真剣で私に恋しなさい!S~鳴く少女のマジ恋!~   作:Celtmyth

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 この時間での投稿はおそらく初めてです。少し頑張った気がする気分です。


あらすじ

 水上体育祭で大和と健美は一緒にいる事はそれほど多くなかったが互いに全力を出した。そして御前を終えた頃、大和は紋白と対話する。その時、大和は健美の正体について紋白の気持ちを問うた。
 それを聞き、紋白は彼女が英雄になる日を望む思いを答えた。大和はすぐそばに力になってくれる存在がいると知り、もしもの時に協力を頼むのだった。

 』


第十四話「二羽は一本の添え木に止まる」

 

 大和が健美の成長に付き合い始めてから二週間が過ぎていた。マルギッテと決闘をし、孤児院の子供たちと戯れ、水上体育祭では活躍した。それに並行するように二人の親密さも少しずつ上がっていき、今は屋上で二人きりの昼食を摂っていた。

 

「もきゅ、もきゅ……」

「ちょっと詰め過ぎじゃない?」

「ふい」

「うん、まず口の中を空にしようね」

 

 健美は膝の上に乗せた、三段の重箱の食事を三、四口入れては一気に咀嚼して食す。喉を詰まらせかねない食べ方だが咀嚼の時間が長いのでしっかり噛んでいるようだった。そして彼女が口の中の物を飲み込んだことを見計らって大和は話題を切り出した。

 

「そっちはどう? 挑戦者とか1-Sとのみんなとか」

「ピュイ」

「ははっ、相変わらず可愛がられてるみたいだね。でも決闘を申し込められるようになったのは前進したって事だよ。健美ちゃんの事は挑戦したい競争相手だって」

 

 進展した状況を知り、大和も思わず笑みが零れる。健美の成長を自分の事のように嬉しいと感じたからだった。が、その笑みの裏には僅かながらの不安があった。

 

(でもこれからはどうしようかなぁ……)

 

 それは次にどんな行動をしていいのか、これと言った案がもうないと言う事だった。

 健美がやっていることはある意味アイドルのようなものだった。地道な努力を重ねながら人気を得ていく。それを武道家に当て嵌めるなら地味な努力は『修業』、『決闘』、『親交』と言った物が挙げられる。そしてこれこそ健美がやっているもの全てだった。

 

(この間のような水上体育祭は学園内のイベントだから学外の伝聞にはなっていない。やっぱりまだ義経たちの影に隠れている感じなのか?)

 

 大和が懸念していることはまさにその通りだった。事実、武士道プランの発表でニュースや新聞で大きく取り上げられたのは義経・弁慶・与一の三人。これの大きな要因は正体が明確であった事。名前が違う清楚と共に知名度はやや低めだった。マルギッテの決闘を経て学外からの挑戦者は増えたがそれでも義経たちと比べて少ない。

 と、ここまで考えてある事に気付いた。

 

「そう言えば健美ちゃん。健美ちゃんの挑戦者って姉さんを経由している?」

「ピ? ピィ」

「してない、か」

 

 大和が気付いたのは義経と弁慶の挑戦者は百代が振るいにかけ、実力が伴っていると判断すれば挑戦できるシステム。それは多すぎる挑戦者を限定するのが目的だが、先ほど健美はそれがないと答えた。経由がなく、それでいて挑戦者が少ないと言うのはまだまだ知名度が低い証だった。

 

「俺とした事が……」

「プイ?」

「いや、なんでもないよ。それと口から糸こんにゃくがはみ出てるよ」

 

 また口の中いっぱいに詰め込み、しかしちょっとはみ出していた健美に注意する。彼女はすぐに啜って中に入れるとモグモグと咀嚼を再開する。

 やっぱり小動物だな、と思いながら大和も食事を再開する。そしてこれからどうするかと頭を巡らせる。

 

 

 

 

 

 

「おやおや~、二人っきりでランチとは仲が良いね~」

 

 

 

 

 

 

 そこへ好奇心と悪戯心が混じった声が聞こえ、二人はその声が聞こえた方を振り向く。そこにいたのは小悪魔を思わせる笑顔をした燕がいた。

 

「燕さん」

「ども、おひさしぶりだね」

「………」

 

 大和が思わず彼女の名前を口にし、燕はそれに応じるように改めて挨拶をした。すると健美が大和と燕の間を遮る様に割っている。弁当を離さないまま。

 

「あやや、まだ嫌われてるみたいだね」

「あっ、すみません。こら、健美ちゃん」

「いいよいいよ。それと健美ちゃん、別に大和クンを取ったりしないから」

「………(じぃー)&(モグモグ)」

「食べるのを止めない子に睨まれてるって新鮮な体験だね」

 

