「さて、次はどこを案内してほしい?」
食堂がわかって昼飯は心配なくなったわけだし、授業に関係ないところは休日に自分でぶらぶら探せばいいよな
あ、朝晩の飯って食堂なのかな?
「朝と夜もあの食堂で食べるのか?」
何処を案内してほしいか聞かれて答える内容じゃないけど、一応聞いておかないとだよな
「あそこはお昼から夕方までしか開いてないわ。朝と夜は寮にある食堂で決まったメニューのものを食べるの」
そうなのか
やっぱり三食好き勝手に食べさせるのは無理があるってことなのかな?
いや、健康管理的な視点で決まってるって考えた方がいいか
「だったら授業で使う施設かな」
ここだと体育館とかプールとかパッと見じゃ気付かない可能性あるし
美術室とか音楽室とかが単独の建物として独立してるかもしれないし
……普通の学校だったらこんなこと気にする必要ないのになぁ
「何遠い目してるのよ。まあ、いいけど。授業で使う施設となると――」
「あっ、彩京さんっ!」
ん?あ、ジャージだ
いや、上育科の制服は奇天烈じゃないんだから運動着がジャージなのは何もおかしくないよな
ちょっとお高い可能性はあるけど
ちょっとどころじゃなくお高い可能性もあるけど
「よかった、見つかって……ちょっと大変なの!」
運動着で息が上がった女の子って妙に色っぽいよな
活発そうな外見がまた何とも……
「――まあ、吉住さん駄目ですよ。慌てて走るだなんて、先生に見られたら怒られてしまいますもの」
走っただけで?
廊下じゃなくて外だよ?
「それは重々承知していますけど、それどころではなくて」
わりと真剣に緊急事態なのかな?
「何か問題でも起きました?」
うわ……うわ、何その笑顔
何か凄い頼りになりそう
いや、実際頼りになるんだろうけどさ
「……あの、彩京さん。そちらは……」
ああ、見知らぬ男だもんね
そりゃ気になるよね
「彼ですか?従育科の編入生で、藤原清衡くんです。彼に学内の施設案内をしていたところなんですよ」
「編入してきた藤原です」
下手によろしくとか言わんほうがいいよな
「あっ、吉住です!」
そんなに慌てんでもいいでしょう
「それで、吉住さん?何か大事な用があるのではないのですか?」
「あっ、そうなの!講堂の前で四季鏡先輩とエストーさんが激しく口論していて――」
取っ組み合いじゃなくて口喧嘩なのにそんな深刻そうにするのか
流石はお嬢様ってところか
あ、いや、家の格的に口論すること自体が拙い組み合わせって線もあるのか
「……つまり、いつものようにエストーさんが四季鏡先輩に?」
いつものことなのかよ
心配して損したわ
「そう、一方的に。今にも飛び掛かりそうな雰囲気だったわ!」
どうでもいいけど落ち着きがないな、吉住さん
「ふぅ……彼女も仕方ないですね」
そのやれやれって仕草を見るにいつも仲裁してるんだろうな
「藤原君、申し訳ありません。急な所用が出来てしまいましたので、少しお待ちいただけますか?それともお一人で構内を歩いてみますか?」
一人歩きはいつでもできるだろうけど、授業で使う施設は明日すぐにって可能性もあるんだよな
ここは待っておくのが正解か
いや、待たずについて行けばいいか
「邪魔はしませんので、ご一緒させていただけますか?そうすれば所用が終わってすぐに案内をお願いできますよね?」
時間と手間を考えたらこれがベストだよね
「構いませんわ。吉住さん?」
「あっ、こっちです!」
あれ?走らないのか?
何かじれったいな
あと吉住さん?チラチラ見られると結構気になるんだよ?
女子はエロい視線に敏感とか言うけど、こんな気分なのかな……
「あっ、見えました!」
ん?あれか
見えましたってもう結構近いじゃん
下向いてたから気付かんかったわ
「制服が微妙に違う?」
胸元の飾りがスカーフみたいなやつじゃなくてただのリボンになってるな
「あの子が中等部のエストーさんですよ」
ああ、やっぱり中等部の制服なのか
じゃあ向かいの凄い美人が四季鏡先輩とやらか
「ごきげんよう、エストーさん。……と言っても、またご機嫌斜めのようですね?」
おぉ、何の躊躇いもなく割り込めるって凄ぇな
「ぬうう、またそなたか。相変わらずお節介にも程があるのじゃ」
え?そなた?のじゃ?
あからさまに外国人な見た目でその口調ってどうよ?
「はい、まだ校風に馴染んでいないエストーさんのことを心配していますから。それで、今日はどうしたんですか?」
馴染めてないってことは編入生か新入生なのか
どっちにしろあの喋り方じゃ周りと距離ができるだろうな
「どうもこうもないわっ!こやつがいつも妾を悲惨な目に合わせるのが我慢ならんのじゃ!」
悲惨な目って何だろう?
見た目はあんな美人だけど中身は真っ黒とか?
「私はただ可愛いエストーさんを愛でたいだけですよ?」
悲惨な目に合うって聞いた後だと可愛がるの意味が不穏に感じられる不思議
「何より許せんのはその体じゃ!そのたわわに実った乳をこれ見よがしに押し付けおってからに……許せぬ!」
どんだけ胸に恨みがあるんだよ
確かに見た目の格差は悲惨なくらいあるけどさ
「む?そなた、名は何という?」
え?何で俺に飛び火したの?
「藤原清衡と申します」
何かヤバい人だったらアレだし、できれば関わりたくないんだけど
「よし、キヨヒラよ!今日から妾の『ぼでーがーど』になるのじゃ!」
「は?」
いやいやいや、ぼでーがーどって何だよ
何でその見た目で片言英語?
英語圏じゃなくてロシア語圏なの?
違う違う、そうじゃなくて、何から守るの?
そこの美人な先輩から守るの?
「エストーさん、それに四季鏡先輩も、一度落ち着ける場所に移動して話しましょう?」
あ、仮面が剥がれかけてる
やっぱりこの学校入ったのは間違いだった気がするなぁ……
セルニアキャンセルからのピナ&沙織先出しという流れに……
案内図貰ってれば一人でうろうろしてもよかったんだけどね