fate/some meaning   作:にがトマト

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これ、一年前くらいに書いてたやつだから、文の拙さは見逃してください……


1.歯車は動き出した

 なぜ、こんなことになったのだろう。

 

 そう男、氷室造路(ひむろつくろ)は思った。

 

 彼は、一般人だ。

 日常を愛し、非日常など一度も経験したことがない、人生の常道を歩んでいた人間。

 

 話が逸れてしまった。

 

 そんな彼ではあるが、命の危機に瀕するようなことには自ら突っ込むようなことはしていない。

 こう語ることで察しはついているだろうが、彼は今、絶賛命の危機に見舞われ中だ。

 突然だ。

 

 

 二つの影が、目の前に空から降ってきた。

 

 

 こう言われれば、オタクと呼ばれる人種であれば美少女が降ってきたと夢想するだろう。

 しかし現実にはそんな素敵なことは起きず、降ってきたのは少年と大男であった。

 降ってきた二人の片割れの少年が、造路の姿を視界に認めてこう言う。

 

「あちゃー、見られちまったか。記憶消去なんざ、俺できないんだが。うん、悪いな、あんた」

 

 少年は屈託のない笑顔で、こう言い放った。

 

 

「つぅ訳で、死んでくれ」

 

 

 理不尽だ。

 その思いが通じたのか、少年はにやりと笑った。

 

「安心しろ。俺はな、理不尽が嫌いなんだ」

 

 少年はとある方向を指差した。

 その先は、森林。

 木々が鬱蒼と生い茂っている、中々の面積を持つ森林である。

 

「あの森に入ってから、十秒まで待ってやる。そして俺はそのまま殺しに行く。お前はそのまま逃げ切れれば勝ち。殺されたら敗けだ。あっち以外の方向に行けば、俺は一も二もなく殺す」

 

 淡々と、そう告げられた。

 造路はあまりの非日常的なことが立て続けに起こってしまった故に、思考停止状態に陥っている。

 それ故に、少年の意図に気づけなかった。

 

 まず一つ。

 後処理の手間を省くため。

 証拠の隠蔽や、事件そのものの隠蔽には手間がかかる。

 その一つに、死体の後始末も含まれる。

 そのために死体を処理する作る場所としては、民家がある場所よりは森林のような場所の方が良いという訳だ。

 

 二つ。

 これは狩りだ。

 とある貴族の間で、キツネ狩りという遊びが流行っていた。

 動物の狩りは獲物を追い立て、追い詰めたところで息の根を止めるというのが主流である。

 キツネを人に見たてることで、そういう狩りをおこなっていた。

 少年にそのような下種な趣味はないが、人を殺すなら仕事としてではなく娯楽としてやった方が気分が良い。

 

 そして三つ。

 これが最大の理由だ。

 あの森林にまで運ぶのめんどくさい。

 

「クソ!!」

 

 そう悪態をついて、造路は走り出した。

 森までの距離は、百数十メートルと言った所か。

 そして件の森に入ってから、十秒というインターバル。

 このインターバルの間にどれだけ走りきれるかが肝。

 スタミナのことを考えるのならば、森には歩いて向かった方が良いのだが、生憎そんな冷静さは失われている。

 

「なんでこんなことになったのかなぁ!!」

 

 息が苦しい。

 心臓が早鐘を打つ。

 四肢がもげそうだ。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 けど、本当にそうなってもいい。

 一生分、ここで走りきってしまってもいい。

 ここを逃げられなければ、殺されるのだから。

 

「はぁい、お疲れ~」

「ガァ!?」

 

 右から、頭に衝撃が走った。

 造路は衝撃のままに倒れてしまう。

 そして咄嗟に、右を見る。

 そこには、長槍(・・)を前に突き出した格好になっている、先の少年がいた。

 

「お、お前、どうして俺より前にいるんだよ!?」

「ん? 走ったに決まってるだろ?」

 

 無茶苦茶だ。

 なにが理不尽が嫌い、だ。

 こいつは、元から自分を逃がすつもりなんてなかったのだ。

 これを理不尽と言わずになんという。

 そして遅まきに理解する。

 こいつは人間じゃない、人間では勝てない別のナニか。

 常識の埒外だ。

 

「悪いね、見られたからには死んでもらわないといけない。死人に口なしってな」

 

 ぐるん、と。

 長槍を手で一回転。

 

「い、いやだ、死にたくない」

 

