fate/some meaning   作:にがトマト

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10.さて、最初の勢力図がここになった

「これでは、私たちの陣営が孤立してしまうではないか」

 

 真夜中の学校の屋上にて、一人の翁がそう言った。

 彼が立っているのは、貯水タンクが設置されている高台。

 そこは造路たちが立っている場所より高所に位置するため、必然的に彼らを見下ろす形となっている。

 

「お主、何者だ?」

 

 セイバーが鶯華の盾となれる位置に立ち、翁にそう問うた。

 その答えに、彼は簡単に答える。

 

「決まっているだろう? 君たちと同じ、聖杯戦争の参加者だ」

「となると、あなたはアーチャーかライダー、そしてアサシンのどれかのマスターってことね」

 

 翁の答に、鶯華がそう言って、即座に立てた推論を口にする。

 

「さっきあなたは、孤立すると言った。ランサーとバーサーカーは同盟を組んでいて、今私たちも組もうとしている。そこまではいいとして、孤立するとあなたが言った原因は、他陣営も同盟を組んでいることを知っているから。となればサーヴァントは情報収集に長けた、キャスターかアサシン。そして消去法で、あなたはアサシンのマスターということね」

 

 パチパチ、と。

 鶯華の推論に、翁は拍手を送った。

 

「成程、面白い推論だ、お嬢さん。しかし、それの反例を挙げさせてもらおう。私が君たち、ランサー・バーサーカー同盟以外の同盟、それを知り得ているのは、そこと既に矛を交えているから。そう言ったら?」

「…………むぅ」

「おい、天童、ギブアップするの早すぎやしないか?」

 

 鶯華が反論できなくなったのを見て、造路は半眼になり、セイバーはため息を吐いた。

 

「だ、だって! 逃げるだけなら、サーヴァント二騎でもなんとかなりそうじゃない!」

「……………………はぁ」

 

 造路は今度こそため息を吐いた。

 だから今度は、彼が反論してやる。

 

「そいつは根拠としては薄いぞ、爺さん。残る三騎の特徴を考えればな」

「……ほう?」

 

 翁は興味深そうに続きを促した。

 

「アーチャーは遠方からの狙撃が得意。ライダーの本領は宝具。アサシンの本分はマスター殺し。アーチャーがもし二騎同時に戦いを挑まれれば、遠距離射撃の牽制をしながらの撤退戦をするしかなくなり、ジリ貧になるかアサシンにマスターを殺される。ライダーであれば、宝具の有効範囲外からの射撃、気配遮断からの不意打ちの警戒を余儀なくされて、いずれはマスターを殺される。と、なると安全に情報を収集できるアサシンしか、孤立しても生き残れない」

「ふむ、悪くない。だがな、少年」

 

 翁の声は少しばかり弾んでいた。

 この議論を楽しんでいるのだろう。

 しかし、それに待ったをかける者がいた。

 

「議論はそこまでにしてもらおう」

 

 痺れを切らした、キャスターだ。

 彼女は隻眼で、翁を睨みつける。

 

「貴様の目的はなんだ? 態々、二騎のサーヴァントの前に姿をさらした。その危険性を承知の上で、果たしたい目的とはなんだ?」

「ふむ、いいだろう」

 

 翁は少しだけ名残惜しそうに、目的を告げた。

 

 

「私は、君たちに同盟を申し込みにきたのだよ」

 

 

 翁の言葉は、ある種予想通りのものだった。

 特に驚くこともなく、彼らは翁の言葉に耳を傾ける。

 

「白状するが、私のサーヴァントはアサシンだ。しかし、どの陣営のマスターもガードが固くてね。暗殺が中々できない。だから、隙を造るために同盟を結びたいのだよ」

 

 その申し出に、魅力を感じない者は存在しないだろう。

 なにせ、同盟を結ぼうと言ってきているのは、アサシンなのだ。

 この聖杯戦争において、情報の勝ちは計り知れない。

 サーヴァントの真名、マスターの魔術の特性。

 この二つを知ることができれば、対策を立てることができて、己は有利に立つことができる。

 

「無論、|無料(タダ)とは言わない。私が知りうる限り他陣営の情報全てを、君たちに開示しよう。宝具の特性くらいは既に掴んでいる」

 

