仮面ライダーBLACK RX×魔法少女まどか☆マギカ~闇を祓う光の王子~ 作:タクアン(沢庵)
「――これでトドメだぁーッ!!」
テレビのような形をした魔女を、さやかは一刀両断。使い魔退治に専念していたRXとマミも、結界の消滅を確認して変身解除。
何とかまどかの救出に成功した光太郎は、さやかに訊く。
「……その魂を対価にして、君は何を求めたんだ?」
厳しい口調で問い詰める。それは、怒りから来るものではない。
――失望。
さやかと彼とは決して長い付き合いではないが、それでも光太郎は、さやかが安易な奇跡を頼るようには見えなかった。それが何故、キュゥべえを頼ってしまったのだろうか。
「大事な人のためです。あたしが好きな、あいつの……」
「もしかして、上条君のこと?」
「上条? 誰なんだ?」
「えっと、わたし達のクラスメイトなんですけど……」
まどかが事情を説明する。それによると上条――上条恭介は、国内でも屈指のバイオリニストであり、その演奏は神に等しいとまで言われたらしい。だが、二年生に進級した直後に交通事故に遭遇。両脚と右腕は完治する見込みがあったものの、肝心の左手が治る可能性はほぼゼロ。
「だから、あたしが契約した。恭介の怪我を治してほしいって、キュゥべえに……」
「君は優しいな、さやか。けど、その優しさが時に自らを傷つけるとも言っておこう。後悔がなければそれでいい、今はな」
「後悔なんて、あるわけない。あるわけないですよ、光太郎さん」
「……美樹さん。これからよろしく頼むわね」
「はい、マミさん!」
マミと握手するさやかを背中に、光太郎はどこかへ消えるのだった。
――その頃。ある男が光太郎に続いて、この世界に降り立っていた。
「……俺が生き返った意味、確かに噛み締めねばならんようだな。そうだろう? 光太郎……」
彼の正体とは……。
「……そう。美樹さやかは契約してしまったのね」
ほむらと喫茶店で落ち合った光太郎は、彼女にさやかがキュゥべえと契約したことを伝える。それを聞いたほむらは、どこか締感したように溜息を吐いてから、衝撃的な言葉を口にする。
「恐らく、美樹さやかは絶望する。そして……この世に仇為す存在となるでしょうね」
「何!? それはどういう意味だ!?」
「落ち着いて、南光太郎。そうね……あなたには説明しておくわ。魔法少女と魔女は――」
ほむらの話を聞き終えた光太郎は、絶句する。
「冗談じゃないぜ! それじゃあ彼女達は、人殺しを厭わない化け物になってしまうじゃないか……!」
「これも全て、キュゥべえ……いえ、インキュベーターの仕業よ。奴らの狡猾な陰謀の駒なのよ、私達はね」
「俺のこの手で、罪なき少女の命を刈り取ってしまったと言うのか……!?」
呆然とする光太郎は、ほむらに自分の分のコーヒー代を渡してよろめきつつ店を後にするのだった。
自宅のテーブルに突っ伏した光太郎は、先ほどのほむらの話を回想する。ほむらの話の内容は、あまりにも残酷なものであった。
『魔法少女と魔女は、本来同一の存在。魔法少女が絶望、あるいは戦闘での披露が蓄積することで、ソウルジェムの穢れが限界に達すると、ソウルジェムが割れてグリーフシード……魔女の卵になる。これが、昨日あなたが倒した魔女のグリーフシードよ。ソウルジェムの穢れをこれに吸わせて、私達は穢れを祓うわ。けれど、グリーフシードでも穢れが取り除けなかった時――私達は魔女となるわ。キュゥべえは、そこで発生する感情エネルギーを欲している。宇宙のために、ね』
(俺は知らなかった……知らなかったがために、助けられなかった……!)
……キングストーンの光さえあれば、魔女を助けられたかもしれない。そう考えると、無性に悔しくなってしまう。
(ダメだ、らしくない。救えなかった命……忘れないさ。俺は前を向いて進む。それだけだ)
無理にでも割り切られねば、心が押し潰されてしまいそうだ。それでも彼は止まらない。止めてはならないのだ。
(ここで俺が止まれば、絶対に後悔する。俺だけじゃない、まどか達もだ。だから俺は進み続ける。そう誓った……!)
光太郎の目の哀愁は消え、代わりに怒りが表出する。
(罪なき少女を欺き、自らの糧にするその非道……! インキュベーター! 俺は絶対に、お前達を滅ぼしてみせる!)
