魔王様はダラダラしたい!   作:おもちさん

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第4話  魔王軍 初遠征

僕は今、妹が囚われている建物の前にいる。

希望が生まれたからか、心は今までにないくらいに高揚していた。

もしかすると、人知を超える存在による恐怖のせいかもしれない。

 

僕は道案内を買ってでて、魔王様と側近のエレナさんを連れてきている。

ここは街の一角にある、レンガ造りの大きめの商店だ。

表向きは奴隷商の看板を掛けているけど、裏の顔があることは公然の秘密。

昨日何人殺したとか、店の連中が話しているのを何度も聞いた事がある。

犯罪の証拠はたくさんあるのに、お咎めが一度もないらしい。

そんな事が許されるのも、領主と裏で繋がってるからだとか。

 

 

お店はもうとっくに閉まっているはずなのに、入り口には門番が二人もいる。

普段ならこの時間だと店の奥に灯りが点くくらいで、見張りがいることなんて無いのに。

やっぱりここには何かがある。

ミレイアはきっとここに居るはずだ。

 

 

「己の利益の為に人さらいか。それも6歳の子供に手をだすなど、許さる事では無い。」

「あーーほんっっとめんどくせえ、とっとと皆殺しにして帰るぞ。」

 

 

心を読むなんてできない僕にも、この二人の気持ちは良く理解できた。

エレナさんは怒り心頭、魔王様はやる気ゼロといったところだ。

口から「やる気ねえぇぇエエエ」と漏れ聞こえそうな表情だけど、あのシルヴィアという女の子の約束のために、ここまで来てくれた。

どうやら「妹ちゃんがここに来てくれるまで寝ない!」なんて言ってたようで、その結果、時間制限までついてしまったらしい。

 

 

だからと言ってさぁ、急いでるからってさぁ。

下調べも何もしないうちに乗り込むのはどうなの?

あーもう、スタスタと入り口に行っちゃったよ?

 

 

「なんだテメェは!それ以上こっちに」

「うっさい黙れボケ。」

 

 

魔王様が両手をおもむろに広げたかと思うと、門番の男2人はドサリと地面に崩れ落ちた。

不思議に思って門番の顔を覗いてみると、眉間に小さな穴が空いて血が流れていた。

 

「え?え?」

「ホラホラぼさっとすんな行くぞ。」

 

何事もなかったように入り口を潜る魔王様とエレナさん。

あまりの雰囲気のそぐわなさに、僕はもう何度目かの混乱をしてしまう。

 

 

「あ、あの殺したんですか?」

「ん?なんだ、殺しちゃまずかったのか?」

 

 

ここの連中は人さらいはもちろん、強盗や窃盗、殺しまで何でもやるヤツらだ。

そんなヤツらなら殺してもいい・・・のかな?うん、どうなのかな?

というかそもそも、どうやってあの一瞬で屈強な男達を瞬殺したんだろう?

 

 

そう考えを巡らせているそばから、荒くれ者達が飛び出してきた。

そして皆すぐに屍体へと変わっていく。

魔王様は相変わらず両手を真上に上げるだけ。

そうすると立ちはだかる男達は眉間に穴が空き、確実な死を与えられた。

 

 

「この建物は2階までだな。アルフよ、救出対象はやはり地下にでもいるのだろう。」

「ま、ありがちだよなーこんな組織なら。さぁて地下への階段はどこにあるんだろなっと。」

 

 

まるで引越しでも頼まれたような気軽さで、犯罪集団のアジトの地下室を探すお二方。

もちろん潜入要素なんて全くなくて、エレナさんは物音を気にもせず家具を引っ張り回している。

魔王様なんて床や壁を八つ当たり気味に蹴り砕いている。

 

 

 あれーおかしいな。組織壊滅じゃなくて救出目的だったはずじゃぁ・・・・。

 

 

そうしている間にも警備の男達が2人3人とやってくる。

今度はエレナさんが手を前に伸ばし、やっぱり男達は動かなくなる。

もっとこう、古代の魔法とか、呪いの剣とか必殺技とか!

そういうのが出てくると想像してた自分が遠くに感じるなぁ・・・。

 

 

「お、あったぞ。ここだろ、地下入り口。」

巧妙に隠された地下入り口を発見して、僕たちは降りていった。

足音を殺したりなんか全くせずに、それはもう淡々と。

 

 

地下は思ったよりも広く、詰所のような部屋があった。

そこには酒や料理の乗ったテーブルといくつかの椅子、そして部屋の向かい側には扉があった。

見るからに重く硬そうで、何かから守ろうとするような意思を感じる。

大切なものを隠してます、とか書いてありそうな程だった。

 

 

 この奥にミレイアが? 扉の鍵がこの部屋にあったら楽だけど・・・。

 

 

なんて考えていると、「とーん」とこれまたやる気のない声で、魔王様が扉を縦に切った。

一体何をしたらそうなるのか、本当に「切った」としか言いようがない。

鉄の扉は無残にもキレイに二つに割れて、ゆっくりと崩れ落ちた。

 

 

 もうあれこれ考えるのはよそう、ミレイアの事だけ考えていよう。

 

 

常識を覆しまくる現状に、もう脳が限界を迎えようとしていた。

 

 

「・・・! お兄ちゃん!」

「ミレイア!!」

 

 

扉の向こうはやっぱり牢屋になっていて、何人もの子供が捕まっていた。

牢屋の鍵を探し出す・・・必要はなくて、ここも魔王様が「とーん」と開けてしまった。

 

 

「よかった、ミレイア。怪我はない?」

「うん、大丈夫。みんなと一緒に閉じ込められただけなの。お兄ちゃんこそ怪我はない?!」

 

 

僕はミレイアの無事を、ミレイアは無茶をした僕を。

互いに気遣い合いながら再会を果たした。

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