 それは、心からの呟きだった。

 死にたくない、助かりたい、生きたい。

 その心からの言の葉に。

 

 

 一騎の英霊が応えた。

 

 

 それに呼応するかのように全身の血液が沸騰し、肉が灼かれ、神経が焼き切れるかのような熱量が迸る。

 そしてどこからかは与り知らぬが、一つの人影が少年へと目にも止まらぬ速さで肉薄した。

 

「英霊召喚だァ!? しかも、テメェ、どこから……ッ!?」

 

 少年の叫びを無視して、人影はその手にあった()で彼を薙ぎ払う。

 少年は驚く程飛んでいき、暗闇のせいもあるのだろうが、造路の視界から消えてしまった。

 

 信じられない。

 

 人間では絶対に勝てないであろう存在を、いとも容易く薙ぎ払ったのだから。

 今日と言う日は、散々だ。

 一生分走らされるわ、死にかけるわ、最悪の一言に尽きる。

 人影は、そうしてから言の葉を紡いだ。

 

「全く、呼び出されて早々、戦闘か。現世ってのは、人斬りが往々としてるのか?」

 

 そいつはありえない程の美貌を讃えた、女だった。

 腰にまで伸びた、美しいウェーブのかかった銀髪に宝石のような緑の碧眼。

 服装は三角帽子を被り、胸に布を巻き、その上に緑のコートを羽織っているだけと言うもので、痴女と称されても文句は言えないものであった。

 実際、健全な高校生である造路としては目のやり場に困っている。

 なにせ女のスタイルはモデルも顔負けというものであり、染み一つない美しい白い肌が、惜し気もなく晒されているのだ。

 

「物騒なものだ。しかも相手はサーヴァント。神秘の薄いこの時代の者たちでは、太刀打ちできないだろうに」

 

 そう独り言をごちて、女は片目だけで造路を見据えた。

 両目で見るのが億劫、という訳ではない。

 彼女の片目は、眼帯によって塞がれているからだ。

 女は無表情のまま、口を開いた。

 

「さて、これでも私は、初めて現界した身なのでな。どうしても言いたい台詞があるんだ。無意味なこの問答に付き合ってくれ、マスター」

 

 女は、黄金の槍を片手にこう言った。

 

 

「サーヴァント、キャスター(・・・・・)。呼び出しに応じて現界した。問おう、貴様が私のマスターか?」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 聖杯戦争

 

 万能の願望機、『聖杯』をかけて七人の魔術師によって行われる、闘争のことである。

 魔術師は英霊、サーヴァントを使役して、闘わせる。

 サーヴァントは七つのクラスにわけられ、マスターを憑代に現界する。

 

 剣士の英霊、セイバー

 弓兵の英霊、アーチャー

 槍兵の英霊、ランサー

 魔術師の英霊、キャスター

 騎兵の英霊、ライダー

 暗殺者の英霊、アサシン

 狂戦士の英霊、バーサーカー

 

 英霊とは、生前に偉業を成し遂げ英雄となり、死して世界に召し上げられ人間の上の存在、世界の守護者となった存在を指す。

 本来、英霊を使役するなど、到底できることではない。

 そこで、先に挙げた七つのクラス。

 『英霊の座』から情報をコピーし、英霊の力を落として、この七つのクラスに割り振り、サーヴァントという、早い話使い魔として使役するのだ。

 

 

 喜べ、諸君の願いはようやく叶う。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ます、たー?」

「…………ついてないなぁ。助けに応じたは良いものの、まさかずぶの素人だとは」

 

 キャスターと名乗った女は、自嘲するようにそうボヤいた。

 そして、ちらりと別の方向を一瞥する。

 いや、造路を殺しかけた存在(・・・・・・・・・・)がいる方向を、と言い直すべきか。

 キャスターは槍をその手に、そちらへと歩き出した。

 

「まぁ、いい。まずは敵の排除だ。状況の整理は、その後でしよう」

 

 キャスターは、一人の少年と相対する。

 青い髪をオールバックにまとめており、赤い瞳を宿した少年である。

 歳は、七、八歳に見える。

 その両手には、彼の身長を優に超える一本の長槍。

 とても年端もいかぬ少年に持てるようなものではないのだが、彼は容易に扱っている。

 

