真剣で私に恋しなさい!S~鳴く少女のマジ恋!~ 作:Celtmyth
あらすじ
『
レールガンを放った健美だったがマルギッテは見事に防ぎ切っていた。しかし決着はついていた。マルギッテは防ぎ切ったもののトンファーが大破し、武器破壊と言う形で健美が勝利をつかんだ。そして学園中の生徒たちが熱い決闘に賞賛を贈った。
』
健美とマルギッテの決闘は多大な効果をもたらした。学園中の生徒たちは勿論のこと、口伝で学外にも広まり、そして名のある実力者たちの耳に入る様になった。結果として健美への挑戦者は増えていき、その実力が認識されている事を証明した。
健美は無事に英雄への第一歩を踏み出したのだ。そして彼女は更なる一歩、いや英雄の名に辿り着くための方法を求めて第二茶道部にやってきた。
「……スピ~」
やってきて、大和の膝の上で寝息を立てながら昼寝をしていた。
「こりゃあ、この部に相応しい寝入りっぷりだな」
「ヒゲ先生、さっきまで『あいつ、だらけ部にしては最近張り切りすぎじゃね?』なんて呟いてたしね」
「まぁ退部はさせる気はネェよ。こいつの電気マッサージはマジで効くんだよな」
怠惰にまみれた理由だった。と、思うがそれは全体の6、7割本気で残り3割は冗談で言っているのだと大和は察する。本気が半分以上占めているのは我ながらどうかと思うが、そこはあえて追求しない。理由は面倒だという、この部らしい考え方である。
「しかしここまで大きくなるのはお前の予想通りか?」
「学園全体と学外の広まり具合はね。だけど挑戦者が増えたのは健美ちゃん自身の頑張りだよ。こっちに関しては学内止まりだと思ってた」
「その理由は?」
「まず健美ちゃんは正体のわからない存在。実力があっても相手が何者かわからない内は様子見をするって踏んでいた」
「血気盛んな奴らは?」
「そういう人たちは目に見えてわかる姉さんや義経たちに向かう筈だよ。実際そういう人たちはまだ健美ちゃんに挑戦はしていないよ」
「情報はえーな」
むしろ健美より大和が頑張りすぎなんじゃないかと頭に過った巨人。しかしいちいち指摘するのも面倒だったので口は閉ざしておいた。
「そいや血気盛んで思い出したんだがマルギッテの武器はどうなったんだ?」
「クリスから聞いた話だと九鬼財閥が補修、選別、強化をやってくれているらしいよ」
「あれ、なんで補修って言葉があるんだ? あれってどう見ても全壊していただろ?」
「その壊れたトンファーを再利用するから補修なんだって。選別はあくまでその材料や試作品から完成形を見出すものだって」
「なんか金が掛かってそうだな」
巨人は以前に『貴方の思い出の品を甦らせます』的なキャッチフレーズの特番を見た事あり、その時は見事に修繕をしていたが同時に破格の費用が掛かっていた。そして今回の品は『武器』と言う一般庶民はほぼ縁がなく、買おうと思えば少々の値が張る品物。それを修復するとなるなら数十万をポンと出す感覚であると考えていた。
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「試作品が多いですね軽く五十は超えていますか?」
「ま、折角だから最高の逸品に仕上げてやるって話だ。お前専用の形を追求する為にこれだけの数になった訳だ」
「ちなみに費用はどれくらいですか?」
「ポンと数百万が出てるぞ」
「そうですか。さすがは九鬼財閥を納得しましょう」
「そこは『期待に応えましょう』ってぐらいの遠慮を言えよ、猟犬」
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健美の件で色々と話した大和と巨人はいつものように将棋を打って時間を潰していた。準備の方は大和が動けないので巨人が行い、片付けは大和がする事で話が付いている。が、相変わらず大和の優勢なのでハンデや待ったをかけているので結局は巨人が片づけをやる羽目に遥かもしれなかった。
「はい」
「おふっ、そこを攻めてくるわけ……」
優勢の大和に劣勢の巨人は更に追い込まれる。そして次の一手をどれにするか思考している間、大和は眠ったままの健美の頭を撫でた。
「………ンピ」
「あれ、起こしちゃった?」
寝言とは違う、穏やかさが途切れたような声に大和はそう判断して声をかけた。するとそれが正しい判断であり、健美は目を覚まして体を起こした。
「ピュイィ……」
「おはよう。気持ちよく眠れた?」
「ピィィ……」
なんと答えているのかまだ読み取れない大和だが、また寝入ってしまいそうなほどにコクリと頷いたので『肯定』と認識する。
「じゃあ寝起きで悪いけど、次の段階について説明するよ」
「あれ、それって俺と将棋を打ちながら?」
