仮面ライダーBLACK RX×魔法少女まどか☆マギカ~闇を祓う光の王子~ 作:タクアン(沢庵)
「この期に及んで、ここに顔を出せるとはね。呆れを通り越して尊敬するわ」
「ちょっとでもいいんだ、話を聞いてくれないかい……? 謝罪と懺悔をするつもりなんだよ、僕は」
完全に疲れきった様子のインキュベーターは、ほむらの罵倒すら無視していた。
「あたし達を騙しておいて今さら言い訳?」
「見苦しいぜ、白い悪魔野郎!」
「さよならキュゥべえ、もう二度と会いたくない」
「……いや、皆。話を聞いてやってくれ。どうも俺達は、何か誤解をしているようだ」
殺気立つ四人を手で制止しつつ、光太郎はインキュベーターを観察する。よく見ると、どこか垢抜けたような雰囲気になっている。
「ありがとう、南光太郎。さて、どこから話をしようかな……そうだね、まずは『僕が僕でなくなった理由』から話すとしようか」
要約するとこうだ。
ある日突然、インキュベーターの故郷に創世王が現れた。創世王はインキュベーターに、「自分と同盟を組めば、より効率よくエネルギー回収」ができるとそそのかし、現在の魔法少女システムを完成させた。
「確か一年ほど前だったかな」
当初の魔法少女システムはこれほど残酷なものではなかったそうだ。あくまで希望の存在として魔獣と戦い、その中で戦死した魔法少女のソウルジェムからエネルギーを回収する。当然ながら魔法少女にとってのリスクは皆無で、インキュベーターにとってもデメリットはない。しかし創世王が考案した新型は、従来型よりも多くのエネルギーが発生したのである。だがその代償として、魔法少女はグリーフシードがなければ死ぬ身体にされてしまったのだ。
「……悪いとは思ったよ。だけど断れなかった。宇宙が懸かっていたんだからね」
「最低ね、あなた」
「そうだね。僕達は宇宙の延命を笠に着て、君達を騙した。その点については本当にすまないと思っているよ」
感情のないインキュベーターが言うのだから、それは本心から来る謝意なのだろう。
そうして完成した新型システム。しかし、適用しようとした矢先、インキュベーターの大元である意識データを乗っ取られてしまったのだ。
「不覚だった。あのシステムは、創世王が人の悪意を集めるためのシステムでもあったのさ。あっという間に侵食されてしまった僕のその後は、君達の方がよく知ってるだろう? 明らかな悪意を持って君達を妨害した。佐倉杏子を非人道的な改造人間にしたり、光太郎を殺そうとしたりね」
「……それが真実なのか? もう、隠していることはないのか?」
「……いや、一つだけ黙っていることがあった」
そう言うと、インキュベーターは太陽の光を操作して魔法少女達に照射した。
「!? ソウルジェムが、消える……」
「せめてもの償いさ。おめでとう、君達は呪われた
「そんなことができたのか……?」
光太郎は首を傾げる。それを見たインキュベーター……否、キュゥべえはその疑問に答えた。
「創世王が君のキングストーンを解析した時のデータが残っててね。それを応用することで、太陽のエネルギーを使えるようになった」
「でも、魔法少女がいなければあなた達の使命は果たせないはずよ。どういうつもり?」
ほむらは懸念する。今よりも非道なことをするならば迷わずキュゥべえを射殺するつもりだったが、彼の答えは違った。
「僕達はもう、地球に用がない。実は本来なら減少を続けるはずの太陽のエネルギーが、どういう理屈か増大しているんだ。恐らくはキングストーンの力だろう。かなりのエネルギーだから、これを利用しない手はないと思ってね。それに、放っておけば太陽系が滅んでしまうだろうし」
「えとさ、つまり……あたし達はもう戦う必要がないってこと?」
「その通りだよ、さやか」
呆然としたように問いかけるさやかに、キュゥべえはいつもの営業スマイルで返事した
「……なよ」
「さ、さやかちゃん?」
「早くそれ言いなよ! やったぜ、さやかちゃん大勝利! 希望の未来が待ってるよ!」
「バカだなこいつ。でも、まぁ……許してやってもいいかな。ありがとさん、キュゥべえ」
