fate/some meaning   作:にがトマト

2 / 11
わかる、わかるぞぉ!
一年前のわしよぉ、なぜこれをプロローグに持ってこなかったぁ!
馬ぁ鹿、バァカ、儂のバァカ!


2.役者は揃った

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。

 降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

 とある建物の地下室に、少女の声が響く。

 これは、造路が通り魔に遭う三日前のことである。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 繰り返すつどに五度。

 ただ、満たされる刻を破却する」

 

 彼女の名は、天童鶯華(てんどうおうか)

 魔導の家、天童は五代続く名門である。

 そしてこの楠木市における、管理者(セカンドオーナー)でもある。

 管理者(セカンドオーナー)とは、魔術協会から霊地を任された名門魔術師のことを指す。

 この楠木市の地に根を張る魔術師はまず彼らに挨拶に行き、工房建設の許可を得なければならない。

 そして彼女は、その魔導の家の六代目当主候補なのである。

 

Anfang(セット)

 

 彼女がこの聖杯戦争に参加し、叶えたい望みは勿論、『根源』への到達。

 魔道の道を進む者ならば、必ずしも目標とするものだ。

 万能の願望機を以て、自分の代でその悲願、叶えて見せよう。

 

「告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ!」

 

 そのために両親は、聖杯戦争の開催地としてこの土地を提供した。

 魔力を溜め込むのに時間がかかってしまい、自分がこの闘争に身を投じることになったが、それは僥倖。

 なにせ成長途中であるにも拘らず、彼女は既に現時点で両親を超えているのだから。

 魔術回路の数は|人造生命(ホムンクルス)には一歩譲るものの、人間の魔術師の追随を許さない。

 この身であれば、例えバーサーカーであろうと十全の性能を発揮して見せよう。

 しかし狙うは『最優』のセイバーのみ。

 

「誓いを此処に。

 我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。

 汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!!」

 

 彼女の眼前に敷かれた魔法陣から、目が眩むほどの光が発せられた。

 視界が回復し、魔法陣の上に何者かが立っていることを認める。

 そいつは身長が三メートル近くある大男で、鎧を弾きださんばかりの筋骨隆々とした体躯に、腰には一振りの剣を提げている。

 しかしなにより、威圧感が違う。

 

 嗚呼、これは人の身では敵わない。

 

 鶯華は、溢れんばかりの才能に恵まれている。

 それ故に、他者から威圧されることなど一度もなかった。

 その一度目が英霊とは運が良いというべきか、それともそれ程の存在でもなければ威圧することすら叶わぬと彼女の資質を称賛するべきなのか悩ましい。

 

「……貴殿が、我がマスターか?」

 

 大男が、静かに口を開いた。

 彼の問いに、鶯華は頷く。

 

「ふむ、成程。供給される魔力の量、質ともに素晴らしい。地理に恵まれなかったが宝具は問題なく使え、かなりの性能を引き出せるだろうさ」

 

 大男は、静かに膝をついた。

 その所作一つだけで、鶯華は目を瞠る。

 なんと洗礼されているのだろう。

 この姿勢こそが、この男の在り様だと言わんばかりの流麗な所作であった。

 長年に渡り、何度も何度も繰り返したのだと、一目でわかるものであった。

 

「サーヴァント、セイバー。召喚に応じ此処に推参した。此度の生、貴殿に我が功業を以て、ここに必勝を誓わせていただく」

 

 

 勝った。

 鶯華は確信した。

 これ程のサーヴァントを引き当て、自分に従うと言ってくれたのだ。

 これで負けるのであれば、己の失策意外にありえない。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 キャスターはその隻眼を以て、バーサーカーを見据える。

 身長は百七十センチ程ということ(・・・・・)しかわからない(・・・・・・・)

 あのバーサーカーは見ようとすると、ぼやけるのだ(・・・・・・)

 威圧感の大小が目まぐるしく変化し、体色は虹色の如く変化する。

 まるで、己の存在そのものを自由に変えているが如く、掴みどころがない。

 キャスターは大体のあたりをつけて、艶めかしく息を吐いた。

 

「全く、凄まじい英霊だよ(・・・・・・・・)、あれは。なぜバーサーカーで現界させたんだか。バーサーカーでなければ、私も苦戦する程のサーヴァントになったろうに」

「ほう……」

 

