仮面ライダーBLACK RX×魔法少女まどか☆マギカ~闇を祓う光の王子~   作:タクアン(沢庵)

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シャドームーン!

 世紀王シャドームーン。光太郎が元いた世界における半年前、彼はゴルゴムの首魁として悪逆非道の限りを尽くし、最終的にはRXの前身である仮面ライダーBLACKに倒された。

 しかし、彼の怨念はそこで彼を死なせはしなかった。

 記憶の喪失という重すぎる代償を払って、彼はBLACKへの復讐を胸に甦ったのだ。記憶は喪っても、身体に刻み込まれた圧倒的な剣術と綿密な調査で一度はRXを追い詰めたが、最終的に敗北。クライシスの怪魔怪人から子供達を救いその命を散らした……はずだった。

 

「お前が何故、生きているんだ……」

「……答える義理はない。俺はただ、無闇に力を欲したこの小娘が気に入らんだけだ」

「……シャドームーン」

「フン。小娘よ、我が剣の前に倒れるがいい!」

 

 投擲したシャドーセイバーをその手に戻し、シャドームーンは大きくジャンプ。杏子と距離を取ると、右手側のロングセイバーを工場の床に突き立て、その手から緑の稲妻を放つ。

 

「シャドービームを受けろ!」

「――ダメージ増加――」

 

 シャドービームの直撃を受けたというのに、いまだ淡々とした機械的な声を発する杏子。その痛々しい姿に、光太郎は悲しみを抑えきれなかった。

 

「杏子……! 畜生!」

「南光太郎……」

 

 ――その時、不思議なことが起こった。

 光太郎が流した涙がキングストーンを濡らした瞬間、損傷した霊石に力を与えたのである。

 

「! 力が……溢れてくる……! できる! トゥアッ!!」

 

 前進するバク転を披露しつつ、光太郎は復帰。杏子に人差し指を向け、宣言した。

 

「待ってろ、杏子! 俺が今、君を助けてやる! 変……身!!」

 

 目も開けられぬような金色の光が広がり、思わずほむらは目を瞑る。そして光はキングストーンに収束し、RXはバイオライダーと並ぶもう一つのフォームへチェンジしていた。

 

「俺は悲しみの王子! RX! ロボライダー!!」

「ロボライダー……!?」

「殺させはしないぞ、シャドームーン! ボルティックシューター!」

 

 ロボライダーの操る百発百中の光線銃、それがボルティックシューターである。その銃口から放たれた光子弾は、槍触手を撃ち漏らしなく撃墜する。

 

「……ハァッ!」

 

 そんな激闘の最中、シャドームーンがいきなり杏子の腹を貫いた。そのまま猛進し、壁に杏子を磔にする。

 

「止めろぉーッ!」

「フン、膳立てはしてやったぞ。後はお前の好きにしろ。さらばだ!」

「待て! ……逃げられたか」

 

 シャドーセイバーを残し、シャドームーンはテレポートを駆使して姿を消す。腹部を貫通した紅い刃は、杏子の体力を確実に奪っていた。

 

「痛い……――ダメージ――……うぁぁ……!」

「本当の杏子の人格と、洗脳改造された人格が戦っているのか……! 負けるな、少しだけ耐えてくれ!」

 

 ロボライダーからRXに戻り、苦しむ杏子に駆け寄った。

 

「今、解放してやる! ……キングストーンフラァッシュ!!」

 

 キングストーンフラッシュとは、キングストーンに込められた生命のパワーを解き放つ技である。BLACK時代よりもその効力は増加しており、その一つが「改造人間の鎖を断ち切る」ことであった。

 彼の思惑通り、キングストーンの輝きは杏子に施された改造を元に戻していく。やがて彼女の身体は全て肌色に戻り、能面のような顔も元の少女らしい顔となった。

 

「これは……!? 佐倉杏子はどうなったの!?」

「大丈夫だ。もう、あのバケモノはいない」

「そう……よかったわ」

 

 ふとほむらを見ると、彼女の四肢を縛っていたロープがなくなっており、自由に身動きできるようになっていた。

 

「杏子はほむらに任せる。俺は……」

「シャドームーンを探す、でしょう? 解っているわ、彼女のことは私が全て処理しておく。……ありがとう、南光太郎」

 

 短い礼を述べると、彼女は杏子を背負って帰路に就く。その後ろ姿を見送ってから、光太郎は怒りに震えた声で()()()()を呼んだ。

 

「……見ているんだろう、インキュベーター。こそこそ隠れていないで、姿を見せろ!」

「やれやれ、君に隠し事はできないなぁ」

 

 柱の影から、音もなく赤目の生き物が現れる。爆発しそうな憤怒を理性で必死に押し込め、光太郎はインキュベーターに訊いた。

 

「……杏子にあんな惨たらしいことをしたのは、貴様なのか?」

「うん、そうだよ!」

「罪の意識はないのか!?」

「ない……訳じゃないけどね。少しは申し訳ないとは思ってるけど、彼女自身が望んだことだ。僕に選択権はないよ」

 

 インキュベーターの釈明を聞き、光太郎は先ほどのシャドームーンのセリフを反芻していた。

 

 ――無闇に力を欲したこの小娘が気に入らんだけだ。

 

