一筋の光も入らない、とても真っ暗な場所に“カレ”はいる
“カレ”がいるその場所は何もない空間
生き物や重力などもない、何もなく真っ暗な場所に“カレ”はいる
“カレ”は思考などを止めながら、暗い空間を漂い続ける
何も見たくないから、何も聞きたくないから、何も、知りたくもないから
あらゆる全てから逃げる為に“カレ”はここにいる
“カレ”がこの空間にきてからどれ程の時間が流れたのだろうか
何日?何ヶ月?何年?何十年?それとも何千年?それか本当は数秒なのかも知れないが、それは誰にも分からない
“カレ”がここから離れない限り、それは分からない事だ
“カレ”は朽ち果てるまでこの場所にいるつもりだから、そんな些細な事は何も関係ない
だけれども“カレ”はこの何もなく、とても真っ暗な空間から離れてしまう
絶対に光も入らない場所から眩い光が入り、“カレ”を連れ去った
まるで、“カレ”にここから離れていって欲しいように
そして“カレ”は光り輝く太陽や月、緑の木々や色とりどりの綺麗な花、そして色々な生き物がいる場所へとやってくる
“カレ”は無の空間から、いきなり色んなモノ溢れるところに飛ばされて驚愕する
放棄していた筈の思考を動かす
あの光は何だったのだろうか、何故自分はここにいるのか
“カレ”はあらゆる原因を考えたが何も分からなかった
元いた場所に戻ろうにもどこにあるのかは分からない為、“カレ”はそのままもう一度思考を止める
それから数日してどこからか男性がやってきて“カレ”を見つけた
男性は“カレ”を拾い上げると、しげしげと眺めてから持ち帰り、簡単に細工をすると値段をつけて店に置いた
色々な人達が通り過ぎ、品物を見ていたが、なかなか“カレ”は売れなかった
男性に拾われてからまた数日が経ち、一組の親子が通りがかると子供が立ち止まり、じーっと“カレ”を見つめていると、その様子を見た親が“カレ”を買う
子供はとても嬉しそうにして、その姿を見た親は微笑ましげに見ていた
“カレ”が売られてから一年くらい経ち、その間、“カレ”は子供といつも一緒にいた
子供はとても“カレ”を大切に持っていたが、思いがけない事で出会った『少女』に“カレ”渡す
子供は『少女』に、“カレ”をあげるのではなく預けるという形で『少女』に渡したのだが、その後に起こった出来事で、子供は『少女』に“カレ”をあげる事になってしまった
だが、『少女』はまた会ったときに“カレ”を返そうとしている
子供はもう『少女』に“カレ”をあげたのにも関わらず
“カレ”は何も考えたくはなかった
だけれども見たくないのに見てしまい、聞きたくもないのに聞いてしまい、知りたくもないのに知ってしまった“カレ”は思い、悩む
そして“カレ”は『少女』と関わる事にした
何も関わらずに滅んでいくのを待っていた“カレ”は『少女』と自分を大切にしてくれた子供の為に逃げるのを止めて、世界に関わる事で“カレ”と『少女』の物語が始まる