fate/some meaning   作:にがトマト

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6.楽しいか、兵共よ。その熱を忘れるな

 ランサーとバーサーカーの強襲。

 それはさながら、天災であった。

 それにキャスターは。

 

 

「お前ら莫迦か?」

 

 

 神速の槍捌きを以て応えた。

 黄金の長槍を大きく振り回すように振るい、軌道は楕円が如き弧を描きながらの、刺突の連撃。

 残像すら残さぬその絶技は、ランサーとバーサーカーへと襲い掛かる。

 

「な、うぉおおおおおおおおおおお!!」

「■■■■■■■■■―――ッッッ!!」

 

 人間であれば、理解するまもなく死が訪れるであろう連撃。

 しかし彼らはサーヴァント。

 人の身には余る功績をなし、世界に召し上げられし霊長最強の存在。

 ランサーは自慢の槍で、バーサーカーは腕を交差させることで防御する。

 

「はぁ!!」

 

 裂帛の気合が迸り、キャスターの槍が横薙ぎ一閃。

 それはランサーとバーサーカーを大きく後方へと吹き飛ばした。

 そして仕切り直し、と言わんばかりに槍を肩に担ぐ。

 

 

 魔術師が、槍兵と狂戦士の不意打ちを跳ね返したのだ。

 

 

「ったく、お前たちのマスターは莫迦だな。空間転移、ということは令呪を使ったんだろうが、貴重な一画をこんなことに使うなどとは。この私が不意打ち如きで揺らぐ程度の、脆弱な『神殿』を造るとでも思ったか?」

 

 キャスターの周囲には、輝く文字が宙に浮かんでいる。

 それらは全て、造路には読むことができない文字であった。

 

「チッ、抜かった。キャスター、貴様この『神殿』、ルーン文字の倉庫として使っているな?」

「ほう、一目で見抜くか。ランサー、お前も魔術に精通しているな」

「まぁな。だがまさか、一日で『神殿』を完成させるとは」

 

 それにキャスターは、納得がいったとばかりに頷いた。

 

「成程。お前たちのマスターは、まだ私が『神殿』を完成させていないと踏んでいたのか。だが、生憎だったな。私が神殿を形成するのに、材料はいらないんだよ。なにせ、ルーンを描くだけでいい」

「……あーあ、どうしたもんだか。こうして不意打ちが失敗しちまった以上、テメェの|生け捕り(・・・・)は無理そうだな」

「あ?」

 

 ランサーの言葉に、キャスターは怪訝そうな顔をする。

 そしてそれは、造路と雄優も同じくであった。

 それにランサーは短く答える。

 

「俺のマスターはな、テメェとの契約を考えてんだ」

「……となると、お前は自害させられるのか?」

 

 冗談、にしては質が悪い。

 なにせサーヴァントは、願いを抱いているからこそ聖杯戦争に参加する。

 それを破綻させるような所業。

 サーヴァントに殺されてしまっても、おかしくない。

 

「違ェな。俺とあんたの、二重契約が目的なんだよ、うちのご主人様は」

「なに?」

「なんだと!?」

「……どゆこと?」

 

 三者三様。

 それぞれの反応に、ランサーは満足そうに頷こうとして、いやいやと慌てて叫ぶ。

 

「そこの兄ちゃん、全く理解していないな!? まさか素人か!」

「その通り。見ての通り、私のマスターはずぶの素人だ」

「私に何もできずに殴り飛ばされていたからね」

「この場に俺の味方はいないのか!?」

 

 周りの散々な言い様に、造路はそう叫ぶ。

 しかし彼らは全く以て取り合わない。

 

「いいかね、造路君。マスターとサーヴァントは、コンビなんだ。一人と一騎が原則であって、マスターが独りで二騎も使役するなんてのは、普通ならあり得ない」

「本当にそうかな?」

 

 雄優の説明に、ランサーはにやにやと笑みを浮かべながらそう問う。

 それに彼は、顔をしかめた。

 

「どういう、意味かね?」

「監督役なら、知ってんだろ。冬木で起きた第五の聖杯戦争。その際現界したキャスターのサーヴァントは、アサシンのサーヴァントを召喚し、使役したと聞いてるぞ?」

「……………………ふぅむ」

 

 雄優は目を細め、ランサーに問う。

 

「もし、仮にだ。それを知っていたとして、なぜそれを私に話した? 口止めはされていないのかね? ここにいるのは、キャスターのサーヴァントだ。君が返り討ちに遭い、逆に使役される可能性を考えなかったのかね?」

