仮面ライダーBLACK RX×魔法少女まどか☆マギカ~闇を祓う光の王子~ 作:タクアン(沢庵)
「うわぁっ!? クッソー、負けるもんかぁ!!」
雄々しく剣を操るさやか。使い魔一体一体を逐一切り捨てながら、ワルプルギスの夜の本体へと猛進する。
経験値は誰よりも低いが、それを補って余りあるポテンシャルがあった。何より回復魔法が強い。時には畏怖したこの能力も、今では彼女の手足同然となっていた。
「邪魔邪魔邪魔邪魔ァッ!!」
さやかのサーベルには刀身を分離させ、爆破させる機能がある。魔力で何個でも生成できる利点を活かし、さやかは刃でオールレンジ攻撃すら可能としていた。
「よし! さぁ、次はお前だ! ワルプルギスの夜!!」
マミの身体全体を彩るように、マスケット銃が取り囲む。この場において、ティロ・フィナーレのような一撃必殺の技は不便だ。魔力の負担に対する効率が悪いのである。
それならばいっそ、威力の小さな攻撃を乱発した方がいい。
「こういう作業みたいなやり方は好きじゃないんだけど……仕方ないわね」
以外と派手好きなマミにとっては心外ではあったが、世界と自分の流儀を天秤にかけるでもない。
「ふぅ……レガーレ!」
無数の使い魔をリボンでひとまとめにする。こういう時には、やはり一撃必殺が大事である。
「ティロ・フィナーレ!!」
黄色い炎が使い魔達を焼き尽くす。その光景を満足気に見てから、彼女は次のアクションへと移るのだった。
先の二人の戦法とは少し違うのが、杏子であった。
「さぁて……トラウマを克服したアタシの、真の実力を見せてあげるよ」
言うなり杏子が増える。要は幻術、分身の類いだ。しかし驚くなかれ、この分身には個々に実体がある。
ざっと二十人以上はいるこの分身、しかし攻撃を受けた瞬間、その分身は幻影となる。最後に残った分身が本物になるのだ。
「みっともないねぇ、ワルプルギスの夜さん? 本物の敵も見抜けないんじゃあ……喉笛を噛みちぎられるよ!」
多くの使い魔を翻弄しつつ、伸びる槍で本体にもダメージを与え続ける。マミやさやかよりも強かな杏子ならではの、一挙両得な戦いを繰り広げる。
そしてほむら。この戦闘のキーパソンである彼女は、バックラーの砂時計をしきりに気にしていた。実はほむらの時間停止は、この砂時計に依存したものだ。この砂をせき止めることで、彼女は時間を停止させる。そして、この砂は一ヶ月分の時を刻むのだが、それはほむらが時間遡行をする時間と同期する。つまり、この砂が落ちきるとほむらは時間を止められなくなってしまうのだ。
(……いえ、もう関係ないわね。私はもう、巻き戻さない。これで終わらせるのよ)
バックラーを逆回転すれば、また一ヶ月前に戻る。しかし、ほむらはそれをしないと決意した。泣いても笑っても、死んでも生きてもこれが最後の時間軸だ。
「だから……死になさい、ワルプルギスの夜!!」
残り一回の時間停止に全てを懸ける。ロケットランチャーを、ショットガンを、拳銃を、マシンガンを、対戦車砲を、ありとあらゆる火器をワルプルギスの夜に向けて発射する。
「………」
そのまま時間停止は解除し、爆煙が魔女を包んだことを確認。
(これで、私の手持ちの武器はなくなった。後は、例え徒手空拳でも抗ってみせる……!)
案の定、と言うべきか。ワルプルギスの夜は健在。どころか、逆さになっていた身体を正位置へと動かしたではないか。
「本気、激情態とでも呼ぼうかしらね……」
半ば自棄になりながら、圧倒的な威容を醸し出す巨体と対峙する。
――その時だった。曇天の空が、まるで何かを祝福するように晴れ渡る。そして太陽は、ある一点を照らしていた。
「……! 彼は!?」
「やっぱ、生きてたんだ……!」
「生きててくださったんですね……!」
「ったく、心配させやがって……!」
ほぼ唯一の壊れていない道路、その中心を堂々と闊歩する白いレザージャケットを羽織った青年。力強い眼差しと明朗な口調で、「彼」……南光太郎は宣言した。
「……この世に光がある限り! 俺は何度でも甦る!! 変……身ッ!!」
その眼球に火花が走り、腰にはベルトのバックルが浮き出る。そこに納められた二つの宝石が強烈な光を発し、光太郎の身体は有機的なバッタ男の姿となる。そしてそこに被さるように、装甲であるRXリプラスフォームが装着。
「俺は太陽の子!」
機敏に腕を振るい、決めゼリフを放った。
「仮面ライダー……BLACK! R! X!!」
左拳を前に構え、右拳は腰の横で溜める。
そこには最強の戦士……復活した仮面ライダーBLACK RX、その人がいた。
「ワルプルギスの夜! お前は俺の最後の心残りだ! 行くぞ皆、全員の力で奴を打ち倒すんだ!!」
その時、不思議なことが起こった!
輝く太陽の力が、黒ずんでいたソウルジェムを浄化したのである!
