真剣で私に恋しなさい!S~鳴く少女のマジ恋!~ 作:Celtmyth
いよいよ、百代との試合の時がやってまいりました。そしてっ、ようやくこの時がやってきたのです!!
あらすじ
『
決勝まで勝ち上がった欣喜雀躍。そして最後の相手となったのは源氏紅蓮隊、義経のいるチームだった。
これまで二人はどちらかが相手を倒す流れだったが、今度の相手は一人で制するほどもろくはない。二人は初めてともいえる、コンビネーションで試合に臨んだ。
義経と京の組み合わせはすさまじい。しかし健美と燕もそれに負けず劣らずの息の合った動きを魅せる。
そして、健美と燕は見事に勝利した―――。
』
数多くの選手、チームを乗り越えてその頂点に登り詰めたのは松永燕と夜響健美の欣喜雀躍の二人だった。彼女らは見事若獅子タッグトーナメントの制したのだ。
しかし、まだ戦いは終わっていない。
「さぁ、皆さまご覧あれ!! これよりエキシビジョンマッチ、優勝チーム欣喜雀躍と武神・川神百代の試合の開幕だ―――――!!」
田尻が叫び、観客席から熱気が湧く。それ一身に向けられているのは舞台に立つ三人の少女たちである。
「見ていて楽しかったぞ、二人の試合は」
「二人と言うより健美ちゃんの戦いじゃないかな、百代ちゃん」
「ピ」
「なんて言ったんだ?」
「嘘つくな、だって。しくしく……」
これらから戦おうと言う二人と一人は緊張もせず、余裕すらある。と言ってもこの三人に緊張があるのか疑いたい。いやないだろう、間違いなく。
「まぁいいさ。楽しく戦(や)ろう」
「百代ちゃんはいつもそれだね。ま、期待に沿えるように頑張るよ」
二人が試合の意気込みを告げる。その中で健美は観客席を見上げていた。その視線の先には大和がいた。
その視線は誰が見ても明らかだったので、そばにいる卓也も気付いていた
「大和、健美がこっちみてるよ」
「まぁ相手は姉さんだからね。自分の方を応援してもらいたいんだよ」
「でもやっぱりモモ先輩が勝つんだろうね。さすがに実力が違いすぎるだろうし」
「……そうかな?」
「え?」
百代の勝利を疑うような言葉に卓也が振り返ると、大和が深く考えていると思わせるような表情をしているのに気付いた。
「どうしたの、大和。心配事?」
「心配事じゃない。でも多分、健美ちゃんはこの試合に全てを出し切ると思う」
「健美ちゃんが? まぁモモ先輩に善戦すればそれなりの知名度は得ると思うけど……」
「そんな簡単な事にはならないはずだよ」
「え?」
先ほどから意味深な事ばかり呟く大和に卓也は少しの違和感を抱き始めた。しかしここで会場が光り、思わず目を瞑る。この出来事により違和感を捨て去ってしまった。
会場には装着を終えた燕が健美と共に、百代を見ていた。
「それじゃあモモちゃん。勝たせてもらうよ」
「いいだろう。いったい誰の依頼なのかはこの際気にしない。健美ちゃんと来い」
「もちろん。健美ちゃん、どちらが勝っても恨みっこなしだよ」
「……ピュイ」
「気にしないならそれはありがたい」
三人は言葉を交わし、今か今かと開始を待つ。故に田尻も待つ必要はもうなかった。
「それではエキシビジョンマッチ、始めッッッ!!」
試合開始の合図が切って落とされた。その、刹那とも言えるすぐ後で二人が動いた。
「川神流無双正拳突き!!」
「きょっ、こう、ざん」
蹴りと拳が衝突した。両者の放った一撃は必殺の域に達している。それが衝突すれば衝撃波の一つでも起きるだろう。そしてそれが実際に起きたのは接触してから数秒後だった。
『ショット』
そんな派手な光景とは場違いな機械的な声。
「上手く避けてよね健美ちゃん!!」
そして後ろからの声と共に健美の真後ろから気の弾丸が雨のように降りかかる。
「うわっ、健美ちゃんに容赦ないな!?」
「ピ」
「いや私はわからないから」
弾丸の雨が降りかかる中で二人はそれを避けて動く。背を向けた健美は見事に避けているが百代は数発ほど命中している。この理由としては当たった弾は健美の影から飛んできた物であった事と、さりげなく健美自身の気を撒き散らせていた為に察知し辛くなっていた。
「効果!!」
「ピュイ」
「ないのか――!!」
「その通りだ! 燕ぇ、こんな攻撃では私にダメージすら与えられないぞ!」
「だったら、予定通りに!」
『スタン』
燕は平蜘蛛のチューブを変え、射撃モードから雷撃モードに変える。それに合わせて健美が彼女の隣に並んだ。
「ピピッ」
「うん、行くよ!!」
