憧れた存在に 完全なる黄金回転リメイク   作:黒姫凛

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表現はホンマ苦手なんで、そこん所よろしく。


突然の絶望

 

「ーーーおいおいっ、何なんだよこりゃ!?」

 

「森が、燃えてる……!?」

 

目の前に広がる光景に、唖然とするしか無かった。

闇が包む時間にあがる、真っ赤な紅蓮。

まだ陽が登っていた時遊んでいた森は、既に火の海へと変えられていた。

森の中からは、我先にとポケモン達が押し寄せて飛び出してくる。

 

「おいっ、何やってんだ!!早く逃げ遅れたポケモン達を助けないと!!」

 

「俺たちじゃどうすることも出来ねぇだろうが!!」

 

「救けるぐらいは出来る!!お前は村に戻って人手を増やして来い!!

 

「おい待てよ、クロヤ!!」

 

一人の少年が森の中に駆けていく。

残された少年は、舌打ちをすると逆方向の村へと足を急がせた。

 

 

 

 

 

 

メラメラと燃え上がる火の手。

1枚も残すこと無く焼かれる木や草葉は、燃えて塵と化す。

その光景を横目に、少年は走り逃げ遅れたポケモンを探していた。

 

「クソッ、クソッ!!なんでこんな目に遭うんだよ!!別に俺達は何もしてないだろ!!」

 

吐き捨てるように呟く。

既にこの火の本種は分かっている。

 

ここら一帯は、貴重な資源となる鉱物が山のあちこちに埋まっている。

ポケモンが掘った洞窟がいくつもあり、そこに手を突っ込むだけでゴロゴロと出てくる程の量がだ。

それに目を付けた何処かの組織が、採掘場を作るため村に住む少年達を交渉してどうにか移住させようとしていた。

が、頑なに拒否をする村長や村の人々の声もあって、1度は撤退していたが、少年は夕方頃にその組織のメンバーを森の中で発見していた。

 

今思えば、何故あの時村長に言わなかったのだろうか、と少年は後悔する。

見た瞬間に、一目散に村に戻って報告すれば、こんな事は未然に防ぐ事が出来た筈。

 

「……全部俺のせいだ。俺が、俺が急いで戻って言ってたら、こんな事には………」

 

後悔の言葉を口ずさみ、火の森を駆ける。

しかし、逃げ遅れたポケモンはどうやらいなかったようで、逃げ遅れそうな枝にくっついて生活するトランセルだとかは、しっかり他のポケモンが連れて行ってくれたようだ。

 

「……よかった。逃げ遅れたポケモンはいないみたいだな」

 

火の手がいよいよ過激になり始める。

幹ごと焼け始めた木は、メキメキと音を立てて倒れ始める。

 

「ーーーぐっ、急いで戻らなきゃ」

 

木が倒れて抜け出せなくなる前に、少年は急ぎ村へ足を急がせる。

何故か、胸騒ぎが強くなっている事を気にしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーえっ?」

 

再び少年は、目の前の光景に唖然とするしか無かった。

村に急ぎ戻った少年が目にした光景は、『地獄』。

 

「……な、なんで……?一体……何が……!?」

 

少年の目の前に転がるのは、無残に転がる屍であった。

頭が半分なく、脳であろう独特の筋肉が飛び出し、腸が引き出されて腸が無残に飛び出し、片腕と両足が無くなっていた。

巨大な水溜りのように溜まった屍の鮮血は、撃たれてまだ余り時間が経ってないことを物語っていた。

 

「……ぐぶっ、おえぇぇっ!!」

 

その光景から来る衝動。

少年の口から遠慮なく吐き出される黄色の液。

少年は気持ち悪さが身体全体を支配し、恐怖からかその場に尻餅をつき、その地獄絵図を恐怖しながら見るしか無かった。

 

「………っ、い、家は!!」

 

何かを思い出し、ぶらつきながら立ち上がった少年は、重い足取りで顔色を悪くしながら歩き出した。

転がるのは全て村人達の屍。

今にも動き出しそうなモノや、ピクピクと飛び出した内蔵が蠢き、悪臭を漂わせていた。

 

しかし、少年は心に少しだけ希望を信じていた。

ここに転がっているのは全員分の屍じゃないと。

家の中に隠れている家族は大丈夫だと。

そう安心していた。安心させようとしていた。

 

駆ける少年は、家の裏手までやって来た。

裏口のドアノブに手をかける。この村を襲った奴がまだいるという警戒心なんかなく、少年は迷うこと無くドアノブを回してドアを引いた。

 

「みんなっ、大丈……………………………夫」

 

安心していた心の平穏は、あっという間に崩された。

いや、元から既に心の平穏は無かったのだ。

広がる光景は、外の風景と変わらない大人の屍。

少年は足元を見る。

そこに広がるのは、赤い鮮血。

文字通り、少年の家族のものだった。

 

「と、父さん!!母さん!!」

 

山積みになっている二つの屍に近付いた。

そして、再び絶望に帰る。

余すことなく撃たれ続け、全身に穴が空いた親の身体。

少年は再び腹の底から上がってくる吐き気に襲われた。

 

「……ぐぅっ、ガバッ、おぇぇぇえっ」

 

