仮面ライダーBLACK RX×魔法少女まどか☆マギカ~闇を祓う光の王子~ 作:タクアン(沢庵)
「……ここは」
「教会……かしら。焼け落ちてしまってるけれど……」
「あの、佐倉さん。どうしてわたし達をここに呼んだの?」
さやか以外の面々は、杏子の後に続いて風見野市の教会跡地へと来ていた。見るも無惨な焼け跡が生々しく、ここで何があったのかを容易に連想させた。
「もしかして、ここは君の教会なのか?」
「ご名答。もっと正確に言うなら、アタシの親父の教会さ」
「親父だって?」
実は光太郎の考えでは、杏子は家出をした少女がたまたまインキュベーターと契約したものとなっていたのだ。どうやら事態は、それほど単純ではなかったらしい。
「アタシの親父はこの教会の神父でさ、凄く繊細な人だった。人殺しがあれば涙を流し、自殺が起これば食を断つ……そんな人だったよ」
「優しい人だったんだね、佐倉さんのお父さん……」
「杏子、でいいよ。えと……」
「あ、鹿目まどかです。よろしくお願いします、杏子さん」
どこか昔を懐かしむように、杏子は述懐する。マミには思い当たる節があったのか、ハッとした表情をした。
「で、今のままでは人々を救うことはできないとか言ってさ、教典にないことまで説法し始めた。当たり前だけど、信者は遠のいて、挙げ句に親父は本部から破門されちまった。それでも親父は、『自分は間違ってはいない、今の教えでは人々を救えないんだ』って言ってたよ。……でも、このままだとアタシらは路頭に迷っちまう。そんな時、あの白いのが現れた……」
拳をきつく握り締めた杏子。自分を騙して改造した相手の話だ、怒りを感じて当然だろう。
「あいつは、『願いを何でも一つあげる』って言った。だからアタシは、こう願った。……『皆が親父の話を聞いてくれますように』ってね」
「……それで、どうなったんだ?」
「最初の内はよかったさ。ゼロになってた信者が物凄い勢いで増えて、親父は大喜びさ。お金だって入ってきたし、アタシは頼れる先輩にも会えたからね」
「佐倉さん……」
マミは悲しげな顔をする。
「シケた顔すんな、マミ。……えーと、そうだな。それでアタシとマミはコンビを組んで、連日のように魔女狩りに明け暮れていた。でもある時、その秘密が親父にバレたんだ」
「杏子さんのお父さん、喜んだんだろうね……」
(……いや、この崩壊した教会から察するに……)
光太郎には、薄々展開が読めていた。それが救われない結末だということも……。
「逆さ、まどか。アタシが全部打ち明けたら、親父はアタシを『魔女』だって罵った。そして親父は狂っちまった。破滅的な説法を信者に説き、酒に溺れて、最期は家族もろとも無理心中……。おふくろも妹も、みーんな灰になっちまった……」
「……辛かった、だろうな」
「一夜にして全部が燃え尽きたんだ、ショックも大きかったさ。でもそれ以上に、自分に腹が立った。安易な奇跡にすがろうとした、自分に……」
「……やっと、解った。あなたがコンビ解消を宣言したのは、そのことが理由だったのね……?」
マミの悲痛な声が、光太郎とまどかの心に鉛のような冷たさを伴って響く。ばつが悪そうな表情を浮かべて、杏子はそれを首肯した。
「……悪いとは、思ったけどさ。でもアタシは、あんたまで地獄に引きずり込みたくなかったんだよ。アタシは……痛ッ!? 何すんだ、マミ!」
杏子の言葉を遮ったのは、目尻に涙を溜めたマミの平手打ちだった。怒る杏子だったが、仮にも先輩たるマミの気迫は凄まじいものがある。しおらしくなって黙ってしまった。
「馬鹿! 私がどれだけ、どれだけ心配したか解ってる!? 何よ! 私のためと言いつつ、結局は自分のために私から逃げたんじゃない!」
「ッ……そうだよ! 逃げたんだ、アタシは! あんたが優しいから、その優しさに甘えそうになっちまうから……!」
「……いい、佐倉さん。あなたは私が高潔な人間だと思ってるんでしょうけど、そんなことはないわ。私はね、大事な人が地獄に堕ちると言うなら――」
凛としたオーラを放ちながら、マミは高らかに宣言する。
「――一緒に地獄に堕ちるだけの覚悟は、持っているつもりよ」
「マミ……あんた……あ、あれ? おかしいな。悲しくなんかない、むしろ嬉しいのに……涙が止まんねぇよ……」
「ありがとう、佐倉さん。そして……
「うっ……ま、マミぃっ!」
直前の凛々しさは鳴りを潜め、代わりに母性的な雰囲気が杏子を優しく包む。この場は二人に任せても問題はないはずだ。むしろ、問題なのは……。
(これを蹴ったさやかの方だ……。何があったんだ?)
