仮面ライダーBLACK RX×魔法少女まどか☆マギカ~闇を祓う光の王子~ 作:タクアン(沢庵)
さやかの負傷はかなりのもので、普通の人間ならば即死級の大怪我であった。……そう、
なるべく人目につかぬようにとほむらの家へ担ぎ込まれたさやかは、改造人間である光太郎ですら恐怖を覚えるほどの治癒速度を見せた。
……
さやかの腹に開けられた風穴が塞がるのに、たったこれだけの時間で済んだのである。それでも大量の出血によるショックからか、彼女の意識はまだ戻っていない。
「さやか……」
「さやかちゃん……起きて……」
光太郎とまどかは、彼女が寝ているベッドの側に座っていた。傷が完治してから三時間が経ったが、一向に目を覚ます気配はない。と、そこに杏子が現れた。
「杏子」
「まどか。ちょいと席を外してくれるかい?」
「ど、どうして?」
「……ほむらがさ、教えたいことがあるんだと。で、まどかには聞かせられない話だからってんで、出てほしいんだってさ」
(……伝えるつもりなのか、ほむら)
光太郎は、全ての真実を知っている。自分がほむらだとしたら、確かにこの話をまどかに伝えようなどとは思わないだろう。
そう考えた光太郎だったが、彼にはもう一つのプランがあった。
「杏子、ほむらに伝えてくれないか? 『その話は、まどかも知る必要がある』ってな」
「けどよ、オッサン……」
「……隠し事をされて一番傷つくのは、他ならぬまどかのはずだからな。そうだろ?」
「……わたし、どんくさくて何の役にも立てないかもしれない。だけど、逃げたくない! 一人だけ除け者にされて、そのまま逃げたくない!」
真摯な光太郎と必死なまどかに根負けしたのか、大きく溜め息をすると、ほむらとマミを大声で呼んだ。
「おーいっ! 二人とも、入ってこい! まどかは逃げたくないってよ!」
間もなくドアが開き、ほむら達が入ってきた。まどかを見つめるほむらの目には、「本当にいいのね?」と覚悟を問うような光がある。まどかは頷いた。
「……んぁ? あれ、あたし……ッ!?」
タイミングよくさやかも目を覚ました……が、様子がおかしい。自分の腹をしきりに触ると、発狂したように絶叫した。
「キャアァァァァァァァ!!? あたしの身体が、あたしの身体はッ、どうなってんのよ!? あんな、あんな、あんな怪我で……まともに生きてられるわけないのに!!」
「さやかちゃん!?」
「美樹さん、ダメよ!」
「少しは静かにしろ!」
「くッ、落ち着くんだ! さやか!」
「これが落ち着いてられますか!? あたしの身体、これじゃまるでゾンビじゃない!!」
さやかの放った言葉が、光太郎の脳裏に、これまで出会ってきた先輩ライダー達の顔を思い起こさせる。その全員が、脳以外の肉体を改造されていた。そして、自分も……。
(……さやかは、堕ちてしまうのか? 止められないのか……!?)
そんな時、仮面ライダー1号……本郷猛の言葉がよぎる。
――私達、仮面ライダーは改造人間だ。悩んだ回数も知れん。だがな光太郎。世界が悪に包まれた時、それを照らす光は仮面ライダーしかいない。希望を絶望に変えないように、私達は戦っている。光太郎、君はどうだ?
