ルーデウス来たら本気だす~改訂前&失敗作置場~   作:つーふー

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7話 『ゼロから(仮)』

 

 

 

 何とかエリスから逃れたルーデウスは、私とフィリップの二人と合流し、応接間に避難していた。

 

「何ですかあれ?」

 

 真顔だった。

 そこからは普段のおちゃらけた態度は感じられず、呆れとも取れる雰囲気を混じらせてた。

 

「私の娘だね」

 

 それに対し普段と変わらぬ態度で答えるフィリップに、ルーデウスは沈黙する。

 エリスの狂暴さには、かなり堪えたらしい。

 気持ちは分からなくもない。

 私にとってエリスの暴力は、ただちっちゃい子がじゃれついてるだけでしかない。

 それなりの闘気があってこその、余裕な訳だ。

 けれど、ルーデウスは私のように闘気を纏うことが出来ないのだ。

 生身で凶器を振り回すお嬢様に五年間も向き合えと言われ、簡単に頷けるわけがない。

 

「気が昂ってるのは分かるけど、取り合えず座りなよ」

 

 フィリップは着席を促しながら、自分も椅子に腰掛けた。

 確かに立ちっぱなしで会話をする必要も感じられないと思ったのだろう。

 ルーデウスはその対面に座ろうとする。

 

「ルーデウス様、失礼します」

 

 なので、私はその前に彼を後ろから抱き抱えながら椅子に座った。

 抱き枕ゲットだぜ。

 今は応接間に他の者はいないから無礼講なんじゃあ。

 

「…何してるんですか?」

「私の名前はリベラルです。以後お見知りおきを」

「ご丁寧にどうも。既に知ってると思いますがルーデウス・グレイラットと申します。

 それで、何してるんですか?」

 

 この頃のルーデウスは女性に耐性がない。

 平静を装っているが、頬を赤くしていた。

 きっと、内心は有頂天なのだろう。

 可愛いなぁもう。

 

「私のことは気にせず宜しいかと」

「そうだね、気にしなくてもいいよ」

 

 フィリップも苦笑した様子をみせながら、便乗してくれた。

 ナイスアシストである。

 

「はぁ、そうですか」

 

 ルーデウスとしても、女性に後ろから抱きすくめられてるこの状況は嬉しいのだろう。

 特に拒絶することなく受け入れてくれた。

 ちょっとだけ顔がにやけてる。

 なので、私は遠慮なく堪能しておくことにした。

 ハァハァ、クンカクンカ。

 さぁ、私のことは気にせず存分に対談するといい!

 

「…と言うか、何で彼女は武器を持ってたんですか? 僕に躊躇なく使ってきたんですけど」

 

 まぁ、それは当然の疑問だろう。

 百歩譲ってエリスの暴力性を受け入れよう。

 けど、常に武器を振り回す奴など前世でも聞いたことがないだろう。

 

「私が原因ですルーデウス様」

「リベラルさんがですか?」

 

 抱き付いてる私を見上げるルーデウス。

 私も抱き締めてるルーデウスを見下ろす。

 しばらく見つめ合っていると、恥ずかしくなったのか彼は視線を逸らしてしまった。

 その反応、萌えるわぁ。

 

「エリスは彼女を追い出そうとずっと襲撃をしていてね。それで気が付けばあんなのになってたんだよ」

「何でリベラルさんは襲われてるんですか?」

「さてね、本人に聞きなよ」

 

 再び見上げるルーデウス。

 またしても視線が絡み合った。

 そして目を逸らされる。

 

「それで、どうしてですか?」

「ルーデウス様は催眠魔術をご存じですか?」

 

 質問を質問で返してしまったが、彼は数瞬だけ固まった様子を見せる。

 きっと、前世でしたエロゲーのことでも思い浮かべたのだろう。

 自分にも使えないかと思ってるに違いない。

 

「女の子にあんなことやこんなことやそんなことが出来るアレですか?」

「ちょっと違いますね。正確に言えば男の子にも出来ます」

 

