう……」
「くそっ、身動きがとれねぇ……!」
両腕で力いっぱい押してもびくともしない。
それどころか奴らはどんどん締め付けてくる。
やっぱ技を使わねぇと外れそうになさそうだ。
でも技を使っちまったら俺の正体がみんなにバレちまう。
いったいどうしたら……
「ハザードブレス!!!」
前を見ると技の名前を叫んで真っ赤なベジーモンが息を吐いていた。
おまけに何だよこの臭い!!
ベトベトンの身体並にややややばいって!!
嗅いだことないけどな!
「鼻がひん曲がりそう」
「動けんがやー!」
この隙を狙われてドルすけたちも助けたデジモンたちもみんな捕まっちまった。
一方、ブイモンは赤いベジーモンの両腕に締め付けられていた。
「ごめんで済んだら警察はいらねーんだよ!」
と言ってブイモンを地面に叩きつけると、何度も何度も叩き続けた。
「ど、どうしよう玄夢
このままじゃブイモンが………!」
ドルすけが泣きそうな顔で俺を見た。
このままだとブイモンがやられちまう。
ちっくしょう!こうなったらやるっきゃねぇ!!
「あーーー!デジモンカイザーだーーーー!!」
俺がそう言うと、みんな一斉に上空を見た。
その隙に俺は小さく作った「シャドーボール」でくっついてるベジーモンを弾き飛ばした。
体も軽くなったのでドルすけに付いてる奴も蹴り飛ばしてすぐにブイモンの所に向かった。
「いねぇじゃねーか!
てめぇ騙しやがったな!?」
「騙されるほうが悪いんだよトマト野郎!」
赤いベジーモンにも蹴り(という名の「だましうち」)をお見舞いしてやんよ!
……と思ってたんだけど、塔の影に隠れちまったもんだから俺の足は塔にぶつかった。
「痛ってぇええええ!!!」
痛みのあまり俺はのたうち回るしかなかった。
塔に軽くヒビは入ってたけど何の救いにもなりゃしねぇ!
「人間の身で考え無しに突っ込むからだよ」
「へーへー」
実を言うと俺はポケモンなんだけどな。もちろん言えるはずもない。
こっからは選手交代だな。
「頼んだぞドルすけ
デジメンタルアーップ!!」
「ドルモン、アーマー進化―!!
鉄壁の絆・ラプタードラモン!!」
ドルすけはラプタードラモンにアーマー進化すると、赤いベジーモンをふっ飛ばして塔に叩きつけた。
その衝撃で塔の全体へとヒビが広がった。
すると……
「ガブモン進化―!!
ガルルモン!!」
ヤマトさんのデジヴァイスが光って、ガブモンが青い縞模様が入った狼のデジモンに進化した。
ガブモン改めガルルモンは口から青い「かえんほうしゃ」を放ってみんなにくっ付いていたベジーモンを追い払った。
てか、進化ってアーマー進化だけじゃなかったんだな。
「さてと、次はお前の番だな」
「え?」
「大輔に格好いいとこ見せるんだろ?」
「……おう!」
俺の台詞にブイモンが力強く頷くと、大輔はデジヴァイスを構えた。
「いくぜブイモン!
デジメンタルアーップ!!」
「ブイモン、アーマー進化ー!!
燃え上がる勇気・フレイドラモン!!」
フレイドラモンは赤いベジーモンの触手をつかんで何度か地面に叩きつけて塔があるほうへぶん投げた。
再びぶつかった衝撃でさらにヒビが入って塔は粉々になって崩れ落ちた。
「あれ?オレたちこんな所で何してたんだっけ?」
塔が崩れ落ちた途端、赤いベジーモンも普通のベジーモンも正気に戻ったみたいだった。
いったい……どうなってんだ?
「おーい!」
少し遠くから声が聞こえた。
振り向くと京さん、ホークモン、太一さん、アグモン、光子朗さん、そしてゴツモントリオがこっちに向かって走ってくるのが見えた。
「ガルルモン、なんで進化できたの?」
「さぁ?なんでだろう?」
「進化できたのはあの塔にヒビが入ったときだよね?」
パタモンがそう言うと、京さんは腰に手を当てて何か考えた。
そして塔の残骸を見たあと、文字のピースでも埋まったのか何かひらめいようだ。
「なるほど。そういうわけか」
「何が『そういうわけ』なんですか?」
「この塔はただの飾りじゃないってこと
これはデジモンカイザーの力を受信して、あたり一帯に広める電波塔みたいな役目をしてるのよ」
なるへそ。
だから塔をぶっ壊したらベジーモンたちが大人しくなったってわけか。
「そうですよね?泉先輩」
「はい。僕もそう思います」
「ということはこれで選ばれし子供たちの目的もはっきりしたな」
「ああ。デジモンカイザーが支配するエリアにある塔を片っ端から破壊していくことだ」
塔を破壊すればきっと進化できないデジモンも進化できるようになるはず。
そうすれば太一さんたちも戦いに参加できるようになる。
「うっしゃ!そうと決まれば某黒薔薇龍も真っ青になるほどぶっ壊しまくってやんよ!」
「っても壊すのはおれたちデジモンだからね」
「わかってるって」
後で俺もみんなが見てないとこでぶっ壊しに行くか。
何もしないわけにもいかねぇし。
「それにしても、あのとき叫んだのもわざと塔を狙ったのも玄夢の作戦だったんだよね」
「へ?塔のは違うけどなんでわかったんだ?」
「誰だってわかるよそれくらい
だいたい、玄夢はあいつのこと『デジモンカイザー』って呼んでないじゃないか」
「うっ……」
確かに思い返したらコスプレ関連でしか呼んでなかったな、俺。
「でも玄夢のおかげで助かったよ。ありがとう!」
「よせよブイモン
俺たちは仲間だろ?当然のことをしたまでだ」
「そもそも赤いベジーモンを倒したのはおれで、玄夢は玄夢自身とおれに付いてたベジーモンを引きはがしただけじゃ……」
俺は問答無用でドルすけに脳天チョップを浴びせた。
痛いの何だの言ってきたけど、ここではスル―しておく。
「だけど今日の玄夢くん、格好よかったよ」
ヒカリはそう笑顔で言ってくれた。
ちらっと大輔を見たら、予想通り俺を呪い殺しかねないような勢いでこっち向いて睨んでいた。
「よしアグモン!ゴツモンたちのいるエリアに行くぞ!」
「あ!あたしたちも一緒に!」
太一さんとヒカリ、アグモン、テイルモンは遠くへと走っていった。
あと、この一帯はヤマトさんとガブモンがまたコスプレ野郎に襲われないよう守ることとなった。