仮面ライダーBLACK RX×魔法少女まどか☆マギカ~闇を祓う光の王子~ 作:タクアン(沢庵)
「やあ、杏子」
「……んだよ。何の用だ、白いの」
「なんだとは酷いじゃないか、君に有益な話を持ってきたのに」
月が美しく輝く夜、建設途中の高層ビルの鉄骨に腰かけていた杏子にキュゥべえが接近していた。
最初こそ突き放すものの、キュゥべえ曰く「有益な話」に興味を抱いた杏子は、態度を僅かに軟化させる。
「聞かせてみろ」
「……簡単な話だよ。少しだけ、僕の実験に付き合ってほしいんだ。人体実験って奴だね。その被験者になってくれないかい? 成功すれば、君はどんな魔法少女よりも強くなれるだろう」
「……最強、ってことか。いいぜ、やってやろうじゃん」
「やけにあっさりと引き受けるね。やっぱり、南光太郎との戦闘が堪えているのかな?」
平坦な口調で傷を抉るキュゥべえの首根っこを掴み、鋭く睨む。
「無駄口叩く暇があったら、さっさとアタシを連れてきな」
「やれやれ、荒っぽいのは変わらずだね。……こっちだよ」
細い鉄骨の上を危なげなく歩くキュゥべえの後を、杏子は追いかける。そしてこの後、杏子は力を手にする。
……決して得てはならぬ、禁忌の力を。
暁美ほむらは、表面上は冷静だったものの、内心では相当混乱していた。
(今まで、異世界からの来客なんて存在はいなかった。それに仮面ライダーなんて初耳だし、色々な事象の起こる順序も錯綜している。魔法少女の真実をあんなに早く他人に言ったのは、三回目以来……。もしかすれば、地獄のようなループから抜け出す時が来たのかもしれないけれど……)
そこまで考え、首を振った。ことは上手く運んではいるが、油断して何が起こるか知れたものではない。特にこの時間軸は、イレギュラーである仮面ライダーBLACK RX……南光太郎がいる。少しのミスが、全てを台無しにするかもしれないのだ。
(南光太郎は信用できるけれど、その力に頼りすぎてはいけないわね。……あら? あそこにいるのは、佐倉杏子かしら)
ほむらの自宅の前で立ち尽くす、佐倉杏子の姿がそこにあった。
「佐倉杏子。何をして……ッ!?」
ほむらは後ずさった。そこにいたのは、確かに杏子だ。それは解る。問題は――。
「その、身体……! あなた、何があったの!?」
無機質なマスクが顔を覆い、魔法少女の衣装から見える手足は白くなっている。
「そんな、それじゃあまるで……!
「――対象ノ抹殺ヲ開始スル――」
「くッ!」
(ここじゃ戦えない……! どうすれば……!)
「――命令ノ変更ヲ確認。対象ノ拘束ニ移ル――」
「え? ……きゃッ!?」
目にも止まらぬスピードで、ほむらの身体はゴムのようなロープで縛られる。それを出したのは、当然ながら改造された杏子である。
「離しなさい……! くぅッ……!」
ほむらはされるがままに、拐われてしまうのだった。
「何だって? ほむらが行方不明!?」
「そ、そうなんです! 今日、学校を無断欠席して、先生が連絡を入れたんですけど、電話も繋がらなかったみたいで……」
「あいつ、一人暮らしだから。そりゃ普通の学生だったらサボりで済みますけど、ほむらは魔法少女でしょ? 何かの事件に巻き込まれたと思うのが普通で……!」
いつもの喫茶店に集合したいつもの面子は、ほむらの行方不明という一大事に頭を悩ましていた。
(……もしやインキュベーター? いや、奴らならもっと狡猾な手を使うはずだ)
「……暁美さんの捜索、私も手伝うわ。南さんも構いませんね?」
「ああ。彼女には世話になったからな。必ず発見する!」
そのまま店を出てから、光太郎はマミに質問していた。
「……ところでマミ、杏子のことなんだが」
「あれ以来、連絡はないですよ。当然と言えば当然かもしれませんけど、それにしては……」
「どうした?」
「気のせい、かもしれないんですけど。実は魔法少女のソウルジェムは、魔女だけじゃなくて魔法少女も探知できるんです。それを使ってみても、佐倉さんの反応が見当たらないんです。風見野に戻った可能性もあるんですけど……」
「何だって? ……ほむらの失踪と、杏子の失踪か。この二つの事件、無関係とは思えないな」
この時、既に彼の第六感は二人の失踪が同一の事件だと教えていた。それをあえて言わず、胸の奥に隠す。
「……っと、分かれ道か。俺はこっちだからな、さよならだ」
「はい、何か解ったら教えてください」
「そいじゃ、光太郎さん」
「私達も、二人の捜索をします。光太郎さんにもお願いしてよろしいですか?」
「ああ、大丈夫だ。頼むぜ、三人とも」
三人と別れた光太郎は、一人ほむらの家に向かう。
(……! メッセージ?)
