仮面ライダーBLACK RX×魔法少女まどか☆マギカ~闇を祓う光の王子~   作:タクアン(沢庵)

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心の弦、心の奥

(俺達では、さやかを救えないのか……?)

 

 翌日。公園のベンチに座る光太郎は悲嘆に暮れていた。ほむらによると、何故か結界は元々の場所を離れ、建設途中で放棄された工事現場で安定したらしい。人も近寄らぬ場所に行ったのは、最後の良心だろうか。

 

(キングストーンフラッシュは魔女に効果がない。しかし、さやかの命を諦めるのは論外だ)

 

 苦悩する光太郎。と、そこに見滝原中の制服を着た女子生徒が現れ、思わぬ人物の名前を呼んでいた。

 

「……さやかさん! さやかさん、どこにいらっしゃいますの?」

「え? ちょ、ちょっといいかい?」

「あら? あなたは確か、用務員さんの……」

「南光太郎だ。それよりも、さっきさやかの名前を呼んでいなかったかい?」

「は、はい! どこに行ったのかご存知ありませんか?」

 

 その顔には、真剣そのものと言った表情があった。光太郎は意を決し、彼女に全てを話すことにした。

 

「……ここじゃ少し場所が悪いな。移動しよう」

 

 

 

 光太郎がこの生徒――志筑仁美を連れだって来たのは、小高い山の上だった。夕陽が眩しい中で、光太郎は仁美に尋ねる。

 

「君はさやかの友達なのかい?」

「……少し前までは」

「今は違うと?」

 

 弱々しく微笑んだ仁美は、喫茶店でのやり取りを話す。

 

「それで私は、その、言い方は悪いのですが逃げられてしまって。そして今日は、さやかさんは学校もお休みになられたのが心配で……」

「……なら、知りたいかい? さやかのことを」

「……あなたは、何かを知っておられるのですか!?」

「ああ。ちょっと信じられないかもしれない、だけど聞いてほしい。さやかは――」

 

 仁美は真摯に、光太郎の話に耳を傾けた。驚きこそすれ、信じていない訳でもないらしい。真実を聞き終えた彼女は……。

 

「……知らなかった。さやかさんが、そんな荊の道を進んでいらしたなんて。私は……何も、知らなかったのです」

「『自分は人間ではない』、そんな強烈な自己暗示がさやかを追い込んでしまった……。俺はさやかを助けなきゃならない。でも、解らないんだ。どうすればいいのか、どうしなければならないのかが……」

 

 再び俯いた光太郎。

 ―――何か、何かないのか。

 仁美も必死になって考え、ある可能性に行き着いた。それは不確実で、あまりにもロマンチックすぎる考え。それでも仁美は、言う他なかった。

 

「あの……先ほどもお話に出させていただいた、上条恭介さんのバイオリンの音色なら……」

「バイオリン?」

「はい。さやかさんは、上条君をいたくお慕いしておられました。もしかしたら、届くかもしれません。もちろん、上条さんにもこの事実を伝えなくてはならないのですが……」

「そうか。なら、頼む。そしてここに連れてきてくれ。ダメだったら……俺がさやかを倒す」

 

 あえて残酷に、最後の選択肢を決定する。戦いに迷いは厳禁、必要ならば倒すしかない。

 

「……絶対に死なせません」

 

 その決意は、誰に向けたものだったのか――。

 

 

「……そう。志筑仁美に全て話したのね」

「勝手なことをしてすまない。だが俺は、さやかを死なせることだけは避けたいんだ」

 

 あらゆる家具の散乱したほむらの家で、ほむらは光太郎から今日の報告を受けていた。ほむらとしては片付けのために男手がありがたかったので、自分の家に上げたのである。

 

「色々とごめんなさい。……誰もが憔悴していて、とてもじゃないけど話せる状況じゃないのよ」

「当然だ。あれだけのことを知らされ、しかも信頼していた奴に見捨てられたも同然の扱い。耐えているのが不思議なくらいだ」

 

 口を動かしながら身体も動かし、せっせと片付けを進める光太郎。その姿を見たほむらは、ある覚悟を固めた。

 

「……これは、ある魔法少女の話。聞きたくなければ無視して構わない。それじゃ、話すわよ」

(ほむら……?)

