では、特別編をどうぞ
組織を壊滅させてから、二年後。昂はある大学の廊下を歩いていた。華やかな私服を着た学生達の間を、薄緑の作業服に身を包んだ昂。普段見慣れない作業服を着た人物に、学生達はみな、注目する。ただ、それだけはない。その作業服を着た人物がイケメンだった事で、さらに注目の的だった。昂がある扉の前に立つ。『第23号 研究室』と書かれたプレートの付いている扉。その扉を昂はノックする。研究室の中から。
???「どうぞ」
女性の声が返事をした。
昂「失礼します」
その一言だけ言うと、昂は部屋の中に入った。部屋の中には、幾つもの棚や研究に使用する道具。また、鍵付きの棚には、持ち出し禁止の薬品が沢山置かれていた。昂はそれらを見る事なく。
昂「……すみません。空調の修理に来ました。佐階電機の者ですが」
目の前で電子顕微鏡を覗いている白衣姿の赤い髪の女性に声を掛けた。
???「っあ、ご苦労様です」
そう言って振り向く赤い髪の女性。昂はその女性と目を合わせると、固まってしまった。
昂「……あれ?君は…」
???「貴方、絵里の旦那さんのお友達の」
昂「佐東昂だ。自己紹介した事なかったよな」
赤い髪の女性は大きな目を見開いて。
???「ええ……、そうね。私は西木野真姫よ」
彼女との出逢いは、今から二年前。侑が絵里さんと出逢った頃に遡る。最初に逢ったのは、海の家での事だった。絵里さんが、当時活動していたスクールアイドルのμ,sのメンバーが溺れて、それを助けた時。侑と介抱する家を貸してくれたのが彼女である。彼女の家は、裕福らしく、別荘を幾つも所有していた。その時の昂は、彼女の事を特に気にも留めていない。
次に出逢ったのは、侑が堕天使に身体を乗っ取られて、絵里さんを殺そうとし、昂の雷の打撃で、弱ったところ、周りが騒がしくなった為に、当時絵里さんが通っていた高校の部室で、彼女と逢った。あの時は、堕天使と絵里さんが、急にエッチな状況になったのには、正直昂は狼狽えたが、何とか上手くμ,sのメンバーを部室から遠ざけた。しかし、静かな校舎だ。絵里の甘い声が、時折聞こえて、恥ずかしい思いをした。その時の昂は無意識に反応する身体を隠すのに必至だったが、それを彼女に見られて、痛い程の冷たい視線を向けられたのを覚えている。
真姫「……ちょ…、…ちょっと、聞いてるの?」
言われて我に帰る昂。
昂「ああ、ごめん。考え事してて聞いてなかった。」
真姫「もう、しっかりしなさいよ」
昂「ははは…」
真姫の言葉に、作り笑いをする昂。真姫は溜め息をつく。
真姫「それで?直せるの?」
昂「そうだな、まずどこが悪いのか、確認してからじゃないと。あの空調?」
言いながら指を、一基の空調を指す。真姫は無言のまま頷いた。それを確認すると、素早く作業に取り掛かる昂。初夏の気温は、夏本番に比べると、高くはないが、締め切った部屋の中だと、やはり暑い。作業を開始してから数分で昂の額は汗が滲み、首筋を伝う。真姫はそんな昂の姿を後ろからじっと見つめていた。
昂「そんなにじろじろ見られると、やりにくいんだけど……」
昂はタオルで汗を拭いながら、振り返る。
真姫「……べ!別に、そんなつもりじゃないわよ!」
真っ赤な顔で視線を反らす真姫。昂は不思議そうに真姫を見ると、作業を再開した。
それから数分後
昂「直ったぞ」
作業を終えて、真姫に声を掛ける昂。真姫は電子顕微鏡を覗いていた。研究に集中する真姫。昂の声が聞こえていない。昂は仕方なく、真姫の耳元で声を掛けた。
昂「空調、直ったぞ」
真姫「…うぇっ!?」
いきなり声を掛けられて、声が上ずる真姫を、昂はクスクス笑う。
真姫「……ちょっと!笑わないでよ!急に声を掛けられてびっくりしただけなんだから!」
真っ赤な顔で、何故か弁解する真姫。
昂「悪かったよ。……空調、直ったから俺は帰るから」
そう言って昂は部屋を出た。しばらく、来た道を戻っていると、後ろから走ってくる足音が聞こえた。
真姫「待って……、えっと佐東さん」
昂「昂で良いよ」
真姫「…………の、昂」
口ごもる真姫。真っ赤なトマトより、さらに真っ赤な顔で、白い紙切れを渡す。
昂「……何これ?」
受け取り、中を見ると携帯の番号が書かれていた。
真姫「…………私の携帯番号」
昂「っえ?」
いきなりの事に、昂は反応出来なかった。真姫は真っ赤な顔で、昂を睨み付け。
真姫「……電話しなさいよ!」
そう言って走り去っていった。
昂と真姫のお話でした。このお話、実は続きがありまして、次回も特別編でお送りします!宜しくお願いします。