 このキャスター、バーサーカーがどれ程のものかわかった上で、それでも負けるつもりはないらしい。

 自信過剰、という訳ではない。

 そう豪語するだけの武勇が、このキャスターにはある。

 正直、どうしてキャスタークラスで現界したのかわからない。

 

「それじゃあ、訊くがな、キャスター。俺とバーサーカー、同時に相手取って勝てるかい?」

「……全く、答えにくいことをズバズバと」

 

 キャスターは、造路へと視線を向けた。

 

「おい、マスター」

「な、なんだ」

 

 キャスターは、ランサーとバーサーカーへと静かに視線を戻しながら言う。

 

「お前は一旦、この場から離れるんだ。そして、安全圏だと思った場所で、令呪を使って私をその場所に瞬間移動させてくれ。ちとこの状況では、私も勝利を確約できないんでな」

「…………」

 

 流れるように下された指示に、造路はこう答えた。

 

 

「すまん、どうやるんだそれ?」

 

 

 キャスターは、静かに空を仰いだ。

 ランサーは、ツボだったのか口に手を当てて笑っている。

 バーサーカーは、微かに肩を震わせて…………お前実は理性あるだろ。

 

「いやぁ、肝の据わった兄ちゃんだ。良いねェ、目の前の異常に、もう慣れたか(・・・・・・)。あんたみたいな男がマスターだったら、さぞ面白かっただろうな」

「戯 が過ぎ ぞ。目の の敵 殲滅に 識を 向けろ」

「へぇー、へぇー、わかってるさ。そこは仕事だ、割り切ってやるよ。お前さんも、早く狂化を纏いな」

「承知」

 

 バーサーカーが、天に向かって吼えた。

 それに、キャスターは呆けたような顔をする。

 

「驚いたな。そいつ、狂化を自分の好きな時に使えるのか」

「うーん、ちょいとそいつはニュアンスが異なるんだが、懇切丁寧に解説してやる義理はないだろ?」

「…………全く、本当についていないな、私は」

 

 くるり、と。

 キャスターは槍を回して、ゆっくりと構える。

 刹那。

 

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッッッ!!!!!! と。

 大地に何かが突き刺さり(・・・・・・・・)、飛来物が爆発したのだ。

 

 

「なにッ!?」

「■■■■■■■■ッ!?」

「くはっ、狙撃手に感謝せねばな!」

 

 ランサーは驚愕しながらも、飛来物を寸分違わず叩き落とした。

 バーサーカーは飛来物と爆発をその身に浴びるが、一切負傷しない(・・・・・・・)

 そして、キャスターは。

 

「舌を噛むんじゃないぞ」

「うおわ!?」

 

 造路を抱えて、その場の脱出を試みる。

 しかしそれに、ランサーは吼える。

 

「逃がすかァ!」

「すまんな、ランサー。勝負はお預けだ」

 

 キャスターは指を躍らせ、言の葉を紡ぐ。

 

 

加速(rid)

 

 

 刹那、キャスターは最速の称号を冠するランサーを以てしても追いつけないであろう速度で、駆け出した。

 先に刻んだルーン魔術によって、加速したのだろう。

 

「クソ!!」

 

 ランサーも同じようにルーンを刻めば、キャスターを追いかけることができる。

 しかしそれをするには、一歩遅い。

 何故ならキャスターの姿は、ランサーの視界にはなかったのだから。

 これでは、追いようがない。

 

「如 とす のだ、ラ サー。マ ター らの指示 き いるか?」

「ああ、今きたぞ。狙撃手を潰せ、だそうだ」

「■■■■■■■■■■■■■■――――――――ッッッ!!」

 

 先の狙撃、バーサーカーも頭にきたのだろう。

 即座に狂化を纏い、戦闘態勢に入った。

 そしてランサーも、ある一点の方向へと目を向ける。

 

 

(勝負に横槍を許した屈辱、貴様を討ち取る武功によって雪がせてもらうぞ、アーチャー(・・・・・)

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「むぅ、一騎も仕留められなんだか。ランサーとバーサーカーが、こちらに向かってきておるな」

 

 そして、件の英霊ことアーチャーは、ランサーとバーサーカーが真っ直ぐこちらに向かってきているのを目視していた。

 彼の隣にいる男が、ため息をつく。

 

「アーチャー、今ので何故仕留めなかった?」

「いやはや、貴殿と昨日催した酒宴での酒が残っていたかな。狙いが逸れた」

「戯言を。泥酔した状態で、臣下の頭の上に乗った的の身を射抜いた貴方が、昨日の残った酒の余韻で狙いを逸らすものか」

 

