「………………」シャク……シャク……
「ねぇ、良かったの?ただでさえ少ない持ち金を彼の為に使って」
「し、仕方ないでしょ!?今にも倒れそうな感じだったんだから!」
やれやれと呆れる、浮遊している猫に銀髪の少女は頬を膨らませているその少し……というかかなり離れた場所で千翼は少女に買ってもらったリンガをチビチビと食べている。
「君もさぁ、折角彼女に救われたのにそんな離れて食べるのどうかと思うよ?失礼じゃない?」
「ちょっとパック!」
「……………………ありがと」
「声が聞こえなぁ〜い!」
ボソボソと呟く千翼にパックと呼ばれた猫は耳を傾ける様に近寄る。
それに呆れながら、「ちょっと聞きたい事があるんだけど」と少女は千翼の隣に座る。
「凄い勢いで走ってく人を見なかった?確かにこっちへ行ったと思ったんだけど…………ねぇ、何で離れるの?」
少女が近寄る度に、千翼は遠のく。
「リアは分かってないなぁ。この年頃の若者はウブなのさ。リアは可愛いからね、うんうん分かるよ君のその気持ち」
全てを見通しているかのように自慢気に言うパックだが、千翼は首を横に振るう。
「……………君、人間じゃないだろ」
「ッ!」
「…………うっそ、何で…?」
千翼の言葉に、2人は驚愕する。それと同時にパックは警戒心を抱き少女の目の前に移動する。
「…………何だか、分かるんだ」
千翼の身体に流れるアマゾンの本能がそう囁いているのだ。アマゾンは同族の気配を察知する能力を持っているが、千翼は更にその能力が高い。
例え少女が、
「でも、半分だけ人間が混ざってる……分かるのはそれだけ」
「……ねぇ、パック。貴方から見て彼はどう思う?」
「思考を読んで見たけど、邪気は無いよ。というか『同族にあえてちょっと嬉しい』って感じかな?」
「同族って………貴方まさか、ハーフエルフ!?……じゃないわよね、普通の耳だし」
「そのハーフエルフっていうのは知らないけど…まぁ、そんな感じ。ハーフなのは間違いない」
(種族は違うけど、彼も……私と同じなんだ)
少女の胸の中にポォッ、と温かい感情が芽吹く。自分と同じ、人間とのハーフである存在。
しかし、それと同時に千翼のあの悲しげな表情を見て確信した。
(ハーフであるからこそ……私と同じような人生を送ってきたのかも)
誰からも色々な意味で特別に扱われてきた少女は、初めて共感できる相手に会えた事を嬉しく感じた。
一体どんな生き方をしてきたのか。世間知らずな少女には到底想像がつかなかったし、聞いてみるにはお互いのことを知らなすぎる。なにせ名前だって知らないのだから。
「話を戻すけど、もしかしてあの金髪の子?」
脱線してしまった話を戻す千翼は、あの3人組に絡まれた際に現れた金髪の女の子のことを思い出す。
「そう!多分、貴方が言ってるその子!私、その人に大事な物を盗まれちゃったの。どっちに行ったか解る?」
「なら、多分方向はあっち。っていうか、ここで話してて良かったの?」
「あっ。どうしようパック!?」
「風の加護でも持ってそうな勢いだったからねえ。完全に見失ったら、この人が言うとおり探すのは難しいかも」
「あれは本当に大切なもので、あれ以外のものだったらなら諦めもつくけど。あれだけは絶対にダメなのに……」
その場に蹲りそうな勢いで落ち込む少女を見て、なんとなく悪いことをしたかなと思い始めた千翼。元を辿れば自分のせいで見失ったものなのだ。
「ごめん、なんなら一緒に探すけど」
「いいのよ、あなたが悪い訳じゃないし。手伝ってもらうのも大丈夫、そこまでしてもらう理由はないわ」
「………いや、でも…手伝うよ。うん!ここで放っておくのも後味悪いしさ」
「で、でも!こう見えてもさっきのリンガを買ったせいで一文無しだからお礼もしてあげられないわ」
「邪気は感じないし、いいんじゃないリア。手伝ってもらっても」
「パックまで何を言ってるの?」
「だって、この広い王都で手がかりも無く探し回るのは無謀だよ」
突然千翼そっちのけで言い合いを始める一人と一匹。
