ルーデウス来たら本気だす~改訂前&失敗作置場~ 作:つーふー
喜ばしいことに、最近エリスが懐いてきた。
起床し、寝惚けているところに潜り込んできたり。
朝食の際に乱入してきたり。
掃除をしていると花瓶のキャッチボールをしたり。
昼食も同じように乱入。
業務が終わればどこかに隠れてしまうのが残念であるが、
私が寝るときにはベットに来てくれる。
うんうん、実にいいね。
ただ、トイレの時に来るのは勘弁して欲しい。
辺りに排泄物を撒き散らしてしまわないように対処はする。
だからそれはいいのだけど、ドアを開けっ放しにされるのだ。
閉めて欲しい。
以前、通り掛かったフィリップに目撃されてしまったのだから。
その時はたまたまヒルダも隣にいたから凝視されることはなかったけど、バッチリと見られたことは確かだ。
どんな羞恥プレイだよ。
感じちゃうじゃねぇか。
「――と言うことなんですよ。どうにか出来ませんかギレーヌ様?」
「ふむ」
そうして困った時は、相談するに限る。
ほうれんそうって大事だよね。
触れ合いの機会が減るのは寂しいが、私の排泄場面をサウロスに目撃されたら襲われかねんのだ。
エリスはギレーヌを慕っているので、彼女から言ってくれれば聞いてくれるかも知れないだろう。
もっとも、エリスはギレーヌが洗脳(事実)されてると思い込んでるので、聞かないと思うけど。
「懐かしいな…あたしも似たような経験をしたよ」
「剣術を教え始めた頃ですか?」
「ああ、あたしは何度か返り討ちにしていたら素直になってくれたが…エリスお嬢様が何故リベラルに敵意を抱いてるのか分からない」
「あー、まぁ、心当たりはあります。と言うより、敵意を煽ってしまいましたね」
私は悪魔だー。
ボレアス家を乗っ取ってやるー。
貴様を洗脳してやるー。
とか言っちゃったし。
失敗したかなぁ、なんて思うが、私が正体不明の化物みたいな扱いされている方が不味い。
人間は理解出来ないことに恐怖するものだ。
だからこそ、日本では幽霊のような存在は恐れられていたし、妖怪といった類いも同様だった。
エリスは私の得体が知れなかったから怯えていた。
けど、ボレアス家に仇なす“ただの敵”だと認識したから、排除しようと頑張ってるのだろう。
まぁ、ボレアス家じゃなくて自分を襲おうとしているからってだけかも知れないけど。
「しかし、リベラルはよく返り討ちに出来ているな」
「ふふん、当然ですよ。バトルメイドってロマンがあっていいと思いませんか?」
「ふむ、何を言ってるのか分からんが、不意打ちに対応出来るのは戦士の証拠だ」
まぁ、伊達にラプラスの娘をやっていない。
ふざけたおしているが、命の軽いこの世界で、5000年以上も生き抜いているのだから。
「ここに来る前は何をしていたのだ? 少なくとも、メイドではないだろ」
「ここに来る前ですか?」
そう言われ、思い返してみる。
と言っても、基本的に同じことしかしていない。
5000年以上もの間、私は強くなることを目的としたのだ。
なるべく目立たぬよう鍛練を積み重ねて、実戦を積み重ねて。
RPGの主人公並に、寝る間も惜しんで魔物狩りに勤しんだりしたことも。
レベルアップはしないけどね。
私は不死魔族のように時間感覚にルーズではない。
一日一日を大切に過ごすのだ。
故に、中々の苦行であった。
まぁ、取り合えず、基本的に殺伐としていた毎日だったかな。
「世界を巡ってましたね。多分、全ての土地を踏破したと思いますよ」
「そうなのか」
「だから、腕っぷしにはそれなりの自信があります。エリスお嬢様程度なら軽くあしらえますよ」
まぁ、あしらえても襲撃は止まないんだけどね。
