不思議なデバイスと少女   作:樹 亜斗

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第4話

 どこかで見た女の子と、女の子よりも五、六歳くらい上の男の子の二人がお喋りをしている。

 

 

 そこは西洋人が多くて日本ではない、どこかの国の飲食店だと分かる場所だった。そこそこ賑わっているお店で、その中でその女の子だけが今にも泣きそうな顔をしていて、そこだけ別の世界みたいだな、と私はなぜだかそう思った。

 

 

 女の子もだけれど、男の子もどこかで見た子だな、と思い、もう一度、女の子を見て思い出す。

 

 

 この子は私で、これは昔の夢だ。

 

 

 そう気が付くと同時に、視点が昔の私と重なる。

 

 

 私が去年の夏休みに我が侭を言い、父さんの仕事について行った時の出来事で、目の前にいる男の子は私が迷子になった時に親切にしてくれて、その後もお世話になった家族の一人息子だ。

 

 そして、この場面は私が日本に帰る少し前の時の様子だった。

 

 

「また、会えるよね?」

 

「うん、会えるよ。今度はボクが日本に行って、会いに行くよ」

 

 

 私は涙目になりながら男の子に言うと、男の子は日本の言葉を返してくる。何故なら男の子とその両親も、日本のアニメや漫画が大好きで、それを見る為に日本語を勉強したからだそうだ。

 

 

「本当に?」

 

 

 私はまだ信じられないのか、もう一度、聞いていて、男の子は私を安心させるように微笑んで言う。

 

 

「うん。本当だよ。心配なら、これを預かっていてよ」

 

 

 男の子は自分の胸にぶら下がっている、斑模様の丸い宝石を私の手のひらに渡してくる。

 

 それは、男の子がとても大切にしていた物で私は驚き、彼の顔を見る。

 

 

「ボクが日本に行って、また会えた時にでも返してよ」

 

 

 微笑みながら言う男の子のその言葉で私は納得したのか、頷き、涙目だろうけど、私は男の子に向かって笑い返した。

 

 男の子は頬を少し染めながら、どこか慌てたように、お店の出入口の方を見て、言う。

 

 

「それにしても、遅いなあ。母さん達はどこまで行ったんだろう?」

 

 

 私もつられて、お店の出入口あたりの所を見ながら、「そうだね。ほんとにいつ、戻って来るんだろう」と返すと、出入口付近の、他のお客さんが騒ぎ出す。

 

 何か言い争いしていたのは分かっていたけど、それが激しくなったようで、争っていた一人が、ポケットから何か黒いモノを取り出して――。

 

 

 

※※※※※

 そこで、目が覚めた。

 

 

 なぜか、私は涙を流していて、不思議に思いながら、さっき見ていた夢を思い出そうとするけど、ズキッと頭が痛くなるから、思い出せない。

 

 いつも、そうだ。あの日の事や、あの後の数日間を思い出そうとすると、頭が痛くなるし、意識も遠くなる。

 

 父さんにも一回、あの日の事とかを聞いても、とても辛そうに傷ついた顔をするから、私はそれ以来聞いていない。父さんの傷ついた顔は見たくないから……。

 

 だから、あの日やあの後の事を知るのは、諦めた。

 

 特に、知りたいとは思わないし、それにまた、あの家族に会えるだろうから、その時に聞けばいいと思ったからだ。

 

 

 でも、少しだけ気になる事がある。

 

 それは、夏休みが終わって、秋くらいになってから、時々ぽっかりと穴が空いたように、記憶が抜け落ちる事だ。

 

 ……まぁ、でも、それはあんまり私は気にしていない。両手で数えられるだけだし、お医者さんも大丈夫だって言っていたしね。

 

 

 

 そんな事を考えながらベッドの上で、ぼーっとしていると、携帯が大きく鳴ってびっくりする。

慌てて私は携帯を見ると、アラームだった。

 

 いつもの起きる時間のアラームで、それを止める。頭が少しだけ痛むけど、ベッドから下りて、洗面所に向かう。

 

 途中、かなえちゃんと会わなくて良かったと安心する。

 

 今の私の顔は泣いたから、酷いだろうし。……かなえちゃんに、いらない心配はして欲しくないからね。

 

 

 

 顔を洗い終わった後、いつものように居間へ行くと、爆発でも受けたかのような、物凄い寝癖のまま、かなえちゃんは朝ご飯の用意をしていた。

 

 

「おはよう、つばさ。ご飯はもうすぐ出来るから、もうちょい待っててー」

 

 

 かなえちゃんの言う事に私は頷いて、いつもの椅子に座って思う。

 

 その寝癖が、物凄く気になってしょうがない。どうなったらあんな風になるんだろう?