「驚いたな、キャスターがまさか槍兵の真似事とは。お前、もしかしてハンデのつもりか? だとしたら、すぐにやめろ。腸が煮えくり返る想いなんだよ、こちとら」

「吼えるな、貴様は戦士だろう? ならば交わすのは、言葉ではなく武のはずだが、ランサー?」

 

 その言葉が琴線に触れたのか、ランサーと呼ばれた少年は目を細め、槍を上段に構えて腰を落とす。

 対するキャスターは、自然体のまま。

 

 

「死ね、槍兵紛いの魔術師」

「その結果、もぎ取って見せろ」

 

 

 二人の姿が消えた。

 否、彼らは造路の目では捉えきれない速度で動いたのだ。

 剣戟の音は、聞こえる。

 但し、単一の音のみがずっと聞こえるという状態だ。

 わかりやすく言うのなら、一瞬も途切れずに一つの音のみを聞いている、といったところか。

 

『やれやれ、目で追うことすらできないとは。仕方ないから、感覚を共有してやる』

 

 キャスターは片手間で美しく細い指を躍らせ、言の葉を紡ぐ。

 

「アンサズ」

 

 

 世界が遅延した。

 

 

 いや、それは錯覚だ。

 世界に流れる時間は遅れてなどいない。

 これは、造路の中で流れ(・・・・・・・)ている時間が(・・・・・・)遅れているのだ。

 体内固有時間制御という魔術がある。

 それに似たようなものと考えるのが妥当だろう。

 

 これのおかげで、二人の攻防が見えるようになった。

 

 速度は、互角。

 技術はキャスターが上回っており、膂力ではランサーに軍配が上がっているようだ。

 目にも止まらぬ神速で、二人は槍で切り結ぶ。

 

「ふっ」

「おらァ!!」

 

 二人は互いに槍を強かに打ち合い、一度距離を取る。

 ランサーの目は先程とは打って変わり歓喜に満ちており、愉しそうに口元を歪めていた。

 

「へぇ、こいつぁ凄ェ。あんた、本当にキャスターか? この俺と槍で互角とは、恐れ入る」

「武芸百般、それが私でな。あらゆる武器を私は極めている。まぁ、最も得意なのはこいつだがな」

「ほう、そいつぁ良いな。そして、さっき刻んだのは、ルーン文字。俺と同郷か、北欧の英雄と当たりをつけさせてもらったが、当たってるか?」

 

 ランサーの問いに、キャスターは静かに笑った。

 

「どうだかな。だが、お前たちは私の真名には、絶対に辿りつけないだろうさ。なにせ、先入観が邪魔をする(・・・・・・・・・)

「へぇ」

 

 ランサーは心から嬉しそうに笑った。

 

「さて、どうする、ランサー。互いに初見。武の腕は互角。後は宝具のぶつけ合いが残っているが、真名をむざむざ明かすような真似はしたくあるまい。私としては、ここいらで分けにしたいのだが?」

「はっ」

 

 キャスターの提案を、ランサーは鼻で笑った。

 

「冗談だろ? あんたには、ここで敗退してもらう。まだ工房を作ってない状態でこれなんだ。作られちまったら、三騎士総出でかかってもちと厳しいと見たね、俺は」

「となると、雌雄はここで決すると? 斥候風情が大きく出たな」

「……ふん」

 

 キャスターは訝しげな顔をした。

 ランサーは、短気だ。

 良く言うならば真っ直ぐにして実直、悪く言うならば扱いやすく単純な人格。

 先の挑発に対しては怒るのではなく、不承不承ながらも認めたように見える。

 

「まァ、当たりだ。俺は斥候だよ。索敵をして、小競り合いをして、敵を消耗させる。そしてその後の本命が」

 

 

「■■■■■■■■■■■―――――――――――――ッッッ!!!!!!」

 

 

「俺の同盟相手である、バーサーカーって訳だ」

 

 

 キャスターは、考える。

 目の前の槍兵の真名はわからないが、自分と互角に打ち合った大英雄。

 それに加えて、目の前の大英雄を凌駕して余りあるであろう、バーサーカー。

 そして自分の後ろには、足手まといのマスター。

 

 

「ふむ、マズイな」

 

 

 まさかの参戦直後で絶体絶命。

 ついてないなぁ、ほんと。




あ、真命予想は勘弁してください、すぐわかっちゃうんでここの鯖たち。


書き溜めを放出する、てな感じでいくつもりなんですが、どの位のペースでやればいいんでしょうかね?
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