ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか   作:もんもんぐたーど

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第7話

「……良い団長さんですね。」

 

いなづまの呟きが耳に入る。そのふと漏れたような声は興奮と喜びと、疲労と……ほんのわずかな驚きを私に訴えかけてきた。それは同時に、目で追うのも大変なー高レベル冒険者的手合わせに場外から興奮していた私に疑問と冷静さをもたらした。

 

とてもではないけど新人(じゃくしゃ)レベル6(きょうしゃ)に挑むような在り方ではなかった。この瞬間誰がどう見ても、フィンといなづまは同じ格のステージに立ち ー そして同格の緊張感を共有していた。

 

そしてさっきのつぶやき。もしかしてあの手合わせの中でフィンを分析する余裕があったの?直感のようなものかもしれないけどそれはそれですごいとおもう。身内だから良いんだけどそうじゃなかったら……。

 

「……ふぅ。」

 

いなづまは限界が近いのか一撃のために距離をとる。後ろに飛びながらも次の攻撃の準備が隙間なく行われていく姿はさながら精密な機械人形といったところ。

 

なんらかのスキルが機能しているらしく、いなづまの気配に隠されていた力の塊のようなものが着地したとたんに足元に収束した。

 

「なのです!」

 

掛け声と共に始めの斬り込みを上回るー私も目で追えなかったー速度でフィンに迫り槍を弾いて一瞬のうちにフィンの体勢を崩して押し倒してしまった。

何で今あの速度が出たのか、どうして始めにフィンの姿勢を崩さなかったのかと考えを巡らせていくうちに別に疑問が出てくる。

 

「……いなづま?…フィン?」

 

さっきまでのスピード感が嘘のように動きがない。ほぼ無音のまま1秒2秒と時間が過ぎていき10を数えたくらいでフィンに動き、というか発言があった。

 

「ロキ、アイズ……いなづまが気を失ってるから持ち上げてくれないか?技が決まってて僕だけじゃ動けそうにない。」

 

気を失ってると聞いて頭が痛くなるのを抑えながら、フィンに近づく。

 

しゃがんでいなづまを観察すると、息はあるものの意識はない事が分かる。フィンの首に回されたー気を失っていると思えないほどしっかりとロックしているーいなづまの左腕をほどきフィンから引きはがすと私はそのまま両腕で抱えるようーお姫様抱っこというらしいーに抱く。背後からロキが近づいてきているが気にしない。

 

「ほんますごいな。気失っても負けへんかったか。」

 

いなづまの暖かさと鼓動を確かめ安心するとともに、自分が思った以上に不安になっていたことを自覚した。いなづまと対照的に私の心臓はいつもより早いペースで全身に血を行き渡らせていた。

 

「これは引き分けかな……。」

 

冷静に考えれば、思い当たる事があった。魔法の使いすぎ、そうマインドダウンだ。いなづまはそんなに長くない手合わせの間に何度も魔法を使っていたからあり得ると思う。何故か金属製のリュックみたいなのは展開しなかったからあの"固有武器"は見れなかったんだけど……。

 

たとえマインドダウンだったとしてもレベル6相手に迫り実質引き分けに持ち込んだ実力は対人だと私より高いかもしれない。

 

「ーーアイズ?」

 

「……あ。どうしたの?」

 

いつの間にか起き上がっていたフィンに声をかけられる。

いや、かけられていた?今声をかけたにしてはフィンから漂う待たされた感とロキの視線が痛い。ガレスとリヴェリアもいるし……もしかして私またトリップしてた?

 

「どうしたのって……いなづまを医務室に運んで欲しいんだ。僕たちは今から僕の部屋でいなづまのレベルについて話し合ってくるけど、心配ならそのまま一緒にいてかまわないよ。」

 

「うん、わかった。」

 

取りあえずいなづまを医務室へ。後は着いてから考えよう。

 

ーーーー

 

「うん、わかった。」

 

そう言うとアイズはいなづまを抱えて闘技場を出た。

 

思ったよりもずっといなづまにべったりになっているアイズを見て正直やや不安がある。

一方最近レベル5で停滞していると感じている彼女にとっては良い刺激になっているだろう。それ自体の冒険者としての良し悪しは置いておきアイズという人間にとっては良い影響を与えていると言える。

 

「ガレス、リヴェリア。二人はいなづまをどう思う?」

 

まだロキから詳細を聞いていない二人に意見を求める。二人ともレベル6の一級冒険者だしさっきの手合わせ(?)で意見を聞いても問題ないだろう。

 

「あの子はいなづまというのか。とにかく早いといったところかのう。ただ一つ不自然じゃったのが、フィンが受け流し方を切り替える直前に受け流し方に対応しておる場面が何度かあった。」

 

ガレスの言葉に思い当たりさっきの手合わせを思い出す。確かにあまりにも滑らかに、いやねっとりと受け流しに対応してきていると感じる場面が何度かあった気がする。手合わせ前の彼女の言葉を警戒して手合わせに集中した結果、逆に手合わせの間はそこまで考えが回っていなかったかもしれない。

 

「私からは、彼女の魔法について気になることがあった。あの手合わせで私が見ている間だけで私でもマインドダウンするくらいは魔法を放っている。それに最後の機動は魔法で実現しているがちょっと特殊だな。あれは初めて見た。それに、完成された並行詠唱。魔法剣士型のフィルヴィスに似ているが……。」

 

確かに牽制にしてはやけに威力の高い魔法が多かった気がする。あの規模の魔法をポンポン撃てば、撃つほどに目に見えて身体が重くなっていくはずだ。双槍で受け止めても痺れるような魔法をあの手合わせで何度も使っていればマインドダウンは免れないだろう。

 

並行詠唱についてはロキ・ファミリアでもリヴェリアくらいしか出来ない高等技能だ。それに魔法剣士か……。もう驚かないでおこう。疲労だけがたまる気がする。

 

「一応擁護しておくといなづまは……はい、続きはフィンの部屋で話しますわ。」

 

まだ闘技場を出ていないのに口を滑らせそうになる主神を威圧する。多少拗ねてしまうが団員も多いこの場所で話せない内容だった。さっき自分に説明してきたときはちゃんと周り見てたのに手合わせを見て興奮してしまったのだろうか?

 

「わかった、ありがとう。いなづまについては僕の部屋で僕とロキ、それにもしアイズが来ればアイズからも説明する。それじゃあ移動しようか。」




戦闘描写はどうしても説明中心になってしまい大変です。軽快に描写できている他の作者さんは本当にすごいです。

今回は間に合いました。次回も頑張ります。
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