ルーデウス来たら本気だす~改訂前&失敗作置場~ 作:つーふー
一応ながら、エリスは誘拐事件を経てルーデウスのことを認めてくれた。
具体的には、武器の使用を控えた。
しかし、原作同様に魔術の授業は出席しても、算術と読み書きの授業で抜け出してしまうらしい。
それに、些かルーデウスに対して刺があるようにも思える。
魔術の授業を受けてくれるのは、ただ単に魔術に興味があるから。
エリスの姿勢は、そんな感じに見えた。
とは言え、今のところは特に問題もなさそうだ。
少なくとも、ルーデウスがエリスの暴力で殺されることはないだろう。
後は、本来の流れを変えてしまったお詫びとして、ルーデウスにデレさせるよう手伝いをしようかってくらいだろうか。
その方法は、既に思い付いてる。
後はやっておかなければならないことと、後々の布石を敷くくらいだろう。
――――
「あ、リベラルさんこんにちは…」
いつの間にか私は、ルーデウスからも恐れられるようになっていた。
原因は誘拐事件だ。
誘拐犯の虐殺が不味かったらしい。
本来の歴史において、殺されかけていたルーデウスを助けたギレーヌは、
スマートに剣を一振りで遠くにいた敵を仕留めていた。
殺してることに変わりない訳だが、恐らく美しくもあったのだろう。
達人の技と言うやつだ。
それに比べて、私は正反対である。
私の戦い方は、あまりにも暴力的過ぎた。
獰猛な殺意に、野性的な雰囲気。
素手で胸ドチャ。
魔術で体ミンチ。
蹴りで頭ポーン。
手刀で首チョンパ。
少なくとも、その光景を見て美しいなどと言う奴はいないだろう。
いたとしても、それは完全に危ないやつである。
そんな危険人物と関わることは推奨しない。
「ルーデウス様、どうなされましたか?」
「いえ…何でもありません」
そして、そんな光景を作り出した私が怖いだろうに、ルーデウスは向き合おうとしてくれた。
それが彼の姿勢なのだろう。
怖いから、出来ないからといって物事から逃げず、向き合おうとする戒めだ。
正直、嬉しい。
ルーデウスにまでハッキリと拒絶されれば、この先どうすればいいのか分からなくなっていた。
私はルーデウスに抱き付く。
彼は、ピクリと震えた。
「いきなりどうしたのですかリベラルさん?」
「いえ、少しの間抱き付かせてください。
ちょっと、人肌の温もりが欲しかったんです」
微かに震えていたが、それでも平静を装うルーデウス。
ごめんよ、私が怖いだろうに。
「私のことが怖いですかルーデウス様?」
「…そうですね。初対面の時と印象がガラリと変わっちゃいました」
「今のようにルーデウス様を抱き枕にしてましたからね」
そう、私はルーデウスを抱き枕にしていた。
フィリップの目の前で後ろから抱きすくめ、更には匂いを嗅ぐという変態行為にまで勤しんでいた。
完全にただのバカである。
少なくとも、躊躇なく人殺しをするようには見えなかっただろう。
なのに、唐突に豹変して虐殺現場を作り出したのだ。
恐怖心を抱かない方が無理である。
「ですが、僕を助けるためだったのでしょう?」
けれど――ルーデウスは向き合ってくれた。
人殺しと罵ることなく、私のことを理解しようとしてくれて。
もしかしたら、唐突に私が襲ってくるかも知れないと思ってるだろうに。
そうなれば、間違いなく殺されると理解してるのに。
これは、ルーデウスの強さだ。
目を逸らさず、しっかりと見極めようとしてくれる勇気。
私にはない、彼だけの強さ。
それは、羨ましくもある。
「……ルーデウス様、私は近い内にこのボレアス家の侍女を辞めさせてもらいます」
「それはまた突然ですね」
「この館で使用した催眠も解いておきましょう。
ですので、私を追い出したと言えばエリス様と仲良くなれると思います」
もちろん、そんなことを言わなくても、エリスはルーデウスがやったと勘違いするかも知れないが。
けれど、どのみち私がいなくなれば、いずれルーデウスを認めることだろう。
「どうしてそこまでするんですか? まさか僕のためなんて言いませんよね?」
「どうしても何も、私は私の不始末を片付けるだけです。
エリスお嬢様があそこまで狂暴なのも、私が原因なのですから」
いまいち納得出来ない雰囲気をルーデウスから感じられる。
私は彼から離れた。
ルーデウスは名残惜しそうな表情を浮かべていた。
どうやら私のからだに顔を埋め、匂いを堪能していたらしい。
…変態かよ。
しかし、よくよく考えてみれば、ルーデウスの中身は40歳前後の引きニートの童貞だ。
更に付け加えるなら、親の葬式日にオ○ニーをしてるようなクズだった。
そんな彼は、現在幼い容姿をしている。
…私は前世でそんな感じの設定をした薄い本を見たことがあるのだが。
中身オッサンのショタっ子が、女の子にスケベする話だ。
ど、どうしよう…ルーデウスにえっちなことされちゃうかも。
抱き付かれながら「リベラルお姉さん、子供の作り方を教えてください」とか。
もしそんなこと言われたら、頑張って実践しちゃうぞ!