「あー、俺が寝取られんの? んー、良い女だし悪くないかも……あ、冗談だって、マスター。ったく、こんなことでお小言とは、お堅いねェ」

 

 ランサーはそうボヤき、槍を構える。

 それに呼応するかのように、バーサーカーも臨戦態勢に移行した。

 そしてキャスターが、にやりと笑う。

 

「正直、私はほとんどの戦闘を『神殿』の外でやるものと思っていたんだが、これは僥倖。しかも、サーヴァントが二騎もかかった。ここで仕留めさせてもらうぞ」

「へェ、言うね。だが、TPOは弁えな。この『神殿』、あんたにとって満足のいくものじゃないだろ。それで、俺たち二人に勝てるのか? それに俺ァ、会話中に

 

 

ルーンを書いていた(・・・・・・・・・)、か?」

 

 

 その言葉の真意を、ランサーは即座に見抜いた。

 そして、眦を上げる。

 

「慢心と侮辱が過ぎるぞ、槍兵紛いの魔術師」

 

 ランサーは無駄に、長々と世間話に興じていた訳ではない。

 彼の一挙手一投足には全て、魔術的な意味が込められていたのだ。

 それらは全て、ルーン文字を描くための所作。

 敵がルーンを使うのならば、こちらもルーンで以て挑む。

 てっきり、気づいていないものだとランサーは思っていたのだが、そうではなかったらしい。

 

「気を悪くしたか? しかし聖杯戦争に参加したんだ。折角の一騎当千の英雄を完膚なきまでに叩きのめせる機会、逃すのもなぁ」

「……………………そうか。ならば、我が全霊を以て、貴様を捻じ伏せよう」

「■■■……」

「吼えるじゃないか、斥候に狂戦士」

 

 刹那、三人の英霊がぶつかり合う。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 そしてそれを見る影あり。

 その影の数は、三つ(・・)

 それらは全て、人間ではない。

 鳥、蝙蝠、梟と言った鳥類だ。

 それらは全て、使い魔と呼ばれる魔術師に使役される動物たちである。

 

 

 

 とある一室。

 

 

 

 初老の男が椅子に座しており、彼にしな垂れかかる美女が一人。

 美女は男を惑わす美声で、彼に訊く。

 

「ねぇ、マスター。今ぶつかってるサーヴァントは、ランサー、キャスター、バーサーカーなんでしょ? しかも、ランサーとバーサーカーは手を結んでる。キャスターに勝ち目なんてあるの?」

「逸るな、アサシン(・・・・)。確かに、キャスターのサーヴァントでその構図となれば、敗北は必至と思うのは当然のこと。しかし彼のキャスターは、ステータスの上では三騎士にも引けを取っておらぬ。しかも戦場は、彼女が構築した神殿。恐らく、互角以上の戦いを繰り広げるだろうな」

「……それはもうキャスターじゃなーい」

 

 男の言葉に、アサシンと呼ばれた女は呆れたようにそう言った。

 本人が聞いたら、烈火のごとく怒り狂うだろう。

 

「けど、私としてはランサーとバーサーカーが負けるとは、どうしても思えないんだけど」

「まぁ、その通りだろうな。二騎のステータスは、儂の目から見ても高水準。仕留めることなぞ……」

 

 男の言葉が、止まった。

 それにアサシンは訝しげな顔をする。

 

「どうしたの?」

「いやなに、もしかすると、早々に二騎の脱落があり得ると思ってな」

 

 

 

とある屋敷

 

 

 

 天童鶯華は呆れたようなため息を吐いた。

 彼女の隣には、甲冑に身を纏う、騎士が控えている。

 その騎士が、彼女に問いかける。

 

「いかがした、マスター」

「いや、ね。セイバー、一つ訊きたいんだけど、ランサーとバーサーカーって、間違いなく強かったわよね?」

 

 鶯華の問いに、セイバーと呼ばれた騎士は即座に頷いた。

 

「勿論。ランサーは某を以てしても仕留めきれなかった程の実力者であったし、バーサーカーは私を一度殺した(・・・・・)程の豪傑。某は彼らを英雄と讃えよう」

「その二人はね、今同盟を組んでるみたいなの。それで、交戦してるのはキャスター」

「交戦? そも、戦闘になるのか? キャスタークラスのサーヴァントでは、一分保てば奇蹟と言っても差し支えないだろうに」

 

 セイバーは小馬鹿にするようにそう言ってきた。

 このサーヴァント、忠節は尽くしても、誠意は尽くさない。

 令呪を以て自害させようかと考えたのは内緒である。

 