時間と共に軟化したらいいんだけど。
大人になったら狂剣王になるし、その時にまで襲われるのは流石にごめんだ。
「でも、私は家庭教師でも何でもないメイドさんですからね。力を示したところで意味がないんですよ」
「ふむ、確かにな」
「エリスお嬢様は私が悪魔だと信じきっています。この館の人はみんな私に洗脳されてると思ってるんですよ」
しかし、洗脳云々は事実である。
ギレーヌは自分の記憶が偽りだとは思いもしないだろう。
催眠の恐ろしいところよ。
「なので、そんな悪魔な私を追い払おうと躍起になってるんですよ」
「あたしがエリスお嬢様の仲裁をするのは逆効果ということか」
「そう言うことですね。私に言わされてるだけだと解釈すると思うので、余計に反発しますよ」
「…………」
ギレーヌは静かに目を瞑った。
多分、脳筋な頭で解決策を考えてくれてるのだろう。
正直、期待してないけど。
私が彼女にこの話をしたのは、解決して欲しいからではない。
ただ愚痴りたかっただけだ。
エリスと戯れられるのは癒しなのだが、時と場合を弁えて欲しい。
トイレの際も当然だか、水浴びの時も来るのだ。
まぁ、物を盗ったり隠したりしないのはエリスらしくて好感度アップだが。
陰湿な嫌がらせをせず、力でどうにかしようとする脳筋っぷりは逞しい。
「で、何か思い付きましたか?」
「…叩きのめしていれば、その内エリスお嬢様も認めてくれるさ」
そしてやっぱり、ギレーヌも脳筋だった。
だが、そんなところもいい。
彼女も彼女で魅了的だな。
抱き付いてクンカクンカしたいぜ、グヘヘ。
なんて思ってたら、ギレーヌが鋭い視線で私を見ていた。
「…………」
「どうかしましたか?」
「……気のせいか…いや、何でもない」
うんうん、気のせいだよ、きっと。
――――
そんなこんなで、私は今日の業務を終えた。
まぁ、ほとんどギレーヌとお喋りしてただけだけどね。
後は、フィリップが私のラッキースケベを狙ってるのか、頻繁に話し掛けてくることが増えたくらいだろうか。
ぺ様の話を聞きたいだとか、ぺ様をヨイショしたりしてるが、クソどうでもいい話なんだよね。
私の裸が見たいのであれば、ハッキリそう言ってくれ。
言ってくれれば、見せるくらい許してあげるからさ。
そんなコソコソとしなくてもいいのに。
そして、一日の汚れを落とすためにサッパリしたかった私は、水浴びをしていた。
「くたばりなさい悪魔め!!」
本日もエリスが乱入きたみたいである。
今回は裸の私に対して、手裏剣みたいな凶器を投げ付けていた。
最近の彼女は段々と遠慮が無くなってるようで、やることが過激だ。
私がこの程度では傷付かないと理解しているからだろう。
けど、いずれ現れるルーデウスに、こんな感じで対応したりすれば大惨事だ。
「エリスお嬢様。危ないですよ」
「うるさいわね! どうせ平気なんでしょ!」
私が注意すれば、エリスは更に物を投げ付けてくる。
流石にそろそろ自重してもらわねばならないので、私も反撃するべきだろう。
ゆっくりとエリスに近付いた。
私は今まで彼女に一度も反撃したことがない。
寝込みを襲われても、起床時に襲われても、トイレの際に襲われても。
故に、無意識の内に思ってしまったのだろう。
コイツは私を傷付けない、と。
生憎、それは間違いだ。
エリスは持っていた棍棒で、無警戒に殴ろうとしていた。
「『流』」
なので、水神流の奥義をお返ししてあげる。
きっと、彼女には振るった棍棒に手が添えられたように見えたことだろう。
その瞬間に、全ての運動エネルギーを跳ね返した。
エリスのからだは竜巻のように回転していた。
きりもみして吹っ飛び、地面に墜ちていく。
