ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか   作:もんもんぐたーど

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《ここに地下迷宮の息吹》


第53話

ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているのだろうか53

 

ビシッと決めた風に敵と電の間に割り込んだのはいいもののふつうに考えて明らかに下策である。そう思いつつも私がこんな割り込み方をした理由はただ一つ。

 

「…………。」

 

最近知った事有ることを実践してみただけ、かな。

ちゃんと直視してないけど(いなづま)はボロボロで、もうあとどれくらい戦い続けられるか分からない状態で、電と共有された感覚から目の前の(なにか)がさっきの(なにか)と同一、遠くても同質の存在で、私だけでも電だけでもきっと敵わない上の舞台に立つ存在だってことはもう分かってる。きっと電と私の立場が逆でも押し切られるギリギリで踏みとどまることしか出来なかっただろう。

 

「……そうか。今の風、"アリア"か?……運が良いな。捜し物が2つも同時に見つかるなんて、幸運も有るものだ。」

 

もしかすると二人でもこれに敵うかは分からない。

 

「お姉ちゃんっ……!」

 

でも、"お姉ちゃん"なら話は別だよね。

だって背中には手負いの妹が、目の前には元凶が居るんだもん。

本当にそれだけだけど、でもお姉ちゃん(いまのわたし)にとってはずっと大事なことで、良くも悪くもそれだけという問題ではなくなってしまう。

妹の"お姉ちゃんっ"だけで何倍にも力を出せる。

 

だからお姉ちゃんはダンジョン(ここ)に居る。全てが交差する、妹と出会った運命(キセキ)が詰まったこの場所で、お姉ちゃんは戦うんだ。

 

「私はあなたの捜し物じゃない……!」

 

もうこの会話の中で既に彼女の攻撃目標は私に切り替わっていて、電は魔法攻撃や砲撃で私を援護している。12.7cm連装砲(固有武器)が火を噴き、気づかない間に私に乗せられた艦娘障壁が、夜戦の女神(ヤセンノミチビキテ)のバフが、やたら重い彼女の攻撃から私を守ってくれる。私が自分に早さで壊れることから守ってくれる。

 

さっきの割り込みだって妹を通じて、みていたから、見えていた(しっていた)から。私がお姉ちゃんであるからこそのあのタイミングとあの(ちから)。だからというのは変だけど、でもこれだけは言いたい。

 

あの風(エアリエル)は私だけのものじゃない。だから……」

 

「……!」

 

「『アリア』を見つけるためだけの出し(だし)に使わないでっ!」

 

最近、本当につい最近のことなんだけど、私に妹が出来た。

それは不思議な出会いだった。中層でいつも通り戦っていたはずなのにいつもより追い込まれて、でも焦りがあった覚えはなくて、そんなときに電と出会った。後輩のかわいさと同僚の強さと、私の親しいなにか(いもうと)を突然で偶然だけど必然に満たしちゃった電。そしてあの白兎(おとこのこ)に出会って、助けて、謝って、ちょっと助けて、いろいろ約束して。そんな中で電が助けてくれたり、意味深なことを言ったり、ロキが変わってきたり、とにかくたくさんの刺激があって、気づきがあって。

 

「は?なぜ立ち上がれる。」

 

威力を殺しきれずに跳ね飛ばされ、電の後方に隆起していた元地面にたたきつけられる。私の前に電が立ち、さりげなく掛けてくれる回復性の魔法も、中身がつきて転がる回復薬(バケツ)も私の滲んだ視界に入ってきた。それでも私は私の風(エアリエル)を自分に重ねる。何度でも。

憧れた(かぜ)に非常によく似たその風はそれを阻む者に対して鋭く吹き上げる。

 

もう私はこの戦場で何度も死んでいる、実際は死んでいないけど致死の攻撃を何度も浴びて、妹に強がった背中を見せながら助けられて死にかけてる。だから死んでる。

だってこの(なにか)は私の格上で、対人ではフィンに迫る電を圧倒してたんだもん。対人戦闘を得意としない私が一人で戦って、どれくらい時間が稼げるか分からない様な相手だもん。でも私はまだ倒れない。絶対に。

 

(お姉ちゃんだから)

 

例えアイズお姉ちゃんが世間一般の"お姉ちゃん"に比べてどんなに不器用で、ダメダメでもそんなことは関係無い。前に進み続ける背中は私の知っている沢山の姉の背中と同じで、でもその背中は一人一人違っていて、だからこそ電はお姉ちゃん達の妹で良かったという実感が持てるのです。そして妹でありたいし、妹で有ることができるのです。

 

「……微速前進。」

 

「……!」

 

血の繋がった姉を持たないが故の言い訳がましい理由付けかもしれませんが、(いもうと)にとってはとても大事なことなのです。姉の背中、傷だらけの強がりさんを必死に助けたいともがく原動力で根拠で、きっと私の力そのものでしょう。沈んだ敵も、できれば助けたいのです。でも、その前にお姉ちゃんを助けたいと思うのは不自然でしょうか?

 

「前進一杯、電の本気をみるのです!」

 

唐突ですが、艦娘と船と人の境界線は比較的曖昧で、変なところで地続きの様になっていたり、浮いていたりします。だから、こんなことも出来ちゃうのです。

 

「グハッ」

 

「え?」

 

地面を海と再定義して艤装に読ませる。すると不思議なことに若干のペナルティがあるとはいえ航行能力やソナーを海以外でも生かすことが出来る。海であることに強みがある艦娘としての能力値上昇、経験値加算は起こらないがペナルティー分を引いて暁型の諸性能を考慮しても35ノットは出る。それに駆逐艦は加速が速い。それも継続戦闘能力を度外視して行う前進一杯ならめったに見ることの出来ない急加速になる。

 

最後に艦娘は人型とはいえ船の諸元に準拠して慣性がかかる。するとどうなるか?

 

二千トン近い重量と五万馬力の生み出す加速が少女のサイズで、それも殺意に満ち足りた艦娘障壁が前方に集中した形で打ち出される。

 

これが姉を助けたい妹の"本気"

そして傷ついた姉をみて『戦闘中の事故なら()っちゃってから助けても良いですよね?』とはっちゃけた(プラズマ)ラムアタック(必殺技)であった。

 




やっぱり遅れてしまいましたが今回は若干頑張りました。今後もこんな感じで文章量を確保できる様にします。
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