「それが、ね。魔術は自己強化のみにしか使わず、単純な槍の技量だけでランサーとバーサーカーを押してるのよ」

「……ほぉ」

 

 セイバーは愉快そうに笑みを浮かべる。

 それ程の強者がこの闘争に参加している、そのことが嬉しいのだろう。

 

「喜悦を浮かべるのはいいけど、勝てるのよね?」

「無論だ。なにせ某は、最強の英雄にして、某のマスターは最強なのだから」

 

 

 

 とある部屋

 

 

 

「うっわ、王様、凄いよ! あのサーヴァント!」

 

 満面の笑みを浮かべ、渾身の喜悦を含んだ声がその場に響き渡った。

 それを、弓を背負った男が嗜める。

 

「どこに喜ぶ要素がある。あれらはライダーのドラゴンを凌駕する大英雄だぞ。そしてそれを上回る英雄がいるとわかったのだから、少しは気落ちしろ」

「え? けど、王様、笑ってるじゃん」

 

 そう、少年の言うとおり、弓兵の顔には笑みが浮かんでいた。

 それに、使い魔を介してモニタリングした映像を移している男は、ため息を吐く。

 

「まさしく、この主あればこの従者ありだな、アーチャー」

 

 男の発言に、アーチャーと呼ばれた男はむっとしたのか言を返す。

 

「ライダー、今の言葉は撤回してもらおう。朕はこの坊主とは違う。強敵と相対する故の、武者震いだ」

「やれやれ、貴殿はどこか子供じみている。そんなことだから、そこな少年に呼ばれたのではないか?」

「そう言うな。朕はこやつのことを気に入っているのだから」

「はっ、彼の王が子供好きとは。世の中わからぬものよ」

「そういう貴殿のマスターは、いつになったら顔を見せるのだ? こちらのマスターは既に顔を晒しているというのに、不公平が過ぎるではないか」

 

 サーヴァント同士の、他愛のない会話。

 それを他所に、少年は映像に目を釘付けにされたままだ。

 

 

 武技の窮極を余さず凝らした、神域の闘いから。

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 雄優は思う。

 これは正しく、人の身では割り込む余地すらない神域の闘いであると。

 疾るは神速。振るわれるは怪力無双。披露するは窮極の武練。

 どれ一つとっても、彼らは『英雄』を名乗るに相応しいものと言えよう。

 

「両者とも見事ッッッ!!」

「ぐぉ!?」

「■■■■!?」

 

 キャスターは槍を肩に担ぎ、ランサーとバーサーカーの両者を称賛する。

 彼女は確かに、高揚していた。

 

「不完全とはいえ、我が『神殿』内における我が力を以てしても仕留めきれんとは! これ程の強者と死合えることに、運命の導きに感謝しよう!」

「……まったく、とんでもないねェ」

 

 キャスターの賞賛に、ランサーは苦笑混じりに呟く。

 ランサーの槍の絶技も、バーサーカーの狂化の中にあっても損なわれぬ感嘆すべき妙技が乗せられし剛腕も、ルーンによって強化されしキャスターの神技によって尽く返されたのだ。

 最早感服するほかあるまい。

 

「あんた、実際のとこ何者よ? 俺とバーサーカーを同時に相手取って優勢。できれば真名を教えてほしいんだが?」

「女に名を尋ねるのは結構だが、それより前に自分が名乗るのを忘れているぞ?」

「……あー、悪いがそれは俺の個人的な理由でできないんだ」

「つれないなぁ」

 

 和やかな会話がされているが、雰囲気そのものはとても重い。

 一般人であれば、彼らの覇気に当てられただけでも死にかねない。

 

「楽しい時間ではあったが、そろそろ幕引きといこう。お前たちの真名が知れないのは残念だ」

 

 キャスターはここで勝負を決める腹積もりだ。

 彼女の周囲に漂うルーン文字の数が増えていき、文字が輝きを放っていく。

 

怪力(ur)加速(rid)相乗(jara)強相乗(tirjara)相乗完結(jaraing)

 

 キャスターが詠唱を終えると直前、ランサーとバーサーカーは駆けだした。

 キャスターが詠唱を終えると同時、彼女は目を見開く。

 キャスターが詠唱を終えると刹那、彼女は。

 

 

 全員の視界から消えた。

 

 

 消えた、と見紛う程の高速移動。

 サーヴァントの動体視力を以てしても捉えきれない、その俊足。

 それが向かう先は。

 

 

 |背を向け逃走図る二騎《・・・・・・・・・・《のサーヴァント(・・・・・・・)

 

 

 ランサーとバーサーカーは、彼女が詠唱をしている間に、逃走を図ったのだ。

 不利なれば撤退をするのは、戦争の定跡だ。

 