 ルーデウスは「おお」と喜ぶ様子を見せてた。

 けど、ごめんね。

 これ、ルーデウスには扱えないんだ。

 教えて上げてもいいけど、精々相手をボンヤリさせることが限界だと思うんだ。

 

 それにしても、この状況。

 ルーデウスとフィリップの二人だけか。

 丁度いいかも知れない。

 いつまでも嘘を貫き通すのは厳しいし、そろそろ真実を教えないと駄目かな。

 

「ぶっちゃけますと、私はこの館に勤めるために催眠魔術を使いました。

 そして、催眠に掛けるには相手が昏倒してる必要があります」

「もしかして襲ったのですか?」

「そうです。そしてその場面をエリスお嬢様に目撃されております。

 もちろん、催眠魔術で記憶を改竄させようとしたのですが…どうにも小さな子には通じないみたいでして」

「ふぅん、そうだったんだね」

 

 喜ぶルーデウスとは対称的に、フィリップは思案げだ。

 あまり驚いてるようには見えなかった。

 以前、フィリップには嘘の説明をしていたが、彼のことなので見破っていたかも知れない。

 それに、他の者にも使われてる可能性も考慮したことだろう。

 その時は私が甲龍王の紋章を見せる前なので、あまり信用してなさそうだったし。

 そして当然ながら、何とか自分にも扱えるようにと考えたに違いない。

 けれど、思ったよりも使い勝手が悪そうで落胆でもしてるのだろう。

 通じない相手がいるのは致命的だ。

 

「誰もそのことを覚えてないことにエリスお嬢様は恐怖し、そして私をどうにかしようとされてるのです」

「だから武器まで持ち歩いてると?」

「そう言うことです。私がエリスお嬢様の襲撃をことごとく返り討ちにしているので、最近は遠慮がなくなりまして」

 

 もっとも、ルーデウスからすればとんだとばっちりだろう。

 私のせいで武器を躊躇なく振り下ろすお嬢様の相手をしなければならないのだから。

 

「確認ですけど、その催眠で皆の記憶を戻すことは出来ないんですか?」

「私が襲ったところをエリスお嬢様が目撃したのは、ギレーヌ様と大旦那様です。

 …記憶を戻した瞬間、ここをクビにされてギレーヌ様に襲われる未来しか見えません」

 

 しかも、サウロスは私の猫耳がただのカチューシャであることを見ている。

 ケモナーな彼ならば、きっと襲ってなくてもその事実だけで解雇しそうだ。

 

「…エリスお嬢様はリベラルさんを追い払いたいだけなんですよね?」

「二人は私と仲良くしたと思い込んでるだけです。

 私さえいなくなれば、きっとエリスお嬢様は満足するでしょう」

 

 ルーデウスが再び見上げて私を見つめる。

 今回は目を逸らすことなく、真面目な表情だ。

 ひょっとして、私がいなくなればいいとか思ってないだろうな。

 

 どうにか私を追い出し、エリスの好感度が大アップ。

 そして彼はその行いを認められ、やがてなんやかんやでルーデウスとエリスはやがて結婚する。

 私はバージンロードを歩む二人に祝言を贈りつつ、エリスを寝取られたと憎しみを燃やすのだ。

 

「ひとつ言っておくけど、私はリベラルを辞めさせる気はないよ」

 

 そこに、フィリップの声が響いた。

 

「それに、私では父さんを止めることは出来ない」

 

 一瞬何を言ってるのかと思った。

 それはつまり、皆の記憶を戻すことは許可しないと言ってるのだろう。

 そうなれば、サウロスを止めることが出来ないからと。

 フィリップは私が二人を襲ったという事実を受け入れた上で、娘とは相反することを言ったのだ。

 

 何でそこまで私を庇うんだろうね。

 フィリップには特に何もしてないと思うんだけどな。

 もしや、私に惚れたとかではなかろうな。

 ヒルダだけでは飽き足らず、私も嫁に迎えようとでもしてるのだ、と。

 ふふん、私ってば罪な女ね。

 