「あの、鼻血出てますよ?」
「…失礼、すぐにお拭き致します」
興奮し過ぎたせいか、鼻から垂れてきた血を私は拭う。
危ない危ない。
変な方向に思考が片寄っていた。
別にルーデウスとならヤっちゃってもいいかなぁ、なんて思えるのだが、生憎と誰かと致すつもりはないのだ。
ぶっちゃけるけど、私って経験ないんだぜ。
いや、だって怖いし、妄想だけで充分よ。
「ルーデウス様、表に出てください」
「いきなりどうしたんですか?」
「私がここを辞める前に、置き土産として1つ魔術を教えましょう」
さて、おふざけも程々にしよう。
私が布石として敷きたいのは、オルステッドとの間接的な繋がりだ。
ここから先どう進んで行こうが、最終的にオルステッドとは関わりを持たなくてはならないだろう。
ハッキリと形は決まってないが、ルーデウス経由でオルステッドと関わる形にしておきたいのだ。
正直、一対一で社長とは会いたくないし。
どのような形で会っても、なんやかんやで襲われそうな気がするのだ。
まぁ、ただの勘なので襲われるとは限らないけど。
「魔術ですか?」
「ええ、
「どんなものなのですか?」
「相手の魔術を無効化する魔術です」
私の説明に、ルーデウスは「おお」と感嘆の声を上げていた。
別にもっと他のを教えてもいい気がするのだが、あまり強いのを教えて調子に乗せてしまうと、あっさり死ぬかも知れないし、これくらいが丁度いいだろう。
本来、
だが、乱魔を使う場面はあまり多くもないし、問題ない筈だ。
これだけなら、力に溺れて無謀な挑戦もしたりしないだろう。
まぁ、取り合えず移動しようか。
説明はいつでも出来るのだから。
ルーデウスに
緑が混じっているが、私の髪は銀髪のメッシュで、瞳が金色。
私の美貌を邪魔する酷い三白眼。
ハートキャッチが大好きな貫手。
それだけで私とオルステッドの関連性を感じそうだが、察しのいい鈍感なルーデウスのことだ。
もしかしたら気付かないかも知れない。
なので、もう1つだけ連想させる要素を心に刻んでおいて欲しかった。
そんなまだるっこしい真似をせず、名前を伝えることも考えたりした。
けど、それでオルステッドとの初回エンカウント持に、ルーデウスが私の名前を出したりしたら困る。
ヒトガミの関係者を疑い、殺しに来そうだ。
表の庭に出た私は、距離を取ってルーデウスと向き合う。
「百聞は一見に如かず。では、お好きな魔術をお使いください」
「お使いくださいって…本当に大丈夫なんですか?
放った瞬間に豹変して僕に襲い掛かったりしませんよね?」
ねーよ。
どんなバーサーカーだよ。
私を何だと思ってるんだ全く。
「そもそも放つことが出来ないので大丈夫です」
そこまで言われればやるしかなかったのだろう。
渋々といった様子で手を前に翳したルーデウスに、私も手を出し彼の魔力へと干渉する。
「……あれ…?」
魔力を纏めようと操作をしても、それが形にならずに散っていってるのだろう。
何をされたのか分からずキョトンとしているルーデウスは、不思議そうに何度も魔力を出し続けていた。
「これが
「…僕の手から出た魔力に干渉し、かき乱す事で魔術を無効化している、ですか?」
「そうです。だからこそ、魔術師に絶大な効果を発揮すると言ったのです。
ですが、油断してはいけません。絶対に発動を阻止できる訳ではないので」
取り合えずはこんなところだろうか。
ロアに訪れたことで、ルーデウスと繋がりは出来たし。
なので、後はオルステッド関係で彼から協力を要請されればオーケーだ。
理想はオルステッドコーポレーション建設後に、ルーデウスに仲介してもらいながら接触すること。
最悪でも、泥沼対龍神に招集されることが望ましい。
全力のルーデウスと戦ったオルステッドは、かなりの消耗を強いられるのだ。
そんな消耗した状態であれば、私も太刀打ち出来ると思うので話くらいは聞いてくれるだろう。
「ここを辞めた後、ラノア魔法大学に向かおうと思っております」
ついでに、これも伝えておこう。
まぁ、実際に向かうのは十年後くらいになるけど。
甲龍暦422年にルーデウスがラノア魔法大学に入学するので、
その時期に合わせてか、もしくはそれよりも少し早目だろう。
「ルーデウス様はラノア魔法大学に通うために、エリスお嬢様の家庭教師をされてるのでしたね?」
「そうですよ。ここで五年間お嬢様に勉学を教えることが条件です」
「でしたら、またお会い出来ることでしょう。成長したルーデウス様を楽しみに待っておきます」
なるべく格好つけるように背を向け、そのまま手を上げておく。
引き止められても話すこともないので無視だ。
実際にルーデウスは私の名前を呼んでいたが、華麗にスルーしておいた。
悪いね、坊やには興味ないんだよ私は。
なーんてね。