 この話は、美味い。

 いや、美味すぎる。

 しかしそれを承知の上で呑むメリットは、十分あるだろう。

 だが、造路は何故か、この翁のことを信用できずにいた。

 どうにも、胡散臭い。

 まるで、己が本性が存在しないかのような……

 

「お断りよ」

 

 造路が至高の深みにはまっていたら、鶯華がすぱっと彼からの同盟の申し込みを蹴った。

 翁は顔に渋みを含ませて、問う。

 

「何故かね?」

「三陣営の同盟だなんて、リスクが大きすぎる。それに、アサシンを使うよりも、|ここで潰す(・・・・・)メリットの方が大きい」

「……そうきたか」

 

 翁は苦笑した。

 この答えは、どうやら予想外であったらしい。

 と、なれば鶯華の次のアクションは、決まっている。

 

「やっちゃって、セイバー!!」

「承知した!!」

 

 

 ズンッッッッッッッッッッッッ!!!!!! と。

 屋上の床が陥没する程の勢いでセイバーが踏み込み、翁へと、いやアサシンのマスターへと肉薄せんとする。

 

 

「ふむ」

 

 しかし、翁に焦りは見えない、

 彼に向かっている脅威は、超常たるサーヴァントの中でも指折りのトップサーヴァント。

 それを相手に、この余裕。

 まさか、マスターたる彼がセイバーよりも強いとでも言うのか、と思った刹那。

 

「|アサシン(・・・・)」

 

 

 ギィィィイイイイイイン!! と。

 金属音が屋上に木霊した。

 

 

「ほう……」

「な!?」

 

 そして、目の前に広がった光景に鶯華は我が目を疑い、セイバーは感嘆の息を漏らした。

 なんと、真っ向からセイバーの剣は止められたのだ。

 それも突如として現れた、アサシンと呼ばれたサーヴァントによって。

 

「な、なぁ、キャスター」

「ん? なんだ?」

 

 造路も、少しばかり間の抜けた声でキャスターに問いを投げかける。

 

「アサシンって、あんた目立つな礼服に身を包むもんだっけ?」

「いいや。普通は着ないな」

「アサシンって、セイバーの剣を真っ向から受け止め、鍔迫り合いができるようなサーヴァントだっけ?」

「普通はありえない」

 

 新たなサーヴァント。

 それはくすんだ金髪に、髭を蓄えた白い礼服に身を包んだ壮年の偉丈夫であった。

 身長は、セイバーの長身に比べればかなり見劣りするが、それでも恐らく百八十はある長身だ。

 その男は、セイバーの剣を顔に苦渋を走らせながらも、しっかりと受け止めている。

 

「まったく、なんという馬鹿力。呆れた膂力だな、セイバー」

「……これはまた、面妖なアサシンもいたものだ。穏行に向かぬ礼服に身を包み、某の剣を正面から受け止めるとは」

「お褒めに与り恐悦。しかし生憎、返せるものが余にはない」

「あるぞ。お主の首級よ」

「残念ながら、それはやれん。一つしかないのでな」

 

 軽口を叩き終え、両者は剣を同時に押し出し、その衝撃で距離を取った。

 

「マスター、残念ながら余一人では、セイバーに勝ち目は薄いと見た」

「そうか……」

 

 翁はさして残念そうに見えない。

 それもそのはず。

 なにせ彼には、まだ手が残っているのだから。

 

「ならば、|彼も呼ぼう(・・・・・)」

 

 刹那、現れたるは金髪の剣士であった。

 

「いいでしょう、マスター。このアサシン、彼に加勢します」

 

 艶やかな金の長髪に、碧眼の美丈夫。

 その手にあるのは、ドリルのように捻じれた剣。

 

「じょ、冗談でしょう」

 

 鶯華が、信じられないとばかりに呟いた。

 その根拠を、彼女は自棄になったように叫んだ。

 

「あの二騎のサーヴァント、両方|アサシンの(・・・・・)|霊基を持ってるわ(・・・・・・・・)!」

「なんと、ということは、こやつら両方がアサシン一騎に収まるということか」

 

 ということは、あの二人は本当にアサシンなのだ。

 あの男は、自前で二騎のサーヴァントを抱えているということになる。

 なんという反則級のサーヴァントか。

 自分で召喚したサーヴァントだけで、複数のサーヴァントを得られるのだ。

 

 

「関係ないな!!」

 

 

