Re:ゼロから始める千翼の苦難 【完結】   作:寝坊助

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第1章 王都での1日編
1話 ハーフエルフとハーフアマゾン


薄暗い路地裏。一人の少年が三人組の追い剥ぎに囲まれていた。侮蔑と嘲笑交じりの視線を受けながら、少年は表情一つ変えず、感情の篭らない目で三人組みを見つめている。

 

(……………………………え?)

 

少年が表情1つ変えないのは、状況の整理が出来なさすぎで脳内のキャパをオーバーしてしまったからだ。

 

「おい、何ボォ〜っとしてんだよ。痛い目見たくなかったら、持ってるもん全部出しな」

 

全く状況が整理できないのも無理は無い。

何故ならこの少年『千翼(ちひろ)』は外見こそ15〜16くらいに見えるが、事実上『5歳』である。因みに精神年齢は外見と同じく思春期を迎えた少年に等しい。

 

(俺はあの時……父さん達に殺されて…)

 

愛する人を失い、何もかも生きる意味をなくした千翼だが、それでも『生きたい』という生物共通の理念の為、父親である『鷹山 仁』と、幾度となく戦った『水澤 悠』との戦いにより敗れ、死んだ。

 

なのに、目が冷めればどういう事だろう?

見渡す限り、まさにファンタジーの世界。

現代社会におけるニートや引きこもり、オタク等なら拍車を上げて喜ぶ所だが、『神様転生』『異世界転移』『ラノベ』『テンプレ』『オリ主』『チート』『ハーレム』『俺Tueee』というものを全く知らないチェリーボーイの千翼にとってまさに『ここは死後の世界なのか?』と混乱してしまい、挙げ句の果てにチンピラに絡まれてしまった。

 

しかも大事なのはそれだけではない。

 

(アマゾンズレジスターが………無い!!?)

 

自分の強過ぎる食人衝動を抑えているアマゾンズレジスターが左腕から消えているのだ。

 

(アレが………無いと…)

 

ただでさえ、自分の母でさえ手にかけてしまった食人衝動を抑えてくれるアマゾンズレジスター。それでも足りない程だというのに、あれが無くなれば自分は……

 

「おい!聞いてんのか!……てめえ、さっきから馬鹿にしてんのか!?」

 

(あぁ、ダメだ……そんな!)

 

自分の胸ぐらを掴む男の手に、千翼は敏感に反応する。

 

(手………美味そうな………………手!)

 

「うわ!?こいつヨダレ垂らしてるぜ!?汚ねぇなぁおい!」

 

いつの間にか知らない内に滝のようにダラダラと垂れているヨダレに男達は引き気味に手を離す。

 

「ハァ!ハァ!……た、助か…ウグッ!?」

 

何とか衝動を押さえ込んで解放された千翼だったが、腹部に強烈な衝撃が走る。

男の1人が怒り心頭の顔で千翼を見下していた。

 

「テメェ!汚ねぇんだよ!」

 

衝撃を必死に抑え、無抵抗の千翼を怒りに任せて蹴り続ける男。「おん?」と蹴った感触が違ったの感じ、千翼の腰回りに付いている物を見据える。

 

「んだよ、コレ?」

 

男は千翼が腰につけているベルト、ネオアマゾンズドライバーの存在に気づく。

 

「ダメだ………これだけは絶対!!」

 

ドライバーを腕で隠すように蹲る千翼。そんな千翼の怯えように、目をキラリと光らせる。「何か貴重なものらしい」と確信した3人組は直ぐに動いた。

千翼の腕を掴み、ベルトを取り上げようとする。

……………遠目で見れば、かなりヤバイ絵面になる。

 

しかし、事の重大さはそれ以上のものだった。

このネオアマゾンズドライバーは、言わば千翼の拘束具(・・・)なのだ。内なる獣を封じ込める為の。

アマゾンズレジスターが無いだけでも重大なのに、ドライバーまで無くなれば最早ーーー

 

 

 

ーーーー地獄絵図である。

 

「や、やめろ!これが無くなったら俺は!!」

 

悲痛な叫びを上げる千翼に対して3人組はゲラゲラと笑いだす。

 

「おいおい何だよ、形見かなんかか?」

 

「安心しろよ。俺たちが有効活用してやるから、金に代えてな」

 

「……………めろ!」

 

「あ?」

 

「やぁ゛めろぉお!!!」

 

その時、千翼の全身から熱気が放出され、3人組を反対側の壁に叩きつけた。

 

「ヒィッ!」

 

「ふゔぅー!ふゔぅー!」

 

全身の毛穴から蒸気を放ち、息を荒くし、充血した目で睨みつける千翼。

本能的な恐怖を感じた男達は反抗する意思を折られ、護身用の鉈を手から滑らせるとへなへなと地面に崩れ落ちる。

 

「…………………………消えろ」

 

「う、うわああああっ!!」

 

悪鬼にでも出会ってしまったかの様な叫びを上げ、三人は一目散に逃げていった。少年はその場に膝をつき、人を息をつく。

 

「はぁ、はぁ………くぅ」

 

本能が叫ぶ、『なぜ喰わなかった!』と。

千翼の中にある感情は、ピンチを脱した安心感でも開放感でもない、空腹感と後悔だけだった。

 

「あの時…………食べていれば」

 

後悔が後から積もってくる。それがドンドン大きく、積み重なって……

 

「いいんだよ……喰えば…」

 

ヨダレをボタボタ垂らしながら、ポツリと呟く。

 

「少しだけ……少しだけ……お腹減った…少しだけ……腕…喰いたい……母さん…美味そう……食べていれば……くそッ……誰でもいい……父さん……死ぬ…生きた……い喰う…ちょっと……母さん……俺じゃないん……美味い……喰った…母さん……俺が……俺が………欲しいーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        イユ」

 

「大丈夫?」

 

目に入ったのは透き通るような白く美しい手と、それに似合う銀髪の少女。

焦点の合わない目で、少女の顔を除く。

 

「ねぇ、お腹空いてるの?」

 

(………………美味しそう)




エミリアたん逃げて!超逃げて!
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