真剣で私に恋しなさい!S~鳴く少女のマジ恋!~   作:Celtmyth

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ちょっとスランプに陥りましたがすぐに立ちなおさせました。もう少し頑張ってます。



あらすじ

 若獅子タッグトーナメント開催。多くの若人たちが参加を表明し、強者たちが集う。
 そして大和と健美もその熱に乗り、どうするかと話していた。そんな二人の前に燕が現れ、健美にチームとして組んでほしいと申し出た。二人はそれを受け入れ、参加を表明した。
 チーム名は、「欣喜雀躍」である。
 』


第十六話「前夜、二人の告白」

 健美と燕がチームを組んだ後に怒った事と言えば、危機感を覚えた京が義経と組んだり与一が清楚と組んだりと、そんな感じに見知った面子が徐々に参加していくような事ばかりだった。

 そうして参加が徐々に落ち着いくにつれて期限は迫り、そしてようやく明日で開催となる。そんな前夜。

 

「ジェノサイドチェーンソー!!」

「きょっ、こうざん」

 

 健美とヒュームが戦っていた。

 

 

 

 

 ことの始まりは、それほど前とは言えな程のほんのさっきだった。

 

「あの、今さらなんですが態々家から出て送って貰わなくて良かったですよ」

「いいのいいの。明日は大会なんだから、話せるなら長く話したいのよ。ね、健美ちゃん」

「…………」

「睨まれてる……。別に大和クンの隣にいる訳じゃないのに」

 

 三人は横並びで右に燕で左が大和、その真ん中に健美。ちょうど『凹』な形になっていて、見る印象によっては微笑ましい。具体的に伝えると『健美が大和の腕に引っ付いて燕先輩にガン飛ばしている』=『とっちゃヤダ』である。

 

「まぁ息の合った動きも出来るようになったし、大和クンが持ってきた情報にもちゃんと確認しているから試合の方は心配ないんだけど」

「ピピ」

「『だって負けたくないもん』、ね。そだね。」

「燕先輩もここしばらくで健美ちゃんの言ってる事が理解できるようになりましたね」

「なんとなく、だけどね。さすがに大和クンや義経ちゃんほど正確じゃないけど」

「俺だってまだ全部とは言えませんよ」

「ピュイ」

「「『そんな事はない』って言った」」

 

 少し微妙な所もあるようだが、三人はしっかりと『チーム』として形を成しているようだ。準備は万全と言ったところだ。

 

「まぁとにかく、明日から本番。燕先輩、頑張って下さい。健美ちゃん、精一杯やってね」

「うん」

「ピッ」

 

 そして明日に向けて気を引き締め直す。試合に向けて自信を気合を込めて――。

 

「待て」

 

 そんな時、前方から三人を呼び止める声が聞こえた。三人は揃って前を見ると、そこにいたのは執事のヒュームであった。

 

「赤子がキャッキャと暢気に騒ぐのはいただけないな」

 

 そして三人が何かを言う前にダメだし。相変わらずであった。しかし、何故ここにいて態々声を変えたと言う疑問はあった。九鬼関係者から健美に用があるのかと思われるが、それにしてはいつもより威圧的だった。

 

「あの、ヒュームさん。こんな所でどうしたんですか?」

「面倒だから用件だけ言う。健美、俺と戦え」

「え?」

「ほい?」

 

 理解が及ばなかったのは大和と燕の二人だけ。健美は瞬時に動いてヒュームに向かって打って出ていた。

 

「ジェノサイドチェーンソー!」

「きょっ、こうざん」

 

 これが始まりだった。

 

 

 

 

「ハァ!」

「クゥ!」

 

 二人が衝突する度に雷撃・電撃が弾けて輝く。必殺技を使ったのは最初の一合のみ。これ以降は両手両足に雷電を纏わせた格闘戦だった。必殺技同士による『演出』がなくなり、接戦による『白熱さ』が際立つ。大和と燕は今まさにそれに呑まれていた。

 

「やっぱり健美ちゃんは単独がかなり強い。ずっと私に合わせてくれてたんだ」

「わかるんですか?」

「うん、息を整えるときは曖昧だったけどヒュームさん相手の今だからわかる。周りを気にせず、ただ前に向かってぶつかっている。最初の決闘みたいにね」

「マルギッテとの決闘、か」

 

 それを聞いて、大和は再び健美とヒュームの戦いに目を向けた。

 健美が蹴りを放てばヒュームはそれを脛で防ぐ。逆にヒュームが拳を放てば健美は紙一重で避ける。

 

「フッ!!」

「ピュ!!」

 

 すると二人は同時に距離を取り、直後にまた真正面から突っ込んでいく――と思ったがそのまま通り過ぎた。

 

「あれ、すれ違った時に拳が交わっている。しかも十数発」

「マジですか」

「マジだよ」

 

 燕が交差の際に起きた事を教えてくれた事で大和は改めてこの戦いのレベルを祭か幾人する。

 そして健美とヒュームは繰り返すように突っ込んでは通り過ぎ、交差と言う短い時間の打ち合いをする。大和にその様子は見えないが横で燕が横で『拳十発、蹴り一発……』と交差をするたびに何が打ち出されていくつ出たのか呟いて教えてくれていた。

 

「……! 大きいのが来る」

 

 呟いていた燕がそう言った直後、健美とヒュームが上へ跳んだ。真上でなく斜めで、上がり続ければすぐに接触するとわかる程に。そして、距離は互いの間合いに入った。

 

「ジェノサイドチェーンソー!!」

「きょっこうざんっ」

 

 最初に出した技が再び衝突し、ここ一番の雷電が発光した。

 

