ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか   作:もんもんぐたーど

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《ここに百合の花を挿入》


第20話

ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているのだろうか20

 

物資の喪失により滞っていた負傷者の治療がいなづまの合流後の18階層到着で再開した。バケツ一杯のエリクサーで大体10人分はまかなえるため人数が多いロキ・ファミリアの遠征メンバーに行き渡る十分な量があった。溶解液の被害を受けていないメンバーについてもはバケツ以外にも用意された潤沢な物質で無事治療を受けられる状態になり、全体の士気は回復傾向だ。

 

そんなわけでロキ・ファミリア遠征隊は治療と休息のためにセーフポイントの18階層で一泊してから地上に戻ることにした。

 

「いなづまちゃん大活躍だ〜。」

 

「いなづま……。」

 

「ぐぬぬ……。」

 

「……なのです。」

 

その運良く物資を持って地下に潜っていたいなづまは(アイズ)に背中から抱きつかれ、自由人(ティオナ)に頬をつつかれ、弟子魔導師(レフィーヤ)に嫉妬されていた。

 

私は25階層での収集を終えた直後にロキ・ファミリア遠征隊と合流し、リヴェリアさんに聞いて必要な量のバケツを用意したのです。

そのあとは自身の素材収集も続行しながら軽傷者の手当てをして回っていたので思ったよりもずっと疲れているのです。

 

背中で触れるお姉ちゃんは暑いと言うこともなく、ずっと同じようにいられる程の体温でついうとうとしてしまう。

 

不思議なものなのです。私がお姉ちゃんに依存してしまうのはある意味病的かもしれないのですが、実に体格差のあるお姉ちゃんは初めてなのでより一層依存が悪化しているような気がしたりしなかったり……。はわわ、びっくりなのです。

 

「いなづま、眠いの?」

 

「……はい。でも、今からご飯の準備があるので……いったん離れるのです。」

 

背中のお姉ちゃんが急降下テンションとホールドで私を夢の中へ誘おうとするがその魔の手を失礼にならない最大限の配慮を込めて振り払いつつ抱きつきを脱する。

 

「いなづまちゃんがご飯作るんだ。」

 

「しゅん。」

 

「ぐぎぎぎ……。」

 

純粋に事態を飲み込むティオナさんと最後の抵抗とばかりにセーラー服の裾をつかむアイズお姉ちゃん、もはや修羅の顔になってしまったレフィーヤさん。このなかでは普段自由奔放と言われがちなティオナさんですが、アマゾネス姉妹の妹なだけあってこう言うときは意外なほどの判断力と冷静さを発揮してくれるので、ここにいるのが大変幸いなのです。多くのお姉ちゃんは大体お姉ちゃん(ポンコツ)になりがちですし、普段しっかりしているなら逆は然りなのです。

 

「夕飯はカレーライスなのです。一杯作れて嫌いな人が少ない良い文明なのです。」

 

「はいはーい、質問です!福神漬けはつきますか?」

 

気付いたら白く燃え尽きている(アイズ)弟子(レフィーヤ)を横目に食欲が表に出てきた妹アマゾネスが手を挙げる。料理人としてこういう質問に的確に答えていくことが信頼を生むとかなんとか言いますし、答えていきましょうね。

 

「希望者には付けます。」

 

「やったっ。」

 

にゃはは。妹力が高くて良いのです。こっちもやる気が出てきますね。全身を使った感情表現、内側から沸いてくるような明るい表情。艦娘ではない筈ですが戦意高揚(キラキラ)が見える姿は素の妹力の高さが伺えるのです。

 

私もそんな姿に答える必要があるのです。

艤装の収納領域(ストレージ)からガス入りの缶などの野外用コンロ一式、業務用鍋など必要なものを取り出して行く。野菜くらいは誰かに切ってもらおうと視線をさまよわせると、お姉ちゃんが"待てをかけられた犬のように"こっちをみているのです。

 

野菜くらいは切れるでしょうか?

 

「お姉ちゃん、タマネギをとにかく細かくしてほしいのです。」

 

「うんわかった。」

 

次の瞬間玉ねぎは微塵切りになってまな板の上に置かれていました。……早い。これ、キーマカレーなら一瞬で材料の準備が終わるのでは?

 

「とりあえず、この辺りの材料全部同じようにしておいて下さい。」

 

「うん。」

 

こうして私とお姉ちゃんのどきどきクッキングが始まったのです。

 

ーーーー

 

アイズが料理をしている。

 

そんなふれこみで18階層(セーフポイント)の一角の、いくつもの鍋と脚立が並ぶそこには人集りが出来ていた。そもそも第一級冒険者にもなるとセーフポイントでは多少のお金のために自炊すると言うことはあまりない。

 

もちろん家事を嗜んでいる冒険者もいるがレベル5となればなかなか居らず、ましてや隙あらばダンジョンに潜っているせいで町中よもダンジョンのほうでよく見かける剣姫(アイズ)が料理を出来るという話は聞いたことがない。

 

「あれ、アイズ一人じゃないな。」

 

そんな中でアイズの切った材料なんかを超高速で鍋に入れていくいなづまに気づく冒険者がちらほら居ながらもダンジョン内で娯楽に乏しい冒険者にとっては十分以上に盛り上った。総じて材料が細かく切られ、いつの間にか鍋に入っているだけだったとしても。

 

「お姉ちゃん、ふーふー、あーん。」

 

カレー作りも途中から切る材料がなくなり、いなづまも高速移動を止めていたので普通に姉妹がカレー作りに励むだけになっていたが、カレーをゆっくりかき混ぜるよう指導する電と指導されるアイズのあいだにはほほえましさしか生まれず、癒やしの空間にさえなってしまった。

 

比較的汁気のないキーマカレーを小皿にとりスプーンで掬って(アイズ)に食べさせる(いなづま)にはあるエルフから嫉妬の念波が送られてくるがその後のアイズの笑顔で浄化されてしまい一人のエルフは救われた。

 

「……おいしいね。」

 

アイズはいつものわかりにくい表情変化から想像のつかない笑顔を見せ、無差別笑顔テロに発展する。

 

「大正義。」

 

「アイズ姫と妹ktktr」

 

「百合は良いぞ。」

 

有象無象の冒険者たちは自分たちがいる場所がまさかダンジョン内の18階層(セーフポイント)であることを忘れてしまっているかもしれないが、ここは一応ダンジョン内である。天国ではない。

 

しかしこの瞬間、小さなレベル5の夕飯配膳開始の宣言を以て一夜限りの天国(美少女義姉妹の手料理パーティー)になった。




おなかすいたですよ
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