 男の言葉に、アーチャーは不服そうな顔をする。

 

「しかしな、ライダー(・・・・)(ちん)は遠方からの狙撃による不意打ちで全てを終わらせるのは、どうかと思うのだ」

「戯言を。貴方は少数での奇襲、夜襲で成り上がったと言っても過言ではないだろうに」

 

 ライダーの言葉に、アーチャーは失笑する。

 

「それは、それしかできることがなかったというだけだ。朕の臣下の数は、少なくてな。邪道を進むしかなかっただけの話よ」

「ほう、それは詰まる所、セイバークラスであれば、あの二人とも正面から切り結べると?」

「それこそまさか。朕は、アーチャー以外で現界することはないだろうさ。なにせこの身は、弓を誇りとしている」

「そうか」

 

 アーチャーは弓を背中に納める。

 そして、ライダーに言った。

 

「ではライダー、今宵はここでお暇するとしよう。殿を頼む」

「承った。では、出てこい」

 

 

 ぐにゃり、と。

 ライダーの背後の空間が歪み、一体の神秘(・・)がそこに具現した。

 トカゲのような体躯に一対の翼を持ち、鋼をいとも容易く切り裂くであろう巨大にして鋭利な爪を持ち、万物を噛み砕く牙を生やした生物。

 

 

 竜種と呼ばれる、幻想種における頂点の中でも上位に位置する竜。

 そも幻想種とは、現代の生物とは異なり生きるのに魔力を必要とする。

 しかし竜種は吐息だけで魔力を生成し、その条件を己でクリアするという、とんでも生物だ。

 そして幻想種の頂点というのは伊達ではなく、戦闘力もとてつもなく高い。

 故に竜を殺した者は竜殺し(ドラゴン・スレイヤー)と讃えられ、即座に英雄となれる。

 ライダーは、その中でも上位に位置する存在を使役しているのだ。

 

「ライダーよ、どれ程の時を稼げると思う?」

「こやつは強いが、相手が相手だ。精々、二分と言った所だろう」

「おぉ、恐ろしいなぁ。やはりあの二人に正面から戦うのは、下策だな」

「違いない」

 

 アーチャーとライダーは笑い、踵を返す。

 刹那、背後が昼間のように明るくなった。

 竜の代名詞ともいえる、ブレスだろう。

 

 

 GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!

 

 

 しかし、流石は大英雄。

 竜種があげた叫びは勝利の雄叫びではなく、悲鳴。

 奥の手とは嘘でも言えないが、それでもこちらの切り札と言える代物であるはずなのだ。

 それを正面から圧倒しようとは。

 

「しばらく朕らは静観すべきだと思うのだが、貴殿はどう思う?」

「同感だ。私たちは正面きっての戦闘なんざするべきではない。暗躍して、寝首をかくのが一番いい」

 

 

 そして彼らは、その場から完全に離脱した。

 残ったのは竜の死体と断末魔に、ランサーとバーサーカーの苦渋に満ちた顔のみであった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 これが、聖杯戦争だ。

 あらゆる国、あらゆる時代からかき集められた英雄同士が殺し合い、覇を競い合う。

 

 

 しかし此度の聖杯戦争は、いつもと違う。

 

 

 なにせ一騎一騎全てが、究極の一だ。

 古今東西並び立つ者なしと謳われし武に、将来は一つの神話の最強を塗り替えたであろう才能に、全知を誇る叡智など。

 世に遍く名を轟かせた訳ではないが、それでも彼らは一種の頂点だ。

 彼らのそれはヘラクレスにも、アーサー王にも、英雄王にも比類するであろう。

 

 その頂点が、ぶつかりあうことがなかったであろう頂点がぶつりかあい、序列を競おうというのだ。

 

 これを奇蹟と言わずに、なんという?

 これに勝利すれば、願望は叶うことだろう。

 願いはあるか? 野望はあるか?

 ならば勝ち残れ。

 これ程の修羅場を潜るのだ、野望の一つや二つ、掬われるだろうさ。

 再び言わせてもらおう。

 

 

 喜べ、諸君。

 君たちの願いは、ようやく叶う。

 




ふふふ、アーチャーはバレないっていう自負がありますよ、これ。
ヒントは結構出してはいるけど、マイナーですからね。
逆にわかったら、その人異常ですよ、マジで。

あ、投稿は一日おきで行っていきまーす。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。