「チッ、これならば逃走を妨害するルーンの一つでも仕込んでおくべきだったか!!」

 

 そんなことを言っても後の祭り。

 されど逃がす訳にはいかない。

 この絶好の機会で仕留められないのは余りに手痛い。

 この戦闘は、他の陣営にも見られているはずだ。

 となれば、これで漏れる情報を思えばここで競争相手は潰す必要がある。

 

「逃がすとでも!?」

「逃がすんだよォ! 壁は俺、足止めは頼んだ!!」

「■■■■■■■■■■■■―――――ッッッ!!」

 

 バーサーカーは素早く踵を返し、ランサーは槍を一振り。

 刹那。

 

 

 ゴォォッッッッッッッッ!!!!!! と。

 烈風が巻き起こり、塀を叩く。

 

 

 されど塀には、ヒビが入っただけであった。

 塀には、キャスターのルーン魔術による補強が掛けられている。

 対軍以上の宝具ならいざ知らず、対人宝具クラスの威力では容易く突破はできない。

 だが。

 

「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおら!!!!!!」

 

 目にも止まらぬ連撃と数えるのが馬鹿らしくなる烈風は、徐々に塀を破壊していく。

 破壊されるのも時間の問題だ。

 妨害するには。

 

「どけッッッ!」

「■■■■■■■!!」

 

 目の前の狂戦士が邪魔だ。

 狂戦士はその剛腕を一薙ぎする。

 空気がうねり、悲鳴をあげる。

 あれの直撃を受ければ、キャスターの細身では一たまりもあるまい。

 

「――――ふっ」

 

 故に彼女は瞬時に脱力をし、紙一重で攻撃があたらぬ間合いを見切り、そこで急停止。

 拳が鼻先を掠め、突風がキャスターの美しい銀髪を煽る。

 狂戦士が拳を振り切ると同時に、彼女は刺突の構えを取る。

 腕より槍の方が間合いは広い。

 それはバーサーカーが巨体で、キャスターが小柄であってもだ。

 なれば槍が届くのは必定である。

 

「まずは貴様だ、バーサーカー!!」

 

 神速の刺突が繰り出される。

 穂先は空気を斬り裂き、風切音はまさしく大気の悲鳴。

 それはまっすぐ、吸い込まれるかのようにバーサーカーの胸のド真ん中に

 

 

 刺さることはなかった(・・・・・・・・・・)

 

 

 辺りに響き渡った、金属音。

 バーサーカーの衣服は斬り裂かれ、切り口から覗くは、一枚のチャクラム。

 どうやら、あれが刺突を阻んだらしい。

 しかし、解せないことが一つ。

 

(なんだ、こいつの異常なまでの重さは!?)

 

 体を、押し込むことができないのだ。

 ルーン魔術で狂化した身体能力で、乾坤一擲の一撃を以てしてもその場から動かすことができなかったのだ。

 その衝撃が、僅かながだが、確かに彼女に隙を生み出した。

 

「■■■■■■■■■■■―――――――――――ッッッ!!」

「ぐぁ!?」

 

 その間隙を見逃さず、バーサーカーは一歩踏み出し、その剛腕を振るう。

 拳は真っ直ぐキャスターの顔面に向かうが、彼女は間一髪それを防御。

 されど衝撃は殺せず、後方へと大きく吹き飛ばされた。

 

「ナイスだ、バーサーカー! 塀は壊した! 撤退するぞ!」

「承知 た」

 

 いつの間にやら破壊され、風穴が空いてしまった塀。

 そこからランサーとバーサーカーは『神殿』を脱出。

 それをキャスターは、苦虫を噛み潰したような顔で見ていた。

 




やはりバフって殴るが最強(fgoより)
え? キャスターなのに白兵戦が強いとはどういうことだ、ですと?
白兵戦強い弓兵いるんだからいいでしょ(適当)
それと、ランサーとバサカのステ載せときますね。

【CLASS】ランサー
【ステータス】筋力B 耐久A 敏捷A+ 魔力B 幸運D 宝具B+
【クラス別スキル】
対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

【CLASS】バーサーカー
【ステータス】筋力A+++ 耐久A+(E) 敏捷A+ 魔力A 幸運A 宝具EX
【クラス別スキル】
狂化:B
 全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。

バサカのくせに、幸運がAもあるとは生意気よな……
それと、固有スキル載せないのは、わざとです。
載せてしまうと最後、真名たぶんバレるので。
とはいっても、もうバーサーカーは今回のでバレてそうだなぁ……
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