ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか 作:もんもんぐたーど
ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか55
「指示を。」
「殲滅、出来る?」
「肯定。」
助走をつけて地面を削った少女はちょうどモンスターの目の前で推力を失う。腰を落としたその少女はその半身とも言える武器を全周に振り抜き、敵に災厄と絶命の風をばらまく。鋭く透明な刃がモンスターの上半身と下半身を過剰に綺麗な線で分かち、死を悟らせる前にその命を散らせていた。
「……。」
その中心で自らの放った凶刃が為の返り血を一身に浴びた少女はその事実に微塵の興味も示すことなくもう一歩前に進む。利き手に握られた武器はこの時点で持ち替えられていた。目の前の
「……。」
終わり。そんな雰囲気だけを残してアイズの懐に走り込んできた。
「……戦闘終了は終了条件じゃない?」
「アイズ、どういうことだい?」
フィン・ディムナは18階層からの帰り道に不可解な行動を繰り返す一組の義姉妹の姉の方に疑問をぶつけていた。
そもそも妹、電のほうが合流した時点でいつもと雰囲気が違うのは分かっていたがそれに対してアイズの反応も予想の範囲外であった。
「いまの電は常時戦闘モードに
「想定内なのか……。」
どうしたものかとフィンが視線を向ける先には無限に妹の頭をなで回すアイズ・ヴァレンシュタインの姿。ある種暴走に近い状態になった妹に対して愛でる姿勢と想定内と言い切ることが両立する事実は少なくともフィンには理解できなかった。
「……まあ、状況が状況だったから。私が弱いから……。」
いつもはアイズの湿気った雰囲気を吹き飛ばすアマゾネスの二人は後方に居てこの会話を聞いていない。すねたような雰囲気のアイズと無言を貫くいなづまの二人とそれに付き合う団長と。
今はベートが居ない故に荷物を持たない速度の出る前衛はこの3人しか居ない。フィンの受難は終わらない。
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「んで、実行犯とおぼしき調教師は取り逃したと。」
「そうだね。実力はレベル6、おそらく僕一人では相手取るのに苦労するだろうね。あのいなづまが一人では抑えきれず、アイズと合流してもなお逃がしたんだからね。」
主神と並んで食堂で口頭の報告を済ませるフィンには直近の山積した問題で明らかな疲労の色が見えた。前回今回と波乱続きのダンジョンアタックで膨大になった主神への報告書類や多数の幹部会議等、多忙に多忙を重ねたフィンのスケジューリングはオラリオに一握りしか居ないレベル6冒険者をまさに圧殺せんとする狂気に満ちたものだった。
「それで、どこのもんか検討はついとるんか?」
「いや、まったく。少なくとも
「つまり元凶は
同時にこんなに一気に短期間に重すぎる問題が吹き出してきて、どうも一つの影がちらつく事実にはトリックスターの負担も馬鹿にならない程度であった。オラリオの神々ではない何者かが今の秩序を乱そうとしているということはある種の場外乱闘を強要されているようなものでとてもではないがまともな状況ではない。
「それに、あれは何なのか全く分かっていない。」
「アイズが嫌がっていたあれか。今回の調教師が狙っていたギルドを通さない依頼の運搬物の。」
ベートとともに先に離脱したルルネ・ルーイが殺害された冒険者から引き取ったという運搬物。それは何やら球体のようなもので、アイズがそれを見た瞬間-しかもまだ布に包まれた状態のそれ-に距離をとって近づけないよう言ってきたという不思議な事情がある。あとでフィンがアイズに聞きに行ったところ電から聞くように言われて、電-いつの間にか元通りの様子に戻っていた-から『"アリア"関連の問題なのでお姉ちゃんについてはしばらくそっとしておいて欲しいのです。気をつけないと大惨事になるかもしれないので。』と言われ様々な疑問とともに捨て置かれている案件である。
「あの件についてはアイズがいなづまにあの話をしていたということもほんの少しだけ意外だが、それよりもいなづまがアイズを知りすぎている理由が気になるね。」
「うちが考えてたんは冒険者アイズと言うよりはアイズの種族がいなづまに近しいところがあるんちゃうかと思ってるんよ。今回もそれが絡んでなくはないやろ?風とか。」
アイズの風はアイズの本質に近いと誰かは言った。アイズの風は"アリア"の風でもあると誰かは言った。そしてなんとも難しいことにアイズは確かに人間でロキの
「種族ね……。」
「まあ、それよりも直下で解決しないといけない問題もあるし。」
「ああ、あの
あの運搬物はまだ団長室に厳重に保管されていた。ルルネ・ルーイはいったんファミリアに返したが依頼主と会うときにはいったん呼び出す予定である。その日が今日なのだが。
「あと野暮用で話をせなあかん神もおる。」
「それが両方
ルルネ・ルーイの運搬物の依頼主が指定していた運搬先はギルドの付近の脇道。そして神ロキが少しばかり話をするつもりの場所がギルドのある一室で相手はそこに居る一柱の神だった。名前はウラノス。ギルドの主神であり、"オラリオ"の創設神だ。
「楽しみやなぁ……。何が出てくることやら。」
道化師は、ただ静かに笑っていた。
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