魔王様はダラダラしたい!   作:おもちさん

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第29話  戦いの行方

5千を越える陣容はこの付近では最大戦力だ。

大小数多の国に分かれているこの大陸において、1千の兵すら出せない国が大多数だ。

傭兵でも農民兵でもない、正規兵のみの集団。

魔法対策に、極めて貴重な魔法兵を100人も連れている。

2、300人の隊に一人という割合が一般的であるから、自国の軍事力の高さの証明だ。

 

 

現在は首都からレジスタリアの街に向かって進行中だ。

街道を堂々と進む王の軍。

街を落とすまでは奇策はいらない、力づくでねじ伏せる気だ。

あの不忠どもを葬れるかと思うと、思わず腕に力が入る。

騎馬隊に守られるように進んでいたが、叶うなら馬を疾走させたかった。

 

 

一刻も早く戦端を切りたい。

1日も早く街を落としたい。

全ては我が神のため。

 

 

汚わらしい獣人や亜人どもを討ち果たし、美しく整然とした国を神に捧げなくてはならない。

 

 

手綱を握る手が湿る。

あと3日も行軍すればたどり着くだろう。

それまでの我慢だ。

 

 

しばらくすると報告が上がってきた。

 

 

「陛下、前方に亜人の集団がいます。」

「近くに町でもあるのか?」

「いえ、それは確認できていません。何らかの理由で移動しているだけのようです。」

「どんな事情があるかは知らんが、殺せ。一人残らずだ。」

「承知しました!」

 

 

兵が駆け去っていく。

目障りな出来損ない共は間もなく皆殺しにされるだろう。

指示を出した兵が隊列に戻れるよう、行軍の足並みを落として進んだ。

 

 

 

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「アルフー、言われた通りうまくやりましたよー。」

「わかった。今どんな具合だ?」

「森の境目には要所に結界、入った瞬間夢の世界へご招待ーって感じですよ。」

「さっき侵入してきた集団は?」

「もうアホ丸出しの顔でスヤスヤしてますよ、ほんとニンゲンってのはしょうがないですよねー。」

 

 

今はリタ、アシュリーとともに豊穣の森の端部分にきていた。

敵は森には入らず、街道沿いにレジスタリアに向かうようだ。

街には今現在で300人の守兵しかいない。

しかも騎士階級のようなエリートはおらず、民兵あがりの警備隊だ。

まともに戦ったら勝ち目はない。

野戦はもちろん、籠城してもいずれ数で押しこまれる。

 

 

「ですので領主様、先駆けて敵兵を見事駆逐してきてください。」

 

 

そう言ったのはやっぱりクライス。

こうなるのは薄々感づいてたけど、当然のように言われると腹立つな。

珍しく一緒に報告にきたアーデンは恐縮しきりだ。

普通は魔王に頼み事するときはこんな感じになるだろうにな。

まぁこいつらのおかげで不意打ちを避けられた。

そこだけは評価してやる、そこだけはな。

 

 

単純に撃退しようと思ったが、それではダメらしい。

しっかり恐怖と、得体の知れない未知なる力を見せつけないといけない。

そうでないと、兵力が整うたびに何度でも攻め寄せてくるからだとか。

クライス、お前は何もしないのに注文だけはするんだな。

正論だとは思うが、なんかイラっとくる。

 

 

ちなみにエレナは街で子供たちとともに留守番だ。

元プリニシアの騎士であるエレナを戦わせるのは忍びないしな。

めちゃくちゃ機嫌が悪かった。

シルヴィアたちを頼むと言ってなんとか引き受けさせたんだ。

 

 

「眠らせた兵は見つからないよう、ちゃんと擬態はできてるか?」

「もっちろん、ニンゲン風情には絶対に見つけることはできません。この美少女賢人アシュリーさんに抜かりはないんですよー?」

「うっざ。じゃあ簡単に見つかることはないな?」

「え・・・ええ、そうですけど。いまウザいって言いました?ウザいってはっきり言いませんでした?」

「じゃあ第二弾だ、夜まで近隣で待機な。」

 

 

さえずるトリを無視して次の作戦の準備を始めた。

クケケ、夜が待ち遠しいな。

 

 

 

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プリニシア軍の中で、奇妙な噂が流れ出した。

王命を受けて別行動を取った一隊が戻ってこなかったらしい。

怒り心頭の王様は急遽呼び戻すように、別の一隊に命令したが、どこにも居なかったらしい。

 

 

まるで初めから誰も居なかったように。

 

 

「それって、やっぱり魔王に殺されちまったのか?」

「それがどうやら戦った形跡どころか、人が居た痕跡すらなかったらしい。生き残りはもちろん、屍体も、血だまりも、武器の類や軍旗もなーんにも。」

「なんだよそれ、そんなこと有りえんのかよ!」

「オレが知るわけねえだろ。」

 

 

失踪した兵はせいぜい100人。

この大軍からすれば微々たる人数だ。

それでもプリニシア軍に与えた衝撃は大きかった。

文字通り一人残らず、跡形もなく消えてしまった。

そんな前代未聞の出来事を、末端の者は困惑と不安で受け入れた。

誰一人撤退を口にしないのは、王の怒りを恐ているからであった。

 

 

「あぁおっかねえ、魔王なんて相手にしたくねえ。まだ魔獣討伐の方が気楽だって。」

「ぶつくさ言ってもしょうがねえだろ。街を落としてベッドで寝れば、気も変わるだろ。」

「お前は楽観的で羨ましいよ。おやすみ。」

 

 

陣のあちこちでそんな会話が繰り広げられた。

不安を口にするもの。

あまり気にしていないもの。

そもそも噂を知らないもの。

腹のうちはそれぞれだった。

 

 

だが彼らは今置かれている状況の深刻さを、翌朝に思い知ることになった。

 

 

また100人が、消えていたのだ。

 

 

 

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「うーん、だいたい100人かな。昼と同じ人数になっちゃっいましたねー。」

「偶然こうなったが、いいじゃんその方が。なんか意味深になるだろ。」

 

 

オレはリタに頼んで、お得意の幻術を敵軍にかけてもらった。

本来数人にかける程度の幻術を、オレの魔力を利用してあちこちで発動させた。

この幻術ってのは、相手の思考を操作するっていうかなりの便利魔法で、心が不安定になってる奴とか気の弱い奴あたりには滅法かけやすい。

逆に意思の強い奴なんかには何回かけても無駄だったりするが。

ちなみに夜の作戦は、寝ぼけ半分の奴らを幻術で森に誘導して、そのまま例のトラップで全員スヤァ。

同じく擬態の処理までして、二度目の失踪が出来上がりってわけだ。

 

 

奴らは敵の姿が一切見えないまま、謎の攻撃を受け続ける恐怖。

やばいこれ、すげえ楽しい!

これ仕掛ける側だとクセになりそうだぞ。

 

 

年に一回でいいから、こいつら定期的に攻めて来てくれんもんかね。

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