仁美から告げられた衝撃的な秘密を、さやかの心は受け止めきれずにいた。
(仁美……なんでよ……? 知ってたなら、なんであたしに言ったの……?)
ゾンビのようなおぼつかない足取りのさやか。と、彼女のソウルジェムが魔女の反応を示す。
「ちょうどいいや……あたしのために、死ね」
その双眸には、禍々しい狂気の片鱗が見えていた。
「魔女の反応だって?」
「ええ。この近くよ。魔法少女の反応もある……恐らくは美樹さやかね」
「美樹さん、ですって?」
「あの青いのか?」
「一人で戦ってるの!? そんな、早く助けなきゃ!」
杏子はマミと和解し、再び街の守護者として活動することになった。今なら、杏子の横暴の理由も解る。あえて自分から皆を遠ざけることで、皆を守ろうとしたのだ。不器用な杏子らしいやり方ではある。
(俺も両親と育ての親、そして親友を失ったからな……)
光太郎にも、ようやく杏子の本質が理解できた。その矢先、ほむらのソウルジェムが結界を探知したのである。
「……少し、嫌な予感がする。早く行きましょう」
「ああ、そうだな」
「さやかちゃん……大丈夫だよね……」
「腕は鈍ってないわよね、佐倉さん?」
「舐めんじゃねぇよ。ほら、行くぞ!」
五人は結界の中に突入。すぐさま目に入ったのは、無数の枝を持った黒い影のような魔女。そしてその枝の一つが――。
「え……? そんな、さやかちゃん!!」
「さやかッ!」
さやかの胸に深々と突き刺さっていた。ピクリとも動かないさやかの姿に、光太郎は焦りを覚える。
「くッ……変身! バイオライダー!」
すぐさまバイオライダーに変身すると、リボルケインが変形したバイオブレードを使ってさやかを貫いていた枝を切断。さやかを抱き抱えて着地してから、彼女の傷をマクロアイで診察する。すると、驚くべき事実が判明した。
「……傷の修復速度が尋常じゃない。もしやこれは、魔法少女としての願いが反映されたからなのか?」
さやかの願い、それは恭介の怪我の治癒。光太郎の鋭い勘が、あらゆる魔法少女の能力の予測する。
(杏子の願いは幻惑……戦闘に使えるとなると、分身となる。マミの願いは生きること……ならば何かしら、救助に役立つものとなるはずだ。残るほむらの力は時間操作……何を願ったんだ、ほむら? そして唯一、ほむらだけが魔法少女の真実を知っている……)
「いや、今は止そう。それよりも、まずはこの魔女を何とかしなければ!」
バイオブレードを構え、一気に突撃するバイオライダー。その狙いは、本体だ。
「ほむら、さやかを任せるぞ! マミ、援護を頼む!」
「了解! ……それじゃ、久々にお見せしようかしらね!」
「お、
「
「直に聞くのは、いつぶりかしら……」
思わせ振りな魔法少女達の態度。皆の期待を一身に背負ったマミは、魔法のリボンを巨大な大砲に変化させる。
「ふぅ……行くわよ。 ティロ・フィナ――レッ!!」
「これは!?」
光太郎ですら驚くほどの火球が、無数の枝を刹那的に焼き払う。これがマミの必殺の一撃、伝家の砲筒ティロ・フィナーレであった。
「後はお願いしますね、南さん! 私達は使い魔を!」
「ああ!」
既に何本かの枝は復活しており、バイオライダーを貫こうと迫り来る。しかしバイオライダーはゲル化を駆使してこれを回避、本丸まで肉薄したところでRXに変身。
「リボルケイン! フンッ!」
サンライザーから、これまた伝家の宝刀リボルケインを生成。一度ジャンプしてから、急降下の威力もプラスして、その切っ先を突き立てる。ある程度まで魔女が弱ったのを確認してから、RXはキングストーンフラッシュを敢行。だが……。
「……戻らない、か……」
やはり、異形と化してしまった魔法少女は救えないのか……。悲壮な覚悟を決め、再度リボルケインを突き刺すと、今度こそ完全なリボルクラッシュを決めるRX。
魔女は火花を散らしながら爆発。その場には、グリーフシードだけが残るのだった。
――外宇宙。インキュベーターの母星にて、インキュベーターは安堵にも似た声を出した。
「……間に合ってよかった。キングストーンフラッシュで魔女を魔法少女に戻されると、僕達の生命活動まできなくなってしまうからね。杏子の時に得たデータが役に立ってくれた。ありがとう、杏子」
赤いつぶらな瞳が、邪気なき悪意を振り撒くのであった……。
間一髪、さやかは救われた。
安堵する一向、しかしそこに現れたインキュベーターが、魔法少女の秘密全てを暴露してしまう!
おぞましきインキュベーターの計画を、仮面ライダーBLACK RXは阻止できるのか!?
変身、仮面ライダーBLACK RX!
『絶望! 暗黒のさやか・後編』!
ぶっちぎるぜ!