真剣で私に恋しなさい!S~鳴く少女のマジ恋!~ 作:Celtmyth
とりあえず読んでもらって『いいな』て思ってもらえればうれしいです。
それでは鳴く少女の恋物語、始まりです。
――この文を見つけた者が人知を超える術を持つ者として、ここに眠る者について伝える。
――ここに眠る者は英雄としての才を持ちながら、人としてある部分を欠落した為に英雄になれなかった者である。本当の名前を知られず、ただ恐れられて見向きもされなかった不幸を持つ。
――儂が見つけた時には虫の息であったが、この者でなければ死に体になっていたほどだった。その後に儂はこの者が何者かを知り、それを知った上で儂はこの者を匿う事とした。幸いにこの者は“京”で死んだものとされ、誰に知られることはなかった。
――それから儂たちは密やかに暮らし、ただただ静寂な日々を送っていた。しかしその暮らしを続けてゆくと儂はある事に気付いた。この者は強者の、武の才とある才を備えた者だ。それこそ歴史に名を残し、英雄かと呼ばれるに相応しいほどに。そして、“京”で怪物と呼ばれても仕方がない事に。
――儂は思った。もしこの者に機会があれば英雄となり、誰かに感謝されていた事を。本当は怪物と呼ぶには、この者は無垢であったと。そう考えると私はこの者の不幸に悲しんだ。どうしてこの者は怪物と呼ばれなくてはなくてはならないと。
――そんな儂に追い打ちをかける様に、その者は死に体になってしまった。元々、虫の息だったのだ。すでにこの者は天命を迎えていたのだと。儂は、声を挙げて泣いた。
――悲しみ、泣き叫んだ儂はこの者をこの場所へと葬った。しかし同時にある思いを抱いた儂はこの文を遺した。遠き先でも残る様に石に彫り、風化せぬように布を巻き、解けぬように蜜で固めたこの文を。
――もし叶わぬならそれもいい。しかし叶うならどうか頼む。この者を、英雄にしてほしい。誰からも認められ、そして強くあれる様にしてほしい。
――この者、“京”で恐れられたこの を
「おーい
ここは川神市にそびえ立つ九鬼のビル。その内部で一人の少女が人を探していた。少女は長髪をポニーテール――と言うには昔の武士風であるが――の形にまとめ、顔立ちは中世的で少年にも見える。それで彼女が少女とわかるのは女子学生服を着ていたからである。ただし腰には一本の刀が添えられていた。
彼女の名は源義経。本日から川神学園に編入する、九鬼財閥の『武士道プラン』で生まれた源義経のクローンである。
「まだ見つからないの?」
「あ、葉桜先輩。申し訳ない、義経がしっかり見張っていなかったせいで」
「あいつの自由奔放は昔からだよ義経。それにあいつは今日の事はちゃんと理解しているだろうし、あとでちゃんと学園に姿を見せるって」
「それはそうかもしれないが」
義経の傍に現れたのは葉桜清楚と武蔵坊弁慶に二人だった。
弁慶は名の通り武蔵坊弁慶のクローンであり、その手には錫杖を持っている。ついでに腰には川神水の入った瓢箪をぶら下げている。しかしもう一人の葉桜清楚は25歳まで自身の正体を知らされない事情により、誰のクローンなのかは本人でさえ知らなかった。ただ読書好きや勉学に励む指示を受けていることから清少納言か紫式部と言う予想を立てていた。最後にもう一人、那須与一のクローンである青年がいるのだが今はビルの正面玄関でここにいる三人を待っている。理由は付き合えきれないからである。
「それにあんまり待たせると九鬼のみんなに迷惑をかける事になるよ。ここは健美を信じて先に行こうよ」
「それもそうだな……。よし、ここは健美を信じて学園に向かおう」
「了解」
「うん。それじゃあ行こうか」
方針を決めた三人は与一の待つビルの正面玄関へと向かうのだった。
義経たちが学園に向かい始めた頃、探され人となっていた健美はビルの最上階にいた。
「ヒュウ、ヒュー」
健美は鳴き声のような声を口にする。まるで鳥の如く空に向かって鳴いていた。ビルの端ギリギリの場所に立ち、獣耳のように一部が逆立った髪に風を感じさせながら添え木にとまった鳥のように。
「ピュー、ピィ」
彼女が見下ろすのは川神の町。これから自分はここで暮らし、何かを得るのだと。本能か知能かでそれを感じていた。何が起こるかわからないし、自分は何を起こすのかわからない。でも、それでも自分はここにいる実感があればそれでいいと考えている。
「ピュルルル……」
鳴らし、鳴く健美はくるりと反転して屋上をあとにすることにした。これ以上は九鬼のお爺さんたちや義経姉さんたちに迷惑がかかると理解していた。そして健美は学園に向かうのだった。
彼女は健美――
川神に、その声が響き渡る。
今回はクローンで、葉桜先輩より謎の少女がヒロインでした。でもちゃんと日本系ですよ。
とりあえず名前からヒントを出しています。ただし自分がひらめきで考えたオリヒロです。ここでヒントを加えるとモデルはマイナーな存在と言うより、武士でもありません。むしろ『斜め上すぎだろ!』って怒られるかもしれません。
ですがしっかりと書きますのでお楽しみにしてください。