 

 かなえちゃんの寝癖を気にしながらも、テレビを付けると、天気予報がやっていた。

 

 今日も晴れか、と思っていると、焼きたての食パンがテーブルの上に置かれ、パンの次にはサラダとゆで卵が置かれる。

 

 パンは厚切りで、ふんわりしていて、更にパンの焼いた香ばしい香りがして、とてもおいしそう。……まるで喫茶店のモーニングだな。

 

 

 かなえちゃんと一緒に手を合わせてから食べる。

 

 まずはパンを一口よりも少し大きく千切り、それにバターを塗り、食べる。予想よりも、この食パンはふんわり柔らかで、でもサックリとしていて、おいしい。

 

 そして次にサラダを食べると、みずみずしく、しゃきしゃきしている。ドレッシングも野菜の甘味や旨味を殺してなくて、とてもおいしい。……特にこのトマト。何だろうか、この甘さは。今まで食べたトマトは何だったのだろうか、と疑問に思うくらいにおいしい。

 

 最後のゆで卵は、塩だけで食べると……普通のゆで卵の味だ。でも、おいしいかった。

 

 

 

※※※※※

 ご飯も食べ終えて、少しだけ早いけど学校に行く。

 

 いつもなら誰かと会ったりするけど、今日は珍しくなのはちゃんや雫ちゃん達と会わずに、一人で登校する。

 学校に着き、教室に入ると、いつもなら挨拶をされるのに、なぜだかよそよそしくて……それに何だか怯えられている? 感じがする。

 

 

 どうしてだろう? と考えていると、雫ちゃんが私の席に来て、元気よく、挨拶をしてきた。

 

 

「おはよう! つばさ!」

 

〔おはよう、雫ちゃん。ところで他のみんながよそよそしいのは何で?〕

 

 

 私はメモ帳に文字を書き、それを雫ちゃんに見せると、雫ちゃんは困ったように笑い、話す。

 

 

「あー、昨日のドッジボールの事だろうねー」

 

〔私が顔面キャッチした事?〕

 

「うん。その後の事何だけど……」

 

 

 雫ちゃんが話し出した時に、丁度チャイムが鳴って、雫ちゃんは自分の席に戻って行く。夕菜先生も教室に入ってきたので、雫ちゃんの話しはお預けになってしまった。

 

 みんなが、よそよそしくしている事を聞けなくて残念に思い、休憩時間の時に聞けば良いか、と考えたけど、なぜだか今日は雫ちゃんと話しが出来ない。

 

 雫ちゃんのところに行って、話しを聞きに行こうとすれば、夕菜先生に用事を頼まれるし、今度は雫ちゃんに用事が出来て、話しが出来ない。だから、お昼になっても結局、みんながよそよそしい理由は分からないままだ。

 

 でも、クラスのみんなは時間が経っていくと段々、態度がいつも通りに戻っていって、私は最初の様な、よそよそしかった時の事は気にならなくなっていた。ただ、ほんの少しの人達はよそよそしい、というより、変なものを見るような目で私を見ていたのは、少しだけ疑問だった。

 

 その後はそのまま授業も終わり、友達と遊んだりした後に家に帰って、ご飯を食べて、お風呂に入って寝る。

 

 そんないつものような一日だった。

 

 だけど、いつもより少しだけ早目にベッドに入って寝る。何しろ、明日の朝は早起きをして、なのはちゃんと一緒にユーノから魔法を習うからだ。

 

 明日は魔法を教えて貰うので、わくわくしながら眠る。

 

 

 

※※※※※

 通常よりも早い時間に起きた朝は、とっても眠たい。結局わくわくしすぎて、普段の時間より少し遅く寝たので、いつもより眠い。

 

 魔法を習うためだと思いながら、頑張ってベッドから下りる。そして、昨日の夜の内にかなえちゃんに朝が早い事を伝えていたからか、リビングには朝ご飯用のおにぎりが二つ置いてある。

 

 私はそれを持って、なのはちゃんと待ち合わせの公園に行くと、もうなのはちゃんとユーノはいた。

 

 

(おはよう、なのはちゃん、ユーノ。待った?)

