幸運の星のキセキ   作:@T

6 / 8
輝き

-----ブシャー-----

 

 少年の投げつけたナイフがエネミーに突き刺さりエフェクトが広がる

 ナイフの刺さった場所からエフェクトは広げ続け継続ダメージの存在をプレイヤー達に見せる

 

「しっ!」

 

 エネミーに接近した少年は利き手に持ったナイフをエネミーに突き刺す

 そして蹴り飛ばし、寸前に投げたナイフを回収する。

 

 少年の眼にステータスの異常を伝える文字が表示されるが、彼はすかさずナイフをエネミーに投げつける

 ステータスの異常を伝える文字が消え、少年はまたエネミーに接近する

 体力が切れたエネミーはポリゴンとなり爆散、少年は次の標的へと眼を向けた。

 

「……」

 

 ちらりとボスエネミーに眼を向けてそのライフが数mmも減ってない事に気付くと少年は舌打ちをつく

 それも仕方ない事だと少年も分かっている

 先ほどまで指示を細かく出していたディアベルが茫然自失となっているのだ

 連携が乱れてしまうのも仕方ない。

 

(残り約15cm程度か? 体力が危険な奴も今はいないが……)

 

 しかし、それも時間の問題だと少年は思っている

 

(体力に問題はない。が、精神は別だ)

 

 ゲージも消費量も分からない不確定要素

 何時終わるか分からない状況で精神が疲弊しない訳がない。

 

(持って残り10分……イヤ、既にもう限界かもしれないな)

 

 少年はディアベルに眼を向ける

 ディアベルは頭を下に向けて動く気配はない。

 

(俺がボスに向かえば直ぐにでも終わるだろうな。だが、それをここでしちゃいけない)

 

 少年の今回のボスの目的、それは自分の力をあまり使わずにボスを倒す事

 もし少年が先頭に立ってボスを倒したとすれば、それは周りの力ではなく少年の力だと思われてしまう

 少年はどうしてもそれは避けたかった。

 

(他の人の力でボスを倒さなければ始まりの街に居る連中が前に出てきてくれる事がなくなる。それはそれで危険が少なるから有難いが、それじゃクリアするのにいったい何年かかるか……)

 

 少年は一人でこのゲームをクリアするつもりはない

 絶対に一人ではクリアできないボスが出てくると予想しているからだ。

 

(仲間が必要だ。あの“茅場晶彦”に対抗する為には……)

 

 天才と言われた彼の思惑を理解する事は出来ないだろうと少年は思っている

 たとえ分かったとしても、自分一人でその思惑に対抗できるとは思っていない。

 

(立ってくれ、ディアベル……アンタはこんな所で腐って良い人じゃない)

 

 ディアベルの指示は少年から見ても見事と思わせる腕前だった

 周りの空間の把握から仲間の状況把握、少年が指示したとしても彼には及ばないと思わせるほどに。

 

「……!」

 

 少年の予想よりも速く綻びは出来始めた

 ディアベルを守る為に狩っていた雑魚エネミー達のリポップスピードが間に合わなくなってきている

 少年は目標のエネミーを蹴り飛ばして距離をとり、抜けてきたエネミーを一撃のもとに斬り捨てる。

 

「くそっ!」

 

 一対一の装備のナイフをしまい高速で多対用の槍を出す

 抜けてきた数体の雑魚エネミーを槍で距離をとり、弾き飛ばしてディアベルに近づけさせない。

 

(もう周りが持たないか!)

 

 更に迫り来るエネミーを見ながら少年は唇を噛みしめる

 そして前線に出ようと一歩踏み出したが……

 

-----ボンッ-----

 

 ポリゴンの爆散した音が少年の後ろから聞こえる

 そこには剣を振り上げた男が少年を見ながら笑っていた。

 

「……正気に戻るのが遅すぎだ」

「すまない。やっと自分の気持ちに整理が付けられたんだ」

 

 その様子を見て周りの士気が盛り上がる

 それに併せる様に男は声を上げた。

 

「皆、絶対に勝とう!」

 

 

ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー

 

 

 真っ暗な闇の中、男は頭を垂れている

 そこには何もない、男以外に誰もいない。

 

「おい、ディアベル」

 

 そんな中、男に誰かが声をかける

 だが、男はそんなの関係ないと頭を垂れたまま反応しない。

 

「聞いてんのか? まぁ、聞いてなくても良いが……」

 

 男の横に何かが座る気配がした

 それは男の横で苦笑する。

 

「何時まで俺の事を引き摺っているんだ? このままで良いなんてお前も思っちゃいないだろ?」

 

 男はその声に反応したかの様に唇を噛んだ

 男の横に居る何かが寝転がった気配を感じる。

 

「お前は今、ボス討伐のリーダーをやってるんだ。死んじまった仲間の事なんて考えてないで今の仲間の事を考えてやれよ」

「……僕は」

 

 男の反応に何かは苦笑する

 

「お前のせいじゃねーよ。他の誰かのせいじゃない、俺が慢心したのがいけなかったんだ」

「違う! 僕が……仲間を……お前を殺した!」

 

 男は嘆きの声を上げる

 

「あの時僕が直ぐにでも戻っていたらお前が死ぬ事はなかった! 僕の甘さがお前を殺した!」

 

 男は顔を上げて横を見る

 そこには何も無い、何も居ない。

 

「……そうやって全て抱えこんじまう事がお前の悪い所だな」

 

