ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか   作:もんもんぐたーど

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第3話

 

「力……?」

 

ロキがいなづまに問いかけたその時、とっくの昔に空腹を訴えて音を鳴らしていた、いなづまのおなかが気の抜けた音を出す。

さっきまで鋭利にロキを見つめていた視線は地に落ち、キリッとした表情は耳まで真っ赤に染まるうちにどこかへ行ってしまった。

手に持っていた錨も消えて脱力したような様子だ。

 

「はわわ……。」

 

今の彼女は強者でも神の類いでもなく、ただおなかを空かせた住所不定の少女に過ぎなかったのだ。

 

ほんま、よういろんな表情するなぁ。ただかわいいだけやないかい。……少し、安心したわ。

 

「いなづま、ごめん。おなか空いてたの忘れてた。」

 

しゅんとするアイズの姿もあってちょっと年の離れた姉妹のように見えなくもないし、こういうのもええな。

なんかようわからんけど、今ならリードできそうやし一手打ちましょか。

 

「なぁ、アイズ。まだお昼食うとらんやろ。いなづまとアイズとうちら3人で食べにいかんか?」

 

「うん、そうしよう。」

 

「……はい。」

 

空腹を自覚して食いついてきたアイズと少し回復してきたいなづまの返事が返ってきた。

 

ほんまかわいい子供たちやわ。

いなづまが自然にアイズの服の裾をつまむ様子とか永久保存したいくらいや。まあ、いなづまに手を出すと本気で斬られそうな気がするし今のところは手ださんでおくけどいつか……っ

 

「ロキ、いなづまはお昼ご飯じゃない。」

 

「はぃ……。」

 

「はわわ……。」

 

アイズの勘の鋭さ、こわいなぁ。なんか鋭くなってる気するんやけど。いなづま効果なんか?

てかついさっきまで冒険者らしい風格を見せていたいなづまはアイズの背中に隠れて恐る恐るこちらを見てるし、こっちはこっちでなんなん?

 

「そんな、取って食うわけないし安心してな……。まあ、気い取り直して、豊饒の女主人にいくで。彼処なら個室あるしな。」

 

茶番は置いておき、何時ものように豊饒の女主人へと連れて行くことにした。ただ、いなづまはあんまり近づいてくれないんやけど。先っちょだけ、先っちょだけでええから頭なでさせてや。

 

----

 

豊饒の女主人は今日も冒険者たちで賑わっていた。

喧騒をBGMにテーブルと厨房を往復するヒューマンや揉めて摘まみ出されそうになる冒険者が店内を彩り、店の繁盛をそのまま表している。

 

そんな中に新たな客が訪れる。

大手ファミリアの主神ロキ、《剣姫》アイズ、そして見慣れない格好をした少女ーいなづまだ。

 

当然ロキとアイズはオラリオでかなりの知名度を誇る。そんな二人と一緒に見たことのない少女がいるなら注目を集めるのは当然のことだ。じろじろというほどあからさまではないものの視線を集めているのは間違いなかった。

 

そんな圧に晒されてか、いなづまはさっきより強くアイズの手を握る。

 

出会ってから半日おろか6時間も経っていない少女(いなづま)がこんなに私に頼ってくるのはやはり不思議な気分。何か信じられるようなことをしてあげた記憶はないんだけど。

 

「いらっしゃいませ。三名様ですか?」

 

「せや。予約はしとらんのやけど個室は空いてるやろか。」

 

「……確認してきますね。」

 

声をかけてきた店員のヒューマンの女性は少し思案顔をしてからバックヤードに入っていく。

 

この店は女性店員が多い。それは何時も思うこと。それは同時に実力者も多いということ。店主のミアさんは元一級冒険者らしい。それ以外にも……さっきのひとも実力者だと思う。

 

「空いてましたのでご案内いたします。」

 

さっきのひとが帰ってきて奥の個室へと通される。席に着くと私は2つあったメニューをいなづまとロキに渡す。

 

「ここから、選ぶのです?」

 

質問に頷いて答えると、いなづまは難しそうな顔でメニューを眺め始めた。いなづまのコテンと首をかしげる姿にロキの視線が怪しくなったので少し威圧する。

 

「決まったのです。はい、アイズさんはまだ決めてないですよね?」

 

メニューを手渡してくるいなづまになんとなくほっこりとした気持ちになる。

 

さっと目を通して決めると注文を済ませた。

 

「あ、あの、料理が来るまでの間に力について……お話ししようかと。そんなに長くならないので。」

 

「ええで。」

 

そこからいなづまの話が始まった。いなづまの力は戦闘艦の、船の力を付喪神として自らに降ろしているとか。それで降ろしているときと降ろしていないときの差が少しずつなくなって今は一体になっているとか。神そのものではないけどほとんど神のようなもの。それで神の恩恵(ファルナ)との干渉を心配した、とか。ロキはうんうんとうなずきいなづまの頭を自然になでる。もやもやする。まあ、話の内容をあんまり理解できなかったけど実質神の恩恵(ファルナ)持ちなの、かな。

 

「そか、それは不安になるわな。うちもわかるで。」

 

本来実力はどんなに隠してもにじみ出てしまう。隠しても高い実力を持つ人ならそれに気づいてしまう、気づかれてしまう。あくまで格下を怯えさせない配慮として、ここの店員みたいに広い実力幅の人を相手する時には実力を隠すことがある。

 

その点いなづまは普通じゃなかった。力を入れているときと入れていないときで、まるで別人かのような差がある。でも、それは当たり前だった。なんか、遠くに行ってしまうような気がした。

 

さっきよりずっとロキとの距離感が近づいた、いなづまを見る。

ロキと一頻り話し終え、ちょうど私の方を向いたときだった。

 

「あ、あの、アイズさん?」

 

「……なに?」

 

……なんていえば良いんだろう。なにも分からなくなって、少しずつぶっきらぼうに返事をする。

 

「アイズさんのことを、アイズ……お姉ちゃんって呼んで良いですか?」

 

ふわっと温かい気持ちが広がって、ほんの少しだけ、ぶっきらぼうに返事したことを後悔した。そっか、わたしは……。

 

「うん、良いよ。改めてよろしくね、いなづま。」

 

「こちらこそなのです、アイズお姉ちゃん!」

 

妹ができた。




予定より少々遅くなりました。ミアさんを出すか迷いましたが、うまく描けなかったのでカット。今後の課題です。
今後もしばらくは週一くらいの頻度で更新していく予定です。原作イベントはソード・オラトリアに準拠して進行する予定です。
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