時間も置かず二人は百代に向かっていく。これは相手に体勢を整えさせないための動きだったが、百代相手にそれは期待できない。しかし燕はそんな事理解しており、健美もそれは聞いている。これは二人が今の勢いに乗る為だった。
「「はぁ・ヒュゥ!!」」
違う言葉が重なると共に二人は上下同時攻撃を打ち込んだ。狙ったのは顔面と鳩尾の急所。二か所とも手が届く位置だが、二人の攻撃は別々の向きから放たれている。受け止めるにしては受け止め辛い同時攻撃。
「――甘い!」
しかし百代は難なく受け止める。放たれた方向を考えるなら腕の力が入れづらい筈なのに彼女は難なくやってのけた。
「くぅ!」
「たいない、かみ、なり」
「うわ、やばっ!!」
燕は苦く表情を歪めるが健美はまだ終わっていなかった。接触している事を好機として彼女は手を掴み、そして全身から雷が放たれた。燕はこれを予感してさっさと離れていた。
放電を直接受けた百代だがその表情は―――少し歪んだ。
「ハハッ、これは効くぞ健美ちゃん!!」
本人も放電が効いている事を認める。だからと言ってこのまま受け続ける義理もない。
「そぉりゃぁ!!」
「ッ!?」
健美が掴まった状態のまま力づくで振り回す。さすがに武神の力は凄まじく、一振りで健美は吹き飛ばされた。
「隙あり!!」
「なに!?」
そこ瞬間、離れていた燕が百代に迫る。相手が対処に入るよりも先に、燕は渾身の一撃を当てた。
「ぐはっ!!」
その一撃に百代の体は浮く。立っていた位置から少しだけ離れ、足元がふらつきながらも姿勢を保つ。大きな一撃だった。しかし、彼女にそれは意味がない。
「―――瞬間回復」
彼女が『武神』と呼ばれる要因となったその技が与えたダメージを全て消し去ってしまうのであった。
「相変わらずの反則技だね。何回ぐらい使えるの?」
「だいたい30回ぐらいか?」
「何と言うベホマ連発も無理ゲー」
しかしこの瞬間回復を攻略しなければ百代に勝つことは出来ない。それに無理ゲーであっても『攻略不可能』と言う訳でもない。糸口は必ずある。
「でも、まだ見つからない内は攻めて攻めるしかない。健美ちゃん、今度はモモちゃんを挟むように行くよ」
「ピッ!」
瞬間回復を前にしても二人の戦意は消える事はない。勝利を信じて前に出る。
「面白い! 少し打ち合ってやろう!!」
百代も二人同時相手ながらこの試合を楽しいと感じていた。それに合わせて彼女のギアは少しずつ上がっていく。
「見事、だな。健美は勿論あの松永燕も良くやる」
観客席から見える試合を、九鬼揚羽は賞賛していた。加え戦っている片方が九鬼の英雄クローンであるならなおさらだ。
「しかし、あの松永燕が百代の討伐依頼をしていたとしらなければもう少しいい言葉が出たのかもしれぬがな」
しかしその表情は一転、苦い色を見せた。
「気に入りませぬか?」
「だがもう遅いだろう。ならこの試合を見届けるしかあるまい」
「ヒュームも認めておったのだ。方法はともかく、意味はあるのだろう」
「もちろんですよ英雄さま」
そばにいた紋白が、燕に依頼した彼女が混ざった事で先ほど彼女たちがしていた話題が再び浮かぶ。そしてそれには英雄とヒュームも加わっていた。
「しかしあの試合を観る限り、松永燕は対策不足のまま臨んだようですがね」
「む、どういう事だ?」
「まず川神百代の技を完璧に見切れていない。何発か受けているのが証拠です。それに相手のペースが乱れていない。倒す気であるならそれも乱している筈です」
「ならこのままでは負けると言いたいのか?」
「松永燕なら、そうと言えるでしょう。しかし彼女はその不足分を、相方で補っている」
「健美の事か? そう言えば我らでもあやつの正体は知らないままだな」
「それなら、この試合で見られるでしょう。あいつの、健美が忌み嫌うその正体を」
忌み嫌うと言う言葉に三人は新たな気持ちを得て試合の観戦に戻る。忌み嫌うとは何か? それを知りたくて目をこらし始めた。
ちょうどその時、百代が人間爆弾を使った瞬間だった。
人間爆弾は相手を巻き込む自爆技。しかし瞬間回復を習得している百代は自爆のデメリットをなしにしていた。しかし技である以上、その射程内に敵がいなくてはならない。
「サンキュ、健美ちゃん」
「ピィ」
百代が爆発する直前に健美が雷迅で速度を上げ、そして燕も連れて脱出したのだ。ちなみに今の二人の状態は、健美が燕をお姫様抱っこしている状態だ。
「……逆なら絵になっただろうな」