この技を記憶し、是非ともオルステッド戦の対策として覚えておいてくれ。
「あぐっ…!」
やり過ぎた感はあるが、手加減はしたので許して欲しい。
地面に打ち付けられたエリスは呻き声を上げていた。
特に大きな怪我をしているようには見えなかったが、そのままでは痛いだろうと治癒魔術を使った。
発動と共に、エリスのからだに出来た打ち身の痕が消え去っていく。
そして、ギロリと彼女に睨まれた。
「あ、あんた…絶対に、許さないわっ…!!」
「……ほう、許さない、ですか」
「今にギレーヌを治してあんたなんか真っ二つにしてやるんだから…!!」
「そうですか。では、私にも考えがあります」
私は倒れているエリスに手を伸ばす。
「ヒッ」
彼女は恐怖するかのようにギュッと目を瞑った。
可愛い反応するなぁ。
庇護欲そそられますわぁ。
暴力振るってごめんよぉ。
でも、入浴中に刃物投げ付けるのはやり過ぎだと思うんだ。
「よいしょっと」
「何すんのよ!!」
私はエリスの服を脱がしていく。
もしも私が男だったら事案もの確定だ。
女だからこそ許される光景よ。
いや、それはないか。
明らかにレ○プ場面だわ、これ。
「はいはい、じっとしてて下さいねエリスお嬢様」
「ちょ…ちょっと! 止めなさいよ変態!!」
抵抗しているが私に掛かればなんのその。
暴れるエリスだったが、ラプラスに教わった龍族秘伝の服剥ぎ技術の前には赤子同然だった。
ツルツルでスベスベな幼女の裸体が私の目に映る。
乱暴者とは言え、お嬢様なだけあって色白だし、動き回ってるお陰かスマートな体型をしていた。
こりゃホンマ勃起もんやで…。
将来は素晴らしいプロモーションになることがハッキリ分かるぞ。
「このっ! 離しなさいよっ…!!」
エリスは私を殴ったり蹴ったりしていたが、残念ながら大した効果はない。
私の闘気は龍聖闘気に及ばないものの、それなりの強さを誇る。故に、彼女の暴力など無に等しい。
近所のガキンチョや大人に通用している攻撃が効かないことに、エリスは焦っているようだ。
ガンガンと脛を蹴りつけていたが痛くもない。
常人ならエリスの鬼気迫る様子に殺されると怯えるだろうが、私に対しては無駄だった。
正にその通りなのだが、大人に戯れる子供でしかない。
「はい、からだを洗いましょうねー。ご奉仕致しますよー」
「やだ…やだっ!!」
そして、私は龍族秘伝の洗髪と洗身によりエリスのからだを清めていく。
もちろん、ワシャワシャと全身くまなくね。
この頃になると、彼女はスッカリ抵抗が弱くなっていた。
私はからだを洗うのが上手いので、気持ちよくなったのだろう、多分。
美容室や理容室で髪の毛を洗われると、気持ちよくてボーッとしてしまうことが私にもあったし。
「ハァー…ハァー…」
イカンイカン。
いつの間にか息が荒くなってしまった。
落ち着かねば。
ちっちゃい子は愛でるから許されるのだ。
YESロリータ、NOタッチ!
手を出すのはただの性犯罪者でしかない。
でも、ぺろぺろしちゃうぜ!!
「ひぃっ! 気持ち悪い!」
そうして、私は無抵抗になったエリスを洗いながら、己の理性と戦った(手を出してないとは言ってない)のである。
――――
事が進んだのは、それから数ヵ月後のことだ。
この館に一通の手紙が届いた。
パウロの手紙だ。
息子に仕事を与えたい旨の手紙である。
それに対し、フィリップはエリスの家庭教師をやり遂げてみろと手紙を返していた。
そう――遂にルーデウスがここにやって来るのだ。
やっと、やっとだ。
5000年以上も待ち続けた。
この世に生まれた目的が果たされる。
あまりにも長い時間だった。
私の止まっていた物語が、ようやく動き出す。