fate/some meaning   作:にがトマト

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説明回です。




4.何も知らない? これは重症だ

 造路は居間で正座させられていた。

 彼の正面には、キャスターが不機嫌オーラをかもしながら椅子に腰かけている。

 

「それでだ、マスター。聖杯戦争について、改めて説明しようか」

「ああ、頼む」

 

 造路は返事をしながらも、ちゃんとした服着てほしいなぁ、なんて考えていた。

 なにせ彼女は今、胸に布を巻き、その上に緑のコートを羽織り、簡素なズボンを履いてるだけと言う格好なのだ。

 露出が多く、容姿もいいのだから目に毒だ。

 なんて考えていることを彼女に知られると怒られるので、造路は口を噤む。

 

「まず、聖杯戦争には七騎のサーヴァントと七人のマスターで成り立っている。これはいいな?」

「あぁ。そいつらで殺し合いをして、聖杯を獲得する、だよな?」

「その通りだ。サーヴァントにはクラスというものがある。私の場合は、キャスターだな」

「キャスターってのは、本名じゃないんだろ?」

 

 造路の言葉に、キャスターは満足そうになずいた。

 

「サーヴァントってのは、守護者の『座』に登録されている記録を読み取り、さっき言ったクラスに振り分けられた英雄たちのことだ。このクラス名を名乗ることで、自分の真名を隠す」

「どうして真名を隠すんだ?」

「弱点や対策を練られないようにするためだ。英雄というのは、往々にしてロクな死に方をしていない。そいつの伝承を探れば、弱点を探ることも可能だし、宝具もどんなものかわかる」

 

 造路には一つわからないことがあった。

 

「そう言えばあの子供、えぇと、ランサーだっけ? あいつとの会話の時も言ってたけど、宝具ってなんだ?」

 

 その問いにキャスターは、ほうと漏らした。

 少しばかり、意外だったらしい。

 

「驚いたな。あんな状況での会話を、細かく覚えているのか」

「いや、あんな状況だからこそ、だろ」

「ふふ、少し見直したぞ、マスター」

 

 良かった。

 どうやら機嫌を直してくれたらしい。

 

「宝具とは、生前に愛用した武器や防具で伝説上の能力を再現する、|高貴な幻想(ノウブル・ファンタズマ)。真名を以って開放された宝具は、魔術では及びのつかない奇蹟を起こせるんだ。詰まる所、切り札だな。英雄と宝具はペアだから、宝具を知られると必然的に正体を知られる。正体が割れることの危険性はさっき話した通りだから、使う時は必殺ではないといけない」

「成程。それで、キャスターの真名はなんだ?」

 

 その問いに、キャスターは呆れたように頭を振る。

 

「あのなぁ。マスターがちゃんと魔術師ならまだしも、魔術のマの字も知らない素人に、過度な情報を教えることはできるはずがないだろう。暗示にかけられでもして、私の真名が知られでもしたらどうする」

「ぐぅ……」

 

 ぐぅの音しか出ない、正論だった。

 確かに造路は、魔術を使われたイチコロなのだから。

 

「それじゃ、クラスってのは、なんだ?」

「クラスというのは、その英霊の特色に該当する分類のことだ。剣士の英霊、セイバー。槍兵の英霊、アーチャー。弓兵の英霊、アーチャー。魔術師の英霊、キャスター。暗殺者の英霊、アサシン。騎兵の英霊、ライダー。狂戦士の英霊、バーサーカー。これが通常のラインナップだな」

「となると、キャスターは魔術師なんだな…………なんで槍扱うの? 魔術師なのに」

「……はっはっはっは」

 

 笑って誤魔化された。

 キャスター、おい、こっち見ろよ。

 目を逸らすなよ。

 

「まぁ、いい。そのクラスによって特徴が出たりするのか?」

「ん? まぁ、当然な。セイバーであれば、剣を使うし。ランサーであれば、槍を使うな」

「そしてキャスターも槍か?」

「茶化すな」

 

 キャスターはばっさり言い捨てた後、艶めかしくため息を吐く。

 しかしそれでも、説明を続けてくれた。

 

「クラスにも、当たり外れはある。『最優』とされているのは、セイバーだな。パラメータが全体的に高く、正面切っての白兵戦を得意とする。当たりは、こいつだな。で、ダントツの大外れが、昨夜お前も見た、バーサーカーだ」

