幻影狐と原始竜   作:月影星良

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Lv.8   誰にでも譲れないものがある

 

雪に隠れるように存在していたやや広めの洞穴。

川に落ちた伊織くんのために俺たちはそこで休憩がてら暖をとることにした。

で、伊織くんはというと……身体を縮こまらせて焚火の前で震えていた。

アルマジモンも心配そうに伊織くんを見つめている。

 

「風邪薬も持ってきたんだ。飲んだほうがいいよ」

「はい。すみません」

 

丈さんが伊織くんに粉の薬と水が入ったコップを手渡した。

しっかし丈さん本当に準備いいな。

 

「どうしよう。これじゃ伊織くん、移動は無理だね……」

「僕たちだけで行こう!」

「了解!」

「ま、待って下さい!」

 

俺たちが洞穴から出ていこうとしたら突然伊織くんは立ち上がった。

 

「僕も行きます!

稽古を切り上げてまで来たんです。おじいさまに合わせる顔がありません」

「だけどこのままおれたちと一緒に行って、肝心なときに倒れちゃったら元も子もないよ」

「伊織くんの力が必要になったら連絡する

だから今は休んでてくれ」

 

伊織くんは少しの間黙ってたけど、しぶしぶ元の場所に座って首を縦に振った。

どうやら納得してくれたみたいだな。

 

「ならば僕が残って伊織くんを看ているよ」

「お願いします。丈さん」

 

伊織くんのことを丈さんに任せ、俺たちは再び雪原へと繰り出した。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

黒い塔がある場所。

そこはさっきと変わらずユキダルモンが立ちはだかっていた。

 

「今回は気兼ねなく戦えそうだな。ドルすけ」

「おれはドルモン。何度も言わせないでよ玄夢!

そんなことより、見た目と技からしてユキダルモンはおそらく『こおりタイプ』

ならばほのおタイプの技が効くはずだ」

「だったらオレたちの出番だな」

 

大輔は上着のポケットからデジヴァイスを取り出すと、目の前にかざした。

 

「デジメンタルアーップ!!」

「ブイモン、アーマー進化ー!!

燃え上がる勇気・フレイドラモン!!」

 

ユキダルモンたちの攻撃をかわしてフレイドラモンは上空に跳び上がった。

 

 

「ナックルファイヤー!!!」

 

 

そのまま手から火炎弾を撃ってユキダルモンたちを次々と倒していった。

 

「ドルすけ!俺たちも加勢するぞ!」

「おっけー!」

 

俺もヒップバッグからデジヴァイスを取り出して、大輔と同じようにかざした。

 

「デジメンタルアーップ!!」

「ドルモン、アーマー進化―!!

鉄壁の絆・ラプタードラモン!!」

 

アーマー進化すると、ドルすけは突進してユキダルモンたちをふっ飛ばした。

 

「ここは大輔くんたちに任せて私たちは空から塔を破壊しましょう!」

「「わかった(わ)!」」

 

京さんたちもデジヴァイスを取り出した。

 

「「「デジメンタルアーップ!!」」」

「ホークモン、アーマー進化ー!!

羽ばたく愛情・ホルスモン!!」

「パタモン、アーマー進化ー!!

天駆ける希望・ペガスモン!!」

「テイルモン、アーマー進化―!!

微笑みの光・ネフェルティモン!!」

 

3人はそれぞれのパートナーに乗って塔のほうへ飛んでいった。

頼んだぜみんな!

 

 

「クラッシュチャージ!!!」

「ナックルファイヤー!!!」

 

 

ドルすけとフレイドラモンはどんどんユキダルモンたちを倒していく。

ぶっちゃけこいつら操られてるだけだからやられるの見ててちょっと心が痛むんだよなぁ……。

 

「こいつで最後だな」

「あ…ああ!」

 

視線を塔へと移すと、根元の部分がぽっきり折れた状態で壊れていた。

 

「塔も壊れたことだし、伊織くんと丈さんの所へ戻ろう」

 

その一言もあり、俺たちは元来た道を引き返した。

操られたデジモンがいるってのにあのコスプレ野郎がいないと思ったら……伊織くんたちの所に現れたらしい。

ほんと弱いものいじめが好きだよな。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

「じゃあ、ゴマモン。頼んだよ」

「うん。これからここはおいらが守るよ」

「また何かあったらすぐに駆け付けるから」

 

それに対してゴマモンは「わかってる」と返した。

 

「それじゃ、帰りましょう」

「りょーかい!」

「ああー。早く帰ってごろごろしたいよ、おれ」

 

おいおい。授業みっちりな日の学生かよお前は。

っても今日はそり引っ張ってもらったりしたから無理もないか。

と、思ってたら伊織くんが丈さんの前に立った。

 

「あの…ずっと気になっていたことがあるんですが……」

「何だい?伊織くん」

「改めて……僕、火田伊織です。よろしくお願いします」

 

そう言うと、伊織くんはぺこっとお辞儀した。

 

「今更挨拶なんかすんなよー」

「行数増えちまうから省略したほうがいいぜ?」

「いえ、一度やりかけたことはちゃんと最後までやらなくてはいけませんから」

 

そういや途中で切られちまってたよな自己紹介。

 

「伊織くんって丈さんに似てるね

そういう律儀で誠実なところ」

「光子朗さんにも似てるよね

知識欲旺盛なところとか」

「1人で2人分か。頼もしい後輩だな」

 

みんなに褒められ、伊織くんは顔を赤くした。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

今日はもう遅いので、俺たちは現実世界へと帰ってきた。

 

「丈さん。また来て下さいね」

「ああ。僕の紋章が付いたデジメンタルもどこかにあるかもしれないからね

また寄らせてもらうよ」

「それから、僕の家にも遊びに来てください」

「そう?……じゃあ、そのうち」

 

何!?伊織くん家……だと?

確か京さんが伊織くん家のおはぎは絶品だって言ってたな!

 

「行く行く!俺も(おはぎ食べに)行かせてくれ伊織くん!」

「あっ、玄夢くんずるい!私も行きたいな~」

「ヒカリちゃんが行くならオレも!」

「大輔くんは駄目。だってチビモンが私の分まで食べちゃうもん」

「同感」

「チビモン。お前来んなよ」

「えー!酷いよ大輔ー!」

 

この後大輔とチビモンが数十分くらいもめてたけど、伊織くんが伊織くんの母さんに頼んで持ってきてくれるらしいので治まった。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

みんなと別れた帰り道。

突然俺のDターミナルから音がした。

 

「うおぅ!何だ!?」

「誰かから連絡が来たんじゃない?」

 

Dターミナルを取り出して見てみると、光子朗さんからメールが届いていた。

そこにはLv.1とLv.5で光子朗さんに調べてもらうよう頼んだディスクのことが書いてあった。

 

「あちゃー。光子朗さんでも…………な、何だと!?」

 

最後の一文を見て、俺は目を疑った。

このことが後々大きなことになるなんて、俺たちはまだ知るよしもなかった。

 

 

 

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