 何も無い所から声が聞こえる

 そこには何も居ないのに何か居る。

 

「そんなお前だから……アイツもお前を選んだろうな」

「! 彼女は……」

 

 外で待ってる女性を男は思う

 その顔を思い出して彼は振り払う様に頭を振る。

 

「僕はなんと言って彼女に会えば良いんだ……」

「そうだな~……」

 

 何かが笑った様に男には感じた

 

「お前をカッコ良く守って死んだって言っといてくれ」

「! お前は!」

 

 掴みかかろうとしてもそこには何もない

 それを笑ったかの様に何かは声を上げた。

 

「だからお前は生き残れよ。俺の為に……アイツの為に」

 

 伝え終わったのか、男の傍から気配が離れていく

 

「待ってくれ! 僕は!」

「もうお前は充分に俺の為に悲しんでくれたよ。だからもう俺の為に悲しまないでくれ、俺の後を追おうなんて考えないでくれ」

 

 気配は遠くへ行こうとしている

 それはもう男の手の届かない所へ、誰の手も届かない所へ……

 

「待ってくれ!」

「……アイツを頼んだぜ……義弟よ」

 

 最後にそう何かは言い残して、気配は消えた

 

「……僕は……」

 

 暗闇が晴れていく

 周りの音が戻ってくる。

 

「きばれや皆! ディアベルはんが意識を戻すまできばるんや」

「畜生! キツイったらありゃしないぜ! ディアベルが意識戻したら今日の打ち上げはアイツ持ちだ!」

 

「リポップに追いついてないぞ! 気合いれろ!」

「これ以上速く動けないよ!」

「口を動かさないで身体動かせ!」

 

 周りの声が聞こえてくる

 修羅場だとすぐさま分かる空気だ。

 

「うおぉおお!」

 

 少年が声を上げて槍で数体のエネミーを弾き飛ばしていた

 だが、男の眼には少年の死角からエネミーが少年に向かって近づいているのが見えた。

 

(僕よりも小さい彼が頑張ってるのに僕は何をしているんだ?)

 

 まるでスローモーションの様に周りが遅くなる

 

(アイツは僕に生きろと言ってくれた。彼にも同じ言葉を言われた『生きろ』と)

 

 男の足が意志に関係なく動き出す

 男は無意識的に持った剣を握りしめた。

 

(僕は生きなければいけない。アイツの言葉を彼女に伝えなければいけない!)

 

 男は少年に向かっているエネミーに剣を振り上げる

 突然の斬撃にエネミーは対処できずまともにその剣を受けた

 体力が0になりポリゴンが弾ける

 その音と共に彼には確かに聞こえた。

 

「生きろ」

 

 もう居ない者の声が、最後まで自分を心配してくれた者の声が……

 

「……正気に戻るのが遅すぎだ」

「すまない。やっと自分の気持ちに整理が付けられたんだ」

(そうだ、生きるんだ。僕も、皆も!)

 

 ディアベルは息を大きく吸い込み、言う

 

「皆、絶対に勝とう」

 

 彼の声に呼応するように周りは声を上げた……

 

 

ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー

 

 

 それからの闘いは記載する必要も無いだろう

 復活したディアベルが指示をし、危なげなくボスを討伐しきった

 その際、ディアベルにボスドロップが舞い降りた。

 

「……」

 

 その表示を見ながら、彼は少年にトレードを申請する

 少年はその内容を見て首を傾げる

 それはボスドロップした物を少年にただ同然で譲ると言うモノだった。

 

「どう言う事だ、ディアベル?」

「今回の闘いは君が居たからこそ被害なしで勝てた。……僕にこれを受け取る資格はないよ」

 

 ディアベルの言葉に少年はため息を吐く

 そしてその申請を拒否した。

 

「なら、それをバザーにでも出して打ち上げの代金にでもしろ。俺は受け取る気はない」

 

 冷たい言葉を言いながら少年は穏やかな笑みをディアベルに向けた

 

「……お前が戻ってきて嬉しかったよ」

 

 少年はそう残して奥へと進もうとする

 それに気づいたキバオウが少年に声をかけた。

 

「スターはん!」

「……どうしました?」

 

「えぇ~と……これから打ち上げがありますからスターはんも……」

「ごめんなさい、僕は先に進んでガイドブックを更新しにいきます」

 

 少年は穏やかな笑いをしながら二階層への門を開く

 そして、何かを思い出した様に後ろを向いた。

 

「皆さん、僕達にはまだまだ苦難が待ち受けてるでしょう。ですが、最初の困難を突破した僕達はその苦難に負けないと分かりました」

 

 少年は一拍開けて言葉を発する

 その言葉は決して大きな声ではなかった

 だが、皆の耳にはしっかり聞こえた。

 

「……生き残りましょう、このゲームを……そして見せつけてやりましょう、茅場晶彦に」

 

 

 

「僕らの輝き(いじ)を」

 

 少年は進む、このデスゲームを

 どんな脅威に曝されてもその輝きを失わない、失わせない

 

 まだ、ゲームは始まったばかりである……

 

 

 

 

 

 

 

 

            幸運の星のキセキ_

 

 

 

 

            幸運の星のキセ_

 

 

 

 

            幸運の星のキ_

 

 

 

 

            幸運の星の_

 

 

 

 

            幸運の星のき_

 

 

 

 

            幸運の星のきせ_

 

 

 

 

            幸運の星のきせき_

 

 

 

 

            幸運の星の軌跡……

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。