 

「おはよう、つばさちゃん。ううん、わたしも今来たところだから、大丈夫だよ」

 

(そう。なら、良かったよ)

 

 

 そうして始まったユーノの魔法の説明は、私にとって難しいものでした。

 

 

 ……私の思っていた魔法と全然違う。

 

 もっとファンタジーっぽいものかと思っていたけど、理数系の知識が制御や構築に必要らしい。

 

 魔力は分かるし、魔力の源でもあるリンカーコアもまあ、何となくでも分からなくもない。

 

 でもね、算数はダメなんだよ。だって、私は文系何だもの……。

 

 

 ユーノの説明を聞いた私は早々に諦めて、なのはちゃんの練習風景を眺めている。

 

 なのはちゃんは私と一緒に魔法の練習をしたかった様だけど、私がやらないと決めた事が分かると、なのはちゃんは少しだけ落ち込んでいた。

 

 ちょっとなのはちゃんに悪いな、と思ったけど、何か自動でやってくれるみたいなインテリジェントデバイスもないし、やる気がでないから、無理だ。

 

 ごめんよ、なのはちゃん。理系と文系には深い溝があるのだよ……。それにやる気がでないと絶対にやらない自信があるから。

 

 だから、出来るだけ魔法以外を手伝うから、それで許してくれたら嬉しいな。と考えていたら、いつの間にか眠っていたらしい。

 

 なのはちゃんに起こされて、私は起きると、なのはちゃんに朝ご飯を一緒に食べないかと誘われたけれど、おにぎりがあるから断った。

 

 なのはちゃんを見送って、私は公園でおにぎりを食べる。

 

 一つは海苔が巻いていて、もう一つは海苔も巻いていなくて、ただの白いお米のみ。

 

 ランドセルから水筒を取り出して、温かいお茶をコップに注ぎ、準備が整ったので、手を合わせてから食べ、海苔が巻いてある方の中身は鮭だった。もう一つは塩味だけのおにぎり。……やっぱり温かい緑茶が合うね。贅沢を言えば、漬物も欲しい。

 

 

 朝ご飯を食べた後は学校に行って、授業が終わると、なのはちゃんと一緒にジュエルシード探しをする。それが終わったら家に帰ってご飯を食べて寝る。

 

 そんな日が続いて、数日後。

 

 いつものようになのはちゃんと一緒にジュエルシードを探していたら、暴走しそうなジュエルシードがあるとユーノが言い、その場所に行くと、私が通っている学校でした。

 

 

 

※※※※※

 夜の学校はどうして、不気味なんだろうか……。

 

 普段は電気もついていたり、生徒達の遊び声や先生達の話し声が聞こえたりして賑やかで、明るいけど、夜になると、しーんと静まりかえって暗くなる。ただ、それだけなのに、とっても怖くなるのは何でだろうか?

 

 そんな事を考えながらも、なのはちゃんと一緒に学校の中に入って行く。

 

 

(ユーノ。学校の中にジュエルシードはあるの?)

 

「……うん。もうすぐ発動しそうなジュエルシードが中にあるよ」

 

「どこから入ればいいのかな?」

 

 

 なのはちゃんの肩の上にいるユーノに私は聞くと、ユーノはこくりと頷いて言い、なのはちゃんは首を傾げて聞く。

 

 

 私は念話で(こっち)と言いながら、なのはちゃんの手を引いて向かった先は、学校の裏側に周って、廊下のとある一つの窓。

 

 そして、私はその窓を普通に開ける。

 

 

「えっ?」

 

(この窓だけ鍵が掛からないんだ。先生も知らないからそのまま何だよ)

 

「……この学校、防犯は大丈夫なのかな?」

 

 

 靴を脱いで、窓から中に入りながら私は念話でなのはちゃんに話して、振り返り、なのはちゃんを見ると、苦笑いをして言っていたので、私は、

 

 

(まあ、大丈夫なんじゃないかな? はたから見ても鍵はかかってるように見えるし、この事を知ってるのは私の友達二人と私だけだと思うから。……なのはちゃんとユーノも内緒にしといてくれれば大丈夫だよ)

 

 

 と、苦笑を返した後に、にんまり笑いながら言う。

 

 すると、なのはちゃんは一瞬、驚いた表情になったかと思えば、また苦笑をして、頷き、ユーノも引きつったような笑いをして頷いてくれる。

 

 なのはちゃんとユーノ、私の二人と一匹で仲良く夜の学校の中に入ると、靴下ごしでも廊下の床はひんやりと冷たい。

 

 靴は入ってきた窓の近くに置いてきた。廊下が汚れるとばれる可能性があるからね。

 

 

(ユーノ、どこらへん?)