「あの、大男か」

「そうだ。本来バーサーカーというのは、弱い英霊の理性を弾き飛ばすことでパラメータの低さを補うことが多いんだが、あれは超級の中の超級、トップサーヴァントだ。白兵戦に置いては、今聖杯戦争最強だろう。『最強』とされるクラスに、あれ程の英霊を宛がったんだから、当然だな」

「なら、バーサーカーが優勝候補筆頭なのか?」

 

 その問いに、キャスターは肩をすくめる。

 小ばかにされたようでムカッとしたが、造路は何も言わなかった。

 

「所が、この魔術世界は等価交換が常でな。バーサーカーというのは、狂化によってパラメータを引き上げるんだが、燃費がすこぶる悪い。強化の代償だよ。駄洒落じゃないぞ? その上に、あれ程のサーヴァントだ。燃費悪さは、最悪だろう」

「……成程」

 

 しかし、とキャスターはそこで前置きをした。

 造路がせっかく納得していたというのに。

 

「恐らくだが、あれの燃費は私の想定しているそれよりは幾分かマシだ。なにせ狂化を、任意で発動できるのだからな」

「けど、ランサーは、それだとニュアンスが少し異なるって、言ってなかったか?」

「あぁ、言ったな。どうやら、戦闘中は狂化を外すことはできんらしい。なにせあれは、狂っていない方が強いんだ。ならばわざわざ狂化する必要なんてない。だからこそ、幾分かマシ、と言ったんだ」

 

 造路はそれに、頷くしかできない。

 キャスターの説明は、本当にわかりやすくて助かる。

 

「それじゃあ、他のクラスの特徴を教えてくれ」

「そうだなぁ、じゃ、次はランサーだな。昨夜、遭遇したあいつだ」

 

 それに造路は思わず、顔をしかめる。

 なにせあいつとの出会いは、トラウマものなのだから。

 

「ランサーはバーサーカーと逆で、燃費がとにかく良い。槍兵は最速と謳われる英雄が呼ばれるんだが、あれは中でも一級品だな。私と互角に打ち合えたんだ、そこいらの大英雄なんかより強い」

「大英雄をそこいらって……」

 

 彼女にとって、どれくらいが強敵に分類されるのか、少し恐ろしくなってきた。

 

「アーチャーは狙撃手だ。昨夜、ランサーとバーサーカーとの戦闘に置いての、横槍の狙撃。あれの犯人は十中八九、アーチャーだろう。あいつらは総じて目が良いから、恐らくマスターの顔は割れている。気をつけろ?」

「英雄相手に、俺がどう気をつけろと?」

「それもそうだな」

 

 サラッというな。

 なんか、我ながら悲しくなってきたぞ。

 

「アサシンはまぁ、はっきり言って雑魚だ。正面切っての戦闘であれば、工房なしでも瞬殺できる」

「けど、脅威ではあるだろ?」

「当然だ。あいつらの本分は暗殺であって、戦闘ではない。気配遮断のスキルがあって、戦闘態勢に入られないと、私たちサーヴァントですら発見は困難だ。だがそれで不意打ちを許す私たちではない。故にこいつらの本分は、大抵がマスター狙い。夜道と寝首をかかれないように気をつけろ」

「先生、俺でもアサシンに勝てますか?」

「無理に決まってる。腐っても英雄だからな」

 

 ですよねー。

 

「ライダーは、本体の戦闘力は、あまり高くないことが多い。しかしその代わり、宝具が強力なものを複数ゆうしていることがままあるクラスだ。まぁ、使い所に誤らなければ、強いサーヴァントではある」

「となると、脅威度は他と比べれば低い?」

「ははは、英雄を侮るな馬鹿」

「ごめんなさい」

 

 キャスターの笑顔、怖かった。

 つい謝ってしまった。

 

「そして最後に、私ことキャスターだな。これは、バーサーカーの次に外れのクラスとされている」

「え?」

「なにせキャスターは、魔術師だ。セイバー、ランサー、アーチャーのことをまとめて三騎士と呼ぶんだが、こいつらは対魔力スキルというのを持っていて、魔術が効き難い。その上、強くもない。そして極めつけに、マスターも魔術師であるから手が被ることがあるというデメリットもある」

「そ、そんな」

 

 造路のそんな声に、キャスターは微笑む。

 その微笑は、彼を安心させるには十分なものがあった。

 

