ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか 作:もんもんぐたーど
「あの、ここは……。」
大手ファミリアらしく広く迷いやすいホーム内を、いなづまはアイズに手を引かれて移動する。歩幅の差から気持ち早歩きになるいなづまとそれに気づいて歩くペースを落とすアイズ。ホームの案内と称して前を歩くロキはその二人の姿を後ろから見ることができない、その一点についてのみ後悔していた。
面倒やからと案内人を別で立てなかったうちのミスやからな。
だから一秒に二回くらい後ろ振り向いて尊い姿目に焼き付けてるんやけど、あ……これ、アイズにばれたわ。流石にしつこかったかなぁ。こっからは真面目に案内しましょか。
「ここは、巷で流行の屋内闘技場や。あとでになるとはおもうんやけど、ここでうちのファミリアの団長でレベル6の冒険者のフィンと一度戦ってみてほしいんよ。ギルドに出す資料につかえそうなんや。」
「レベル6……良いのです。何事も、経験なのです。」
いなづまは、さっきのいなづまー 豊饒の女主人の料理を前にしたアイズの妹 ー と全く違う種類で興奮した様子を見せる。いなづまは何となく戦いを好まない性格だと思っていたんやけど。どうなんやろうな。戦いたくないというほど戦うことに嫌悪感があるわけではなさそう、いや何らかの理由で戦いを求めている……?
「いなづま、大丈夫なの?レベル6だよ?」
アイズはいなづまを引き留めるつもりなんだろうけど、もう遅いやろうな。いなづまは完全にやる気を出してしまってる。
「多分大丈夫なのです。ホームでの戦いならほぼ死なないですし、それに格上のひととの戦いは経験を多く得れるので、強くなれる可能性があるのです。心身問わず弱いことは死を招くので……強くなれる機会は逃したくないのです。」
いなづまの表情に暗い影が落ちる。それを見逃すほどアイズは新米お姉ちゃんではなかった。
お姉ちゃん的に重症なんやけどな。
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団長と戦わせる?
大丈夫なのかといなづまを見ると静かに闘志を燃やしている。レベル6というのは私含めてレベル5では太刀打ちできないのに。
「--心身問わず弱いことは死を招くので……強くなれる機会は逃したくないのです。」
いなづまの雰囲気が僅かに変わる。僅かに匂うこのねっとりとした暗さの雰囲気は……多分過去に見たことがある。
ダンジョンに潜るといろんな人を見る。物理的にも精神的にも多くを得、また失う可能性のあるダンジョンに潜ることはハイリスク・ハイリターン、いやもしかするとハイリスク・ローリターンかもしれない。そんなダンジョンに惹かれて潜る人は多種多様で……。
「……、……ちゃん?」
うん、こういうときにちゃんとお姉ちゃんらしく(?)お悩み相談とか出来たら良いよね。なんかこう、お姉ちゃんお姉ちゃんってその日のこととかいろいろ話してくれたら、えへへ。
「アイズお姉ちゃん!」
「ん……、あ。」
完全にトリップ(?)してた。……なんかティオネのフィンに対するあれみたいになってる気がする。気をつけよう。と、いなづまが眉をへの字に曲げてこっちを見ている。引き留められて真面目に答えたのに相手が勝手にトリップしてたら……こんな私を心配してくれるいなづまはやさしいね。
「は、はわわ。お姉ちゃん?」
ぎゅっと抱きしめることにした。よく分からないけど直感はこれが正解といってるからそうだと思う。
「フィンは槍使い。いなづまは、勝てると思う?」
「槍、なのです……?……多分、大丈夫なのです。生きてる相手が殺せない道理なんてないのです!」
なんかいきなり物騒になったんだけど、あれ?
いなづまは疑問の視線に気づいたのか首をかしげる。あぁ、かわ。
「なにか……って、はわわ。団長を殺したりはしないのです。強い人と戦うのは久し振りなので、テンションが……えへへ。」
「そっか。頑張ってね。」
テンションが上がっちゃったなら仕方ない。仕方なくない?いや、だって故意ではないみたいだし。……今後同じことがあったら注意しよう。流石に団長殺害発言はティオネとかが暴走するかもしれないし。
「はい!」
「お、おう。それじゃ中入ろうか。」
そう言えばまだ入り口にいたんだったね。割と本気で忘れてた。
少しの間空気のように気配が隠れていたロキが中に入るよう促す。ロキに続いて私たちは屋内闘技場にはいる。ここは私もよくお世話になる場所だ。屋内とは思えない広々とした空間に、雑多な団員達の姿。そして……いなづまが対峙する小さな勇者《ブレイバー》の姿があった。
今回は気持ち短めです、遅れたのに。
きりが良かったんですよ。