真剣で私に恋しなさい!S~鳴く少女のマジ恋!~ 作:Celtmyth
あらすじ
『
本選出場を果たし、若き実力差たちとの戦いが始まる。大和は健美と燕を激励をし、二人も期待以上の結果を残すべく臨む。
そして欣喜雀躍の最初の相手は、デス・ミッショネルズ。弁慶&辰子のパワーコンビ。避けることもできた試合だったが、健美がこの相手と戦いたいとして避けることはしなかった。避けなかったからには、勝て。
』
「それでは両チーム、準備はよろしいかな?」
司会の田尻が確認すると二チーム四人は黙って頷く。すでに目の前の対戦相手に集中し、声で返事をする気もなかった。それが無礼とも思わず、むしろいい緊迫感を醸していると田尻は感心していた。
(一回戦から激しい戦いが観られるようですな)
ただそんな期待を胸に秘めていた。それを抱き、田尻は息を吸う。
「ではタッグバトル、レディゴォ!!」
試合開始の合図に合わせ、燕と健美は素早く前に出た。二人とも構えているので間違いなく先制攻撃を狙っている。燕は辰子へ、健美は弁慶へとだ。
「むっ」
「はわっ!?」
弁慶はすぐに対処したが辰子は遅れた反応を見せる。結果として弁慶は防御を成功させ、辰子は中途半端になって体勢を崩す。
「じゃあ健美ちゃん! そっちはよろしく!」
「―――ィ」
「風で声がかき消されちゃってるね!」
戦闘中に余裕と思うがこれで最後。これからは互いに目の前の相手を倒す事にだけ集中する。恨みっこなしの、早い者勝ち勝負だ。
『これはコンビネーション攻撃をさせない為の形に持っていったな。これまでデス・ミッショネルズは同時攻撃によるKO勝ちだったから』
『まぁお前もそれで負けたしな。でもそれでも二人は強い。そう簡単には上手くいかないだろう』
三郎と百代が試合の解説をして観客に欣喜雀躍の意図を伝える。確かにと共感する者ものが多く、しかしそれで倒すのは難しいと思う者も多かった。
そして事実、その方法でデス・ミッショネルズに挑む二人はそれを忠実に実行する。
「では燕ちゃん、いっきま~っす!!」
「あわわわわわ」
燕は体勢を整え終えていない辰子にラッシュをかける。しかし相手も相手で攻撃を受けていながら怯んだ様子はあまりない。こっちはこっちでタフさがあった。
対して健美と弁慶は最初のやり取りから動いていない。牽制しあう、にしては二人とも気を張っている様子はない。ただ相手を見ているといった感じだ。
「……昔を振り返ってみると私たちが戦った回数なんてあまり多くないだろうね。いつもは義経の鍛錬とかが多かったから」
「ピィィ」
「いやいや、別に相手をするのが嫌だったわけじゃにあんだよ。なんていうかさ、ちゃんと相手が出来る自信がなかったんだよ。健美ってさ、油断していると反射的に先制攻撃をしちゃいそうになる時があったから」
笑い事では内容な事を笑って言う。しかしそれに憤ってもいい健美はあまり反応した様子はない。むしろ首を傾げて理解していないようだった。見覚えがない、とすればそれは逆に異常だったと言える。無意識下で弁慶を警戒させるなど、恐ろしいとしか言いようがなかった。
「まぁそんな事があるから健美との相手は避けてた訳。とりあえず謝っとく、ごめんね」
「ピュイ、ピ」
「だったらここで戦って、か。そだね、たまには妹分の相手もしないといけないよね」
シャリンと、弁慶の錫杖が鳴ると弁慶の気が張り詰める。すると健美も少しずつその体から雷を発生させる。
「……じゃあ」
「行くよ健美!!」
そして二人はようやく本格的に戦い始めた。
先手はまたもや健美。今度は雷を纏っての突撃であり、威力は見た目以上に何倍も跳ね上がっている筈だ。しかし弁慶はそれを見ても動かず、真両面から受け止めるつもりだった。
「そぉい!!」
受け止めるは間違いだった。弁慶はやったのは健美を近づけ、愛用の錫杖によるカウンターだった。振り下ろす方向は真横。縦では左右どちらにも避けられるし、避けられては錫杖はステージに叩き付ける形になるのでその後の行動がワンテンポくれる。しかし真横なら上・下・後ろ、そして振る方向にしかない。そちらなら次の手も予め決める事が出来る。
「―――ッ」
その中で健美が取ったのは予想外となる防御ではなく、予想内の回避。そして避けた方向は下。トカゲのように這うかのような体勢だった。そして腕の筋力だけでそのまま後ろに下がり、そして今度は脚の筋力だけでまた突撃する。
「そう来るか!」