 

「えっと、真っ直ぐに行って突き当たりの部屋みたい」

 

(たしかその場所は理科室。……怪談の定番だよね)

 

 

 念話で私がそう呟くと、なのはちゃんはびくっと驚いて、急に私の腕に抱きついてくるので、私も驚き、なのはちゃんを呼びかけて見るけど、なのはちゃんは自分に言い聞かせるように大丈夫と呟いている。

 

 それを見て私は、そう言えばなのはちゃんは怪談とかが苦手だったなあと思い出す。

 

 だから今のなのはちゃんは珍しく口数が少ないんだと分かった私は、私の腕を抱き締めながら怯えるなのはちゃんの手を握りしめ、目を合わせて安心させるように微笑んで言う。

 

 

(大丈夫だよ。なのはちゃん)

 

 

 そしたらなのはちゃんは少し落ち着いたのか、怯えながらも私に軽く微笑み返してくれた。だけどやっぱり、まだ怖いのか、抱き締める力は強いままだ。

 

 少しだけ、歩きにくいなあ、と思いながら、理科室に向かって行くと、空気が変わるような感じがして、ユーノが慌てて叫ぶ。

 

 

「気を付けて! ジュエルシードの暴走体が来るよ!!」

 

 

 ユーノの行動は素早くて、そう言うと同時に結界を張っている。

 

 その事に私が感心していると、理科室のドアが吹き飛び、そこから出て来たのは、人体模型の半臓だった。……半臓と言う名前は、隣のクラスの先生が名前を付けて、それが広まっていき、みんなからそう呼ばれるようになっていて、他にも骸骨に骨美とか名前を付けている。

 

 

 その半臓は私達の方を向くと、教科書に書いてあるような綺麗なフォームで走って来る。

 

 みんなで回れ右をして、逃げ出す。

 

 

 ……何あれ。シュール過ぎて怖すぎだよっ!!

 

 

(ジュエルシードって無機物にも取りつくの!?)

 

「分からないけど、なのは! 早くジュエルシードの封印をっ!!」

 

「無理だよ!!」

 

 

 なのはちゃんはそう叫び、必死に走っている。

 

 なのはちゃんの手を引っ張りながら、私は走り、ちらりと後ろを見て、確かに、と思う。

 

 そこまで速いという訳ではないけど、無表情の人体模型が無駄に綺麗な走り方で向かってくるのだ。それと向き合いたくないと考えるのは普通だろう。

 

 だけれど、なのはちゃんは私の手を離し、半臓と向き合い、そしてレイジングハートを半臓に突き付け、ピンク色の球体を半臓に撃つ。しかし、その弾は半臓には当たらない。

 

 何故だろうかと思い、斜め前にいるなのはちゃんをよく見ると、目を瞑っている。……そりゃ、当たらないよね。

 

 そんな風に納得している間にも半臓は走って来ていて、なのはちゃんにぶつかる、と思ったけど、半臓はなのはちゃんを通りすぎ、私に突進してくる。

 

 咄嗟の事で私はただ呆然として動けなくなり、半臓とぶつかるっ! と思って目を瞑ったけれど、来ると思っていた衝撃が来なかった。

 

 不思議に思った私は恐る恐る目を開けて見ると、銀色の壁が半臓と私を遮っている。

 

 

《おい、オレがコイツを抑えている間にさっさと封印するなりしたらどうだ》

 

 

 どこからか少年の不機嫌そうな声が聞こえてきて、なのはちゃんはきょろきょろと辺りを見渡しており、ユーノはびっくりして固まっていたけれど、私が二人を呼ぶと我に返ったのか、なのはちゃんは半臓にレイジングハートを向ける。

 

 そしてなのはちゃんシュートを撃ち、半臓は吹き飛んでボロボロに壊れ、半臓の中にあったジュエルシードが出てきた。

 

 出てきたジュエルシードをなのはちゃんが封印して、私は一安心する。

 

 

(なのはちゃん。お疲れー)

 

「つばさちゃん、ありがとう。……さっきの声はどこから聞こえたんだろう?」

 

(多分、これだと思う)

 

 

 なのはちゃんは不思議そうに聞いてきて、私は携帯についたストラップを見せながら言うと、斑模様の丸い宝石は少しだけ光ながら喋りだす。

 

 

《……おい、つばさ。これ呼ばわりは酷いんじゃないか?》

 

(だって名前を知らないから、なんて呼べば良いのか分からないし……)

 

《それもそうだな。ならルドラって呼べ》

 

(うん。ならルドラって呼ぶね)

 

 

 ルドラに向かって微笑みながらそう言うと、私は視線をボロボロに壊れた半臓に向け、手を合わせて(なーむー)と言い、振り返るとなぜかぼーっとしているなのはちゃんに

 

 

(半臓も成仏して、ジュエルシードも封印したから、早く帰ろうか。なのはちゃん)

 

 

 と、言うとユーノは慌てて言う。

 

 

「半臓って誰!? しかも何で自然にデバイスと話をしているの!!?」

 

(半臓は人体模型の事で、まあ、ルドラの事は後で聞けば良いかなあって思って……。早く帰ってご飯を食べたいから)

 

《オレより夕飯を取るのかよ》

 

(だって今日はしゃぶしゃぶらしいからね!)

