俺と大輔はパソコン室に行くため廊下を歩いていた。
その途中、階段で伊織くんと会った。
「あ、大輔さんと玄夢さん」
「よぉ、伊織くん」
「あれ?パソコン室行かねぇのか?」
「今日は稽古があるんです。剣道の」
「剣道ぉ!?
お前なぁ、デジタルワールドが大変だってときにー!」
「よせよ大輔」
伊織くんに突っかかりそうな大輔を止める。
「家の用事なんだからしょうがねぇだろ?」
「そうだけどよー……別の日にするとかしばらく休むとかできないのか?」
「それはできません
なにせ今日は週一度、おじいさまがいる警察の道場が使える日なんですから
それに、おじいさまは忙しいなか僕のために時間を割いて教えて下さってるんです
そのご厚意を無駄にするなんてとても……」
確かにそれじゃ休めねぇよな。
俺ん家みたいに家と道場がくっ付いてるわけでもないし……。
「了解!今日は俺たちに任せてくれ」
「その代わり、明日は絶対来いよな!」
「はい。ありがとうございます」
その場でぺこりとお辞儀して、伊織くんは階段を降りていった。
俺たちはそのままパソコン室に行ってドアを開ける。
中では京さん、タケル、ヒカリ、ドルすけたちがパソコンに群がっていた。
「いったいどうしたんだ?」
「デジタルワールドからのSOS信号が届いているんだ」
タケルの言うとおり、パソコンからピッピッと音が聞こえてくる。
近づいて画面を見てみると、黒います目の一つが赤く点滅していた。
「私たちのいた所からかなり離れた場所みたいね」
「デジモンカイザーの支配するエリアがまた広がったってこと?」
「新しい塔が建ったのかな?」
「そうかもしれないね」
くっそ、あの残念無念コスプレ野郎め!どれだけデジモンを傷つければ気が済むんだよ!
急がねーとこうしてる間にもまた黒いリングで操られる奴が出てくるかもしれねぇ。
「よし!みんな揃ったことだし、早く行こうぜ
デジタルワールドに!」
「『みんな』って伊織がいないだぎゃ!」
ウパモンが跳ねながら文句を言った。
「伊織くんはかくかくしかじかだとよ」
「玄夢、またそr「剣道ってなんだぎゃ?」
「また通じてるし……」
少しがっくりした感じでドルすけが呟いた。
一方、ウパモンは剣道が何かわからないのか頭に「?」マークを浮かべていた。
そしてそのすぐ目の前。
大輔が丸めた雑誌でウパモンを叩いていた。
「めーん!どーう!籠手ー!」
「痛いだぎゃ!何で叩くだぎゃ!?」
「これが剣道なんだよ」
と、大輔が言うとウパモンは目を丸くした。
2人の反対側――つまり廊下のほうから足音が響いた。
足音はどんどん近付いてくる。
「あっ!伊織が来ただぎゃ!」
「いや、伊織の足音じゃない。隠れろみんな!」
それぞれのパートナーを抱えて走りまわる俺たちだけど、無情にもドアが開かれた。
やってきたのは進学校に通ってそうな眼鏡をかけた人だった。
「「丈さん!」」
タケルとヒカリが嬉しそうにその人の名前を呼んだ。
ってことはこの人も前の選ばれし子供ってわけか。
「聞いてたけど何か変な感じだな
ここにデジモンがいるなんて」
眼鏡の人――丈さんがそう言うと、タケルが丈さんの所へ移動した。
「みんな、木戸丈さんだよ」
「へぇー。この人がー
よっろしくー!」
「わーお!なんか偏差値高そうって感じ!」
おいおい京さん。初対面でそれはないだろそれは。
俺も思ったけどさ……。
「丈さん。この3人は本宮大輔くんと井上京さん、そして稲荷玄夢くんです」
「ど、どーも……」
何か緊張すんなー。
真面目そうな人だし。
「さっきデジタルワールドからSOS信号が入ったんです」
「それはゴマモンからだよ」
「丈さんのデジヴァイスも反応したんですね?」
タケルがそう尋ねてると、チビモンが丈さんの持ってるレジ袋をつかんで目を輝かせていた。
「人の取っちゃ駄目だよチビモン」
「よだれ垂らしながら言っても説得力ねぇぞドルすけ」
「ドルすけじゃなくてドリモン!
もうこの台詞は読者さん飽きてるだろうし、いい加減覚えてよ玄夢!」
「へーへー」
丈さんいわく持ってるレジ袋(に入ってる食べ物)は向こうで食べるらしい。
きっとゴマモンってデジモンに食べさせるために持ってきたんだよな。
「丈さんもデジタルワールドに行くつもりで来てくれたんですね」
「ゴマモンのことが心配だからね」
大事なパートナーだもんな。
……で、反対側で京さんはパソコンのほうへ移動していた。
「じゃあ、ゲートを開くわよ」
「おっけー!」
「了解!」
俺たちはそれぞれデジヴァイスをパソコンの画面にかざした。
その途中で、またしてもドアが開く音が聞こえて伊織くんが入ってきた。
「遅れてすみません」
「伊織!遅いだぎゃー!」
伊織くんはウパモンに謝ると、丈さんに自己紹介した。
だけど……
「選ばれし子供たち、出動ー!!」
京さんの台詞によって途中で遮られる結果となった。
どんまい伊織くん。
*
デジタルワールドに着いたらめっちゃ寒かった。
とりあえず周りを見たら一面に雪が広がっていた。
こりゃ寒いわけだ。
「なぁ、玄夢。お前の首に付いてるもふもふ貸してくれよー
そんでヒカリちゃんに……」
「痛だだだだ!急に引っ張んなって!
