不思議なデバイスと少女   作:樹 亜斗

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第2話

 私は走っていた。

 

 頭の中から声がして、なのはちゃんが走ってどこかに向かうのを見て、私もなのはちゃんを追いかけて走る。

 

 途中、ピンク色の柱が立ち、私はそこになのはちゃんがいると確信しながら……。

 

 

 思ったよりも早くなのはちゃんがいる場所に着いて、またもや呆然とする。

 

 なぜなら周りの壁や地面がボコボコで、なのはちゃんはさっき見た服装と違っていたからだ。

 

 それに、なのはちゃんの向かい側にはアニメや漫画でしかお目にかかれないような、黒くて丸い、私と同じくらいの大きさのモジャモジャした生物がいる。……あれは毛なのだろうか? お手入れが大変そうだ。

 たった今ここに着いて、何も分からない私にはただじっと見ている事しか出来ないな、と思っていると、なのはちゃんとにらみ合っていたモジャモジャが動き出す。私の方に向かって……。

 

 

「ッ!!?」

 

「つばさちゃんっ!?」

 

 

 急に向かって来るモジャモジャに私は驚きすぎて何も反応出来ない。

 

 モジャモジャが私に向かってくるのが、とてもゆっくりになっているけど私はまったく動けなくて、これが走馬灯なのかな? と他人事の様に考えている。

 

 

 モジャモジャと私がぶつかるな、と思うと同時にモジャモジャは私の周りに突然現れた壁みたいな物にぶつかり、跳ね返えさられた。

 

 

「今です!」

 

 

 どこかで聞いた事がある様な声に反応するように、さっきまでびっくりして動けなかったなのはちゃんは持っていた杖をモジャモジャに向けるとピンク色のビームを出した。するとモジャモジャはいなくなり、代わりにひし形の綺麗な青い宝石が宙に浮かび上がっている。

 

 

「その宝石がジュエルシードです。ジュエルシードをレイジングハートで触れて下さい」

 

 

 なのはちゃんは側にいたイタチの言う通りに杖を宝石に触れると、杖の先にある赤くて丸い宝石みたいな物に青い宝石は吸い込まれて行き、なのはちゃんの服装も窓から見た服に戻っていた。

 

 

 私はいきなり起こった事に驚きすぎて言葉も出ないとはこういう事なんだな、と思っていると、イタチはぱたりと倒れる。

 

 なのはちゃんはイタチを抱きかかえ、私に詰め寄り、心配そうに聞いてくる。

 

 

「つばさちゃん! 大丈夫だった?!」

 

 

 私はそれに頷いて携帯に文字を打って画面を見せる。

 

 

〔大丈夫だけど、ここから早く逃げた方がいい〕

 

 

 なのはちゃんは何で逃げなくちゃいけないのか分からない感じだったので、私は周りを見渡す。

 

 そこには瓦礫となった壁や大きい穴の空いた地面と横たわっている電柱。そして遠くから聞こえるサイレントの音……。

 それらを見てなのはちゃんは私の言っている事が分かったのか、なのはちゃんの顔は焦っていて、大きな声で謝りながらなのはちゃんはイタチを抱きかかえたまま私と手を繋ぐと、そのままこの場所を走り去った。

 

 

 

※※※※※

 ぼろぼろになった場所から逃げ出して、少し離れた小さな公園になのはちゃんと私は着いた。

 

 

「ふぅ、ここまでくれば、はぁはぁ、大丈夫だよね?」

 

 

 息切れしながら言うなのはちゃんに私は頷き、確か近くに自販機があったなあ、と考えながらなのはちゃんに〔ちょっと待ってて〕と伝える。

 

 

 自販機で適当な飲み物を買ってから戻ると丁度イタチが起きたのか、ベンチに座っているなのはちゃんの膝の上にちょこん、とかわいらしく二本の後ろ足で立っている。

 私はとりあえず買って来たジュースをなのはちゃんに渡してから私もベンチに座る。

 

 

「ありがとう、つばさちゃん」

 

 

 なのはちゃんはお礼を言ってからジュースの蓋を開けて飲む。

 

 私も自分の分の飲み物を開け、ペットボトルの蓋にその飲み物を入れてからイタチに渡す。イタチもお礼を言うと、蓋の中に入っている飲み物を飲み、私もイタチが飲むのを見てから飲んだ。……やっぱり走った後はアクエリでしょ。

 

 

「すいません」

 

 

 いきなりイタチが謝ってきて何で謝るんだろう? と思う。別に今さらイタチが喋っている事には驚いてはいない。さっきも喋っていたし、モジャモジャの変な生き物もいたからね。

 

 

「怪我は大丈夫なの?」

 

「助けて貰ったおかげで魔力を怪我の方にまわせる事が出来たのでほとんど大丈夫です」

 

 

 イタチはそう言うと身体を振るわせながら包帯を取り、私はイタチの身体を見ると確かに傷がないように見える。

 

 

