ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか   作:もんもんぐたーど

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《ここに地下迷宮の息吹》


第58話

ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか58

 

それはダンジョン(じごく)37(ある)階層。骸骨がなれの果てを積み上げて地獄の意味を更新したその場所で、3人の冒険者は不思議なぐらい穏やかな雰囲気に満たされていた。普通に考えれば全くの不思議であるがその名前を挙げれば決して不思議では無いと思えるだろう。アイズ・ヴァレンシュタイン、レフィーヤ・ウィリディス、いなづま、その3人である。

 

レベル5二人にレベル3一人、前衛2後衛1のバランスの良い小規模パーティーであるが37階層ほどになるとなかなかの難易度であり、"偉業"の蓄積には丁度良い位ですら有る。

 

"偉業"というと1つの大きな壁を乗り越えることのように聞こえるが、決して死にかけるような"偉業"を一度に達成する必要は無い、魂に蓄積される小さな"偉業"でそれを達成できるというのが電が聞いた、神ロキによる"偉業"についての見解だった。

 

神の恩恵(ファルナ)自身がかなり不可思議なもので長く地上に降りている神でもその全貌を知るものは多くないというので、判断ミスが生死に直結しかねない偉業に関しては、"偉業"狙いのクエスト受注にはギルドが目を光らせているというが……。冒険者側からすると条件がわかりにくいというのもあり、実態としてはなかなか偉業のために無意味に散っていく冒険者は減らないという話であった。

 

先日のダンジョンアタックは18階層までで引き返してしまいましたが、そのときにレベル5に止まっている現状に限界を感じたお姉ちゃんともう少しでレベル4が見えていたレフィーヤさんと私で出直してきて37階層に来ているのです。

 

「なんとか、と言いつつ思ったよりも楽に狩れてしまったんですけど、これ"偉業"に入るんですかね?」

 

「うーん、私は問題ないと思うけど。」

 

「楽に感じたのはレフィーヤさんが戦闘中に平行詠唱を習得したからだと思うのですが……やっぱり天才……。」

 

あっけないと言わんばかりの表情のレフィーヤさんに、首をかしげるお姉ちゃん、なんとも言えない私で談笑するこの場所は決してそんな穏やかな場所では無い。ここ37階層 白宮殿(ホワイトパレス)、階層主ウダイオスを推す深層最初の難所であり、闘技場(コロシアム)と言われるモンスターの湧き場も存在する。

 

それでもこんなに穏やかなのは、おおよそ3ヶ月に1度しか湧かない階層主を討伐した直後であり、周りに別のモンスターがすぐ湧く状況では無いという事に尽きるのです。ダンジョンの壁は戦闘の余波でぼろぼろになっていてまだ修復も始まっていないので、下手したら半日ほどは安全地帯になるでしょう。

 

「うん、私もそう思う。レフィーヤの援護があったから大きな怪我もせずに倒せたんじゃないかな。平行詠唱で援護の幅も広がってたと思うし。」

 

「そ、そうですか?はにゃっ。」

 

不安と喜びを混ぜたような曖昧というか宙ぶらりんな表情で伺うような声を出すレフィーヤさんにお姉ちゃんが手を伸ばす。

 

「頑張ったね。」

 

伸ばされた手はレフィーヤさんの頭に優しく添えられ、エルフのよく手入れされた美しい髪にお姉ちゃんの白い指が通る。

驚いたときの口癖が師匠の片割れから伝染っていたエルフはお姉ちゃんへの弱さもまた同じくらい高まっていた様なのです。

 

リヴェリアさんのようなオラリオ最強といっても差し支えない魔導士に師事する上にロキ・ファミリアでは頭一つ抜けた魔導士であり、同系統の冒険者とライバルに近い関係を持たなかったレフィーヤさんは自分の実力が相対的にどれくらいなのか十分にわかっていない節があります。

 

「……お役に立てましたか?」

 

平行詠唱が出来ることの凄さをわたしやリヴェリアさんと比べて自分が出来ないという基準でしか判断し得ないなら、レフィーヤさんから見てこんなに評価されるのは意外に思うのも不思議ではないのです。

 

「うん、とっても。」

 

ここでお姉ちゃん、レフィーヤさんをそのまま抱きしめる暴挙に出る。はぁ、いいなぁ……。でも、ここ最近はレフィーヤさんの自己肯定感を下げる事象がちょくちょく起きてるみたいなので今回くらいはお姉ちゃんにしっかり誉められて自信を持ってもらう必要がありますよね……。

 

「……なのです。」

 

その代わりにお姉ちゃんのがら空きの背中を制圧してしまいます。私の知るお姉ちゃんの中でダントツに身長が高いだけあってその安心できる背中は広く、逆にその広さが包み込むように安心を生み出す循環が生まれたのです。

暖かいのです。

 

電と同じくらいの背中(ふぶきがたくちくかんのせなか)も間違いなくお姉ちゃんの背中だったのですが、やっぱり広いと広いだけお姉ちゃん力も高まりますねっ。まあお姉ちゃんはみんな違ってみんな良いので比較するのはあまり意味のある行為じゃ無いんですけどね。

 

でも、こんなに広い背中を独り占めできる自分はきっと今だけは特別な妹に違いないのです。……自分で思っておいてなんですが特別な妹はちょっと意味不明ですが、まあそういうことなのです。

 

「二人ともお疲れさま。」

 

お姉ちゃんの声を背中伝いで聞いた後、しばらくその場でつかの間の休息を終えて、私たちは地上に帰還しました。途中で"冒険"してしまった白兎系冒険者とそのサポーターの小人族(パルゥム)の少女を助けて合流、後に厄介ごとに巻き込まれる切っ掛けになるのですが今の私たちには知るよしも無いことだったのです。




先週末投稿出来ず、しばらく安定して文章を書いていない自体に気づいたので今日は2話連続投稿です。頑張ります。
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