「まぁ、いい実験結果が得られたのは確かだ。例えば、そうだね。……君の弱点が、その腰のキングストーンであること、とかね」

「……実験結果だと? 貴様にとっては、魔法少女や多くの人々はモルモットだと言いたいのか!?」

「全く、訳が解らないよ。この地球という惑星で生を受けた人類は、おおよそ七十億人いる。魔法少女はその中のほんの数パーセントにも満たない、ちっぽけな存在なんだよ? 僕には理解できないなぁ、たった一人の生死にこだわる人間がね」

「理解しなくていい……貴様如きが理解する必要もない! この世に生きる人々は、この七十億の命で一つの存在だ! 命の価値に優劣はないはずだ!」

「非合理的だね。僕らのような高等生命体からすると、その考えは無駄しか残らないんだけどなぁ」

 

 あくまで、光太郎の神経を逆撫でするインキュベーター。恐らく、このやり取りに悪意はない。思ったことを口にしているだけのはずだ。それでも光太郎には、この生物モドキの思想が許せなかった。

 

「……俺は太陽の子。この世の生、生きる者全てを守る! インキュベーター、俺は貴様らを絶対に許さん!!」

「君の許しを乞う必要がどこにあるんだい? 僕達はあくまで、この宇宙のために、マクロな視点から行動しているんだけど……」

「宇宙のためであろうと何であろうと、命を弄ぶ存在は俺の敵だ! 必ずだ……いつか必ず、貴様達を倒す!」

「そうかい。僕の用はこれだけだからね、おやすみ。南光太郎」

 

 本当に言いたいことだけ言ってから、インキュベーターは夜の街に吸い込まれた。

 一人取り残された光太郎は、やり場のない怒りを拳にまとせ、工場の柱を全力で殴る。

 

「クソォォォォォ!! 俺はまだ、何もできちゃいない……! 誰も救えていない……!」

 

 ほむらの言葉が、改めて重くのし掛かる。

 

 ――奴らの狡猾な陰謀の駒なのよ、私達はね。

 

(……俺はどうすればいいんだ……俺は……)

 

 光太郎の苦悩は続く……。

 

 

 次の日、光太郎は学校へ出勤しなかった。ほむらは彼の身を案じるが、こうも思っていた。

 

(彼はあれしきで折れる男じゃない……。きっと、再起するはず)

 

 そのまま授業を聞き流し、放課後を迎える。そのまま自宅へ帰ろうとしたほむらだったが、思わぬ客と出くわした。

 ……杏子である。

 

「……元気そうね、佐倉杏子」

「……さっき目ェ覚ましたトコだ。ちょいと付き合ってほしいんだけどね、あんただけじゃ足りないんだ。マミとあの青色と桃色、それにあのオッサンを連れてきてくれないか?」

「少し待ちなさい。………」

 

 携帯を取りだし、一斉にメールを送信する。文面はこうだ。

 

『至急、校門前に来てちょうだい。行けるのなら返信はいらないけれど、無理なら返信を頼むわ』

 

「シケたメールだなぁ……」

「黙りなさい。あら、美樹さやかから返信ね。……『用事が入って無理、悪いね』」

「青いのは来ないのか。ま、構わないけどね」

 

 そう言って微笑む杏子の表情には、どこか影があった。

 

 

「……あのさ、仁美。話って?」

 

 ほむらからのメールに対応してから、改めてさやかは目の前の同級生と向き合った。志筑仁美。あのさやかの初陣の相手を務めた魔女に操られた、あの生徒である。そんな仁美から、さやかはいつもの店に呼び出しを受けていたのだ。

 どこか気だるそうなさやかに対し、仁美はやけに真剣な眼差しをしている。

 

「実は私……上条恭介君をお慕い申し上げていますの」

「へぇ、あんたが恭介を……あんたが?」

 

 愕然とするさやか。恭介は中性的な顔立ちで、相当な美形だ。その上でバイオリンの天才という、芸術的な一面もある。しかしさやかは、そんな上辺だけを見て、彼に恋をした訳ではない。まして「事故に遭ったから同情して惚れた」などとほざく輩がいたら、彼女は迷わず張り倒すであろう。

 ……要するに、さやかは本気なのだ。重すぎると言われようとも、それが彼女の恋なのである。しかしさやかは、後一歩を踏み出せずにいた。そんな中で、親友の思わぬ告白。

 

「……あ、あはは。恭介の奴がねぇ、隅に置けないなぁ」

「誤魔化さないでください、さやかさん。私もまどかさんも、あなたが彼に並々ならぬ好意を抱いていることを知っています」

「……あ、あたしは」

「嫌、なんです。あなたが自分の想いを押し殺しているのが……」

 

 仁美は優しい少女だった。

 

「お願いします、どうか、どうか……彼に想いを伝えてください。あなたを差し置いて上条君に告白なんて、私にはできない……!」

「……や、あのさ。誤解だよ、仁美。別にあたしは、あいつのことなんて何とも思っていないからさ」

「嘘……!」

「嘘じゃないよ。それじゃね、仁美。料金はあたしが払っとくからさ」

「待って……」

 

 逃げるように立ち去るさやか。仁美はうなだれる。

 

(ダメなんです、さやかさん……逃げてはダメ……。ここで逃げたら、あなたは一生後悔してしまうんですよ……?)

 

 仁美の想いが、今のさやかに届くことはない。




ほむら達が見せられたのは、杏子の父の教会だった。
そこで明かされる、杏子が豹変した理由。
あまりにも残酷な彼女の過去が明かされる時、魔法少女達はソウルジェムの秘密を知ってしまう!
変身、仮面ライダーBLACK RX!
『絶望! 暗黒のさやか・前編』!
ぶっちぎるぜ!
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