「まぶしっ!」

「おお、危ない危ない」

 

 大和は光に目を多い、燕は予見してすでにガードしていた。二人は視界を覆ってしまたがドサリ、と何かが落とされる音を聞いてすぐに開放した。

 二人が見たのは膝を着いた健美と、それを立って見下ろすヒュームの姿だった。早い、決着だった。

 

「「健美ちゃん!!」」

 

 大和と燕は声を揃え、迷わず健美に駆け寄った。健美に寄り添って状態を確認すると、怪我はなく服が汚れているだけだった。ただ呼吸は乱れており、体力がなくなっていることが明白だった。

 

「――やはりな」

 

 そこへヒュームが声をかけた。大和と燕が顔を向けたがヒュームはただ健美を見ている。そして健美が顔を上げたと同時に言った。

 

「『本気』であっても『本性』を出していない。せっかくの潜在能力が全く表に出ていない」

 

 その言葉に大和と燕は健美へと目を向けた。そして二人は同時にこんな言葉があった。

 『あれで全力じゃない?』と。

 

「ピィ………」

「明日は絶好の機会だと言うのにまだ正体を晒すのが怖いのか? 英雄は称えられると同時に恐れられる存在だ。恐れから逃げる以上、どんなに強くともどんなに多くの人間に愛されようが真の英雄にはなれん。この一歩を踏み出せない以上、英雄になる事は諦めろ」

「………」

 

 容赦のない言葉に、健美は項垂れていた。

 ヒュームの言葉から察するに、『明日の大会で正体を晒して戦え』と言っているようなものだった。しかし健美が正体を明かすのを恐れているのを知っている大和にとってそれは速すぎると思った。まだ正体を知らないが、だいたいの予想をしていた。もしかしたら、『人』として伝えられていないのではないかと。

 

「松永がいれば優勝も夢ではないだろう。だが、それだけだ。『優勝できる』止まりでは、な。――伝える事だけは伝えた。俺は先に帰る」

 

 そしてヒュームは背を向けて立ち去る。瞬間的に移動できる彼であればすぐに戻る事が可能だろう。これまでそんな場面は見て来たし、今回もそうだと思えた。

 

 

 

 

「待ってください」

 

 

 

 

 だから大和はヒュームの姿が消える前に呼び止めたのだった。それは無視しても良かったのだろうが、ヒュームはそれを聞き届けて大和を見た。

 

「なんだ?」

「言うだけ言わせて下さい。本音を言うと俺だって健美ちゃんの正体は気になりますし、知りたいと少なからず思ってもいます。でも同時にヒュームさんが言う様に、英雄には恐れられる事も覚悟しなければならない事も理解しています。俺は姉さんをずっと見てきましたら」

「ほぉ。それで?」

 

 ヒュームは『本当に言いたいのはそんな事ではないだろう?』と言った風情で聞き返す。

 大和もそれを察し、本当に言いたい事を口にした。

 

「健美ちゃんはクローンですが同時に『夜響 健美』です。この現代で頑張っている、一人の女の子です。オリジナルを超えて英雄の頂を目指している、俺が支えたい女の子です」

 

 まるでそれは恋人が相手の親に挨拶しに来たような台詞だった。これを聞いてヒュームは口を緩め、燕は驚いて口元を隠し、健美はただ目を向けていた。

 

「――好きにしろ」

 

 ヒュームはそれだけを言い残して姿を消した。

 そしてしばらく沈黙の時間が過ぎると、大和は自分の言った台詞を想い返して顔を赤く染めた。

 

「えっと、さっきのは……」

「大和クン。いい告白だったよ」

「ぬぉおおおおおおおおおおお!!」

 

 燕の一言で大和の羞恥は最大となり、感情のまま走り始めてしまった。さっきまでの出来事をぶち壊すほどに、だ。

 

「やっぱり大和クンは可愛いな」

「……ピ」

 

 後輩をからかって燕は楽しそうだったが、健美はそれが気に障ったようで振り払うように燕から離れた。

 

「あやや、怒らせちゃったかな」

 

 健美は口にしなかったものの『当たり前だ』と言わんばかりのジト目で睨んでいた。しかし彼女はすぐに大和の跡を追うつもりらしく、戦闘直後ながらしっかりした足取りで動く。

 

「―――  」

 

 しかし燕が口にしたその『名前』で足を止めてしまった。

 

「やっぱり、健美ちゃんはこのクローンなんだね。こうして反応があるまで信じられなかったよ」

 

 燕が口にしたのは予想していた健美のオリジナル。この言から尋ねるまで確信に至ってなかったが、ここでそれを得た。

 

「でもむしろスッキリした。私は健美ちゃんを選んで良かった」

「………ピ?」

 

 健美はその言葉の意図を読むことが出来ず、固まっていた体が動いて燕と目を合わせる。

 

「健美ちゃん。私、優勝した後は百代ちゃんとエキシビジョンマッチをやる。その為の準備もしてきた。でも、確実に勝てる自信はない。一人だと、勝てる自信がない」

 

 燕は一歩一歩近づき、健美の目の前まで来るとそっと手を差し出した。

 

「もしね、健美ちゃんにその気があったらでいい。一緒に、百代ちゃんを倒してほしいんだ。健美ちゃんが自分の正体を晒してでも」

 

 ヒュームの言葉と、大和がいなくなった事でようやく口にすることの出来た燕の本心だった。

 

 

 

 

 

 しかし健美は、その手を眺めるだけで握り返そうとはしなかった。

 

 

 

 

 

 




 なんか告白回、という感じで書きました。そして今回も正体のヒントが出ました。しばらくしてマジでますで楽しみにしてください。


 では次回、また。
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