ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか   作:もんもんぐたーど

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《ここに地下迷宮の息吹》


第51話

ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか51

 

「……そうですね。ところで、その()はどこから持ってきたんですか?」

 

電は胃の底から刺すような吐き気がこみ上げてくるのをぐっと押さえ込み、濁った目から視線をそらさないよう努める。どんなにその答えが見え透いていたとしても、どうしても本人の口から聞かなければいけないような気がした。もっとも、視線をそらさない理由はまったく別の理由であるが。

 

「死体から顔の皮を引き剥がした、それだけだ。満足か?」

 

「……毒妖蛆(ポイズンウェルミス)でしたっけ?」

 

「ああ、"生者には厳しく、死者には優しい"あの毒だ。はぁ、きつくてかなわん。」

 

その女性はそれだけ言うと誰かの顔の皮とその調()()()の所持品だったと思われる厳めしい鎧を脱ぎ捨てる。顔の時と同様に非常にらしいシルエットの女性の姿がベールを取り払われたようであった。でもその目は、一介の駆逐艦の少女が信じた(ひかり)と同じくらいの深さで濁りきっていた。

 

「……綺麗ですね、思ったよりもずっと。」

 

「っ、どういう意味だ。」

 

「さあ、どうでしょうか。」

 

どうしたものだろうか。気づいたらさっきまでの不気味さは、違和感はすっと消えてしまっていた。全く分からない。分からないとしか言えなくなっていた。自分は何を見てしまったのだろうか。なにを魅せられてしまったのだろうか?

 

「……まんまと乗せられたな。宝玉(タネ)は何処だ。」

 

「さあ何処でしょうか……。(まあ、電は知らないのですが。)

 

「なら、死んでもらうか。」

 

次の瞬間()()()()()()()()錨と大鉈がぶつかった音だけを残し両者の立ち位置は後方にずれた。結果だけを見れば大差ないように思えるが両者の間には状況的に圧倒的な差があることは電が一番理解していた。女性の攻撃はずっと重く早く、正確だった。()()()のは艦娘としての本能のような反応であり、ダメージコントロールが働いたからであった。

 

「っ、早い。」

 

「ほう、防げるのか。」

 

余裕のない電に対して女性は感心した表情を隠さない。目の前の口達者なだけかと思っていた少女が、おそらく高くてもレベル3程度のとるにも足らない存在が、自身の攻撃を受け流してよろめくことなく後退して見せたのだ。

 

でもそれだけでしかない。女性はそこに攻撃をたたみかける。受け流し、補助機関(ブースター)による緊急回避、艦娘障壁、偽餌(デコイ)、あらゆる手段を選択肢にいれた電は最小の動きで女性の猛攻を捌ききる。大鉈を受け流し蹴りを回避し背後をとられる直前にブースターを吹かす。直接受ける攻撃を艦娘障壁で分散しさりげなく偽餌(デコイ)に押しつける。それだけでなんとか耐えることは出来たが、いまの電にはそれだけしか出来なかった。

 

じり貧であると分かっていても全てのカードを切ることは出来ない。何故ならば、ここが()()()()()であるからだった。




分割1話後半です。
投稿ゆるゆる過ぎますが忙しさが山積みなのでしばらく不安定になることをお許しください。
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