「――本当に、何のお礼も出来ないからね?」
「いいよ、と言うか俺が恩を返す形になるし」
意を決した少女の一声で、結局は一緒に捜すことになったのだった。
「あ、ゴメンけど暫くはこの距離を保ってね」
「私……嫌われてるの?」
「いや、きっとウブなんだよ」
◆◆◆
「…………あいつ、何者だ?」
そんな千翼達を、遠くから見据えている人物がいた。鱗のようなフードを被り顔や表情が見えないがただならぬ雰囲気を纏っている。
「お、おい!何なんだよ何する気なんだよ!?」
その背後にはボコボコに殴られ身動きの取れない、先程千翼に絡んでいた3人組が倒れていた。
「興味深い奴を見つけた。お前らにはあいつ少し焚き付けて貰いたい」
「ふ、ふざけんな!何で俺たちがあんな奴を!?」
「お前らに拒否権は……無い」
千翼に対する恐怖が抜けてない3人組だが、そんな彼らを無視し指を噛み切る事で血を滴せる。
「お、おい………何を?」
「なに、タダでとは言わない……お前らに極上を味あわせてやるよ」
指から落ちたその血はチンピラ達3人の傷口に入り込む。
その時、口を動かすことしかできなかった3人は身体の痛みが嘘のように消えていく。しかし、その代償として……
「え゛?……え゛あぁぁぁぁああ!!?」
「これでお前らは俺達と同種だ。喜べ同胞よ」
「ゔぅぅ……えおぉ」
3人はゾンビのように起き上がる。それを恍惚の表情で見つめるその瞳には狂気が映っていた。
そしてその腰回りにはーーー
千翼とは向きが正反対のネオアマゾンズドライバーが付けられていた。
◆◆◆
また場所が変わり、王都の広場の中心。
そこには赤い髪を靡かせる美青年、ラインハルトが見回りの為に辺りを検索していた。
「最近、この辺りで『腸狩り』が潜伏していると情報が入った。僕と君はその調査という訳さ。新人なのに、いきなりこんな仕事を任せて済まないね。えっと、名前は……?」
「ああ、大丈夫だ………大体わかった」
「え?ちょ、君何が分かったんだい?というか、その首にぶら下げてるのは一体………ねえ、君!?」
「さて、ここはアマゾンズの世界でいいんだよな?アマゾンの世界とかなり違うな」
◆◆◆
あれから、少女が迷子の子供を助けたりと遠回りをしてしまったが、入念な聞き込みにより、貧民街に着いた。そこで出会った男の人に金髪の少女がここら辺にいないか聞いたら、その子の名前と住んでいる場所、よく行く場所を教えてくれた。そのよく行く場所とやらが盗品蔵だという有力な情報を得たため、急いで歩を進める。
そんなこんなで盗品蔵の近くに辿り着く。そこまで遠くはなく、時間もかからなかった。
「ここが盗品蔵…」
「かなり早く着いたわね。ありがとう、チヒロ」
エミリアは微笑みながらお礼を告げる。しかし、まだお目当の徽章を見つけ出した訳では無い。
千翼が盗品蔵の扉を叩くも、反応はない。もう1度叩く。それでも反応はない。
「あの、すみません!誰かいますか!?」
ガンガンッと扉を叩くと中から、怒りを露わにしたような足音が鳴り響き、乱暴に扉が開いた。
「やっかましいわ!合図も合言葉も知らんで、扉ぶっ壊す気か!!」
2メートルはあるであろうその巨体に、千翼は一瞬だけ体を震わせる。外見の迫力だけならアマゾンとも張り合えそうだ。
「突然お邪魔してごめんなさい」
ズンズンと近づいてくる老人と千翼の間に割って入るように少女が現れ、老人にむかって話し始めた。
「でも、私達は用事があってここにやって来たの。話ぐらい聞いてもらえないかしら」
「そんなもんーーー」
「いいんじゃないか?」
まだ警戒されているのか、追い返そうとする老人だったが、奥から聞こえて来た声にその手を止める。
そこには、扉に寄りかかるように若い青年が立っていた。
「丁度退屈してた所なんだ、入りたまえ」
「おま!?相変わらず勝手な奴!」
「さぁ、どうぞどうぞ。水で薄めたミルクがあるけどどう?」
「聞けや『カイトー』!」
カイトーと呼ばれた青年は老人を無視して2人を盗品蔵に招き入れた。
文才なくてごめんなさい
本当に申し訳ありません