決意を新たにする光太郎だった。
次の日の放課後。パトロールをするというさやかに付いて、光太郎は周囲を警戒していた。魔女だけでなく、使い魔も人々に危険をもたらす。放ってはおけない。
「んー、今んトコはいないっすね……」
「そうだな。だが気を緩めるな、危険はすぐそこに潜んでるかもしれないからな」
「了解!」
そうしてしばらく歩いている内、ついに二人は使い魔を発見する。
「いた! 光太郎さん、これを!」
「解った!」
変身したさやかからサーベルを受け取り、光太郎は使い魔相手に大立ち回りを演じる。さやかも同様で、未熟ながらもパワフルな剣術で使い魔を倒していく。
……その時だった。
「……それ以上はさせないよ!」
「えッ!?」
「誰だ!」
無数に現れた槍がバリケードを形作り、二人の行く手を阻む。その妨害のせいで、二人は使い魔を取り逃がしてしまった。
「しまった、使い魔が! ちょっと、あんた何のつもりなのよ!」
雑居ビルの屋上に、鯛焼きにかぶりつく少女が一人。その衣装は、まるで血のように赤いノースリーブ。状況から考えて、彼らを妨害したのは彼女以外にあり得ない。と、いうことはだ。
「君も……魔法少女なのか?」
「そ。最初に言っとくよ。アタシはかーなーり、強い!」
「使い魔を逃がすなんて、信じられない! あんただって魔法少女でしょ!?」
「魔法少女だから、だ。使い魔が人を喰えば喰うほど、魔女も増える。グリーフシードも手に入って万々歳って寸法さ」
「私欲のために、無関係な市民まで巻き込むと言うのか!?」
光太郎は怒りに震える。昨日のインキュベーターに対するものとは、また違うベクトルの怒りだ。
「文句あるっての?」
「あるに決まって……!」
「俺は今まで、三人の魔法少女と出会ってきた。だが、誰もが人のために力を使っている! 自分だけのために力を使うお前を……俺は許さん!」
「じゃあかかってきなよ、オッサン!!」
槍が光太郎を襲う。その切っ先は、確かに彼の胸を狙っていた。
「光太郎さんッ!」
思わず彼の名前を叫ぶさやかだったが、次の光景に目を疑った。
「な……! 避けたってのか? あの一撃を!」
「光太郎、さん……なの?」
「……俺は怒りの王子! RX! バイオッ! ライダァッ!」
南光太郎の怒りが限界を迎えた時、仮面ライダーBLACK RXは、怒りの王子・バイオライダーに変身するのだ!
「ッ……見かけ倒しだろ、どうせ!」
無数の槍を召喚した彼女は、その全てをバイオライダーに突撃させる。……しかし。
「フンッ!」
「嘘だろ……槍が全部奴の身体を突き抜けちまうぞ!?」
「あたしを忘れるなぁ!」
「うあッ!?」
動揺する少女の隙を狙って、さやかも突進する。不意討ちにも近いその一撃は、少女の手にあった槍を弾き飛ばす。
さらには、別の場所をパトロールしていたマミとまどかまで合流。
「……佐倉さん。久しぶりね」
「……一番見たくない顔だね、今のアタシにはさ」
「あの、知り合いなんですか? マミさん」
まどかがマミに訊くが、返事はない。佐倉と呼ばれた少女は、苦々しげな表情を浮かべて、捨てゼリフを残すのだった。
「……自分のために力を使え、さもなきゃ後悔しか残んねぇからな」
「あの娘は佐倉杏子。少し前まで、私と一緒に魔女退治をしていたのだけれど……」
マミの部屋(ちなみに光太郎は初めて入った)で、マミが説明してくれた。元来、杏子はぶっきらぼうだが優しい性格だったらしい。ところがある日、突然マミとのコンビ解消を宣言。それ以来、自分のテリトリーである風見野市で活動していたのだが……。
「昔の佐倉さんなら、あんな酷いことはしなかった。何かがあったのは明白なんだけど……」
「だが、それとこれとは別だ。被害を省みない利己主義者となってしまったなら、それは正さなくちゃならない。違うか?」
あくまでシビアな視点から杏子を評価する光太郎に対して、さやかは別の評価を下す。
「……でもさ、光太郎さん。あたし、あの杏子ってのが真性の悪者には見えないですよ? そりゃ、猫を被ってマミさんを騙してた可能性もなくはないけど……それでも、悪人じゃないと思います」
「わ、わたしもそう思います。杏子ちゃん、マミさんを見て苦しそうだった……」
杏子に好意的な二人の言葉は、光太郎にも理解できた。だからこそ、杏子の間違いを見逃してはならないのだ。
「いずれにせよ、杏子については解らないこと尽くしだ。ここにキュゥべえがいれば、事情の把握も可能かもしれないが……」
今この場にいない、あの白い小動物の姿を思い描く。ほむらの話を信用するならば、キュゥべえが全ての元凶となる。
(どこに行ったんだ、奴は……)
この時、光太郎は知るよしもなかった。イレギュラーの「削除」のために、キュゥべえが恐るべき策を弄していることに……。
佐倉杏子との邂逅は、光太郎の中の「魔法少女」のあり方に大きな衝撃を与えた。
一方その頃、キュゥべえことインキュベーターの恐るべき陰謀も進んでいた!
変身、仮面ライダーBLACK RX!
『敗れたり!! RX』!
ぶっちぎるぜ!