ほむらの家の郵便受けに、「南光太郎へ」と書かれた便箋が挟まっていた。それを取り出した彼は文面に目を走らせる。
そして、文章を読み終えた光太郎は便箋を投げ捨て一目散に駆け出した。無味乾燥な白地の便箋には、こう書かれていた。
『暁美ほむらと佐倉杏子の命は預かった。助けたくばあの廃工場に来ることだ』
「どこだ! 来たぞ、二人とも!」
さやかの初陣を飾ったその場所は、やはり陰鬱な空気が漂っていた。大声を出してみるが、誰の声も返ってこない。とにかく奥に進むと、果たしてほむらがそこにいた。
「ほむら!」
「ッ! ダメよ、南光太郎! これは罠よ!」
「――対象ノ生体反応ヲ解析。南光太郎ト断定。抹殺開始――」
「!? まさか……杏子なのか!? ぐうっ!」
音もなく現れたのは、怪物と化した杏子。どうやら彼は、何者かの計画に嵌められたようだ。
「クソッ、杏子! まずは倒すしかないか……! 変身!」
光太郎はBLACK RXに変身。杏子と相対する。
「君をそんな姿にしたのは誰なんだ!?」
「――排除――」
「聞く耳もないって言うのか!? 冗談じゃないぜ!」
魔法少女としての杏子が用いていた槍、それを変化させたような触手が、RXに牙を剥く。
「リボルケイン!」
サンライザーからリボルケインを抜き、触手を切り払う。そのまま距離を取り、怪人を観察する。どうやら弱点は、胸元にある宝石のようだ。だが、それを破壊するということは……。
「ほむら! ソウルジェムを破壊すると、魔法少女はどうなってしまうんだ!?」
「死ぬわ。魂の宝石だもの!」
つまり、杏子を元に戻す手立ては一つしかない。それすらも希望的観測だが、やってみる価値はある。
「キングストーンフラ……」
「――妨害――」
「なに!? ぐわあぁぁぁ!!」
光を放つキングストーンを槍触手が貫く。キングストーンは彼の命、いわば彼にとってのソウルジェム。単純に割られただけで死ぬことはないが、それでも光太郎にとっては致命傷になり得る。
「うぐ……がっ……うおぉ……!」
変身が強制的に解かれ、光太郎は倒れる。全身の力が抜け、まともに立つことすら叶わない。それでも彼は、立ち上がろうとする。しかし……。
「く、クソォ……!」
「南光太郎……! くッ、この拘束さえ解ければ……!」
もがくほむらだったが、そのロープの束縛は緩まない。
「――抹殺完了――」
「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」
「ダメ……ダメよ、佐倉杏子ッ!」
槍触手は、冷たい刃を光太郎に突き立てようと振り下ろされ、彼の身体を貫く……。
「シャドーセイバーッ!」
「!?」
……ことはなく、槍触手は紅い剣に弾かれる。しかし光太郎は、目の前の光景を信じることができなかった。
射し込む夕日を背に、不気味な足音が工場に鳴り響く。緑色のマイティアイとキングストーンが、妖しく煌めいた。
「嘘だ……そんなはずがない! お前が生きているはずがないんだ! そうだろう……信彦ぉ!!」
「信彦……違うな。俺は世紀王・シャドームーン!」
強化装甲・シルバーガードに身を包む、かつての光太郎の親友。そして……死んだはずのゴルゴム世紀王。
シャドームーンが、確かな実体を持ってそこにいた。
突如として現れたシャドームーン!
その目的とは? そして、何故この世界に復活したのか!?
謎が謎を呼ぶ中、さやかに試練が下される!
変身、仮面ライダーBLACK RX!
『シャドームーン!』!
ぶっちぎるぜ!