迫り来るヒット&ウェイの攻撃。あのまま這う状態から攻撃に転じてくれれば先読みしていた行動通りであり、比較的楽に対処できた。こうなってはこのままの勢いを利用するしかないと判断する。弁慶は錫杖を振り回した勢いを更に勢いづけるために一回、二回と体を回す。そして十分な勢いを溜めると錫杖を健美に向かって投げた。
健美はこの手に刹那で焦った。自分はこれ以上なく速度を上げ、弁慶より速くなっている。しかしその速度は直線的な物であり、急な方向転換は出来ない。そしてそんな速度の中で弁慶の錫杖が目の前から勢いよく飛んでくる。何が言いたいかと尋ねらればこう例えて答えるだろう。
正面衝突しかける暴走列車は互いに躱せるかと。
答えは、無理。弁慶の錫杖は健美の腹に命中した。
「――――ッッッ!!」
悶絶する声を抑える健美。かなりの一撃だったが、それでも耐えようと我慢した。しかも直撃した錫杖を手にし、そして突撃することを止める事無くそのまま弁慶へ向かっていく。
「うへぇ!?」
これに弁慶は驚いた。彼女の予想ではここで沈める気だったが、その予想以上に健美は耐えて向かってきた。その驚愕が彼女の行動を遅らせ、隙を作った。
健美はその隙を逃さず、そして手に入れた錫杖を握りしめて跳んだ。
「ぶき、しようの―――」
錫杖に雷が纏っていき、激しい音を立てて膨れ上がる。その言葉は比喩ではなく、本当に雷が形を成していく。それはまるで、輝く大剣だった。
「――きょっ、こうざん」
縦一閃。その速度は弁慶が錫杖を振り回した時よりも速い、故に彼女の反応よりも速い。
「……無理」
弁慶が一言そう諦め、動く間もなく――いや、妹分が前に進もうとしている事と目の前にして笑いながらその一閃を受けた。直後に雷の爆発だった。
「弁慶っ!!」
選手控え室、モニター越しで試合を観戦していた義経が声を挙げた。しかしその声で彼女に視線を向ける者はいない。それだけモニター越しの試合は目を見張るものだった。そして今、舞台は爆発から煙が舞い、弁慶の姿を隠している。そこでは健美が錫杖を支えにして様子を窺い、二人の戦いの影に隠れてしまっていた燕と辰子は弁慶の下へ駆け寄ろうとしているところを上手く足止めしている状況だった。
そうした中で煙は薄く霧散してゆき、そしてその中に隠れていた弁慶の姿が見えた。服には焦げ跡や煤跡が目立つが、体そのものに傷を負っている様子はなかった。しかし動く気配が全くなかった。すると映像の端で鉄心が田尻に何かを伝えている。その会話は短かったようですぐに離れたが、田尻はその後に宣言した。
『弁慶の気絶により勝者、チーム『欣喜雀躍』!!』
勝者宣言から一瞬の沈黙、そして一気に湧き上がる歓声が響き渡った。
『健美ちゃん、賭けたな』
『賭けただと?』
『健美ちゃんは錫杖の一撃でもうかなりのダメージを受けていた。次の一撃に耐えられない程にな。だから残る気をさっきの一撃に込めて放ったのさ。弁慶が沈まなかった事に驚いて隙を見せたのも幸がそうしたな。ただこれで倒し切れなかったら健美ちゃんは勝敗条件に引っかからなくても戦えてなかっただろう』
『だから賭けなのか』
『まぁ燕はそれをカバーする気だったろう。自分の戦いをしながらも健美ちゃんと弁慶たちの方を意識していたからな』
『どの道、弁慶があの技を受けた時点で欣喜雀躍の勝利は決まっていたのか』
『その通りだ』
大半の者が見破れなかったこの試合の流れを解説し、皆がここで大きく活躍しなかった燕に感心(※そうなるように燕が虎視眈々としていたのはここだけの話である)する。これからの戦いも、期待が膨れ上がるのだった。
そんな考えが集中する観客席の中、二人のサポートに徹していた大和は違っていた。
(一回戦は勝てたけど、やっぱりここからが正念場だろうな)
そんな懸念をしているが、仕方がないだろう。欣喜雀躍はいるのはトーナメント中もっとも激戦区と言える場所。第二試合で当たるのはザ・プレミアムズもしくは桜ブロッサム。黛由紀江のいるチームか、那須野与一がいるチームか。とりあえず大和は今ここで自分が出来る事をすると誓った。
―――チーム欣喜雀躍、短くも激しい戦いを乗り越えて一回戦突破。
戦いは短かったかと思いますが、健美ちゃんは頑張りました。だからバッシングは私にお願いします。
あと報告。この作品のお気に入り登録が100件を超えました!! 皆様、愛してくださってありがとうございます!! 何か記念の話を書こうかなと思いましたが、今回はこの作品を長く続ける気持ちにするため、先駆けてタイトル通りにしようと思います。
『鳴く少女のマジ恋!』が完結した後の次なる少女のマジ恋!の物語、そのプロローグと言う形の予告で一時投稿します!!
興味があったら見ていってください。