「ヒゲ先生、まだ時間がかかるでしょ?」
「反論できねぇな……」
「……ピィ?」
大和は笑い、巨人は頭を抱え、健美は首を傾げる。
そんな短いやり取りをした後に大和は健美に『次の段階』を説明し始めた。
「この前の決闘で健美ちゃんの実力は周知の事実になった。そのおかげで内外関係なく挑戦者が出てくるようになった。これはわかってるね」
「ピ……」
「……まだ眠気が取れていないな少し待つけど」
「ピピ……」
いまだ船を漕ぐ健美に気を遣ったが彼女は眠たそうに首を横に振る。
その直後、その体から激しいほどの電光が発せられた。
「おわっ!?」
「へっ、なに!?」
突然の事に驚く二人。ただし巨人は将棋盤を見下ろして次の手を考えていたので健美の事は見ておらず、大和の声で驚いていた。
そして発光した健美だったがすぐに治まり、彼女のシルエットがハッキリ見えるように戻る。少しスパークしているようだが、当の本人は平気そうだ。これ以上なく、爽やかな笑顔をして。どうやら先ほどの発光は目覚ましの効果を持つものだったらしい。
「ピッ!」
「あっ、えっと……」
「ピ?」
どう対処していいかわからず固まってしまった大和を見て健美は首を傾げ、何かあるのかと顔を近づける。それはもうキスが出来そうな至近距離だった。
「……っ!」
さらに固まる大和。しかし持ち前の頭脳がフル回転し、この状況を打破する為の王道パターンが十数通り思い浮かべる。その中で無難で、常識的な人がやるであろう行動で阻止する事にした。
その行動は健美の肩を掴み、あまり引き離す感を出さない様に優しく遠ざけるものだった。
「女の子が、気軽に男の顔を覗いちゃダメだよ」
「ピ?」
「不思議そうな顔をしない。次からこういう事はあまりしないこと、いいね」
「ピッ」
意味は理解していないが、『してはいけない』と言うのは理解したようだ。しかしここまで純粋なのは正直予想していなかったし、ここまで無防備なのは危ういと大和は考えた。この点は修正していかなくては、と心に決めた。
「青春だねぇ~。それと直江、もう俺は打ったぞ」
「ん、ほい」(パチッ)
「え、もう打つの。しかもまた際どい所を……」
再び巨人は次の手を考えて込んでしまった。
改めて大和は健美と向き合う。両手は駒を打った時に話しており、自然な向かい合う二人だ。
「それじゃ改めて説明するね」
「ピュイ」
「さっきの質問だけど、その事はちゃんとわかってるよね」
「ピッ」
自然な肯定の頷きだった。大和はそれを確認して本題に入る。
「よし。なら次は『健美ちゃんと言う人物』を知ってもらうようにするんだ」
「ピ?」
自然な首の傾げ方だった。大和はそれを確認して説明に入る。
「健美ちゃんは何のクローンなのかはわらないでしょ。でもそれって『夜響健美』として認識を積み上げられることでもあるんだ。何のクローンであれ健美ちゃんが『こいつはいいやつだ』って誰もがキミを受け入れる。受け入れるって事は認められる事なんだ」
ここで一度、健美の反応を見る。話は真剣に聞いてくれており、言っている意味は理解してくれている様子だった。なら簡単に言う必要がないと判断し、これからの行動を教えた。
「つまりこれからは決闘だけじゃなく、多くの人と触れ合う機会を増やすこと。そうすれば健美ちゃんがどんな子なのか皆が知ってくれるようになるんだ。わかった?」
「ピッ。ピ、ピュイ、ピュイイ」
「ん?」
説明が終わった後、健美が頷いたと思ったら何やら両腕を動かしながら何かを求めているかのような行動をする。
大和はまだ健美の言葉は理解できない。しかしこの行動は見てわかる程に何を言いたいのかを読み取った。
「どんなことをすればいい、って言ってるの?」
「ピッ」
力強く頷いた。的を射たようにぴったりと当たったようだ。
「それなら安心して。いくつか心当たりがあるし、場合によっては依頼を協力する形で手伝うことも出来る。それに俺も付き添うからわからないことは言ってくれていいよ」
「ピュイ! ピピィ!!」
「おっと!」
『付き添う』と言う言葉が嬉しかったのか、健美は飛び付くように大和に抱き着いた。
大和は戸惑ってすぐに離そうとしたが健美はガッチリと腕を絡ませてくっ付いている事で諦め、そしてなんだか一子が膝の上に乗っている感覚に似ているのですぐに受け入れた。
「ホント、青春だねぇ~」
蚊帳の外にいる巨人は二人の姿を見てそんな感想しか出なかった。
大和と健美の距離が少しだけ縮まった話でした。そして今回の話から今後、大和は健美と一緒にいる機会が増えていきます。それに伴い、原作キャラとの絡みが増えるので、楽しみにして下さい。
それではこれで失礼します。