「まったく……キミも無茶するなぁ。ディストルにケンカ売るなんて」
「おっす、モコ。なんだか気分爽快なんだが」
いつの間にか例の乳白色の場所に呼び出されていた。
目の前には呆れきった顔のモコ。
ヤツは大げさな身振り手振りで続けた。
「あんだけ毒を吐けば気分もいいでしょ。その結果が『消し去るもの』との衝突だったけど」
「なんか行きがかり上仕方なかった。弁明終わり」
「もうちょっとだけ真面目に聞いてくれないかなぁ」
消し去るもの……ねぇ。
どうりで「不要」だの「余分」だの言うヤツだと思ったら、それを消し去る役目を負ってたようだな。
アイツの口癖、攻撃法が妙に納得がいく。
それにしても『生み出すもの』についても何となく察しがつくが、『定めるもの』ってなんだ?
一体何を定めればいいんだろう。
「あのさ、『定めるもの』って何すればいいんだ?」
「うーん、説明するのは簡単だけどね。教えない」
「あーそうかい。親切な振りして肝心な部分じゃ突き放すのな」
「そうじゃなくてね。これを聞いちゃうと役目が全うできないと思うから」
「なんだそれ。普通は知らないと役目を果たせないもんだろ」
「そうだけどね。これに限っては知らない方がいいんだ」
わけわからん。
所詮はネコか。
餌には媚びるがオレには媚びねえっつうのか。
「まぁ焦らないでよ。いずれ全てを知るようになるから」
「オレとしては今すぐ聞いてスッキリしたいんだが」
「諦めて、どんなに聞かれても答えないからね」
あ、世界が戻り始めた。
コイツ面倒になって締め出す気だな。
勝手に呼んだかと思えば、都合が悪くなったら追い出すってやりたい放題だな。
現実世界に戻ってくると、オレはベッドに寝かされているのが分かった。
天井の感じからして、どうやら自宅に帰ってきたらしい。
負傷により戦線離脱ってやつなのか。
ベッドから半身を起こすと、シルヴィアとミレイアの顔が見えた。
二人とも赤くなった目を大きく見開いている。
「おとさん! よかった! しんでない!」
「魔王様ァーー、ごめんなさいぃー! 私のせいでこんな事にぃーー!」
ゲフゥ。
2人の子供の容赦ない頭突きがオレの胸に刺さった。
オレ一応負傷者なんだけど。
そう声をかけようとしたが止めておいた。
どちらも大泣きモードだからだ。
オレの方こそすまんな。
自分の欲望に飲み込まれてしまったようだ。
普段あんな偉そうな事言っててこのザマだ。
「おとさん、おねがい……あぶないこと、もうしないで。シルヴィアから、もうはなれないで」
「ごめんなさい、あんなもの二度と用意しません。ですから早くお元気になってください」
親は子の事を常に心配してるが、それは子供も一緒だ。
見守る側に回るとその事を忘れちまうんだなぁ。
その結果これだけ泣かせちまうんだから、オレはダメな親父だよ。
泣き声を聞いたのか、リタがやってきた。
「アルフ、起きたのね。外傷も精神も問題ないから、すぐ目を醒ますって二人には話してたんだけど」
「そう言われても心配なもんは心配なんだろ」
「そういうものかもね。向こうの事なら皆が片付けてくれるらしいから、アルフは気にしないでって」
「それは助かるな。つうか外傷がないなんて……ほんとだ」
あの光が胸を貫いた事は今でもハッキリ覚えているが、傷どころか痕すらもなかった。
あの攻撃の原理が尚気になるな。
まぁ、あの頑固無口野郎が教えるとは思えんが。
夜になって、グレンが見舞いに来てくれた。
まずはお互いの無事を喜びあった。
「アルフさん、病床の身でこんなこと言うのはなんだけど。昨日のミレイアの事で」
「昨日っていうと、オレが寝てる間の話か」
「そうだね。で、ミレイアがまた夜中になると、ナイフに囁くようになってさ」
「おい、また『ニンゲンを皆殺しに』とか言ってんじゃないだろうな?」
「いいや、そんな事は一言も。『ミレイアと手を繋ぎたくなる』『ミレイアを抱っこしたくなる』『ミレイアとデートしたくて何も手につかない!』とか言ってたんだけど」
「すぐにやめさせろ」
反省したかと思ったら第二弾を製作中かよ!
しかも今度のは「巫女の祈り」から程遠い「洗脳」じゃねえか。
そんなナイフ、絶対に受け取らないからな?
相変わらずブレないミレイアを思うとため息がこぼれる。
それでも仲間からの『おかえり』が聞ける事や、オレを変わらずに受け入れてくれる事は素直に嬉しい。
オレの暴走を止めてくれたディストルにほんの少しだけ感謝した。