真剣で私に恋しなさい!S~鳴く少女のマジ恋!~ 作:Celtmyth
あらすじ
『
水上体育祭も経て健美の名は広まりつつあった。しかし大和にとっては次の手をどうするべきか悩んでいた。そんな時、三年の燕が二人に協力を申し出たのだった。
最初こそ健美は燕の事を警戒していた。しかし今のままでは大和に負担がかかると知り、条件付きで申し出を承諾したのだった。
』
燕の協力は大きな力となった。元々、西では『納豆小町』と呼ばれて世間広く名を広めた武士娘。宣伝についてはこれ以上ない協力者だった。彼女の力もあって曖昧だった学外への知名度も広まり(もちろん納豆の宣伝も忘れていなかった燕先輩)、それを聞き付けた実力者も少しずつ増えてきた。
もちろん大和も大和なりに色々な経験を健美にさせた。最初の孤児院の手伝いから清掃活動や奉仕活動と言ったボランティア。少々の不安はあったものの勧めた接待などのアルバイト。どちらも危ない場面もあったが何とか切り抜けた。(磁力でスチール缶集めたり不届きな客が触れた瞬間に放電したり)。そうやって活動を広めた結果、川神市内でも親しまれるようになった。
そんな日々が過ぎて7月、もう間もなく夏休みに入ろうとした時にそれは発表された。
それは、『若獅子タッグトーナメント』の開催だった。
発表から翌日、学園内でも多くの生徒たちがペアを組んで登録をしている。登録していないと言えばなかなかペアを見つけられないと言った人達であろう。
「――それで、健美ちゃんは俺と出たいと」
「ピ」
そんな中、大和は健美からペアの申し出を受けていた。昼休みになった途端に屋上へ来てくれと言われたが、話題はこれだと思っていたのでそれほど突然な申し出と言う訳でもなかった。
「確か武士道プランの皆は参加は必須なんだよね?」
「ピ」
「そうなるとちゃんと勝ち抜かなきゃダメだよね?」
「ピ」
「だよね。じゃあ聞くけど、健美ちゃんは俺のカバーをしながら戦える?」
「……………………ピ」
「頷いたけど難しいって受け取っていいんだよね、その返事の遅さは」
実力のある健美だが、タッグ戦の経験はなさそうであった。少なくとも義経たちとは一緒になって組んだこともあるかもしれないが、大和のような非武闘家との経験はないだろう。つまりどのようなカバーをすればいいのか知らないと考えるのが妥当だった。
「義経たちとは組まないのか」
「ピ、ピピ。ピッピピ」
「義経はスタイルから与一と組む方がいい。弁慶は『自分でパートナーを見つけるのも英雄の資質』と言われて断られたか。さすがに葉桜先輩はないか」
「ピ」
強く頷く健美だった。だからと言って自分を誘ってくれるのはある意味信頼している証なのかもしれないが、流石に無謀すぎる選出だったと思う。
「まぁでも弁慶の言い分は正しいよ。自分の戦い方を見定め、その上で自分と相性のいい相手を見つけて誘うのも武人としての素質だと思う。まぁその上で俺みたいなのを相棒に選ぶのは間違っているとは言わないけど、もっとよく考えるべきだと思う」
「ピュゥ……」
「ああ、ごめん。別に嫌だってわけじゃないんだよ。ただ俺も健美ちゃんには勝ち上がってほしいからそれなりの実力者と組んで欲しいんだ」
「ピ?」
「俺は出ないのかって? 今のところは出来る気はないな」
大和はこう言っているが、状況によっては出ると言っているようなものだった。気持ち的にも健美となら出てもいいと心の一部が告げているが、やはり彼女には出来る限り上へと勝ち上がって欲しかった。
(しかし健美ちゃんと相性のいい人っていってもなぁ……)
これは大和の独断だが、これまで健美の戦いを見てきた印象は一言で言うと『ソロ』だ。つまり単独によるバトルスタイル。雷による攻撃はフォローがいらないほどに強力であり、同じく速度も文字通りの電光石火。例えるなら百代のように突撃型とも言えるものだ。そんなタイプと組める人物と言えば判断力に長け、臨機応変に対応できるようなタイプ。この条件に当てはまりそうな人物と言えば、一人しか――。