てかそれが目的かよ!」
「みんな、よかったらこれ使ってよ」
丈さんからもらったのはカイロだった。
ナイス丈さん!
俺、危うく大輔に首絞められるとこだったぜ……。
「うう~それにしても寒い~。…あっ!」
京さんがカイロを落としてそいつを拾い上げた。
すると、落とした所の雪が溶けて何かの目が見えた。
「あっ!ゴマモン!」
「何だって!?」
雪から出てきた目を見て丈さんが声を上げる。
俺たちは急いで雪をかき出して目の正体を―――ゴマモンを雪の中から救出した。
こいつにもガブモンと同じく身体のあちこちに傷があった。
「玄夢、これもデジモンカイザーの仕業なのかな?」
「100パーあいつの仕業だろ
じゃなきゃ誰がこんな酷いことするんだよ」
丈さんが必死に呼びかけたおかげかゴマモンはすぐに目を覚ました。
「丈…来てくれたんだ……」
「当たり前だろ!
会えなくてもずっと心配してたよ」
「テントモンからテレビで丈たちに連絡できるって聞いてたから……」
「うん。ちゃんと受け取ったよ」
丈さんはゴマモンにデジヴァイスを見せた。
「どうしたんだよこんなに傷だらけで……」
「あいつが……デジモンカイザーの奴が……!」
やっぱあいつが絡んでやがったか!
現に遠くに例の黒い塔が建ってるのが見える。
「くそっ!あんな塔ぶっ壊してやる!」
「でも、この雪原を横断しないと、あそこには行けないわ……」
「こんな所を歩いていくのは大変だな……」
確かにこれじゃ歩いただけで日が暮れちまいそうだ。
何かいい方法はないのか?
「スキーとかスケート、持ってきてません?」
「僕もそこまでは……」
「まぁ、普通はそうだよな」
ちらっと横を見たら、大輔が木のある所に走っていった。
「丈さーん。ロープありますかー?」
「え?」
なるほど!木でそりを作って、そいつで行けばいいってわけか!
大輔GJ!
*
ドルすけたちが技を駆使して木を切り倒し、俺たちがロープで組み立てる。
こうしてそりが完成した。
「それではアルマジモンたち、お願いします」
そう伊織くんが呼びかけたけど、アルマジモンだけは何も言わずそっぽを向いた。
あちゃー、こりゃ完璧に怒ってんな。
「んじゃ、しゅっぱーつ!」
「おー!」
そりの先にはロープでドルすけたちが繋がれている。
こいつらに引っ張ってもらうことでそりが動く仕組みだ。
言っちまえば犬ぞりのデジモン版だな。
「ん?なんだあれ?」
どんどん進むと黒い塔の周りに何かがいっぱいあるのが見えた。
「あれって雪だるま?可愛いー」
「違う!あれはユキダルモンだ!」
「何!?あれもデジモンなのかよ!」
おまけにユキダルモン全員の右足に黒いリングが付いていた。
ユキダルモンたちは拳を構えると、次々と「れいとうパンチ」っぽい技を繰り出してきた。
いいや、手から繰り出す「こごえるかぜ」か?
まぁどっちでもいい。
んなことより……
「よけろーー!!」
ユキダルモンからの攻撃をドルすけたちは右へ左へと移動してかわした。
その際大輔の顔に雪がかかったのは見なかったことにしておこう。
「奴らの間を全速力ですり抜けて逃げるんだ!」
「逃げる!?」
「塔を壊すのが目的だろ?
だったらここで戦うより逃げるほうがいい」
「そっか!わかりました!」
「みんなー!全速前進DA!」
ドルすけたちがさっきより必死に走ってくれたおかげでそりのスピードが上がった。
次々と放たれる攻撃をかわしつつ、ついに俺たちは包囲網の内側に入り込めた。
「楽勝じゃん!」
「ちょろいちょろい」
だけど放たれた攻撃が丘に当たったことで雪崩が起きちまった。
雪崩は容赦なく俺たちへと迫っていく。
「かわせー!」
大輔の一言でみんな直角に曲がった。
「これじゃよけきれねぇ!
もっとスピード上げてくれ!特にドルすけ」
「言われなくてもやってるって!
てか、なんでおれだけなんだよ!」
「まだだ!これじゃ速さが足りねぇ!
レッドゾーンにぶち込むくらいじゃねーと困るぜ!」
「んなこと言うんだったら玄夢が代わってよ!」
「馬鹿言え!この状況で代われるかっての!」
とりあえずよけきれたけど、その先には深い谷が待ち構えていた。
「跳べーー!!」
ドルすけたちがほぼ反射的に跳んで、途中で向こう岸に引っかかったがなんとか渡りきった。
でもここで安心したのがいけなかった。
「うわぁああああ!!」
なにせ目の前にはもっと深い谷があったからだ。
おまけにドルすけたちが急に曲がったもんだからそりが垂直に傾いた。
俺たちはすぐに縛ってたロープを持ってこらえたけど、伊織くんが谷の下にある川へと落ちてしま
った。
「任せて!」
すぐにゴマモンが川に飛び込み、伊織くんを抱え上げた。