 魔力、か。そうするとなのはちゃんのビームは魔法なのか。……という事はなのはちゃんは本物の魔法少女になったのか。マスコットもいるし。

 

 

 私がそんな事を考えている間になのはちゃんは自己紹介をし始めて、イタチがユーノという名前だと分かった。

 

 

「すいません。あなた達を巻き込んでしまって……」

 

「なのは、だよ。隣の子はつばさちゃん。ユーノ君、わたしたちは大丈夫だから平気だよ。……ここじゃあ落ち着かないからわたしの家に行こう」

 

 

 イタチのユーノは申し訳なさそうに言い、なのはちゃんはユーノを励ますように言うが、ユーノはまだ落ち込んでいる様子だ。

 

 

「つばさちゃんもわたしの家に来るよね?」

 

 

 なのはちゃんは私にそう聞いてきたけど、家に来るのかと言う意味と同時に泊まらないか、と言う事も入っていると分かったので私は泊まるのは無理だと伝える。するとなのはちゃんは残念そうにしていた。

 

 

 何しろ家にいる酔っ払いが心配なので。特に夕菜さんが……。

 

 

 ユーノはなぜだか不思議そうな顔で私を見ていて、なんだろうと思い、気がつく。

 

 

〔なのはちゃん、私が声が出せない事を伝えてもらっていいかな〕

 

「え、うん。わかった」

 

 

 なのはちゃんはユーノに伝えると、またユーノは私に謝ってきた。

 

 私は慌てて気にしていない事をジェスチャーで伝えると、ユーノは何かに気がついたように喋る。

 

 

「つばささんも魔力を持っているみたいなので念話でなら話せられるかも知れません」

 

「念話ってテレパシーのこと?」

 

「はい、そうです。早速やってみましょう。まずはデバイスを持って念じて下さい」

 

(つばさちゃん、聞こえる?)

 

 

 なのはちゃんは赤い玉を握りしめ、目を閉じたと思えば、私の頭の中から声が聞こえてきて、びっくりする。

 

 なのはちゃんは目を開けながらもう一度聞いてきて、私は首を縦に振り、なのはちゃんから赤い玉を貸してもらい、私は念じてみる。

 

 

(あーー。本日は晴天なりー、晴天なーりー)

 

「聞こえたよ! つばさちゃん!! でも、何でその言葉なの?」

 

(なんとなく、だよ)

 

「そっかぁ」

 

 

 なのはちゃんに貸してもらった赤い玉を返して私はユーノに聞く。

 

 

(私もつばさでいいよ。あと、さっきモジャモジャに襲われた時、助けてくれたのはユーノ?)

 

「いえ、僕は見ている事しか出来ませんでしたから違います」

 

「えっ!? あれ、ユーノ君じゃなかったんだ」

 

 

 なのはちゃんとユーノじゃなかったら何だったんだろう?

 

 私は疑問に思うが携帯の時計を見て、なのはちゃん達に言う。

 

 

(もう時間が遅くなっちゃうから早めに帰ろうか。一応、かなえちゃんには遊んでくるって伝えているけど心配するだろうし)

 

「それもそうだね。つばさちゃん、帰ろうか」

 

 

 なのはちゃんと手を繋ぎながら帰る。普通に歩いていたけどいつもより少し早く感じたのは気のせいではないだろう。

 

 

 

※※※※※

「どうしたの? つばさちゃん」

 

 

 私がいきなりユーノに喋るのは念話で、と言ったのを疑問に思ったのか不思議そうになのはちゃんは聞いてきたので、私は携帯で素早く打った文字をなのはちゃんに見せる。

 

 

〔もうなのはちゃん家の近くだから用心しといた方がいいかな、と思って。たぶん恭也さんや美由紀さんは玄関らへんにいるだろうし〕

 

「えっ!?」

 

 

 なのはちゃんが驚きの声を出すと同時になのはちゃん家の玄関に着いた。そしたら思った通りに二人はいた。

 

 

「お帰り、なのは。こんばんは、つばさちゃん」

 

「お帰りなさい、なのは。つばさちゃんはいらっしゃい」

 

「お、お兄ちゃん!? お、お姉ちゃん!?」

 

 

 なのはちゃんは内緒で家を出てきたって言っていたけど、士郎さんと恭也さん、美由紀さんは剣術やっているから気配とか分かるんじゃとか思ったんだ。だからなのはちゃんが家を出たのは分かってると私は考えた。

 

 それで中々帰って来ないなのはちゃんを心配した二人は玄関で待っていると思い、士郎さんは家の外に出ないで中で心配してるとも考えていたけど、自分の予想が当たって私は物凄くびっくり。

 

 

 私はそんな事を考えながらも恭也さんと美由紀さんに挨拶を返していたら、なのはちゃんは恭也さんに「こんな夜にどこに行っていたのか」、と静かに聞かれていたが、なのはちゃんは上手く言えない様子だ。

 そして美由紀さんがなのはちゃんがとっさに後ろに隠したユーノを見つけてしまう。

 