「やーやーやー、相談事ですかお二人さん」
「ん?」
「……ピ」
唐突な第三者、燕が2人の前に現れた。
「と言っても何を相談しているか予想がつくよ。タッグトーナメントのペアでしょ」
「そうですね。燕先輩も声をかけられたんじゃないですか?」
「まぁお誘いはいっぱい来たよ。でも組みたい子がいるから断ってきちゃった」
「へぇ、誰なんですかその人は?」
何気に大和が尋ねると、健美が燕との間に入って『取るな』と言わんばかりの眼で睨み始めた。
しかしそんな健美の予想に反して、燕の言葉は意外な物だった。
「健美ちゃん、私とタッグを組んでみない?」
「……ピ?」
燕は大和ではなく健美にお誘いを申し出た。大和に声をかける物だと思っていた健美は思わず首を傾げてしまった。
「ピピ?」
「なんで? ね。まぁ私的には大和クンとも出てみたいって思ってたけど、健美ちゃんと出た方が私にとっても得る物があるし、何より相性的には良いと思うんだ」
「あっ、燕先輩も俺と同じ考えですか」
「あれ、もしかして大和クン。健美ちゃんのパートナーに私の事を考えていた?」
「はい」
即答だった。大和が先ほどパートナー候補として頭に浮かべていたのは確かに彼女、燕だった。彼女は技とスピードに長けた武士娘であり、加えて知力を持って的確な判断をするタイプ。突撃型の健美のフォロー出来るだろうし、立ち周りも上手くやり切る事が出来る筈だと。
「ふふっ♪ 大和クンも推してくれてるし、どうかな健美ちゃん。私と出てみない?」
そして改めて燕は健美をコンビに誘う。健美はどうしようかと燕と大和を交互に見て判断に困っているようだった。
「ん~、大和クンの薦めでも一押しが足りないか。それじゃあ健美ちゃんに一ついいことを教えてあげる」
「ピ?」
「トーナメントで勝ち上がれば名は広がるし、実力も知れ渡る。まぁ大きく言うなら優勝して百代ちゃんとのエキシビジョンマッチで成績を残す事が出来たなら、それはきっと英雄の資格に等しいよ」
「……っ」
『英雄』の言葉に健美の視線は燕を捉える。その目の色は半信半疑であった。
「……かてる?」
「それは私と健美ちゃんの頑張り次第だね」
「……わかった」
健美は燕に向かって手を伸ばした。それは承諾の証で、目標への一歩だった。そして燕はその手を笑顔で握り返した。
そんな二人を見て大和も自分の役割を決めた。
「二人が組むなら、俺は出場しません。二人のサポートに徹します」
「おや、いいの?」
「そのかわり、優勝したら賞品山分けで。まぁなくても協力しますよ」
「ピュイ」
「大丈夫、大丈夫。そんなに念を押さなくても一緒にいるから」
「ピッ」
出場者は二人組のみ。しかし第三者がそのサポートに回る事は禁止と言う事もない。それに大和はこの二人が出るなら力が及ぶ限り手助けしたいと思ったからだった。
「そう言えば燕先輩、チーム名はもう決まってるんですか?」
「一応、こんなのはどうかな。チーム
「ピピ?」
「欣喜雀躍って言うのはスズメ跳び跳ねるように喜んでいるさま、つまり小躍りして喜ぶって意味だよ。でもなんでそんな名前に」
「ツバメもツグミも同じスズメ目だから。あとは、やるからには楽しそうな感じがいいじゃない」
「なるほど」
「ピ」
なんとなく燕らしい理由であると同時に、このチーム名は良いと思う二人だった。
若獅子タッグトーナメント。チーム『欣喜雀躍』、参加決定―――。
展開は唐突に『若獅子タッグトーナメント』へと入りました。以前、コメントより『模擬戦をやってください』と言った意見もありましたが、申し訳ございません。健美の場合は大将タイプではなので泣く泣く没にいたしました。ホントはやってみたかったけど、そうなると『清楚ちゃんマジ西楚』やんなかやいけないので。
まぁ次回からバトルシーンが増えると思いますので、楽しみにしてください。それではまた。