「安心しろ、マスター。世の中には、例外と言うものがある。それが私だ。言っておくが、私と言うサーヴァントは最強だ。インド神話最強だろうがギリシャ神話最強だろうが、私は絶対に負けん」

「なんと頼もしい!」

「ただしこの『神殿』内に限る」

「上げて落としやがったこの自称最強!?」

 

 キャスターはやはり、呆れたように話をする。

 

「あのなぁ。魔術師と言うのは工房、私の場合はそれのワンランク上の神殿という拠点で穴熊を極め込むことで最大の力を発揮するんだ。最大の力が発揮できないのに、勝利を確約できると思うか?」

「ほらそこは、お得意の自信過剰な発言でなんとか?」

「ははは、クソ生意気な口をきくのはこの口か? ん~? なんか言ってみろ」

「いふぇふぇふぇふぇ、ごふぇんふなふぁい(いてててて、ごめんなさい)!」

 

 静かに怒ったキャスターが、造路の頬を引っ張った。

 肉が千切れそうだ。

 

「ん? それだったらその、神殿だっけ? そこに引き籠った方が良くないか?」

 

 造路の問いに、本日何度目かわからないキャスターのため息が漏れた。

 なにか素っ頓狂なことを訊いてしまったのだろうか。

 

「もう既に、この家は私の神殿にしているぞ? 敵意のある者が入ってくれば、異界化させてある正門に閉じ込められ、私お手製の使い魔と怨霊カーニバルがお出迎えするというものだ」

「お前なにしてくれてんの!?」

 

 声を荒げてしまっても、仕方のないことだろう。

 なにせ与り知らぬところで家を人外魔境にされたのだ。

 家主としては、たまったものではない。

 

「この武家屋敷は、霊脈、詰まる所マナの通り道の上に建っていたんでな。そのマナを拝借して利用させてもらったんだが、所詮は通り道。汲めるマナの量は、霊地には遠く及ばないな。私の満足のいく神殿が建てられなくて、残念だ」

「いやいや、俺からしたら、かなりヤバく聞こえるんですけど?」

 

 本気で残念そうな彼女に対して突っ込んだが、キャスターはそれを鼻で笑った。

 

「こんな程度、私からしたら未完成も良い所だ。これがよそ様の目にさらされると思うと、恥ずかしくてたまらない」

「そのマナとやら、もっとたくさん汲めばいいだけの話じゃないのか?」

「所が、話はそう単純じゃないんだよ。例えば、川の中腹で水を汲むのと湖で水を汲むの、どっちが効率が良いと思う?」

「そりゃ、湖だろ」

「その通りだ。私がやってるのは、まさにそれ。私の満足いく神殿を作るとなると、どうしても霊地に拠点を移す必要があるんだ」

「じゃあ、行こう! 今すぐ霊地を確保しに行こう!」

 

 お家を人外魔境にされたままにされてはたまったものではない。

 それなら、よそ様を人外魔境に染めてやるとばかりの意気込みである。

 それにキャスターは、頭を振った。

 

「そいつは厳しいだろうな。なにせ私たちは情勢的に、不利に立たされている」

「? どうしてだ? 俺もキャスターも、手傷とか負ってないだろ?」

「なにも戦争とは、ドンパチやるだけが全てじゃない」

 

 キャスターは指を二本立てた。

 

「私たちが不利に立たされている要因は、二つだ。なにかわかるか?」

「霊地、詰まる所、拠点確保か?」

「そうだ。優秀な魔術師であれば、拠点を霊地に建てるのは当たり前。私たちが霊地に拠点を立てたいのであれば、ここを奪取する必要性があるんだ。魔術師ってのは、工房にいる時が一番強い。私も当然、神殿の外に出ることを余儀なくされるから、これはキツい」

「もう一つは、えぇと、数か?」

 

 キャスターは少しだけ、眉を動かした。

 

「ほう、なぜそう思う?」

「だって、ランサーとバーサーカーは同盟を組んでた。敵マスターも頭数に入れれば、こっちは一対四だ」

「……自分を戦力外だと自覚しているのは、情けないと嘆くべきか冷静だと唸るべきか」

「で、正解か?」

 

 造路の問いに、キャスターは少しだけ表情を柔らかくした。

 

「良い線はいってるが、不正解だ」

「えぇ~」

「正解はな、情報だ」

「……というと?」

 