 

 

 呆れた様子でルドラが突っ込み、私は少しテンション高めで返すと、ルドラはため息を吐く。

 

 なのはちゃんとユーノは驚き過ぎているのか固まっていた。

 

 

《はぁ。……取り敢えず帰るぞ。話は明日にして、子供は早めに帰れ》

 

 

 ストラップの玉、改めてルドラはため息を吐いて言うので、私はその言葉通りに学校に忍びこんだ窓に向かう。でも、なのはちゃんとユーノはまだ固まって動いていなかったので、念話で声をかけるとなのはちゃん達は慌てて歩いている私に着いてくる。

 

 学校から出ると、早速ユーノが疑問をルドラに聞く。

 

 

「あなたは何者なんですか?」

 

《直球だな。まあ、いいか。……オレはただのデバイスだ。少しだけ高性能なデバイス》

 

 

 これ以上は話さない。と言うような雰囲気を出しながらルドラは喋るので、まだ聞きたかったような感じのユーノはなにも聞けなかったようだった。

 

 その後はなのはちゃんに明日は何時にサッカーの試合が始まるのかを聞きながら家に向かう。

 

 

 家に着き、ご飯を食べ終えてお風呂にも入り終わり、後は寝るだけになったのでベッドの中に入る。するとルドラが声をかけてくる。

 

 

《本当に何にも聞かないんだな》

 

(何が?)

 

《オレの事とかだ》

 

(だって話す気はないんでしょ? 確かにルドラの事は気になるけど無理に話さなくてもいいよ。話してくれるなら、それはそれでいいけどね)

 

《……そうか。ならまた今度話してやるよ。お休み、つばさ》

 

(うん。お休みルドラ)

 

 

 そう言って私はそのまま眠りについた。

 

 

 

※※※※※

 つばさは布団の中に潜り、暫くすると寝息が聞こえてきて、本当に寝たみたいで少しオレは呆れる。

 

 確かにオレは自分自身の事を話す気はないが、得体の知れない奴をそのままにするつばさに、このまま成長していくと変な奴に騙されないかと不安に思う。

 

 

 本当なら、何もしないつもりだった。だけど無理だ。オレはこの子の生い立ちを知って、無惨に死にそうになっているのを見て、これ以上は無視出来ない。例えあの日、自分で決めたちっぽけな約束を破ってでも……。

 

 

「おい、あんた。起きてるんだろ?」

 

 

 いきなりの声に驚くが、何となくこいつが声をかけてくるだろうとは思っていたが、まさかこんなに早いとは思わなかった。

 

 

《何だ。……ところでお前はどっちの方だ。ブラックか? それともレッドか?》

 

「かなえみたく、あたしらを色で区別するな」

 

《なら何て呼べばいいんだよ。分からないから、かなえって奴も色で呼んでるんだろ》

 

 

 呆れた風にオレは声の出どころである、つい先程眠ったばかりだったはずのつばさに向かって言う。

 

 つばさは身体を起こし、ベッドの上に座ったままの状態になり、少し驚いた表情を浮かべると、納得したように頷き、話し出す。

 

 

「あたしはツバキ。かなえにブラックって呼ばれてるのはツカサだ」

 

《で、何のようだ?》

 

「あんた、あの時の事を知っているよな」

 

 

 つばさの別人格に聞けば、少し苛立ったようにツバキは言い。断定的に話すツバキを見て、オレはあの時の事だろうと考える。

 

 あの子供の手からつばさにオレが渡る事になった時の事だと……。

 

 

《ああ。あのバカな人間共の喧嘩の事か? それとも、その後に起こった事か?》

 

「その両方だ! いいか、絶対につばさにはあの事を教えるなよ! もし教えたりしたら、あんたをぶっ壊す!!」

 

 

 怒鳴るように言うとツバキは捲し立てながら続けざまに言い、自分が言うべき事を終えたのか、ツバキは勢いよく寝転び、布団に潜り込むとすぐに寝息が聞こえてきた。

 

 

《教えられるわけないだろ。あんな子供に、あんな事があったなんて……》

 

 

 そう、小さく呟きながらオレはやるせなく思い、朝が来るのを待つ。

 

 何とも言えない、色々な感情を抱いたままに……。

 

 

 

 

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