「だから、リベラルをどうにかしようとしてるなら、君をエリスの家庭教師にする話はなしだ」

 

 なんでやねん。

 別にええやんけ。

 

「大丈夫ですよ。僕はそんなこと考えてないので」

「なら、構わないよ」

 

 とは言え、私をどうにかしなければエリスがルーデウスを認めない可能性も出てきたのだ。

 今更反省しても遅すぎるが、本当に調子に乗りすぎてしまった訳である。

 

「…取り合えず、例の件、お願いします」

「わかったよ」

 

 誘拐の自作自演。

 ルーデウスは最初に自信満々な感じで提案していたが、今はそんな態度も何処へやら。

 本当にエリスをデレさせることが出来るのか不安そうな表情だ。

 それどころか、一人で誘拐犯を殲滅してしまうのではないかと思ってそうである。

 

 でも、大丈夫だ。

 確かにエリスは本来よりも狂暴であるが、まだ幼い少女でしかない。

 喧嘩が強い奴は躊躇わずに相手を殴れる奴らしいが、戦いと喧嘩は別物だ。

 そもそもエリスはまだ下級剣士である。

 恐れずに誘拐犯に立ち向かったところで結果は見えてるのだ。

 

 ……うん、多分大丈夫…だと思う。

 

 

 それから二人は話し合った。

 細かい段取りや取り決めなど。

 トーマスが裏切ることを私は知ってるので、私はそれを適当に聞き流しておく。

 

 上手くいくだろうか。

 私はエリスの性格をより苛烈にしてしまった。

 確かにエリスに恐怖を与えることは出来ないかも知れないが、無力感は味わわせられるのだ。

 でも、そこでルーデウスがカッコよく助け出せば、少なからず尊敬はするか。

 それは原作でも証明されたことだし。

 それに、もしかしたらエリスは共に私を追い出そうと提案するかも知れない。

 リベラル打倒同盟の結成だ。

 そして、今後の襲撃で一緒にやって来たりして。

 もしそうなれば、二人とも仲良く私がにゃんにゃんしてやる。

 水浴びの際に襲われれば、龍族秘伝の洗体で二人同時に清めてやろう。

 同じ目に遭わされた者がいれば、仲間意識も芽生えるだろうし。

 それから何度も返り討ちにしていれば、一層その気持ちは高まる筈だ。

 

 ルーデウスはエリスと仲良くなれる。

 私も満悦出来る。

 ハッピーエンドである。

 

 あれ?

 完璧じゃねこれ?

 穴ねーわこれ。

 もしそうなれば、ルーデウスに私のパンツをあげよう。

 家に忘れた御神体パンツの代わりになれば幸いだ。

 神ロキシーの温もりはないかも知れないが、私の温もりはあるだろう。

 

 …流石にキモすぎるかそれは。

 ルーデウスは喜んでくれるかも知れないけど、他の者に知られでもすれば大惨事だ。

 私は変態のレッテルを貼られ、ルーデウスも変態のレッテルを貼られる。

 エリスにはゴミを見るかのような目で見られ、

 ギレーヌにはパウロを見るかのような目で見るのだ。

 サウロスとフィリップも呆れ果てる。

 そして、仲良く追い出されるのだ。

 私のしてきたこと全てが台無しゼロになってしまう。

 

 …いや、そんなことはないか。

 ルーデウスとなら、私はどんな状況からでもやれる筈だ。

 龍神《きみ》を見てる。人神《きみ》が見てる。だから、俯かない。

 

 借り物の勇気だけど、この胸に抱く想いは本物だと信じられるから。

 

 そこから、ゼロから始めよう。

 

 リベラル・ルーデウスの物語を。

 

 

 ――ゼロから始める、無職の生活を。

 

 

 もちろん、そんなことにはならないが。

 妄想もここまでいけばむしろ立派かも知れない。

 私は私が嫌になってしまうよ。

 

 こうして、作戦を決行することになった。

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