 セイバーは裂帛の気合を迸らせ、渾身の一振りを放った。

 その一撃は、二騎のアサシンを吹き飛ばし、剣圧だけでアサシンのマスターに衝撃を与えていた。

 

「主ら程度のサーヴァントなど、二騎同時に相手取ろうと某に勝つなどことなどできぬ! せめて、倍の数を連れてくるといい!」

「なんと、出鱈目なサーヴァントだ……」

 

 セイバーの桁外れの剣撃に、アサシンのマスターは呆れたように呟いた。

 そして、彼の一喝にこう返答する。

 

「|ならばそう(・・・・・)|するとしよう(・・・・・・)」

 

 

 そうして、新たに二騎のサーヴァントが顕現した。

 

 

「む……」

「はは、冗談でしょう」

 

 今度ばかりは、セイバーも鼻白んだ。

 鶯華も最早乾いた笑みしか浮かばない。

 新手のサーヴァントは、黒髪に無精髭を蓄えたスーツに身を包んだ男。

 もう一人は、上半身が裸で、下には簡素なズボンのみという格好の手入れの行き届いていない髪に髭を生やした男である。

 

「アサシン、四人でセイバーを撃破しろ」

「「「「承知した」」」」

 

 こればかりはセイバーも不味いと思い、宝具を開帳する決意を固めようとし。

 

 

「そこまでだ」

 

 

 キャスターが開戦を制した。

 その一声に、その場の全員が彼女に視線を向ける。

 アサシンのマスターが、彼女に問いを投げる。

 

「ふむ、なにが、そこまでなのかね、キャスター?」

「これ以上の戦闘は、だ」

「私としては、売られた喧嘩を買ったに過ぎないんだがねぇ」

「……まぁ、そこの小娘が喧嘩っ早いのは認めよう。しかし、これ以上の戦闘は、得策ではないぞ?」

「ほう、何故かね?」

 

 キャスターはある方向に指を差した。

 そこにあるのは、夜空のみであるが。

 

「……成程。しかし、慎重過ぎではないか?」

「阿呆。私としては、お前と同盟を結んでいることが露見するのは好ましくないんだよ」

 

 セイバーの言葉に、キャスターはため息混じりに返した。

 アサシンの内の一騎、金髪の剣士がマスターに耳打ちする。

 

「成程。他陣営のマスターの使い魔がここにくるのか。いやはや、流石はサーヴァント。その視力には感服するばかりだ」

「それで、どうする? 私としては、ここは分けにしておきたいのだが」

「いいだろう、キャスター。ここは大人しく退こう。私としても、ここで他陣営に目をつけられるのは些か以上に早すぎるのでね」

 

 アサシンのマスターは一礼をした。

 そして、彼は名乗りをあげる。

 

「私の名は、ペセウス・ヴァリケアン。君たちの名を、聞いてもいいかな、少年少女」

「……天童鶯華よ」

「氷室、造路」

「造路君に、鶯華さんか。君たちの活躍に、期待させてもらうよ。アサシン」

 

 

 刹那、ペセウスの足元に魔法陣が現れ、彼の姿が消えた。

 

 

「転移魔術!?」

「……ふうむ、キャスター適正まで持つ英霊を確保しておるのか、あのアサシンは」

「……一筋縄ではいかないな、あのアサシン」

 

 既に、四騎のアサシンたちは霊体化して姿を消していた。

 マスターの元へ戻ったのだろう。

 セイバーはとりあえず目下の安全が確保できたので、マスターに指示を仰ぐ。

 

「それでは、マスター、どうする?」

「……そうね。正直、最優先で叩くべきなのは、ランサー・バーサーカー同盟だと思ってたけど、読み違いだった。最優先で排除すべきなのは、アサシンよ」

 

 造路は、ため息を吐いた。

 そして、不安そうに己がサーヴァントに話しかける。

 

「どうにも、過酷そうな闘いだな、聖杯戦争って」

「当然だろう。まぁ、今回のこれは、輪をかけてというのは否定しないがな。だが、安心しろ」

 

 キャスターは微笑みを浮かべ、造路にこう言った。

 

 

「何があっても、私が護ってやるから」

 

 

 この言葉に、造路は戦い抜く覚悟を再び固めたのであった。





このアサシン、チートだと思うだろ?
わしも思ってる。

fgo
今回、星5のネロさんとオルタさん両方ゲットした
嬉しい……
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