 キャスターは、造路に対する評価を少しだけ上方修正する。

 素直なことは、良いことだ。

 詰まらないプライドが邪魔して、わからないことをそのままにするよりはずっといい。

 それに今回は命がかかっているのだから、尚のことだ。

 

「単純に、他勢力に対する情報がだよ。ランサーとバーサーカーが、同盟を組んでいる。その理由が、わからない」

「そりゃ、戦いを有利に進めるためじゃないのか?」

「勿論だ。それ以外に、同盟を組む理由などないからな。だが、同盟にはデメリットがある。言ってみろ、間違っても怒らないから」

「フリなんですね、わかります」

「違います」

 

 突然の質問に面食らったが、造路はすぐに考える。

 キャスターは、なにかと彼のことを馬鹿にしている節がある。

 ここは正解しておきたい。

 

「そりゃ、情報の漏洩と裏切りだろ?」

「正解だ。なにせ聖杯戦争は、バトルロワイヤルなんだ。同盟を組んだとしても、最終的には敵同士に戻る。その時のため互いに、敵の情報は死に物狂いでその間に収集するだろうし、いざ戦闘となれば自分の損害はできるだけ減らし、相手の被害を大きくしようと画策する」

「うへぇ、神経が参りそうだ」

「そうだな。フェアな心意気を持ってる相手でもないのなら、マスターは同盟を組むべきではないだろう」

 

 なにせ素人だからな、と。

 キャスターはそう付け加えて、説明を続ける。

 

「だがそのデメリットを無視して、ランサーとバーサーカーは同盟を組んだんだ。デメリットを承知でな。理由をいくつか推測はできるが、所詮は憶測だ。それで計画や方針を決定するのは危険だ」

「推測の中で、事態があまり悪くないものは?」

「バーサーカーの燃費は強い反面、悪いというのは、さっき言っただろう? 対して、ランサーの燃費は良いんだが、宝具が地味なんだ。それもまた強みでもあるんだが、バーサーカーに比べれば敵の仕留めやすさは負ける。バーサーカーのマスターは魔力を節約がしたくて、ランサーは確実に敵を倒したい、というものか」

 

 造路は覚悟を固めて、次の問いを口にした。

 

「最悪の、想定は?」

「……あの二人は超級、最低でも上位サーヴァントだ。その二人をして、同盟を組まざるを得ない程の強敵、あるいは難敵がいる、ということかな」

「その想定、当たってほしくないな」

「同感だな」

 

 そんな時だった。

 造路の腹の虫が泣き声を上げたのは。

 

「あ、悪い」

「いや、いいさ。もう昼時のようだし、説明も一段落といった所だろう。昼食を摂るがいいさ」

「キャスターは、食べないのか?」

 

 造路の言葉に、キャスターは苦笑した。

 

「私の体は、肉体ではなく、エーテル体。そもそも、死んでるしな。だから食事は勿論のこと、睡眠も私には必要がないんだ」

「けど……」

「気が引けるか? 所々、非常識なくせに、妙なところで一般人らしいな、マスターは」

 

 くつくつ笑うキャスター。

 そんな彼女に、造路は今更ながら言った。

 

「その、マスターって、やめてくれないか? なんか、むず痒くてさ」

「ん? そうか? なら、なんて呼べばいい? ていうか、未だに名前も聞いてなかったな」

「……そうだったな」

 

 造路は我ながら間抜けだと、自嘲する。

 しかし自嘲した所で彼女に名前を教えることはできないので、きちんと自己紹介をすることにした。

 

「氷室造路だ。漢字、わかるか?」

「いや、わからん。だがまぁ、マスターって呼び方は確かに堅苦しいな」

 

 キャスターは、小さな微笑を浮かべる。

 それに造路は一瞬だが、見惚れてしまった。

 

「それじゃ、お前をのことは、ツクロと呼ばせてもらうよ」

「下の名前かぁ……」

「どうした?」

「いや、なんでもない」

「おかしなやつだ」

 

 キャスターはそう言って笑う。

 それに造路は、少し気分を悪くした。

 口を開こうとして。

 

 

 ピンポーン、と。

 呼び鈴の音が響いた。

 





唐突ですが、キャスターのステ貼っときます。

【CLASS】キャスター
【ステータス】筋力C+ 耐久B 敏捷A+ 魔力A+++ 幸運E

大変だ!
こいつ幸薄鯖だぞ!
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