「……さやか! 前にも言ったと思うが、俺は改造人間だ。ある意味、君達と同じなんだ。俺は、例え一人になったとしても、絶望と戦い続ける! 君は希望の光だ!」
「そう、なのかな……」
少しずつ落ち着きを取り戻すさやか。しかし、それは長く続かなかった。最も現れてほしくなかった侵入者が、冷たいセリフを光太郎にぶつける。
「いいセリフだ。感動的だね。だが無意味だ」
「……どの面を下げて出てきたのかしら、インキュベーター?」
可愛らしい歩調で、白い悪魔が寄ってきた。躊躇いもなく拳銃を向けるほむらを、マミが止めようとする。
「ま、待って暁美さん! なんでキュゥべえを撃とうとするの? キュゥべえは私達のサポートを……」
「違うね、マミ。こいつは悪魔だよ。昔っからよく言うだろ? 『悪い奴らは天使の顔して、心で爪を研いでるものさ』ってね。……おい、ほむら。こいつを殺るってんなら、アタシが殺る」
一気に殺気立つほむらと杏子に、マミとまどかは困惑を隠せずにいた。光太郎はそんな中に割って入ると、正面からインキュベーターを睨みつけた。
「……貴様、何の目的でここに現れた? 答えによっては、俺が貴様を叩きのめしてやる!」
「やれやれ、感情的だなぁ。僕はただ、ほむらの手伝いに来ただけさ」
「わ、私の? 何を言っているのかしら、インキュベーター。私に、お前を呼ぶ道理などないのだけれど」
「君だけじゃ、魔法少女の真実は説明できないと思ってね。簡単な補完に来たのさ。さて、皆。ほむらや光太郎、杏子は知ってると思うけど、改めて説明しよう。魔法少女とは――」
インキュベーターは極めて平坦な声色で、残酷かつ悲惨な真実をにべもなく語った。しかしその最後に、光太郎はおろかほむらですら知らなかった情報が追加されていた。
「そうそう。今から一週間後、この見滝原市に最強の魔女・ワルプルギスの夜が来るよ。それと、本当なら言いたくなかったんだけど……まぁいいや。実はね、君達がワルプルギスの夜に勝とうが負けようが、僕達の得る結果は変わらないんだ。君達が勝てば、ワルプルギスの夜は最期に凄まじいエネルギーを爆発させる。君達が負ければ、絶望の力で君達から凄まじいエネルギーが発生する。素晴らしいとは思わないかい? 話はこれで終わ……」
「その……穢らわしい口を今すぐ……ハァ、ハァ……閉じなさい……!!」
一発の銃弾が、インキュベーターを肉片に変える。震えながら、拳銃を握る手を下ろすほむら。その顔には、怒りとも哀しみともつかぬ、どす黒い感情が巡っていた。
「……あたし達、キュゥべえの体のいい捨て駒だったんだ。アハッ、これで心残りもなくなったわ」
「うっ、ぐすっ……魔法少女が魔女になるなら、皆死ぬしかないじゃない……何で、どうして……うわぁぁぁ……」
「チッ、あんの野郎。ゼッテーぶっ殺してやる……!」
杏子だけは強く理性を保っていたが、他の二人は限界に近かった。特にさやかは、仁美から受けた告白の件も響き、完全に壊れてしまった。一方のマミはと言うと、こちらはキュゥべえに裏切られたショックの方が大きいらしく、絶望よりも疑問が勝っているようだった。
「そんな……キュゥべえが……」
「まどか。俺はさやかには何もしてやれない。まどかが、さやかに寄り添ってやれ」
「……あぁ。お気遣いは結構ですよ、光太郎さん。ねぇまどか、あたしもう決めたから。これからあたしは……魔女として生きていく。人を喰って、希望を砕いて、何もかも滅茶苦茶にしてやるんだ」
「待てっ、さやか! まだ早まるな! 大丈夫だ、俺達が何とかする!」
「何とか? ハッ、無責任なこと言わないでよ! あんたと違って、こっちの未来はないも同然なのよ! だったらあたしは、人類の敵になってでも……生きてやる」
その瞬間、さやかのソウルジェムが砕け、猛烈な衝撃波が皆を吹き飛ばす。ソウルジェム「だった」ものから、剣とタクトを持った人魚の魔女が出現した。
「……止せぇぇぇっ!! さやかぁぁっ!!」
「嫌だよ、さやかちゃん……きゃっ!?」
「美樹さん!」
「美樹、さやか……!」
「届かないのか……誰も、何も!」
言葉を紡ぐ舌を切り
新たな足は痛みを連れ
その心臓は
心臓は
――海の泡に溶ける。
遂に魔女と化してしまったさやか!
苦悩する光太郎達の前に、一人の少年が現れた!
彼は上条恭介!
その神の奏でるバイオリンは、さやかの心に届くのか!?
変身、仮面ライダーBLACK RX!
『心の弦 心の奥』!
ぶっちぎるぜ!