 確かに。これでは健美が睨みつけても緊張感の欠片も生まれなかった。しかしそれは置いておいて、健美が睨み続けていると言うことは燕の言葉を信用していないと言う事である。

 燕はそれを察し、大和とは距離を取る場所で座り込んだ。

 

「よし、私はここから動かないからね。とりあえず健美ちゃんも座ってほしいかな」

「………ピ」

 

 ここまでしてようやく納得したようであり、健美も座る。ただし大和のとなりをガッチリ確保した位置に。

 

「本当に懐かれてるね、大和クン」

「まぁ、はい」

「青春だねぇ~。と、感想を言った所で本題を言っちゃいます。―――大和クン、そろそろ健美ちゃんの次に詰まっちゃった所じゃない?」

 

 まるで心を読んだかのようなその言葉に大和は燕の眼を見た。

 

「……そう、ですね。隠さずに答えるなら行き詰ってますよ」

「だろうね。でもそう落ち込む事じゃないよ。大和クンがやってきた事は一番効率がいい方法なんだから」

「ピッ」

「『そんなのわかってる』。って言ってます」

「そっかそっか」

 

 大和が正直に胸の内を告白した後、燕は健美を含めた二人に向かって告げた。

 

「ねぇ、私も手伝わせてくれない?」

「はい?」

「ンピ?」

 

 それに大和と健美は左右逆に首を傾げた。

 

「あやや、そんなに驚く事だったかな?」

「あっ、いえ。そういう訳じゃ」

「ピュイ」

「こら、疑わないの。でもどうしてそんな事を?」

「単純な理由だよ。頑張る二人に協力したくなったから」

「ピピ」

「だから疑わないの」

「……健美ちゃんには完璧に警戒されちゃってるね」

 

 通訳されなかったので何を言ったのかわからないが、大和が諌めている姿を見る限りあまり遠慮ある言葉でもなさそうであった。それで燕は落ち込んだがすぐに立ち直る。

 

「じゃあ条件。私は出来る限り大和クンとは接触しないし、からかわない。さすがに相談はしたいから近づくのは許可して欲しいな」

「ピュィ……」

「嫌そうだね。でも大和クンばっかりに頼るのも負担がかかるだろうし、それに私みたいな嫌いな人と付き合っていく事も一つの勉強だと思うよ」

「ピュ……」

 

 燕が告げる『事実』に健美はわずかながら反応する。そして大和の方に目を向ける。黙って何も言わないが、大和の方は真っ直ぐな瞳に思わず困惑してしまう。

 

「えっと……」

「たいへん?」

「おお、喋った」

 

 しかし唐突に沈黙を止めて、しかも久々に言葉を使って質問した。

 燕はその珍しい事に興味津々だったが、大和はそんな陽気な気持ちはなかった。健美が言葉を使うのは大抵、覚悟をした時か真正面から向き合う時だ。そして今回は間違いなく後者。嘘曖昧な答えはダメだと、そう察した。

 

「うん、大変。正直、俺一人じゃ限界もあるから」

 

 大和は正直に、現状は限界にきていることを告げた。

 すると健美は目を瞑って俯き、しかしすぐに目を開けて燕を見る。そして箸を向けながら答えた。

 

「とらないなら、いい」

「……わかった。取らないから協力させてね」

「ン」

 

 燕の返事を聞いて健美は箸を降ろした。

 大和は健美の一部始終を見守っていたが、これは彼女の成長の証と考えていた。健美は今でも燕に敵意の感情に似た物を抱いているにも関わらず、条件付きながら協力することを認めた。

 

(俺の負担を軽くしたい思いもあるだろうけど、それでも燕先輩を受け入れたのは大きな一歩だ)

 

 これは大和の見解だが健美は人の好き嫌いがハッキリしている。大丈夫だと判断した相手には懐くが、危険と判断した相手には距離を取る。前者は自分や与一で、後者は百代や燕だ。しかし今回は距離を取っていた燕を認めたのは確かに大きな一歩だ。

 

「じゃあよろしくね、健美ちゃん。鳥の名前同士、仲良くしようね」

「プイ」

「うぅ、そっぽを向かれた……」

 

 前言撤回。形だけの協力で、別に距離を近づけたわけではなかった。

 

 

 

 




 と、言うわけで燕さんも協力してくれるようになりました。でも健美はまだ嫌いです。大和の負担を軽くするために受け入れただけです。


 しかし『これから~』と行きたいところですが時間は飛びます。じれったい流れを切って一気に加速します。『え?』と思う方もいると思いますがどうか最後までお付き合いくださいませ。
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