ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか   作:もんもんぐたーど

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《ここに百合の花を挿入》
《ここに成長目標を設定》


第13話

ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているのだろうか13

 

遠征

 

主に探索系ファミリアがファミリア規模でないと潜れない階層での探索を行う序でにダンジョンの下層での採集依頼などを引き受けることを指す。

 

遠征の成否はファミリアの評価につながり、また依頼達成にもつながる故に遠征のメンバー選定は非常に重要である。

 

今回の目標は59階層、途中セーフポイントの50階層全体を休めつつ第一級冒険者を中心とした数人で51階層での素材収集を行うため第一級冒険者全員を動員する、予定だった。

 

しかしここで想定外の事態が発生する。

新たな第一級冒険者いなづまの加入である。

フィンとしてはいなづまを連れて行きたいと思っていた。加入からの短期間でファミリアに馴染む適応力や格上の敵への対応力の高さ、それに基本的な手数の多さは魅力的だった。

 

特に手数の多さはおそらくファミリア内随一だ。

武器の使い分けや魔法の汎用性の高さはダンジョンでの過酷で多様な環境に常に一番効果的な戦術を選べる点において優位性が大きい。

 

しかし問題でもあった。味方である他の団員と連携とまでは行かなくても戦い方を共有できていないのだ。

まだレベルの低い団員は特に戦闘中高レベル冒険者の邪魔にならないよう立ち振る舞う必要がある以上この問題は軽視できない。

 

「で、結局今回は連れて行かないことにしたんだな。」

 

リヴェリアの結論にうなずく。

 

「ああ。いなづまは少し残念がってたけど理解してくれたんだが、アイズは少々いやがってね。いなづまの説得でしぶしぶだけど同意を得たから今回の遠征は当初の予定通りのメンバーでいくよ。」

 

リヴェリアはすこし驚いたようだがアイズはいなづまの影響で急速にお姉ちゃん化が進んでいる。良くも悪くも変わってきた。

 

「ふふっ、かわいいものだな。アイズが変わった。いや、変えてくれたのか。」

 

リヴェリアはママと呼ばれるだけあってファミリアの団員に広く目をかけている。アイズは筆頭の実力者であると同時に不安の種でもある。彼女を見る人が増えることはリヴェリアの胃袋を労ることになるのだ。

 

「そうみたいだね。ロキの見立ては正しかったみたいだ。それで特に日程にも変更はないから、もう今後の予定については、もういなづまに伝えてある。」

 

「そうか。……で、私を呼び出した本当の用件はなんだ。」

 

気づいていたか。まあ、気づかないとは思わないしリヴェリアだけが気づくように呼び出したわけだけど。

 

「いなづまについてどう思う?」

 

「正直不気味に思うところはある。かなり早熟だ。」

 

先読み、並行詠唱、高速機動、そして本人の打たれ強さ。攻守ともに強く戦いに特化したそれらを12歳にしては過分に、第一級冒険者としては十分に備えられている。その上第一級第二級冒険者に比べて十分一般人としての常識を備えている。

 

12歳という年齢を考えれば異常であり唯彼女が天才的なものを持っているというだけではない。環境が戦いの技能を人間の常識を早く完成させないといけない状況に追いやった可能性がある。

 

「僕も同感だ。だからといって排斥するつもりもないけどね。外的要因なのか元々の気質なのか、こればかりはいなづまが話してくれるのを待つしかないけど気にかけるのは大事だと思う。」

 

「ああ、……話は変わるがそういえば遠征でレフィーヤを前線に出す予定だったな。」

 

レフィーヤは、千の妖精(サウザンド・エルフ)の二つ名を持つLv3の冒険者で魔導士でエルフだ。レア魔法エルフ・リングはエルフの魔法に限られるが詠唱と効果の把握だけで魔法を使えるー正確には魔法を召喚しているーという強力な魔法を扱いリヴェリアの後継者として教育を受けている。それで今回の遠征ではできる限りレフィーヤがリヴェリアの立ち位置で魔法を撃つことになっている。

 

「うん。そうだけどどうかしたのかい?」

 

「前にも言ったとおりいなづまの戦闘スタイルは魔法を使う限りでは魔法剣士そのもの。エルフ以外から魔法のことを教わるのは彼女にとって癪かもしれないが……遠征にいく前にレフィーヤといなづまに関係を作っておきたい。レフィーヤが魔法剣士を目指していることを考えるといなづまとの関係はきっと彼女のためになるはずだ。」

 

リヴェリアはふぅと息をつくと用意していたお茶でのどを潤す。リヴェリアは多少らしくない語りで熱に魘されたような感覚に笑みが漏れたように見えた。

 

「関係か……。分かった何か考えておこう。」

 

リヴェリアとこの後取り留めもない会話をした後話し合いはお開きになった。

リヴェリアの気持ちも少しはわかるつもりだ。自分たち(レベル6)はわくわくしている。これからの読めなさに期待している。

 

オラリオの常識としてどうしても1つのランクアップの差が致命的な差として現れる。そういった意味では冒険者にとって下剋上というのは無縁のものになりがちだ。

 

当然それは第一級冒険者のレベル5とレベル6のあいだでも変わらない。上位レベルに敵うのは職業差で最高火力の一発勝負みたいな例外だけ。レベル5にも匹敵するレフィーヤの魔法火力はその例外の一つだが、流石にレベル4冒険者と模擬戦をすれば10回に10回レベル4冒険者が勝つだろう。

 

それを手数と技術で覆してきたのがいなづまだ。

ステータスを考えれば良くてアイズとトントン、下手したら負けるいなづまだが僕との手合わせの結果は引き分けだった。

 

"相手に行動を読ませない"・"相手を先読みする"・"不意の隙を作らない"等々の基本的な技術を積み上げていった結果が先日の引き分けだと感じている。対人ではしばらく感じていなかった種類の興奮に笑みが漏れる。

 

「ははっ、最高だね。」

 

この前の手合わせまでもう数年もホームで親指が疼かなかったことを思い出してこの崩れた表情に勇者(かめん)を被り直すのが少しだけ億劫になった。

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