仮面ライダーBLACK RX×魔法少女まどか☆マギカ~闇を祓う光の王子~ 作:タクアン(沢庵)
……あれから、もう一ヶ月が経ちました。ワルプルギスの夜のせいで滅茶苦茶になってしまった町も、少しずつですが元の活気を取り戻しています。
だけど、わたしはそれを素直に喜べません。だって――ほむらちゃんがいないのですから。
「……ほむらちゃん、どこに行っちゃったんだろう」
「携帯も繋がらなくなるし、書き置きも残さないんだもんなぁ……ほむらの奴、まどかを泣かせてんのにさ」
なんとか無事だったわたしの家には、元魔法少女の皆が集まっていました。さやかちゃん、マミさん、杏子ちゃん、そしてキュゥべえ。
「キュゥべえ、暁美さんの行方は解らないの?」
「ソウルジェムがないからね。君達とこうやって話せるのは、君達に家があるからさ。杏子は食べ物のあるとこに行けば会えるしね」
「人おちょくってるとぶっ飛ばすぞ?」
「悪気はないんだけどなぁ……」
キュゥべえの空気の読めなさはあんまり変わらなくて、思わずわたしは微笑んでしまいます。でもほむらちゃんのことを考えると、すぐに笑いも引っ込んでしまって……。
「ほむらちゃん……」
私は荒野を進む。創世王がワルプルギスの夜の侵攻を前倒しした結果、日本各地がズタズタにされてしまっていた。
「……でも、今はこれが落ち着く」
破壊されたビルは、私の精神安定剤になっていた。
「……だが、いつまでも破壊に頼ってはいられないぜ。破壊は創造を産むからな」
「あなたは確か、ワルプルギスの夜を食い止めた仮面ライダー……」
「自己紹介していなかったな。俺は門矢士。さて、暁美ほむら……だよな?」
「そうよ。門矢士、あなたは何者なの?」
「前にも言っただろ。俺は通りすがりの仮面ライダーだって。今回はちょっとした説教をしに来た。……南光太郎の頼みでな」
門矢士の出した名前に、私は食いついていた。
「……彼の頼みですって?」
「そうだ。あー、こういうのは柄じゃないんだがなぁ……『ほむらへ。今、君は何をしているんだい? 伝え忘れていたことがあった――』」
「伝え忘れていたことがあった。例え、自分の中で完結していても、周りは納得しないんだ。自分自身の言葉で、思いを伝えなくちゃならない。俺の友人の一人が、こう言っていた。祖母の受け売りらしいが、『言葉では、正しく伝わらないことは多い。だが、言葉にしなければ何も伝わらない』。勝手に逃げちゃダメだ。君が先を行く者なら、仲間達はそれを追う者だ。だったらせめて、立ち止まってやれ。俺は沢山の仲間を失ってきた。だが、ほむらは違うと信じている――」
「『ほむらは違うと信じている。君の友人、南光太郎より』……だとさ。ったく、古典的なヒーローのやることだぜ」
「あら、あなたは嫌なのかしら?」
「まさか。……俺と違って、素直でいいと思うぜ。っと、後ろを見てみろ」
「え? あ……!」
少し遠くに、走ってくる四人の人影があった。忘れもしない、大事な友達だ。でも、どうすればいいのか解らない。すると門矢士は、つっけんどんながらも優しげに、
「行け。お前がいるべき世界は孤独の世界じゃない。仲間がいる世界だ」
「……ええ、そうみたい。ありがとう、門矢士」
「覚えておけ。今のお前達の希望はすぐそこにある。挫けるなよ。それとこいつは、大先輩からの言葉だ。受け取れ!」
彼が投げて寄越したのは、白い便箋。そこには筆で書かれたであろう達筆で、とあるメッセージが記されていた。
「あなたの大先輩?」
「その男は、1号ライダーとか初代ライダーとか言われている。だけど俺にしてみれば、この呼び方が一番しっくり来るな。……仮面ライダー、1号」
仮面ライダー1号。彼がしたためた格言は、力強いメッセージだった。恐らくはこれが、受け継がれる正義の系譜の原点なのだろう。
その便箋を握り締めて、私は皆のところへ駆け寄った。これから何があろうと、皆と一緒なら大丈夫のはず。そう、思った。
あの後、ほむらちゃんとわたし達はまた会うことができました。ほむらちゃんは、「今は旅に出るわ。だけど、絶対にあなた達のところへ戻る。信じて」と言って、どこかへと歩いて去っていきました。
でも、前とは違って、寂しくはありません。
「また会おうね、ほむらちゃん。わたしの、最高の友達……」
そう言えば、別れる時にほむらちゃんから便箋を渡されていました。その文面を見て、わたしはとても勇気を貰うことができました。
その便箋には、こう書いてあったのです。