「これは……!」
「いいか、皆! 俺が奴を弱らせる! トドメは君達が刺せ! ……来てくれ、ライドロン!!」
RXのコールに応え、空間の壁を突き破ってライドロンが見参する。
「トォッ!」
自動でドアを開いたライドロン、その運転席に乗り込む。全力でアクセルを踏み込み、一直線にワルプルギスの夜へと突撃。フロントの鉤爪・グランチャーで身体を挟んで固定する。
『今だ、攻撃しろ!!』
『AHAHAHAHA,AHAHAHAHAHAHAHA!!』
狂った嗤いをするワルプルギスの夜へ、各魔法少女の全力全開の一撃が炸裂する。
「ティロッ……フィナ――――――レッ!!」
「あたしの必殺技……クライマックスバージョンッ!!」
「消えな!」
「………マギカパンチッ!!」
マミは十八番を、さやかはやっつけ気味な技名を、杏子はシンプルな罵倒を、そしてほむらは全魔力を拳に込めてぶん殴った。
『AHAHA……GYAAAAAAAAAA!!!???』
遂に、待ち望んだ瞬間が訪れた。全身がひび割れたワルプルギスの夜は、断末魔の絶叫を上げて崩壊する。ライドロンも魔女の拘束を解き、最悪の魔女の最期を見届ける。
「終わった、のね……。本当に……」
「やっりぃ! ねぇほむら、今度カラオケ行こ!」
「え、え?」
「んー、いいかもねそれ。アタシも久々に文明の利器に触れてみたいしね」
「私と鹿目さんも、一緒に行くわ」
「あ……うん!」
ほむらは、なくしていたものを取り戻すことができた。
それは、友情。
それは、日常。
それは――本当の、自分。
『ほむら、おめでとう。君の呪いは、これで終わりだ。後は俺に任せて、君達は休んでくれ』
「あなたはどうするの、南光太郎!」
『俺は……片を着けてくる!』
RXはライドロンハンドルを切ると、一気に大気圏を突破する。目指す進路は――奴らの星だ。
「やれやれ、まさか本当にワルプルギスの夜を討ち果たすとは……仕方ない、最終手段だ。宇宙の延命のために、全人類を絶望させて――」
「そうはさせるか、インキュベーター!!」
「こんなとこにまで来るとはね、君もしつこいなぁ」
外宇宙のとある惑星に、RXはいた。それはインキュベーターの母星。
「俺はお前達を根絶しに来た!」
「そんなことをすれば、宇宙はエントロピーの増大の耐えきれず、熱膨張で滅んでしまう。それを防ぐために、こうして尽力してるんだけどなぁ」
「……確かにお前達の言うことも正しいだろう。人類は無闇にエネルギーを浪費し、宇宙のガンになっているであろうことはな」
「解ってるじゃないか。なのに何故、君は僕達の邪魔をするんだい?」
本当に解らない、と言った風情のインキュベーターに、彼は説いた。
「それは俺が人類を信じているからだ! 愚かでも、明日の未来で反省する! そんな人達をだ!」
「地球人類は僕達の干渉がなければ進化しなかった。それが歴史なのさ、宇宙のね」
「違う! 貴様らの干渉なくとも、必ず人類は自らの意思で進化できたはずだ!」
「……ダメだね。君とは何一つ話が合わない。君達は低次元すぎるんだよ」
嘲笑するかのようなインキュベーターの言葉は、とうとう光太郎の怒りを頂点にまで持っていく。
「やはり地球に貴様の存在はいらない。いや、宇宙全体にとって! 貴様こそが害悪だ! この世の生を脅かす貴様らを、俺は絶対に許さん!!」
「そんな棒切れで、高次元生命体である僕達を滅ぼそうと言うのかい? 面白い冗談だよ、それは」
……インキュベーターは知らなかった。南光太郎が、仮面ライダーBLACK RXが、どれほどの修羅場を潜り抜けてきたのかを。
「元より貴様の本体が、その肉体でないことは知っている! 俺の狙いは……この星の核そのものだ! 変身!」
RXが青い光に包まれる。
「俺は水の王子! RX! バイオライダー!」
「それでどうするつもりだい?」
「こうするのさ……!」
肉体を液状化させると、なんとインキュベーターの体内へと侵入する。
「やはりそういうことか……!」
光太郎の読み通り、インキュベーターの体内には「もう一つの宇宙」とそれを制御するコンピューターらしきものがあった。
「変身! 俺は炎の王子! RX! ロボライダー!!」
すぐさまロボライダーへ転身すると、コンピューターへの高速リンクを開始する。
「ぐっ……なんて情報量だ! だが!」
しばらく探っている内に、とうとう発見した。インキュベーターの本体をなす、巨大なデータの集合体。しかしその集合体は外に引きずり出された直後、おぞましい動きと共に「とある」姿を取った。
「赤い……シャドームーン……!?」
「我が名は創世王……! 滅ぶがいい、偽りの世紀王!」
遂に、インキュベーターとの最終決戦の幕が上がった!
インキュベーターの根幹を成していた、ゴルゴムの創世王。
苦戦するRX。だがそこに、時空を越えた奇跡が起こる……!
変身、仮面ライダーBLACK RX!
『仮面ライダー 世界に駆ける』!
ぶっちぎるぜ!