「私もそう思う」
それが百代と燕の感想だった。しかし今は試合中。百代はすぐに次の手を打った。
「今度はコレで行くぞ! か~わ~か~み~」
「まずっ!? 健美ちゃん、わたしを前にして!!」
「ピュ」
手のひらに気を込める百代を見て燕が前に立ち、平蜘蛛のチューブを変える。その直後に百代の手のひらが開いた。
「波―――――――ッ!!」
『シールド』
同時だった。百代の光線はまっすぐ二人に向かい、しかし燕がそれを上空へ逸らしてみせた。
「くぅ……っ」
『リカバリー』
直撃は避けた。しかし余波だけでも大ダメージだった為、すぐに回復をする。
「ほぉ、お前も回復できるのか」
「でもせいぜい40%程度までが限界。モモちゃんと比べたら可愛いもんだよ」
「それは残念だな。なら、もう終いだ」
それが決着を予告する宣言であることは誰であっても理解できた。
百代がとどめを刺すために二人の下へ跳ぶ。しかしそれをさせまいと健美が燕を守る様に立ち位置を入れ替え―――
「ありがと。でもごめんね」
「ピ?」
しかし燕がそれを止め、まるで身を呈して健美を守るかのように庇う。
結果、百代の攻撃は燕一人が請け負った。
「なに!?」
さすがに百代も驚いた。彼女から見て実力が上なのは燕の方。いくら彼女が計算高い武人でもその身を犠牲にして健美を守る理由が思いつかなかった。しかしそんな考えを持っている間に燕は健美を抱きしめながら転がる。勢いがなくなった所で健美が燕の腕の中から脱出して彼女の体を起こす。
「……なん、で?」
「なんでって……、そりゃあ健美ちゃんに戦ってもらう為だよ……」
「……でも」
「耐えなさい。誰が何と言おうとも、自分を貫く。私はそんな生き方だよ。だから、健美ちゃんのすべてをみんなに見せてあげて」
そう言って燕は笑った。
健美は燕の好き嫌いを言えば嫌いだ。腹に何かを隠している気配があって、しかも最初の時は大和にちょっかい出そうとした。しかし彼女の生き方は、『自分らしく』あった。健美もタッグを組んでそれをよくわかった。こうして燕が庇う事で自分を追い詰めたと言う事も、納得するしかなかった。
「……て、かす」
「それぐらいなら」
この言葉で健美は燕を寝かせた。トーナメントではこの時点で敗北は決定しているがこれはエキシビジョンマッチ。まだ試合を続ける事は出来る。
健美は燕に背を向け、百代と正面から向かう。
「続けるのか。なら楽しませろよ」
百代はまだ戦う事が出来てうれしそうだが、健美はどこか上の空のように顔を上げた。
ヒュゥウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…………
すると今までにないほどの鳴き声が会場に響き渡った。
その直後に膨大な雷が健美の体から発生した。
――選手控室。そこにはクローンの四人がTV越しに見守っていた。
「覚悟が決まったか、健美」
「覚悟?」
「ああ、あいつが世間に正体を晒す覚悟だよ」
――会場観客席。スポンサー九鬼の区画。九鬼の兄妹と二人の老執事がいた。
「実を言いますと健美の正体は特に秘匿されていません。明かす時期は健美自身の判断でした」
「何だと? ではなぜ健美はこれまで正体をかくしていたのだ」
「皆様も健美が英雄と呼ばれていない事はご存じすよね。実は人間として名を遺した物ではありません」
――会場観客席。大和のいる一般席。
「健美ちゃんは人間じゃない?」
「いや、違う。考えるに昔の人は自分たちの都合で色々な隠し事や、隠語を使っていたんだと思う。付け加えるなら時代は平安時代の後期。まだ迷信事が信じられる時代だ」
「迷信事って」
「ああ、迷信。つまりお化けの類だ」
与一は皆に伝える。
「健美のオリジナルは京で夜な夜な出現した妖」
ヒュームとクラウディオは主に伝える。
「縁が深いのは源頼政。彼の放った矢によって退治された妖怪」
「日本のキメラと言われる、あらゆる動物の部位を持った雷獣」
大和は健美から目を話さず口にする。
「猿の顔、狸の体、虎の手足、尾は蛇。トラツグミに鳴き声をしたその妖怪の名前は」
そして四人の口にした名前は、別の場所にいながら重なった
「「「「――鵺」」」」
夜響健美。彼女の正体もまた伝説の存在であった。
健美ちゃんの正体解禁!!
皆さんの予想は当たりましたか? 当ててくれていたのであればうれしい限りです。
さて、次回は武神VS妖怪・鵺のバトル!! 頑張ります!!
それではまた!!」