「あるところに、とても身体の弱い少女がいました。その少女は学校にも馴染めず、いつも一人。そこに、ある女の子が声をかけてきました。その子と少女はすぐ友達になったのですが、ある時その少女は怪物に襲われてしまいます。ですが少女は、その子とその子の先輩に助けられました。彼女達は自分を『魔法少女』だと名乗り、少女は憧れました。だけどある時、少女達が暮らしていた町に最強の魔女が現れ、その子は死んでしまいます。悲しんだ少女は、その子との出会いをやり直したいと思い、魔法少女になりました。時間を遡り、何度も何度もその子と出会った少女でしたが、どの世界でも少女は死んでしまいます。そしてある時、少女は決めました。『例え世界が終わっても、例え誰も助からなくても、その子だけは助ける』、と。……この話はこれでおしまいよ。つまらなかったかしらね?」

「……一つ、聞きたい。その少女は、今もその想いを秘めて戦っているのか?」

「どうかしらね。少なくとも、今はそう思ってはいないはずよ。『世界を守って、皆も守って、その子も助ける』。そう思っているはず……」

「そうか。なら、いいんだ。世界に一人、そんなの寂しすぎるからな。……ほむら。明日、さやかとケリをつけるぞ。皆も呼んで、さやかを助ける」

「最初からそのつもりよ。もう、誰も諦めたりしないわ。だって私は……」

 

 長い髪を美しい手の動作で流すと、少しだけ微笑みながら言った。

 

「希望を守る、魔法少女だから」

 

 

 マミと杏子、そしてまどか。果たして来てくれるだろうかと心配だったが、それは杞憂に終わったようだ。マミ達は来た。顔に疲れこそ見えるが、どうやら割りきったらしい。

 

「……いいわ。どうせ魔女になるなら、せめてキュゥべえだけはギャフンと言わせなくちゃね。行くわよ佐倉さん、美樹さんにお灸を据えてあげなくっちゃね!」

「へーへー、解り申したよ! ……そんじゃ、行くぜ先輩。アタシ達は、最初からクライマックスだよ!」

「わたしに何ができるのか解らないけど、せめてさやかちゃんを助けてから考える。だから、わたしも行く。皆でさやかちゃんを戻すんだ……!」

 

 熱い三人の気合いに光太郎も力が入る。そこに、仁美に腕を引かれた少年も駆けつける。

 

「はぁ、はぁ……さやかは、さやかは!?」

「君が上条恭介だな? 俺は南光太郎、志筑さんから話は聞いてるね?」

「はい、さやかがおかしくなってしまったとは聞いてます。……僕のバイオリンが、本当に役に立つんですか?」

「……解らない。でも、やらなきゃ後悔する。そんな予感がするんだ。だから君も、一緒に来てほしい。頼めるかい?」

 

 目を閉じた恭介は、一つの曲を小さく口ずさむ。そして、強い口調で断言した。

 

「行きます。僕が、行きます。志筑さん、君はここで待っていてくれ」

「まどか、君もだ。安心しろ、さやかは俺達が助ける!」

「はい。皆様、お願いします……!」

「さやかちゃん……皆、頑張って!」

「よし、決まりだな。皆、用意はいいな?」

『……もちろん!』

 

 全員の言葉が重なる。光太郎も、ポーズを構えて変身。

 

「俺は光の王子! 仮面ライダーBLACK! RX! 行くぞ、トァッ!!」

 

 結界に突入するのであった。

 

 

 さやかの産み出した結界は、多数のドアの奥にあった。そのドアがある回廊には、無数の映像が並べられていた。どれもが日常のワンシーン、今となっては戻ることのない日常。そのギャップが、悲劇をさらに引き立てていた。

 

「……いたぞ。さやかだ!」

 

 さやかはそこにいた。異形と化してなお、音楽を指揮する指揮者として。

 

「行け、恭介!」

「……はい。さやか、聞いてくれ……!」

 

 バイオリンを奏でる恭介。曲は「アヴェ・マリア」。染み入るような音色が、不気味な結界に響き渡る。その演奏は、光太郎や他の魔法少女の心も清めていく。

 

「す、凄い……これが上条恭介の……」

「心が洗われるって、こういうことなのね……」

「す、凄ェ……。アタシが、こんなに落ち着けるなんて……」

「何という力だ。まさに、神の浄めを供し心を(たす)ける、そんな音色だ……」

 

 心なしかさやかの指揮が鈍り、わずかだが心の奥に届いているようだ。

 ……だが。

 

『―――ッ!!』

「え……」

「恭介ッ!」

 

 突如として暴れるさやかが、恭介を目掛けて車輪を飛ばす。普通の人間、ましてやつい最近リハビリを終えたばかりの恭介が避けられるはずもなく、車輪は恭介を轢殺する――。

 

「ムンッ!」

「!?」

 

 緑の稲妻が、車輪を粉々に粉砕。

 

「もっと弾け、もっと奏でろ! その娘を助けたいなら、命を懸けろ!」

「お前は!?」

 

 そこにいたのは――。




一心不乱にバイオリンを弾く恭介!
その音色がさやかに届くとき、奇跡が起こった!
だが、ワルプルギスの夜の襲来はもう目前。その上、光太郎が元の世界に戻れる目当てが付いたと言う。
魔法少女達は、自力でワルプルギスの夜を倒すことを決意するが!?
変身、仮面ライダーBLACK RX!
『影の王子の真意!』!
ぶっちぎるぜ!
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