黄色の液を吐き、絶望しきった瞳で親の死体を見つめる。

が、まだ親の死体だけである。

妹2人の死体は見つかっていない。

少年は恐る恐る二階へ続く階段を登る。

ギシギシと木が軋み、突然銃弾が自分にあたり、痛みを味わいながら死んでいく恐怖が全身を襲う。

 

妹達の部屋の前に着いた。

開ける前に、後ろを確認しておく。

誰にも付けられていないと確認すると、ドアノブに手をかけてドアを開けた。

ギギギッと軋む音が廊下、部屋の中に響く。

半分ドアを開け、恐る恐る部屋の中に入っていく。

妹達がお金をコツコツ貯めて、少しずつ物を増やして作った可愛い部屋は、そこら中に穴が開き、ボロボロの状態になっていた。

 

一応は、この部屋に隠れられる場所を作ってある。

妹2人が丁度ぎゅうぎゅうに入って隠れられる場所だ。

中に入り、穴が空いたタンスの前に立つ。

そのタンスの下にある引き出しに手をかけ、ゆっくりと引いた。

 

「………っ、マナ、カナっ」

 

「……っ、おにぃ、ちゃん……」

 

「……ヒッ、……兄に……」

 

中には、未だに震えて縮こまっている二つの小さな身体があった。

どうやら、タンスの下には銃弾が当たらなかったようで、2人で口を塞ぎあって目をつぶっていたようだ。

目尻には涙が浮かんでいる。

 

「……よかった。2人は無事だったんだな………」

 

「……ママと、パパが、……守ってくれたの」

 

「そう、か……。じゃあまだ中にいて。お兄ちゃんは他のところに行って誰かいないか探してくるから。絶対に出ちゃダメだぞ」

 

引き出しを戻そうとすると、ツインテールの双子の妹の方、カナがギュッと手を握ってきた。

 

「……兄に、死なないで……。死んじゃ、やだよ……?」

 

泣きそうになりながら、震えた声で少年に言う。

少年はこくりと頷き、「またね」と言い残して引き出しを戻した。

 

 

 

 

恐る恐る外に出た少年は、とにかく見つからないように先に進むしか無かった。

幸いこの村には樽や柱などが多く道端にあるので、少年程の身体の大きさなら大体は隠れることが出来る。

 

ーーーバンッ、バンバンバンッ!!

 

瞬間、銃声が響き、少年はへたりこんだ。

自分の腹に手を当てる。撃たれたのは自分ではないようだ。

その銃声はまるで自分が撃たれているかのように大きな音だ。

四つん這いになりながら、物陰に隠れて銃声が聞こえた場所を伺う。

すると、そこにはーーー。

 

「………アキ、ラ……」

 

黒いスーツを着た男2人が、森で別れたもう一人の少年に何発も銃弾を腹に浴び、蹴られては全身を強く踏み滲まれていた。

しかも、少年が隠れている角の真横でだ。

既に息は無いだろう。

銃弾が腹に当たる度に揺れ、止めどなく流れる血は、医学の知識が無い少年でも分かるほどに手遅れの状態であった。

 

「ーーー全く、面倒かけさせやがって。無駄に弾撃っちまった」

 

「普通に骨折って殺すぐらいで良かったのにな」

 

「ばーか。それじゃあ楽しくねぇじゃねぇか。ボスからの指令で村人全員を殺せって来た時は乗り気じゃなかったが、案外無抵抗の奴らを殺せるってのはなかなかに楽しかったな」

 

「ほら、行くぞ。あんまり長居してると、警察来るぞ。ポケモンも乱獲したし、ここで捕まったら全ておじゃんだ」

 

「ハイよ。じゃあな、坊主。少しばかり楽しめたぜ。あんま怨むなよ」

 

ケラケラと笑いながら歩き出す男達。

物陰に隠れていた少年は何も出来なかった。

なす術が無かった。

素手でしかもまだ12歳の少年と、銃やナイフ、そして鍛え上げられた肉体を持っていたあの男達には、どうすることも出来なかった。

ただ息を殺し、気配が悟られないように身を隠すしか逃げる術は無かった。

 

ガチャンと車のドアが閉められ、エンジン音と共に動き出す車を見失うまで見つめた後、少年は転がっている友達の方に足を進めた。

 

転がっている友達との距離は差ほど遠くない。が、瞬間に少年は足を止める。

何故なら、その亡骸が余りにも胸を締めつけるような酷いものだったから。

 

目は無かった。顔や腕、足、そして何より一番酷いのが腹部。銃弾が無数に肉に穴を開け、そこから血を大量に流していた。

目は銃弾で撃ち抜かれたのだろう。弾がめり込んでいるのが分かる。

そして内出血による大量の痣。

さっきまで元気だった身体の欠片を微塵も残さない痛々しい姿。

 

少年は力が抜けたようにそこにぺたりと崩れ落ちた。

涙が止まらなかった。

涙を拭う事すらしなかった。

その亡骸を見ながら、少年はただただ大粒の涙を零すだけだった。

 

「………ご…めん。…………ごめん。俺が、……俺が、村に……戻さなきゃ…………死なずに、すんだ……のに」

 

震えた声でそう告げる。

だが、それに答える者は誰1人としていなかった。

ただただ口から零れるのは、後悔してもしきれない謝罪の言葉と、自分が生き残ってしまったという悲しみの言葉だけだった。

 

 

 

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