 

「わっ! かわいい!! なのははこの子が心配で見に行っていたの?」

 

 

 なのはちゃんは頷くと、恭也さんは言い聞かせる様に言う。

 

 

「だとしても内緒でこんな時間に出かけるのは良くない」

 

「ごめんなさい」

 

 

 なのはちゃんは落ち込みながら謝る。

 

 恭也さんはまだ何かを言おうとしていたけれど、美由紀さんに止められ、なのはちゃんに、もうこういう事はしないと約束をすると無事に解決をしたようだ。

 

 

 なのはちゃんも家に着いたし、私も家に帰る事を伝えると、二人は少々驚いた様子で、なのはちゃんは少し寂しそうだった。

 なのはちゃんには少し悪いな、と思って私はまた今度なのはちゃん家に泊まる事を約束したら嬉しそうにしてたので私はほっとする。

 

 

 恭也さんは家まで送ろうか? と聞いてくれたけど、すぐ近くだからと断る。

 

 私は軽くなのはちゃん達に手を振ってから走って自分の家に行く。その時に念話で(おやすみなさい。また明日)となのはちゃんとユーノに伝えると、二人とも念話で返してくれた。

 

 

 

※※※※※

 家に帰ると玄関で待っていたのは真っ赤に染まっていた夕菜さんだ。

 

 

「こりゃ~! きょりょもが、こんにゃじきゃんみゃであしょんじゃあ、いけましぇんっ!!」

 

 

 夕菜さんはそう言うと同時に私に向かって突進してきて、私を抱きしめようとしたんだろうけれど、私には夕菜さんを上手く受け止める事が出来ずにそのまま後ろに倒れる。

 

 

 

 目を開けるといつの間にか自分のベッドの上で、夕菜さんに抱きつかれた後はどうしたんだろうと思いながら起き上がる。

 

 とりあえず小腹が空いたので軽い物を食べようと冷蔵庫に向かう。確か、プリンがあった筈だし……。

 

 

 下に下りて見ればとても凄い事になっていた。何がって、居間の状態が……。

 

 まずは大量の空き缶と瓶が転がっていているし、食器はそのままだし、夕菜さんは服がはだけていたり、泣いていたのか涙の跡がついていて、何故だか「つばさちゃん、ごめんなさい」と繰り返し謝りながら一升瓶を抱えて眠っている。

 私はプリンを後にして未だに私に謝ってくる夕菜さんに掛け布団を掛けて、転がっている空き缶や空の瓶をゴミ袋に入れていく。そして食器は台所のシンクの中に入れ、お湯を張っておく。後はかなえちゃんがやってくれるだろうし……。

 

 そう思い、そう言えばかなえちゃんはどこだろうと考えていたら丁度、全裸のかなえちゃんが「良いお湯だったぁ」と言いながらタオルを肩に掛けてやってきた。

 

 

「おっ、つばさ。どうしたのさ?」

 

 

 私は冷蔵庫から出したプリンをかなえちゃんに見せると、かなえちゃんはなるほど、と呟きながら頷き、冷蔵庫から紙パックの牛乳を出した。

 

 かなえちゃんは紙パックを持って量が少ないのが分かったのか、私に「全部飲んで良い?」と聞いてきたので私は頷くと、かなえちゃんはそのまま紙パックに口を付け、ごくごくと一気に飲みほす。

 

 

「ぷっはー! やっぱり風呂上がりは牛乳だよねぇ!!」

 

 

 とても良い飲みっぷりを見せたかなえちゃんは「今日はなのはちゃんと何して遊んできたのさ?」と私に聞いてきて、私はそれに答えようとするけど、今は携帯を自分の部屋に置いてきたので、どうしようかと思っていると、かなえちゃんは自分から聞いてきたのに、まぁ良いかと話し出す。

 

 

「つばさ、危険な事は止めときなよ。心配する人がいるんだから」

 

 

 かなえちゃんは真面目な表情で、そして本当に心配そうな目をしながら言うものだから、私は少しきょとんとしたけどすぐに私も真面目に頷き返す。

 

 それを見たかなえちゃんも頷くと、私の頭を軽く撫でてから「それ、食べ終わったら早く寝るんだよー」と言いながら紙パックをごみ箱に捨てて、かなえちゃんは自分の部屋に戻って行く。

 何だったんだろう? と思ったけど、かなえちゃんが私を心配してくれてるのは見ていたらよく分かる。普段はふざけていて、ちゃんとした主婦に見えないかなえちゃんも意外にしっかりしている部分がある事を私は知っている。

 

 

 プリンも食べ終わってそれを片付け、私はかなえちゃんの言う通りに自分の部屋に戻ってふと、疑問に思う。

 

 

 そういえばいつの間にパジャマに着替えたんだっけ?

 

 

 まぁ、良いか。たぶん、かなえちゃんがやってくれたんだろう、と私は思いながら、ベッドに寝転んで電気のスイッチを押して部屋を暗くして眠る。

 

 




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