ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか   作:もんもんぐたーど

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《ここに地下迷宮の息吹》


第59話

ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか59

 

「みんな、おかえり。あー、アイズ、ステータス更新しよっか?いなづまとレフィーヤは後でやるから安心してな。2人は先に風呂入ってきてくれると助かるわ。」

 

ウダイオス討伐後、無事地上に帰還した私たちは、途中で合流したベルさんとサポーターの方-結局名前を聞きそびれてしまったので残念なのです-とギルドで分かれて、ホームに帰還しました。ホームの入り口の門のあたりには、糸目に限りなく無い胸部をたたえる吾等が主神、ロキさんが立っていたのです。

 

「うん」

 

「はいっ。」

 

「なのです!」

 

ロキさんが両手をわきわきさせてお姉ちゃんに襲いかかろうとし、お姉ちゃんがデスペレートに手を掛けたのを見届けて、私とレフィーヤさんは自分たちの部屋を経由し風呂へ向かう。ロキ・ファミリアのお風呂は広く、どちらかというと鎮守府にある艦娘浴場や銭湯の類いに近い広さなのです。ファミリアに所属する人は基本的にファミリア内に住んでいるので当然広くないと福利厚生に良くないのですが、今の時間帯だとどんなに居てもたまたまこの時間に帰ってきた冒険者くらいしかいないので過分に福利厚生を感じてしまいます。

 

「いなづまちゃんはお風呂好きですよね?」

 

「ええ、とても。毎日肩まで浸からないと落ち着かないくらいには好きです。」

 

日本(じん)ですし、広い湯船は大変よろしいのです。とかいってつい長々と良さを語り始めるとドン引きされてしまうのは目に見えているのでセーブしているつもりですが、うまくいっているでしょうか?

 

「私はシャワーだけ浴びたら寝ちゃうことも少なくないですね……、湯船で足を伸ばす気持ちよさも分かりますが。」

 

「足を伸ばせる広い湯船は良いものです。ロキ・ファミリアは大手だけ有ってこういった福利厚生がしっかりしてるので団員さん達のコンディションも保たれて良いのです。」

 

残念ながら大手でも、団員を多く推すファミリアで有ってもここまで気が回っているファミリアも決して多くは無いと思いますが、ね。現実は辛く厳しい。

 

実際に湯船でレフィーヤさんと並んで足を伸ばし疲れを癒やしながら脇道にそれた思考を収束させる。結果的に私たちは恵まれていますが、だれしもがそれを享受できる訳ではないのです。となんか湿っぽい事を考えてしまいましたが、なにもかもベルさんが悪いのです。正確には彼が連れていたサポーターの方ですけど、それは置いておきましょう。それについては今度考えるのです。

 

「いなづまちゃんも"福利厚生"とか団長やラウルさんとか……幹部の皆さんみたいなこと言うんですね。」

 

自分には分からないと言いたげなレフィーヤさんの首かしげのあざとさに高い妹力を感じ戦慄しますが、今はそれよりも重要なことがあるのです。

 

「むぅ。レフィーヤさんもリヴェリアさんの後継者と目される立場なんですから、リヴェリアさんの考えていることは明日レフィーヤさんが考えることでもあるんですよ?」

 

さっきまでこっちを向いていたのに視線をがっつりそらしていくレフィーヤさん。可愛いですけど駄目です。

 

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尤もな指摘に私が一瞬目をそらした後、再度電ちゃんの方に向き直ると彼女はここではないずっと遠い場所を見る目で再び口を開く。

 

「それに幹部になってたり薬科(ポーション)販路の担当になっていたりすると、新人冒険者なのに気づいたら考えることに事欠かないのです。リヴェリアさんの後を引き継ぐことはもっと大変ですよ?」

 

「……はぁ、本当は風呂の間くらいは何も考えないで居られたら良いのですが。」

 

言い終えるとそのまま瞳を閉じた彼女は口元あたりまで浸かるほどにお湯の中に沈んでいく。自分の魔法の師のうちの一人であったり、憧れであるアイズさんの隣に立つ数少ない魔導士であったりと実力の高さに目が行ってしまいがちのいなづまちゃんですけど、おそらく自分よりも年下なんですよね。そんなことを考えると、なんだか私には今のいなづまちゃんのその表情が酷く悲しげに見えてきました。

 

「にゃ?」

 

何故か分からないけど、いや、はっきりと言葉に出来ないだけで分かってはいる。いなづまちゃんがこんな表情をしていることを好く思っていない私が居る。理屈抜きに、お風呂の温かさに表情が崩れて至福の時間を味わっている電ちゃんが見たいと。私のわがままかもしれないけど、私は今、そんな電ちゃんが見たいと。

 

そして脳裏に浮かんだのは憧れの……アイズさんがよくいなづまちゃんにしているスキンシップ。頬をつついたりうなじをなぞったりと様々だけど、まず初めてなら一番難易度が低そうなあれを試してみる。

 

「いなづまちゃんの髪は落ち着いた色で目立つわけじゃ無いけど魅力的ですよね。」

 

あたまを撫でることです。結果から言うと効果はてきめんで、一瞬驚きの表情が出てきましたがすぐに目を細めてリラックスした雰囲気になりました。

 

「……そう、ですかね?」

 

「ええ、アイズさんが良く撫でているのも理解できる気がします。」

 

「……なのです。」

 

いなづまちゃんは目をそらして、そのままおとなしくなりますがその後の入浴中は穏やかな雰囲気を保ってほんの少しだけ時間がゆっくりに感じる入浴時間を過ごしました。風呂を出てからある重大な事案があり一気に慌ただしさが迫ってくるのですがそれはきっと後の話です。




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