「さよなら、キュゥべえ。さっきはああ言っちゃったけど、たまには家に来てね。お菓子、ご馳走するわ」
「どこまで行っても、あなたは希望を売り歩く存在なのね。……でも、今回ばかりは感謝するわ」
「やっぱりキュゥべえは、希望の味方なんだね。酷いことをしたなら反省すればいいと思うな。元気でね」
不自然なまでの掌返しに、さしものキュゥべえも戸惑っているようだった。やっと戻ってきた平穏。
――ここに自分は不要だろう。
改めて、そう感じた。
「……皆。俺の話も聞いてくれ」
「あ……」
「俺は帰る。元の世界にな。短い間だったけど、君達は本当に強かった。心が強かった。例え一度折れても、また立ち上がる。俺は有名な英雄よりも、無名の英雄が好きだ。真の英雄ってのはそういうもんさ。忘れない。忘れられない出会いになった。ありがとう」
いつの間にか光太郎の背後に、ライドロンが控えていた。少しだけライドロンを見てから、最後に付け加える。
「
「……忘れないわ! 絶対、絶対、あなたのことは! あなたは私の恩人、英雄よ!」
「あたし、頑張ってみる! これからのことも、友達とのことも、そして恋のことも!」
「オッサン、また会おうぜ。今度はリンゴ剥いて待っててやるからさ!」
「次は、私のお菓子を食べてください! 今回は食べる機会がなかったけれど、次は必ず!」
「光太郎さん! 皆を助けてくれて……ううん、わたしも助けてくれてありがとうございました!」
「君のお陰で新しいエネルギー回収の体系ができたから、感謝するよ……って言うのは、野暮だね。ありがとう、仮面ライダーBLACK RX」
最後に見えたのは、彼の力強いサムズアップだった……。
「! 俺は……?」
クライス要塞の中心部で、RXは夢から覚めたような気分になっていた。後ろにはマリバロンの遺体が転がり、目前にはクライシス皇帝が鎮座している。
「……魔法少女、魔女……そうだ、思い出したぞ。俺は戦ったんだ、あの世界の仲間達と!」
「フフフ……どうだった、RXよ。絶望が支配する、あの世界は!」
「それは違うぜ。この男は、その未来を『破壊』した。あの世界は
クライシス皇帝の言葉を真っ向から否定したのは、若干パーマのかかった茶髪の青年。
「君は門矢士……ディケイドか!」
「ああ。下で伝説の十人ライダーと超自然の三人ライダー、新たなる十七人ライダーが再生怪人相手に奮闘してる。どうせなら、俺は本丸を狙おうと思ってな。……久々の連携だが、あんたなら余裕だろ?」
「当然だ、行くぞ!」
「だと思ったよ。変身!」
『KAMEN RIDE Decade!』
「たかがゴミが一つ増えたところで、何ができる!」
怒りに身を燃やすクライシス皇帝に、RXとディケイドが突撃する。
「リボルケイン!」
「フン!」
『FINAL ATTACK RIDE De・De・De・Decade!』
RXがリボルケインでクライシス皇帝の身体を突き刺し、動きを拘束。そこにディケイドのディメンションキックが炸裂。さらにリボルケインから高出力のエネルギーを送り込まれた皇帝は、まるで風船のように膨らむ。
「バカなぁ……! 何故、我が敗れるのだぁぁぁぁ……!」
「ある男が言っていた。不味い飯屋と悪が栄えた試しなし、ってな。俺に言わせりゃ、ゴミは掃除されるってことだがな」
「悪が滅ぶのは世の倣い……! お前は、あまりにも横暴な策で怪魔界を苦しめた! その報いだ!」
「おのれぇぇぇぇ……!!」
皇帝は死んだ。クライス要塞を巻き添えにして……。
戦いの後、光太郎はアクロバッターに乗って旅に出ることにした。前から考えていたことでもあるが、士との出会いがそれに拍車をかけた。
と、そこに機械的なバイクが並ぶ。白い車体にマゼンタを差し色にしたバイクだ。
「……その旅、俺も混ぜてくれるか?」
「士か。君も旅を続けるのか?」
「そうだ。とりあえず、余生を過ごす場所くらいは確保しとこうと思ってな」
「よし、行くとしよう」
旅は道連れ世は情け、光太郎の旅は続く……。
光太郎さんがいたから、わたし達は明るい明日を過ごせているんだよ。
だけど、ほむらちゃんだけはどこかへ行っちゃった。
探しさなくっちゃ、皆で!
『わたしの、最高の友達』