ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか   作:もんもんぐたーど

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第6話

 

「ーーということや。」

 

「あぁ、彼女がその……いなづまなんだね。」

 

「なのです。」

 

オラリオ最大のファミリア、ロキファミリアを率いる団長、小人族で勇者《ブレイバー》のフィン・ディムナはロキからの状況説明と手合わせのお願い、そしてその手合わせの対象である ー随分とアイズに懐いている様に見え、アイズも満更ではない様子の少女ー 新入団員(仮)のいなづまに悩まされていた。

 

全くと言って良いほど、目の前の少女とレベル5相当というの二つの要素が結びつかない。

その点ロキのたとえは秀逸だった。これが行きつけの花屋の看板娘だと紹介されたらどんなに気が楽だっただろうか。今みたいに変に勘ぐる要素もなくアイズと姉妹然とした姿にほのぼのと出来たに違いない。

 

現実としては、アイズをお姉ちゃんと呼ぶ姿は見た目以上に彼女を幼く見せるもののダンジョン十五階層で十分立ち回れる能力を最低限持ってるということで、今の姿と実際の戦いぶりの差は大きいだろう。

 

そしてロキと神の恩恵(ファルナ)ではなく盟友関係を結んだ新人、という空前絶後の存在で現在進行形で頭痛の種だ。

 

ロキがいうには信仰由来の神のような存在だそうだけど、新人だそうだ。それはきっと同音異義語だと思う。

 

ん……?というかその話が本当なら小人族の復興が成せれば女神フィアナが架空じゃなくなる可能性があるってことじゃないか。

 

神から信仰が生まれる事は娯楽に飢えた神々の住まうオラリオで当然の事だ。今この瞬間にも新たな冒険者が神の子供《けんぞく》として誕生しているだろう。子供《眷属》たちの信仰は神の力を示すものになる。

 

ーなら逆は?

 

目の前の少女がそれを体現するなら、ある種の強さとして神に近づくほどの信仰を集めたなら……自分が槍を構えるのに躊躇しうる要因は一つもない。

 

 

 

そのことに気づくと俄然やる気が出てきた。現金なものだが僕は目的ー小人族の名誉回復・復興ーのためなら手段を選ぶつもりはない。

 

「いなづま、君はこの手合わせに何を賭ける?」

 

「賭ける……なのです?」

 

目の前の少女は首をかしげ思案顔に。同様にアイズも首をかしげるが多分混乱しているだけだろう。ロキはニヤニヤとこっちを見ている。真意に気づいたのだろう。

 

「私には……賭けられるものが他にないので……私自身を賭けるのです。フィンさんはどうしますか?」

 

「君が決めて良いよ。」

 

正直負ける気はしないのでいなづまに委ねる。信仰由来とはいえ神としての力を行使することは出来ない。少女にレベル6は負けないし負けられない。団長としても見た目からなかなか評価されない小人族だからこそ実力だけは本物でなくてはならない。

 

「私が勝ったら……アイズお姉ちゃんが欲しいのです。」

 

え……?

 

「え……?」

 

顔が赤くなったアイズの声と僕の思ったことが完全に一致する。アイズが欲しいって?どういう意味なんだ。

 

「それはいったい……」

 

「詳しいことは手合わせの後で、なのです。」

 

少女はにっこりと笑う。親指がうずくと、目の前に強者《正体不明》がいることを認識させられる。気付いたらアイズも復活してるし、もう始め時だろう。

 

「それじゃ、いなづまが踏み出したら始めにしよう。」

 

「分かったのです。」

 

直後彼女の体格からは予想も付かない衝撃が反射的に僕の身体を動かさせた。

ーーーー

 

「ーーアイズお姉ちゃんが欲しいのです。」

 

「え……?」

 

んん?いなづまはアイズが欲しいって言うたんよな?聞き間違いやとおもいたいんやけどフィンもあっけにとられてるしアイズも顔真っ赤にして声漏れてるしうん。なんや、いなづまそっちの気があったんか?

 

そうじゃないかもしれんけど、明らかに敢えて誤解を招く表現をつかっとる。フィンの動揺を誘ってるんやろうか。でも動揺を誘うは正直失敗やとおもう。自覚するからこそ隙がなくなる。それがフィンや。

 

「それはいったい……」

 

いなづまはにっこりと笑うとフィンの疑問を遮った。

 

「詳しいことは手合わせの後で、なのです。」

 

目の前の存在の圧にほとんど力を封じているはずの体がびくっと反応する。フィンは親指を気にしていて、アイズも混乱から目を覚ます。ただいなづま一人だけがさっきまでと変わらない表情でフィンを見つめていて……。

 

それなりの団員が修練に励んでいてそこそこ騒がしかったはずのー屋内闘技場は波のように広がる圧迫感に無音が広がった。

その圧迫感の中心には団長フィン・ディムナと団員にとって見慣れない茶髪見慣れない服を着た少女が見つめ合っている。

 

「それじゃ、いなづまが踏み出したら始めにしよう。」

 

「分かったのです。」

 

次の瞬間キーンとした金属のぶつかる音とともにいなづまとフィンの立ち位置が入れ替わる。アイズを除けばほとんどの団員がその姿を捉えられなかったようだ。

 

フィンは、いなづまがふらついた一瞬の隙を見逃がさず槍のリーチを活かして追撃態勢になる。避けきれずに受け身をとったいなづまから槍を引き、距離を取って二本目の槍を用意する。

 

まさかフィンに本気を出させるとは……。はじめのふらつきから劣勢を覆せていないが差は開いていない。ただ本気のフィンになんと追いつけている時点で異常やとおもう。

 

まあ、それでも限界というものがあるっちゅうもんで、手合わせもいよいよ佳境に入ってくる。

そんなとき、さっきまで距離を詰めてリーチ差を埋めていたいなづまが一気に距離をとった。何となく次が最後になるようなそんな予感がした。




直前に再編集して間に合わないやつです。
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